第三話 開幕は必然
砂漠の地下室
吹き荒れる霊力の風が弱くなり
段々と何時もの−−−見慣れた風景が目に入ってくる。
成功したとは−−思う
現に
属性付与したクラスの情報も入ってきている
クラスはスキャナー
五大騎士クラスのくくりからは外れるものの
パラメーターだけ見れば申し分無く強力な
戦士だ。
ん?
そこで彼……
レイト・ゾロアは気付く
重大な事実に気付く
そう、
「……何で自分のパラメーターが見えるの……?」
そうなのだ、普通に考えてみればまずあり得ない。
パラメーターが見えるのは
戦士と契約を結んだ
支援員の特殊能力だ。
つまり−−−
「…って……ああっ!!!!」
戦士となったのは
彼−−レイト・ゾロアではなく
彼−−ロット・デュラック・ランクルス
であった。
「ふいー。儀式ってヤツは終わったんだよねー?ゾロアー?もうここから出てもオッケー?」
のほほんとした声に向かって
「なんで!なんで!ランクルスが
戦士になってるんだよーーーーーー!!!!!!!!????」
スキャナーの
支援員となったレイト・ゾロアの魂からの叫びは始まったばかりの
生存競争一日目の夜闇の中に吸い込まれていった。
__________________________
召喚の儀式から早3時間が経とうとしていた。
そんな中
夜の闇を物ともせずに超高速で走る影が一つ。
暗くてよく表情は伺えないが
黒いマントを羽織った
御世辞にも顔色が良いとは言えない男−−−
闇同盟のダークレスウェル・ゾロアークの配下でもある隠密の
戦士薬夜ガマゲロゲこと−−−−セキュラーの
戦士である。
ダークレスウェルが何らかのクラスに当てはまっていると言うのなら彼は配下と言うよりかは
「同盟関係」
になるのだろう。
だが、今、彼−−セキュラーが向かっているのは
ゾロアークの元では無い。
その方向にあるのは−−−
時雨斬撃殲滅騎士領の里−−本拠地と言って良いだろう。
何をしにいくのか?
少なくとも時雨には二人の
戦士−−
アルケーの
戦士たる時雨アーケオス
そして何らかのクラスに収まっている時雨キリキザンがいる筈だ。
贔屓目に言っても勝ち目は薄いだろう。
そもそもがそもそも
セキュラーと言うクラスは戦闘向きのクラスではないのだ。
なれば諜報活動か?
否
時雨の里に単身乗り込んで諜報活動もあった物では無い。
−−そしてセキュラーの
戦士は時雨騎士領の里を見下ろす事が出来る高台の上で止まった。
セキュラーは思い出す。
三時間前−−
「………来たか……目当て通りのクラスだ。そう−−シューター−−弓使いのクラスだ。我等ダークレスウェルの一族にとってこれ程適したクラスは有るまい?」
召喚の魔方陣から出てきたのは最早ダークレスウェル・ゾロアークではなく−−最強の
戦士−−シューターであった。
隣に居たギガイアスが言う。
「……お世辞抜きに申し上げていることを承知して聞いてほしいのですが−−−恐らく今回の
生存競争は我等が主−−ダークレスウェル・ゾロアークの勝利と言う結末以外には有り得ないでしょう。」
あの歴戦の猛者たるステラロック・ギガイアスにそうまで言わしめるシューターのパラメーターとは相当に凄いモノだったのだろう。
ならば我が主には心配は無用だ。
自分は当初からの役目を果たすのみ。
私の役目は時雨キリキザンの暗殺。
闇同盟に騎士領の騎士が乗り込んできたことに対する
言うなれば報復だ
そう言うとセキュラーの
戦士は山の天辺から勢いよく跳躍し単身時雨騎士領に乗り込んだ。
辺りは静寂に包まれていた
恐らく騎士領の主力メンバー以外は皆
生存競争が終わるまで何処か別の場所に避難しているのだろう。
−−好都合だ−−
彼はそう微笑むと唯一明かりの着いている
建物−−時雨御殿へと忍び込もうとした。
−−だが
「不法侵入とは恐れ入る−−最近の野鼠は躾が行き届いて居ないと見える。」
背後に気配を感じて振り向く。
ソコに男は立っていた。
燃えるようなルビーの瞳を携え兜から鎖を垂らした長身の
とても冷たい−−刃物のような印象を与える−−そんな男。
「時雨騎士領十二騎士皇が一人時雨キリキザン−−−−」
セキュラーは相手の威風に飲み込まれそうになるのを堪えながら声を出す。
時雨キリキザン−−かつて無い若さで騎士領のトップに立ち長年に渡る時雨ウルガモスの呪縛から騎士領を解放したとてつもない才能の持ち主。
「我が名はセキュラー……その命……悪いが貰い受ける………!!」
出来れば気づかれる前に致命傷を与えたかったが……
致し方あるまい
セキュラーは距離をとって短刀を擲つ。
こう言う相手には無駄に接近するのは命取りなのだ。
大体の場合近づきすぎて相手に有利な展開に持っていかれてしまう。
彼の判断は半分は正しい−−確かにキリキザンは接近戦を
得意とする騎士だ。
距離を取ったのは正解と言える。
しかし−−もう半分は過ちだった。
短刀をキリキザンに投げてしまった。
それだけで敗因となるのは必定だった。
キリキザンはセキュラーの投げた短刀をあろうことか片手で掴み取り一回転して短刀をセキュラーに打ち返した。
これだけでもかなりの達人と言うことが窺えるのに−−
驚くのはここからだった。
「……なにっ!?」
自分の放った短刀が全く別のモノに変わっていたのだ
小さなロケットと言うのだろうか?
持ち手の部分の先端からは火が勢いよく噴射して短刀の刃先はドリルのように高速に回転している。
「
改竄すべき騎士の結末−−」
どういうタネかは分からないが短刀を一瞬の内に改造されてしまったようだった。
更に−−最悪な事に−−改造された短刀は神具と同等の霊力を帯びていた。
持ちろん、キリキザンが短刀をこちらに打ち返す位ならばセキュラーは即座に反応出来たが……
いきなりスピードが段違いのモノが神具並の霊力を持って帰ってきてしまったら
流石のセキュラーと言えども
対抗する術が無かった。
結果として
セキュラーはその体をドリルロケットに貫かれ
地に倒れた。
「……貴様ッッッ!!どんな手を………!」
咆哮するセキュラーに対して男−−時雨キリキザンは
冷たく見据えて
「名乗りが未だだったな………我が名はドレイク……
騎兵の
戦士だ……地獄に行っても覚えておきたまえ……」
クラスを明かした。
彼の騎士皇が付与したのはドレイクであったか……!
並ば何らかの方法で短刀に騎乗道具としての特性を帯びさせたのだろうか……?
