第一話 それはムカつくほど突然で
私はそこから顔をのぞかせた。
そこは窓だった。
一つの雨粒が流れたと思ったら、また新しい雨粒が登場し、それもまた流れていく。そしてまた次の雨粒が・・・。
まるで無限ループである。
私は、それを永遠と見つめていた。
退屈ではない。だからと言って、特別楽しいわけでもない。
このなんとか施設はそういう場所だった。
私の様な親のいない子供が集められて育てられる。詳しい事は忘れたが、たしかそういうものだ。
私はその集められた子供の中では、目立つ子供に入るようで・・・
「瑠空ちゃん、他のみんなと遊ばないの?いつも一人でいてさみしくない?」
このザマだ。
私はセンセイに見えないようにそっと溜息をつく。むしろ一人でいたいんですがね。
もともとこのセンセイは子供にかまいたがる人種なのだ。
みんなで仲良く遊んだ方が楽しい!嬉しい!という、まぁようするにそんな人だ。
ポッポやムックルみたいに群れたがる種族。
話は変わる。
瑠空とは私の名前だ。ルクと読む。
こんな希有な名前をつけたのは、私を生み育て捨てた張本人。男をおっかけ、私をこんな場所にほおりこんだ。
私は今9歳・・・いや今日で10歳だ。自分のポケモンがいるならば明日にでも旅立てる年齢。
でももっと大人なのではないかとよく言われる。実際そうだったらもっと楽なのだが、見かけがこんななので自由がきかない。
だから私は本を読んだ。
冒険物、ファンタジー、文学小説。長編から短編まで。
とにかく読んで読んで読みまくった。おかげで知識だけは他の子供にまけないと自負している。
物思いにふけりはじめた私を前に、とうとうあきらめたのかセンセイはどこかへ行ってしまった。
私はまた窓の外へ視線を落とす。
今度は雨粒ではなく植物や水たまりなどに。
そして、私はその中にある異様な物に目をとめた。
「瑠空ちゃんどこいくの?!」
「ちょっとね!」
他の子供のと同じ場所にかけられていた自分のコートをひっつかみ、外へ飛び出す。
ざあああああああああ・・・。
容赦なく打ち付ける雨を振り飛ばしながらそれに全速力で。
ほら、見えてきた・・・一つの、消えかかった命。
ゴールはすぐ目の前に―――――――――。