「去らばだ…−−時雨拳法:積乱雲−−」
次の瞬間セキュラー−−薬夜ガマゲロゲは自分の体がズタズタに切り裂かれる感触を最後に絶命した。
「……弱いな……いや……弱すぎる……どういう事だ……?」
セキュラーの
戦士が消滅した場所で
ドレイクは何か違和感を感じたがそれは直ぐに周りの気配を感知したことによって違和感の正体について考える余裕は無くなった。
−−使い魔−−が−−5匹
この戦いは他の
戦士達に見られていたと言うことか−−
成る程−−ドレイクは
生存競争が既に始まっていることを再認識して使い魔はそのままに時雨御殿へと入って行った。
「取り合えずセキュラーは−−−敗北か−−」
腑に落ちない物を感じながらドレイクは競争相手の敗北を確認した。
__________________________
アルガスタ邸のとある部屋では二人の人物が向かい合っていた。
一人は笑うととても不思議な色気を醸し出す美男子と言うのであろうか−−赤い髪を後ろで一つに束ねた人物−−
闇同盟リーダー
平和の体現者。
ダークレスウェル・ゾロアーク−−否、
シューターの
戦士と呼ぶべきであろうか。
そしてそれに向かい合うべくして座っているのは
仮面を着けており、見たものに威圧を感じさせる男。
闇同盟の暗殺部隊長サウザンド・サザンドラである。
シューターが口を開く。
「さて……セキュラーは仕事を果たしてくれたのだろうか……?」
この台詞からシューターとセキュラーの
戦士は同盟関係に近いもの−−もしくは同盟関係であると言うことは明白だが−−
「
支援員である私でも全てのセキュラーの行動まで把握出来るわけでは御座いませんので………」
−−本人に聞くのが一番早いでしょう−−
サザンドラはそう言った。
彼が
支援員だと言うのは分かるが……
全てのセキュラーとは一体どういうことなのだろう。
セキュラーに限らず一つのクラスに存在出来るのは一人のポケモンのみである。これはアルセウスの神の力を10個に分けているのだから当然である。
「セキュラー……出てきてくれ………」
サザンドラが何も無い暗闇に声をかけると……
果たしてセキュラーはソコに居た。
闇に紛れるようにして……
しかしセキュラーの
戦士は確かにドレイクに一矢報いる事無く倒され消滅した。これは覆し用の無い事実だ。
ではコイツは一体誰なのか。
「……は……。当初の予定通り時雨騎士領の
戦士に倒されて参りました。」
「そうか。御苦労だったな。それで?」
セキュラーと思われる
戦士にシューターは先を促す。
「時雨騎士領の十二騎士皇である時雨キリキザンがドレイクの
戦士となっているのを確認しました。」
セキュラーと思われる
戦士の言葉にシューターは頷く。
「まあ奴のような騎士が騎士クラス以外になるなど考えにくいからな……そうか……しかし意外だったな。」
シューターは言った。
「ドレイクとは………騎兵の
戦士の通り名であるが……奴に騎兵としての特性など有ったものかな……?」
敵対する組織の者でありながらシューター−−ダークレスウェルはキリキザンとまるで旧知の存在であるかの様に言う。
その考えを否定するかの様にセキュラーと思われる男は口を挟む。
「本人……時雨キリキザンがそう言っていたので間違いは無いかと。それとも彼は嘘をつくような騎士だったのでしょうか……?」
その問いに対してシューターはかぶりをふる。
「否。奴は誰よりも正直で愚直な男だ。嘘などは最も忌避する概念であろうよ……。」
シューターは何処か遠い目をして独り言の様に呟く。
「しかし気配を全く感じられないとは………流石の一言に尽きるなセキュラー。」
サザンドラが感嘆したように言う。
実際の所セキュラーの存在隠匿のスキルを持ってしても殺気を抱くと効果が薄れる等と色々なデメリットが存在するが……薬夜ガマゲロゲのソレは抜きん出ていた。そもそもがそもそも彼は隠行を生業とするポケモンである。
並ば納得の行く話でもある。
他のクラスにも言える事ではあるが
戦士となったときに願望器から強制的に授けられる「クラス別スキル」と言う物が存在する。
ドレイクの「騎乗」
アーマーの「絶対防御」
スキャナーの「召喚従属」などがそうだ。
セキュラーである彼の「存在隠匿」はランク換算してA相当。
サザンドラの目からしても暗殺や諜報活動においては最も優れている
戦士であろうことは見てとれた。
「……自分でも驚いております……。この様な能力……もしも私がセキュラーとならずに他の者がセキュラーになったとして………果たして気配を完全に絶った隠者に対する完全な対抗策が立てられる物なのでしょうか………」
他ならぬセキュラー自身が言うのだからたちが悪い。
そしてセキュラーが続ける。
「もうひとつ御耳に入れたい事が御座います。」
サザンドラとシューターが同時にセキュラーの方を向く。
「ドレイクとなった時雨キリキザンの能力と思われるモノについてです。」
時雨騎士領での一件をセキュラーが話すと。
深刻な雰囲気となった。
「………不味い………ですな………」
サザンドラが苦々しげに言う。
それもそうだ。どういう理屈−−まあ神の力に理屈を求めてはいけないのだろうが−−触れた物の所有権を奪って騎乗道具に「改竄」してしまうなど−−そんなのは−−
「完全に我の天敵と化したわけか……」
シューターが投げやりになったような口調で言う。
フェンサーやポーカーなどの直接攻撃を得意とする
戦士ならばまだ対抗する術はあるのだろうが……
こと遠距離攻撃を主力とするシューターやそもそも相性の悪い三大魔術クラスにはとてつもない脅威だ。
「攻略法としては未だ姿を見せない攻撃においては最強の
戦士であるベルセルクに任せるか……それとも他の騎士に任せるかですな。」
サザンドラが冷静に分析する。
「そう悲観する事は無い……我にもセキュラーにも十分に勝機はある。我等には戦力差を一瞬で埋められる切り札たる神具があるではないか。」
シューターの言う通り今回の
生存競争においてシューターは願望器から神具と呼ばれる恐るべき武器を授けられていた。
セキュラーも同じだが彼については少し違う。
レイト・ゾロアが先の召喚の儀式において言った通り
生存競争開始の定められた時に
属性付与をしたものにはクラス特性に適応した神具が用意される。
しかし、それ以前や以後に
属性付与した者には……
神具の力は授けられるものの、基本的には自分が元から持っている能力や武器に強制的に神具の適性が与えられてしまうこととなる。
今回の例で言うと−−闇同盟の面々はまだ知らないことだが「メイガス」や「アルケー」がそのケースに当てはまる。
そして−−−セキュラーもその例に漏れなかった。
「……確かに我が神具である「
傀儡で催す舞踏会」は優秀とまでは行かずとも有用な神具ではありますが……使用感としては個体を増やすのに少々時間がかかるので最大出力ともなると………恐らく
生存競争が佳境を迎えた頃になるのでは無いかと………」
−−「
傀儡で催す舞踏会」−−
脅威的な神具である。
上手く使えばこの
生存競争を支配することも可能であろう。
その効力は−−言うなれば念動力による疑似影分身である。
自分の思念を霊力によって実体化して攻撃を可能にしたり諜報活動に役立てたりできると言うモノ。
やれば念動体は何体でも増やせるらしいが………
成る程。ならばここに居るこのセキュラーはオリジナル−−本物のセキュラーと言うことか。
ドレイクに斬られたのは念動体のセキュラーと言うことになる。
「……そこは申し訳無いですが私の絶対霊力量の問題で増やせても500体が限度かと………」
500体ものセキュラーが遅いかかるともなれば恐ろしいどころの話ではない−−−が、
デメリットと言うかそう上手く行かないのが
生存競争の醍醐味なのだろうか−−分身体は同じように「
傀儡で催す舞踏会」は使えないし、微々たる霊力量で作っている体なので攻撃が「対霊力」のクラス別スキルを持つ騎士クラスには通用しにくい−−加えて言うなら攻撃手段がそれこそ短剣の投擲位しかない。
確かにセキュラーとなった薬夜ガマゲロゲはクラス別スキルとは別に本人が元から兼ね揃えている「保有スキル」の
「仕込み」によって暗器の取り扱いにおいては問題ないのだが念動体がそれしか使えないとなると中々辛いところがある。
やはり攻撃に限っての総合評価では他の
戦士に一歩譲ってしまう惜しい性能と言える。
「………となると当面は様子見に徹する事にするか……折角セキュラーが「偽りの第一戦」を演じてくれたのだからな………確かに傀儡の舞踏会を他の
戦士に魅せてやったのだ……最早あの場面を見ていた
戦士はセキュラーが脱落した以外には考えてすら居ないだろうな」
成る程。セキュラーの姿をした念動体がドレイクに斬殺される場面を他の
戦士が見たことによって闇同盟にとって有利に働く事は幾つもある。
例えば−−隠密たるセキュラーが他の
戦士の意識の外で活動出来ると言うこと。これはまさしく「存在隠匿」と合わせてもセキュラーにとってかなりのアドバンテージとなることは確実だ。今度こそ隠密の
戦士は完全に見えざる−−認識外の存在となって
戦士達の心の臓にその短刀を突き立てる事となるだろう。
例えば−−闇同盟のシューターとセキュラーでは相手取るのが困難になるであろうドレイクの能力が分かった事。あの場面を見届けていた他の
戦士達にドレイクの能力が露見したこと。自分達とドレイク以外に
戦士は7人もいるのだ。何処か一つ位ならドレイクに有利なとまでは行かなくても有効的な能力を持つ
戦士は居ることだろう。
そう言う彼らは優先的にドレイクを討ち取ろうとしてくれることだろう。
やはり今回の
生存競争の運気は闇同盟に向いている。
ニヤリと笑みを溢すシューターはセキュラーに命じる。
「次の任務は他の
戦士の情報収集だ。もうセキュラーは死んでいるのだから−−くれぐれも見られるなよセキュラー」
「は。」
短く了承の意を伝えるとセキュラーの
戦士はその場から暗闇に溶け込むように姿を消した。
__________________________
朝−−鳥の囀ずる声が一日が始まる事を心地好く伝えるが−−
一晩中起きていたレイト・ゾロアには寝不足の頭を揺さぶられるようで寧ろ騒音に等しかった。
まぁ、彼が苛ついている理由はそれだけではないのだが。
六時間ほど前に行った
属性付与の儀式でレイト・ゾロアは
戦士の能力を手にいれる−−その筈だった。
自分の夢のため、目的のために自分が死地に向かうことを決意していたのだった。
だが−−自分はどういうわけだか
戦士ではなく
支援員となっていたのだった。
その理由を解明すべく闇同盟から持ち出した資料を読み漁れば理由は明解だった。
戦士となるには願望器に実力を認められた「紋」が必要だと。
何故こんな重大な事を読み落としていたのかと自分を責め立てると同時に
戦士としての能力を付与された相棒であるランクルスに何故「紋」が現れたのを黙っていたのかと聞くと。
「え?「紋」ってなーに?え?これ?わぁ!何か付いてる!何のかたちなんだろね?これ。」
気付いていなかった。
まあ誰にも「紋」が現れず魔法陣の中であんなことをしていたとなればそれはもう恥ずかしいとかそんな時限の話ではなかったが−−−
完全に自分の落ち度なのだが自分の力でどうにかなることでもなく誰を責めれば良いのか、誰に責任があるのか分からないゾロアは一晩中イライラしていたのだった。
そんなゾロアは召喚が終わった後に取り合えず御三家たる剣と時雨と−−自分が元々所属していたダークレスウェルの闇同盟に使い魔たる霊力で出来た小型カメラを飛ばしたのだが−−そこには驚愕の出来事が写されて帰ってきたのだった。
「−−おうい−−ランク……スキャナー!起きてくれ!一大事だ!もう敗退者が出たぞ!!起きてってば!!朝ですよーーッッッ!!」
自分も眠たかったがそんなのは棚にあげてランクルスを起こす。
「うーん………昨日はあんなに遅かったんだからもうちょっと位なら寝ても良いよね?おやすみー」
ZZZと寝息をたてるランクルスだがゾロアは諦めない。
「頼むよスキャナー!!起きてくれってば!!」
うるさそうに目を細めてランクルスは覚醒した。
明らかに不機嫌そうだがゾロアはそんなのは意の外で続ける。
「ほら!これ!」
ゾロアがランクルスに渡したカメラには昨夜の第一戦の流れの一部始終が写されていた。
時雨騎士領の陣地にてセキュラーの
戦士がドレイクと名乗った
戦士に一方的に蹂躙されるその様がありありと。
「………ふぅん。で?ゾロア−−君はこれをどう見るんだい?って言うかセキュラーって−−ええと−隠密の
戦士だったよねー?それがなんでこんなに堂々と敵の陣地に入ってるの?」
スキャナーは
生存競争の知識は皆無に等しかったから説明するのに
生存競争開始前に時間をかなりかけたがどうやらクラスについては覚えていてくれたらしい。
が、彼はクラス別スキルについては覚えていないようなので説明しなおす。
「存在隠匿ねぇ。結構便利そうだけども成る程−−気配を殺して敵の陣地に侵入したって事なのね。でもリスクが大きすぎないかい?しかし……セキュラー……言っちゃ悪いけども何か弱くない?」
瞬殺だったねーとランクルス
ランクルスの疑問にゾロアは頷く。
「……そこなんだよね。このセキュラー……僕が闇同盟に居たときに暗殺部隊副長をやってた薬夜ガマゲロゲって男なんだけども……こいつはゾロアーク……闇同盟のリーダーの命令でしか動かない男なんだよね。詰まりセキュラーはゾロアークの闇同盟陣営だろうね……。」
−−でも−−とゾロアは続ける。
「セキュラーがゾロアークの命令で騎士領に潜入したのは明らかだけども−−いきなり戦力を捨てるなんてのはアイツのやらなさそうなことだ。有り得るのは−−ゾロアーク自身、もしくは闇同盟の陣営に他の
戦士がまだ居る。
もう一つの可能性として−−」
ランクルスが付け加える
「セキュラーは脱落していない。だね?」
ゾロアは頷く。
「考えにくい事なんだけれどもね。こうして殺られる所が写ってるし……そもそも僕の知ってるガマゲロゲって男は不死身の能力の持ち主でも無いし幻覚の使い手でもない。
この状況から逃れる手段なんて持ち合わせて居ない筈なんだけれども……」
ここまで真相に近いところに接近したレイト・ゾロアとスキャナーの構想力は特筆に値するだろう。
事実昨日の一部始終を見ていた
戦士の陣営の中でこの結論に行き着いたのは闇同盟を知っていたと言うアドバンテージがあることを抜きにしてもスキャナー陣営のみだった。
「……そこはほら?神具の力で幾らでも出来ることだよね……きっと。」
「ああ。考えられるのはさっきもあげたが「幻惑」系の神具なんてのも有り得る。あの時雨の騎士も僕らも惑わされているだけかもね?」
「まあ取り合えずセキュラーの問題については置いておいて−−もう一つの問題でもある−−」
「セキュラーを倒した
戦士−−ドレイクと言う
戦士だね」
ランクルスがゾロアに続ける。
「そう−−まあでもアイツの真名には心当たりがあるよ。」
と言うゾロア。
これにはランクルスも興味深そうに身を乗り出す。
「あの武器を一瞬の内に自分のモノにしてセキュラーを葬った騎士に心当たりがあるの?」
肯定するゾロア。
「ゾロアークから聴いた話だが時雨斬撃殲滅騎士領のトップ
アギルダーやシュバルゴと同じ十二騎士皇の一人−−」
「時雨キリキザン」
__________________________
レイト・ゾロア達−−スキャナー陣営が昨夜の戦闘について砂漠の地下で話をしているのと同時刻−−
話の舞台となった時雨騎士領の里にある時雨御殿。
そこでは四人の人物が顔を合わせていた。
昨夜の襲撃に対する意見と今後の策略についての緊急会議である。
一人は紅く光るルビーのような眼光と髪の毛のように頭から鎖を垂らしたとても鋭い刃物のような印象を持たせる男。
ゾロア達の話題に上がった人物。ドレイクの
戦士。
十二騎士皇が一人「斬滅のキリキザン」
時雨キリキザンである。
それに向かい合うようにして座しているのは時雨騎士領の黒幕とも言う存在−−もう普通のポケモンとは謂いがたい年代を生き続けた怪物−−血のように赤い六枚の羽を持つ老人−−五騎賢人議会のトップにして時雨騎士領の「裏」のトップ。
時雨ウルガモスであった。
ちょうどキリキザンから見て右に座しているのは
時雨騎士領十二騎士皇の一人でもあり
五騎賢人議会の一人でもある。
他の陣営は預かり知らぬ所ではあるがアルケーの
戦士として今回の
生存競争に参加している老人
「岩泊のアーケオス」
時雨アーケオスである。
その顔に刻まれた深いシワが彼の生きてきた年数と苦労を物語っている。
アーケオスの反対側で胡座をかいて座っている男は全体的にのんびりとした雰囲気を醸し出しているのに眼光だけは鋭い−−更に会議の場であると言うのに腰に一本の刀を刺していた。
時雨騎士領十二騎士皇の一人
「永劫のアバゴーラ」
時雨アバゴーラその人である。
今現在里の行く末を担っているのはこの四人と言っても過言ではないだろう。
誰も意を唱える事はしないはずだ。
この場にこの四人が居るのは先の通りに
時雨騎士領の陣地に潜入し襲撃し−−果てた
戦士。
セキュラーについての見解を述べるためだった。
結論から言うとゾロア達と概ねの見解は同じだった。
「先月に闇同盟へサモナー及びサモナー候補の暗殺を命じた騎士皇−−時雨マラカッチからの情報によりますと昨晩侵入してきたサモナー、セキュラーは闇同盟の陣営の男らしいのです。交戦した彼が言うのだから間違いないでしょう。」
キリキザンが言う。
「成る程……ならばこれでダークレスウェルは敗退した………と見るのが一般的だろうが………さて?果たしてそう上手く事が運ぶのだろうかのぅ?いや、そもそも彼処の暗黒王がこんな考えなしに騎士領に戦力たるサモナーを遣わす等と言うことをするのだろうか……。キリキザン、貴様は彼処の主と知り合いであったな?どうなのだ。」
アーケオスがキリキザンに問う。
キリキザンは少し考える素振りをして−−止めた。
「ゾロアークがそのような事をするわけがないと言うのが我の見解ですな。そもそもゾロアークはダークレスウェルの一族なのだから彼もサモナーになっていると見るのが一般的でしょう。詰まりセキュラーとゾロアーク−−何のクラスなのかは存じ上げないが−−は同盟の関係でしょうな。」
キリキザンが述べる。
それにウルガモスもアーケオスも頷く。
「ならばセキュラーを失ったダークレスウェルはどう出るのだろうか?サモナーとなっているならば
生存競争で戦うことになるのだろうが……」
ウルガモスの発言にキリキザンは
「戦力を失ったと言うのもありますが……彼ならば序盤は様子見に徹するでしょうな。元よりバトルロワイヤルなのだから初戦の内に手の内を明かすような真似はしないでしょうね。まあ……我は少しとは言え晒してしまったわけですが」
キリキザンはそう言って自分の手を見つめる。
セキュラーを倒した技−−「改竄すべき騎士の結末」
戦士となる前は相手を切り裂き切り捨てるキリキザンの二つ名でもある「斬滅」の語源になる技であったけれども−−いざ
生存競争で
戦士の力を授けられてみればその内容は大きく変わった。
元より所持していた技能や道具に神具としての適性が与えられるのは何も珍しい事ではないが。
触れたもののルーツを改竄して自らに所有権を移行させる。そして更にその道具に騎乗道具としての適性を帯びさせる事が可能となる。ウルガモスが見たところこの技のランクはA−−もしくはそれ以上。
最初の獲物は短刀だった。
それに触れて霊力を込めた途端に武器としての性能を「改竄」してしまったのだ。
だとすると恐らく武器を使う
戦士にとっては脅威となる能力であろうことは誰でも分かる。
ならば寧ろ武器を使う他の五大騎士クラスの面々は正面衝突を避けようとするだろう。
元より三大魔術クラスには絶対的な優位性を誇るドレイク達騎士クラスである。
それでいい
ならば当面の脅威は名も知れぬ
戦士−−ベルセルクであろうか。
他に強いてあげるなら相性の問題上じり貧に成りかねないアーマーも面倒かもしれない。
今回の
生存競争において一番早くに神具を晒してしまったドレイクだったが寧ろ良いように働いたかもしれない。
多くの
戦士はドレイクと戦うのを避けるだろう。
「その事についてあまり心配は要らんじゃろうよ………クカカカッ……!!それよりもヒトモシの言っていたメイガスの
戦士の方が儂にとっては気掛かりでのう……ゼロ卿がどういう手段かは知らぬが現世に甦って
生存競争の
戦士として参加しているとすれば……今回の
生存競争は大波乱になるであろうて」
時雨アバゴーラがのんびりとした口調で言う。
ゼロ・オーレライ・ヴィ・シンボラー
オーレライ
復活教会の開祖にして1000年前に活躍した強大な魔術師。
今の世に生きていれば願望器に認められるのは必然とも言えるであろう。
問題は何故、どうやって現世に舞い戻ったのかだ。
「それは適任者に意見を求めようか−−お二方。ご意見を」
アーケオスとウルガモスに意見を求める。
ウルガモスは500年以上生きていると噂されるが故に、
アーケオスは錬金術に精通しているが故に。
アーケオスが口を開く
「甦るともなると儂にも分からんよ。寧ろそっち系についてはウォーグルの奴に聞いた方が良いと思うぞ。儂の研究は「長寿」であって不死でも無いし転生についてでもないのでな」
十二騎士皇が一人「甦りのウォーグル」
時雨ウォーグル。
どのような技を使うのかは未だに謎に包まれているが
もしも死んでも甦ると言う能力であったならばそれはもう無敵の騎士であろう。
そこにウルガモスが口を挟む。
「確信と言えるほどの物は無いが−−もしやオーレライに伝わる魔導書を使ったのかも知れぬな。」
−−確か死者の魂を一時的に甦らせる呪本があると聞いた事がある。−−と
「そんなモノがあるのだとすれば儂の研究などちっぽけなモノだな」
ため息をつくアーケオスに
ウルガモスは言う。
「どうやら神秘の力を用いているらしいしそもそも呪本の発動には「死んでいる事」が条件なのだからお主のソレとは比べる事が間違っているじゃろうて。」
この老人−−ウルガモスにしては珍しく他人を励ます言葉だった。
もしかしたらウルガモスはアーケオスの長寿の秘宝を狙っているのかもしれない−−
そんな失礼な考えがキリキザンの脳裏をよぎったがそんなのは憶測に過ぎず、考えるだけ無駄な話だ。
すぐに意識を戻す。
「メイガスについては当面出方を窺うこととしましょう。
相手の戦法が分かり次代アーケオス翁に対処を要請します。」
「果たして神代の魔術師に勝ち目があるのかどうなのか……」
アーケオスがぼやくが
キリキザンは知っている。アーケオスの実力を。
時雨騎士領の中で実力者を上から四人出せと言われたら間違いなく此処に居る四人が選ばれるだろう。
「では鳥組と虫組の方々は早速魔術クラスと暗黒クラスの殲滅に向かって頂きたい。」
「承知した。」
「我等刀組と物組は騎士クラスの出方を窺い積極的な戦闘を行おう。」
四人が一斉に立ち上がる。
「儂らは先ずはキリキザンに脅威をもたらすベルセルクを狙おうか。」
アーケオス−−アルケーの言葉にキリキザン−−ドレイクは
「ならば我等は戦い難いアーマーの
戦士を倒しに参りましょう。」
四人の男達はそう言うと御殿を後にする。
時雨雨騎士領がついに動きだした
知るよしもないが
この瞬間
ドレイク−−時雨キリキザンと
アーマー−−時雨デスカーン
の対立は確定的な物となった。
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オーレライ
復活教会。
そこで遂に彼らは邂逅する事になる。
いや違う。紛らわしいがキリキザンとデスカーンの事ではなく。
寧ろ今まで何故同じ舞台にいて一度も鉢合わせしなかったのかと言うことなのだが
遂に時雨デスカーン−−アーマーと
ゼロ・オーレライ・ヴィ・シンボラー−−メイガス
の運命的な最悪の出会いである。
属性付与の儀式から8時間が経とうとしていた。
時雨デスカーンは自分の体に流れ込む膨大な霊力量に先ず儀式が終わると共に教会の木の床に倒れた。
目を覚ましてまず目についたのは
天井である。
布団が敷かれており仰向けになって寝ていたらしい。
恐らく儀式が終わって倒れた自分を介抱してくれたのはチェスター・オーレライ・ブルンゲルであろう。
感謝の気持ちと共に
戦士として
生存競争に参加する証したる属性−−アーマーの力を体に感じて気を引き締める。
−−成功−−したんだな−−
ヒトモシを救うために手に入れたチカラ−−
それは恐ろしいモノだったが彼は手に入れたチカラが
守るチカラであったことに安堵した。
必要の無い殺しをしないで済むのだから。
自分が相手にするのは時雨キリキザンただ一人ソイツを倒してヒトモシをあの残酷で血生臭い騎士領から助け出す。
それがデスカーンの悲願だ。
ヒトモシを救ったら後はブルンゲルの叶えたいと言う願いのために勝ち抜くだけだ。
ヒトモシさえ救えればそれで構わない。
大分体の調子が落ち着いてきたのでデスカーンは身を起こす。
ブルンゲルの姿は当然ながら見えない。
きっと礼拝堂にいるのだろう。
デスカーンはソレでも重たい体を引きずって礼拝堂に向かう。
「……いない?」
ブルンゲル−−と声をかけても返事が返ってこない。
デスカーンは仕方なく探索する。
礼拝堂の下の地下室−−いない。
そこで思い出す。確か離れに小さな物置小屋があった筈
そこにいるかもしれない。
物品整理をしたいとも言っていた。
朽ち果てたとまでは言わないがあまりにもちっぽけだった。
普通の民家一軒分程度の大きさしかない。
入ってみると−−小さな礼拝堂がある。
一階は全て礼拝堂のようだ。
よく見ると地下への階段がある。
入ってはいけない−−
と言うような内容の貼り紙があったが明らかに誰かが出入りしている痕跡がある。
ブルンゲルは恐らく地下にいるのだろう。
デスカーンは地下室への階段を降りていった。
果たして−−確かに人は居た。
ブルンゲルでは無かったが。
「すげえ!すげえよ!シンボラー!アンタやべえよ!
もっともっともっともっと俺を非日常的な世界に連れ込んでくれ!!!ヒャッホウ!!」
「現世にもこんなに素晴らしい信仰心をもった教徒が生まれていたとは……私−−ゼロ卿めは感服いたしましたぞ……ココロモリ。」
倒された棚や散乱した書籍の類い。
その散らかったと言う形容が相応しい地下室にて
二人の人物が話して居た。
とっさにデスカーンは気配を殺して隠れる。
騎士としての本能であった。
誰だ−−ドロボウか−−?
その線が一番近いと思ったデスカーンは相手を観察する。
ココロモリと呼ばれた男は現代風のファッションを着こなして何やらもう一人の人物に称賛を送っているようだった。
もう一人−−シンボラーと呼ばれ、ゼロ卿と自分を呼んだ男。ナスカの地上絵を思わせるその風貌に戸惑いはしたものの戦闘面において素人そうな二人を制圧するのは然程難しい事では無いだろう。
ブルンゲルの為だ−−悪く思うな
まあドロボウにかける言葉ではないが
時雨デスカーン−−アーマーは行動を開始した。
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砂漠の地下室−−ではなくて
その真上に位置する砂漠の上に
レイト・ゾロアとスキャナー、ブリストル・ゴルーグが立っていた
「一応僕は
支援員になった訳だからスキャナーである君のパラメーターが見えるんだけども」
ゾロアが言う。
「君が
生存競争に参加するに当たって願望器から授けられた神具−−その内容までは分からない。さしあたって情報を知っておく必要があると思うんだ。」
「成ル程。イザ戦ウトナッタ時ニ自分ノ手ノ内ヲ把握シテイナイノハ不利ニナル所カ問題外ダカラナ。」
巨人−−ゴルーグが続ける。
今三人は
生存競争に参戦するに当たり其々の情報を交換していたのだった。
「うーん……と言っても新しい武器とか能力が付け足された感じもしないんだよね。」
困ったようにスキャナーが言う。
そこにゾロアが
「普通は指定の時刻に
属性付与の儀式を行えばクラス特性−−ランクルスの場合はスキャナーの召喚術に適した神具が与えられることになる筈なんだけど……」
そこでゾロアは思い付いたように目を見開く。
「……もしかしたら
召喚術師と言うクラスの特性上の問題なんだけど既存の武器に特殊能力が付与されたのかもしれない………例えば先月の時雨の騎士の襲撃の際にキミが使った武器−−」
「
湖光の夢を奏でる曲戦斧とか?」
「そうそう。通常はあまり戦闘向きでは無いクラスだからねスキャナーって。パラメーター上では君は直接的な戦闘をする
戦士って言うよりかは「神具」を中心に戦う
戦士みたいだからね。」
レイト・ゾロアがスキャナーのパラメーターを
支援員特権で霊視したところバランスの良いパラメーターだが主に目を惹くのはその神具のパラメーターであった。
凡そ「Aランク。もしくはソレ以上。」
スキャナーのクラスに恥じること無いランクではある。
先程ゾロアが言った通り、クラス特性上−−召喚を主力とするスキャナーは通常であれば召喚の対象となる武器−−「神具」が頼みの綱となる。どうしたって依存することになって仕舞うだろう。なればこそ召喚により顕現できる神具の詳細な内容を把握するのは勝利を目指す限り重用と言えるだろう。
「ちょっと出してみれる?」
ゾロアが何気無く聞くがスキャナーは困惑する。
「召喚ってどうやるのさ?」
「この前に曲戦斧を出したときみたいにすれば良いよ。そもそも君は属性的にエスパーだから使いやすい筈なんだけどなぁ。」
ランクルスは頷くと右手を掲げる。
「……湖の精よ。僕にチカラを貸しておくれよ……
湖光の夢を奏でる曲戦斧!!」
瞬間。ランクルスの手には巨大で立派な大鎌が握られて居た。
それは普通では考えられないほどの霊力を帯びていたのだ。ゾロアは確信した。恐らくは既存の武器に神具としての能力が付与されたケースで間違いないだろう。
「間違いないね。これが神具だ。」
視認するだけでも戦斧の周りの空気が陽炎のように霊力で揺らめいているのが分かる。
強力な神具だ。使ってみないことにはどのような力が付与されたのかは分からないが、単純に相手を切り裂くと言うだけでは無くなっているだろう。
しかし
「慣れ親しんだ武器が主力に使えるってなると心強い物だね……ん?ゾロア?どしたのさ。」
ゾロアは不思議に思った。
果たして−−神具となったのはこれだけか?
失礼な事ではあったが−−如何せん
生存競争は単なる武器の強さ比べではないのだ。獲物を召喚して戦うだけなら「別にスキャナーで無くとも殆どのクラスで出来る事」である。仮にスキャナーと言うクラスが召喚を武器に戦うのではなく召喚した武器で戦うだけの
戦士だとしたら−−そんなのは−−そんなのは負け戦だ。
理由は幾つかある。
一つとして、五大騎士クラスの存在である。全員がクラス特典として「対霊力」のクラス別スキルを付与される。
これは三大魔術クラスであるスキャナーには不利に働く要素だ。勿論通常の物理的攻撃で戦闘に挑むと言うのならそんなものはお飾りだが
二つ目の理由はそこにある。前述した通りに「召喚した武器で戦う」だけならば他のクラスでも出来る事だ。これは別に特別な事が出来なければいけないといっているのではなくて「直接戦闘」を「白兵戦が得意な騎士クラス」と繰り広げなければならないと言う恐怖である。ランクルスは元がどうあれ魔術クラスのスキャナーとして
属性付与された以上はパラメーター的にも白兵戦に関する能力はどうしたって騎士クラスと比べると平凡だ。
普通なら白兵戦では劣る魔術クラスは持ち前の霊力と神具で対抗するのが定石であるが……
武器が大鎌だけとなるとそれらの対抗策も無意味だ。
寧ろ騎士クラスの劣化と言っても差し支えない。
別に「
湖光の夢を奏でる曲戦斧」を馬鹿にしている訳では無い。これ単体でも恐らく町一つ壊滅させるのに数分と掛からないだろうと思わせるほどには強力な神具だ。
だがしかし、武器として使うだけの神具がよりにもよって「スキャナー」の「神具」として顕現したのが不味かった。
絶望的な気分になるゾロアにランクルスは優しく語りかける。
「なあに心配するなって!他にも色々出来るみたいだよ?この召喚術ってのは難しい物みたいだね。僕が頑張れば他の神具だって出せるかもしれないよ?取り合えずは能力に慣れる事から始めたいけどね?」
「ああ………」
………ゾロアの心配など意の外で陽気に振る舞うスキャナーだった。
まあ正直な所、「ランクルスならなんとかなるかな」と思考を放棄して仕舞うくらいには彼は頭は柔らかかった。
が、次のランクルスの言葉でゾロアは瞠目する事となる。
「やっぱり慣れるには実戦が一番だよねー。じゃあ肩慣らしに
戦士を探しに行きますかー!」
「ちょっ……嘘だろ!?スキャナー待てって!」
「ランクルス!流石ニ考エ無シデ動クノハ不味イダロウ!!」
二人の叫びは砂漠に吸い込まれていった。
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「
黒銀霊布!!」
アーマーたる彼の唯一の武器は意せずして最初に
戦士を攻撃することになる。
アーマーの足元からは先端に銀色の刃物が縫い付けられた黒布が滲み出て泥棒と思われる二人組を捕獲しようとした。
しかし−−
何か−−壁のような物で止められてしまった。
「ッッッ!??」
果たしてそれは物では無く者だった。
いや「死者」を者として扱うのかどうか細かい所は死の名を冠する時雨デスカーンでも分からなかったが−−
「……ココロモリ……ここで御待ちなさい。どうやら我々の遊戯を邪魔する無粋な異教徒が覗き見していたようですね……」
ゼロ卿と名乗った男がアーマーにゆっくりと向き直る。
ナスカの地上絵を思わせる異装の男だった。目は円らで何処か歪な雰囲気を醸し出している。
そして男の眼前では本−−だろうか?
辞書位の厚みがあるそれが光を放って浮いていた。
「
死者無限復活読本−−召集−−奴隷3号。続けて信徒41号。………我々の信仰心に牙を穿つ愚かな異教徒を噛み殺しなさい!!」
途端「
黒銀霊布」をカラダで受け止めていたポケモンと床から滲み出すようにして現れたポケモンがアーマーに向けて口を大きく−−まるでB級ホラー映画のゾンビのように開けて噛みつこうとしてきた。
彼等には共通していることは「死者」であることだった。
それは誰の目に見ても明らかだった。
アーマーも
−−よくわからんが死んでるなら遠慮は要らないな−−
「
黒銀霊布!!」
アーマーがそう唱えると今度は意図も容易く二人のゾンビは貫かれ地面に崩れ落ち跡形もなく消え去った。
当然である。アーマーの所有する神具「
黒銀霊布」は元々は時雨騎士領に代々受け継がれる紛れもない「宝物」である。四つの組それぞれの指揮官となった者にのみ継承されるのだ。
つまり時雨騎士領十二騎士皇虫組指揮官たる
時雨デンチュラが剣流を襲撃する際に使用していた
「
避雷剣:疾風怒濤」も「宝物」である。
その所在は時雨アバゴーラが言う通りデンチュラが倒された以上は現在は不明なのだが。
一度は止められてしまった「
黒銀霊布」だが
それは正体不明の二人組を捕らえる為に放った物であり
殺す気は無かったからだ。
本気を出せばこんなゾンビ程度に受け止められる物では無い。
だが敵意を向けて攻撃してくるならば致し方あるまい
腕の一本や2本覚悟してもらうぞ−−
時雨デスカーンが相手を強引に捕らえる事を決意した時。
「すげぇ!マジにすげぇ!なになに?アンタもあれなの?シンボラさんみたいに光線出したり催眠かけたりとか出来る系の人なの?!今の影みたいなのも一回見してよ!」
もう一人の男−−ココロモリと言ったか?
何事か場違いな事を叫んでいる。
デスカーンは分からなくなった。
なんなんだ?コイツらは。
戦闘においては少なくともココロモリとか言う奴の方は素人。だが敵意のあるポケモンが戦闘中にこんなキラキラした目で敵を見るものなのか……?
寧ろ今の一件で異装の男の方がかなりの実力を持っていることが分かった。
この膨大な霊力量……並みのポケモンではない。
もしや−−と思い「羅針盤」を取り出すデスカーン
−−「羅針盤」
長年
生存競争に参加する時雨の一族が編み出した霊具で霊力を込めると相手がどのクラスの
戦士なのかを見定める事が出来る。
現に霊力の光はアーマーの文字をデスカーンに写している
そして異装の男にも光が向かった。
「メイガス」の文字であった。
そこでデスカーンは行動に出た。
再び行動に出た。
それは
「
黒銀霊布!!」
完全な殺意を込めた攻撃だった。
相手が
戦士だと分かれば容赦はしない。
ヒトモシを救うため
ブルンゲルの願いを叶えるため
デスカーンは−−アーマーはここで殺られるわけには行かなかった。
殺られる前に殺ってやる
相手にも敵意があるのだからそれは当然の考えでもあった。
だがそれは相手も同じである。
彼等は
生存競争の何たるかも知らないが、
知らないが故に身を守る為に攻撃しようとした。
が、
ここでの戦闘はこれ以上は続かなかった。
なぜなら
「お待ちください!ゼロ卿殿!!デスカーンも矛を納めてくれ!!頼む!!」
デスカーンの背後から新たな人物が登場したからだ。
チェスター・オーレライ・ブルンゲル
アーマーたるデスカーンの
支援員にして
ゼロ卿−−メイガスと同じく「オーレライ」の名を持つ
現オーレライ
復活教会教祖は
殺し合う二人の
戦士に戦闘を中断するよう呼び掛けた。
__________________________
この地域は本州である広大な大陸と
その周辺に位置する小島の群れからなっている。
例えば、ダークレスウェルの邸宅である「アルガスタ邸」や時雨騎士領の里があるのは本州の中心部の辺り。
例えばランクルス達が住まいにしている砂漠なんかは本州の外れに位置する。
そして剣流が生活する島は本州から海を渡った先にあり中々不便な場所にある。
そんな剣流の住まう島と本州に挟まれた海の上−−
そこを進む小舟の上に三人の人影があった。
一人は顔に傷を負っている眼光の鋭い二本の槍を携えた男。
知る人ぞ知る[剣聖]剣ドリュウズその人である。
彼は胡座をかくように船の中央に座っている。
「ミジュマル………調子はどうだ?」
そうドリュウズが問いかけた相手は船を漕いでいたがドリュウズの問いに対して
「多分………あんまり自信が無いんだけれども………」
とうつむきながら続ける。
彼−−剣ミジュマルは半日程前の
属性付与の儀式によって
五大騎士クラスの一角たる剣の
戦士「フェンサー」に選ばれたのだった。
剣ドリュウズの目から見ても[フェンサー]となった剣ミジュマルの能力はかなり高水準にあると言って良い。
少なくともそこいらの有象無象に負けることはまず無いと言っても良い。
「……フェンサーとは剣士のコトを指すのだが」
ドリュウズが言う。
「今のお前は……立派な剣士だな。私との修行の時とはまるで別人だ。」
「……ありがとう……でもきっとそれは……」
「願望……とまでは行かずとも目的を……目標を見つけられた……からなのかな」
「うん」
ソレは剣ミジュマルの剣に唯一足りなかった要素。
目指すものがあればそれに向かって走れるのだ。
ミジュマルの場合それは
「お前の目標とは……」
「………守りたい……物が出来たんだ。」
真面目な表情のミジュマルの顔に赤みが刺したのは気のせいだろうか
「僕はあの騎士−−時雨デンチュラにドリュウズやツタージャが襲われた時に凄く凄く嫌だった。二人が怪我したり死んだりしたら凄く嫌だ。そう思った。」
「ミジュマル……」
横でミジュマルの話を聴いていた少年……フォン・ツタージャが言う。
「でも僕は君を守るのが役目。最終的には君が生き残れれば良いんだ。だから−−仮に僕が敵に襲われたり捕まったりしても迷わず戦って。」
「戦うさ。君たち……大切な人を守るためにさ。だから最悪の事態はあれで終わり!もうこれ以上嫌な思いはしたくない、仲間が傷付くのは見たくないし嫌なんだよ!!」
ミジュマルが叫ぶ。
「ミジュマル……よく聴いて。僕が敵の手に落ちても……相手が僕を盾にしたなんて事があっても……そんなことがあったら君は僕ごと敵を斬らなければならない。」
「そんなことにはならないしさせないよ。」
「うん、だから仮定の話ね。そしたらそうして。だけど僕はそうならないって信じてる、ミジュマルの力を信じてるから。
僕だってミジュマルやドリュウズが怪我したらヤだしね?」
ツタージャはニッコリと笑って軽く言う。
「君の気持ちは分かるけども君は剣の当主だからこの中で一番大事なのは君の命。僕らだってそこそこの武芸の嗜みはあるんだよ?そんな簡単に敵にやられたりしないさ。」
実際にデンチュラに襲われた時もそれなりに勝ち目があったから落ち着いてられたしね。
とツタージャ
そこでドリュウズ
「まぁ…あれだ。守る物がある奴は強いんだよ、思いの分だけな。だからミジュマル、今、ここで剣ミジュマルは消える。ここから残る
戦士すべてを殺して
生存競争が終結するまでお前は[フェンサー]だ。」
「……それってどういう……」
不審そうに首をかしげるミジュマルに対してドリュウズは
「覚悟を持て。希望を持て。剣ミジュマルとしての優しさは身内に向けるんだ。敵に情けをかける必要は無い。お前は如何せん優しすぎるのが欠点だ。長所でもあるがな……
良いか?敵に情けをかけた瞬間にお前の首が跳んでると思えよ。お前は願いとか無いから実感わかないかもしれんが連中−−
戦士共は悲願達成の為なら不意打ち位平気でやる。」
−−だから−−
「お前はお前の為に闘え。その中で願い事なんて見つけりゃ良いさ。剣を振るって仲間を守るのが目的ならそれで良い。」
ドリュウズは言い切ると揺られる船の床に目線を落とした。
もうこれ以上は何も言うことは無いお前に任せる。
そういう意味のやりとりだった。
僕はこれから何に巻き込まれるんだろうか。
どんな敵が待ち受けているんだろうか。
期待ともしれない不思議な−−しかし不思議と心地好いそんな思いを胸にしたミジュマル−−否、フェンサーの目には本州の陸地が見えてきていた。
__________________________
本州−−フェンサー達が着いた場所は港のようだった。
多くのポケモン達が漁業に勤しんでいる。
小舟に乗って港に降り立った三人を不思議そうに見つめる者もいれば気さくに笑かけてくる者もいた。
「……油断はするなよ。もしかしたらあの中に敵が潜んでいる可能性だって−−なきにしもあらず、だ。」
「……いやぁ流石に無いでしょう?」
暫く歩くと旅館のような物が見えてきた。
ツタージャが
「そろそろ昼も終わろうとしていますが……今夜の予定は如何致しますか?」
訪ねられたミジュマルは
「……うーん、じゃあ見たかんじあれ旅館っぽいし彼処に泊まろうか?」
「すっかり旅行気分だな……お前。」
「本州とか久し振りすぎますからね。仕方ありませんね。」
−−と、そんな他愛も無い会話を繰り広げていた時。
「……ドリュウズ」
「あぁ…………彼処……あの建物を曲がった所だな。」
「嘗められたものですね。殺気を隠そうともせずに近づいて………いや、遠ざかっている?」
不審な表情をするツタージャ
「……あれは……誘っている……のかもしれんな」
だとすると敵は騎士クラスの何れかの可能性が高い。
フェンサーも同じ結論に至ったのだろう。
緊張を顕にしている。
「……追いますか?」
ツタージャの問いにフェンサーは
「うん。行こう。向こうの誘いに乗るのは危険だけれども行ってみないことには正体も分からないしね。」
無論フェンサーとて忘れた訳ではない。
仮にドレイクの
戦士が気配の主ならば激戦となるのは必定。フェンサーが仮に勝利したとしても消耗はしているだろう、そこを他の
戦士に狙われよう物なら………
ああだこうだと言っていても始まらない……か
ドリュウズは心の中で決着を着けるとフェンサーとツタージャと共に気配を追い始めた。
そこで
「フェンサー、ツタージャ、これからの戦法について話がある。歩きながら聞け。」
ドリュウズは今思い付いた策略を伝えるのであった。
__________________________
時を同じくして−−と言うか同じ場所
斯くしてそこに
戦士はいた。
道行く漁師のポケモン達に挨拶されながら。
「……アレハ……
戦士カ?ゾロア。」
そう訪ねるのは大きな男だった。
対して小柄な−−しかし身なりはそれなりに高貴な服装をした少年が問いに答える。
「うん。間違いないね−−何のクラスかは知らないがスキャナーと比べたら大した事は無い。後ろから不意打ちでもすれば殺れる。」
二人がそうして敵の力を分析しているそのすぐ後ろで
戦士−−スキャナーは
「おぅ!にいちゃんええ鎌持っとんの!そんな立派な得物があったらなぁ漁も楽になるさかい!」
「いやいやぁ皆さんの使ってる釣竿の方が漁業には向いてるでしょー!得手不得手ってのがあるからね!言うなれば漁師の人の釣竿は釣る為の武器だからね!」
「にいちゃんええ事言うじゃねえかい!おまけだ!持ってけぃ!」
「わーい!美味しそう!」
「獲れたてだよ!ほうれあっちにいる友達の分もあるから仲良く分けな!」
「ありがとー!」
「………………………………………」
後方で繰り広げていた素晴らしく微笑ましい会話が聴きたくなくてもゾロアとゴルーグの耳には入ってきてしまうのだった。
そんな彼らの苦労も心労も知らずにスキャナーは
「おーい!ゾロアー!ゴルーグ!お魚貰っちゃったよー!」
なんともお気楽なものである。
誰とでも友好的な関係になれるのは才能なのだろうが……
にしたって酷いでしょこれ
「あぁっ!もうっ!スキャナー!お前ちょっとは真面目に−−−ッッッ!?!?モゴッ??モゴーーー!!!!」
「あはは美味しいよね」
「スキャナーーーーー!!!!!」
丸ごと生魚を口に突っ込まれたのだ
それは誰だって怒ります。
「オイ、ランクルス。アレヲ見ロ。」
「ん?あぁー………」
ゴルーグの指差した方を見た瞬間に納得したようにポンと手を打つスキャナー。
「で?ゾロアはどっちを倒せって言ってるの?」
「うぇ?」
まだ生魚のショックから立ち直れて居ないのかゾロアは涙目でスキャナーの方を向くとよくわからない声を出した。
「どっちってあの水色の方しか無いでしょ?貝殻ぶら下げている奴。」
不思議そうなゾロア
「いやいやぁ、バリバリ殺気をたてて誘き寄せようとしている闘争心剥き出しの荒くれものがいるじゃあない?」
「ドウヤラ我々ノターゲットモ誘イニ乗ルヨウダゾ。」
「もう一人
戦士がこの場にいる?」
「うん。おりますね」
ゾロアは少し考えると
支援員としてスキャナーに指示を出す。
「分かった。そしたら当初のターゲットが正体不明の
戦士と接触して交戦するのを観察しよう。まずはどんな事をしてくる相手なのか見極めないとな。」
「オッケーだよ!パートナー!」
彼らは知らないがフェンサー達の後をつけるようにしてスキャナー達も戦場に近づこうとしていた。
__________________________
港からさらに離れた広い公園−−
果たしてその真ん中に目当ての者はいた。
二人−−
まず目に入るのがその二本の長槍だ。
持っている者と同じ位の全長があるのではないか?
すらりとした長身に帯を腰に巻いた好青年と言うような出で立ち。
そしてそんな彼の後ろにはもう一人、がっしりとした体型だが徒手空拳の男。しかし二人とも顔立ちも服装も似ている。
好青年の方が槍を持ったままフェンサーに語りかける。
「フフ……そうか、私からの誘いを受けて挑戦しに来たのは貴様が初めてだよ……中々度胸のあるヤツ……」
続いてフェンサーも口を開く。
「……その立派な得物……ポーカーとお見受けするが?これいかに?」
口調こそ真剣だがフェンサーは心の内ではポーカーで良かったと思っていた。少なくとも紛らわしい仕掛けを使うことは無さそうな相手だ。
「如何にも。そう言う貴様は……フェンサーだな?」
「そうだよ……やはり君も相当な実力の持ち主なんだね」
そう言うとフェンサーは貝殻を構える。
それに対しポーカーも二本の槍を構えた。
二槍使いか−−これは運が良い。
と言うのも師である剣ドリュウズが二槍使いであるので戦い方は熟知している。少なからず自分が優勢になる−−そんな予感がするのだ。
「では−−存分に仕合おうか……剣使い!」
「挑むところだよ!」
二人の
戦士は互いに最初の敵を相手にして沸き上がる闘志を胸に一合目を繰り出した。