第七十四話 突然の来客と救済者
「だっははははははははは!!!!いいぞ!!いいぞ〜っ!!」
スパークは屋敷に運ばれてから数時間後、あろうことか酒を飲んで大暴走しているスパークとサザンドラ。顔を真っ赤にして叫んでいる彼らをしり目にまたしても扉が開いた。
「よっしゃ〜っ!!次は……
-------っ!!?」
その姿を確認したスパークは先ほどの陽気な表情から一変、驚きを見せた表情へと一変する。同じく酒を飲んでいたサザンドラも突然の訪問者に驚きを隠せなかった。
「失礼するぞ」
扉を開けた張本人はキモリとラグラージだった。ラグラージの方は白衣を着ていることから、彼には目の前にいるポケモンがいることに驚いていた。
「あ、あなたは……」
「お前はチームリーファイのスパークだな?」
酒が入ってるせいか初対面ながらお前よばわりするキモリの圧的な態度にスパークは少しイラついていた。だが、苛立ちを感じる前に目の前のキモリの威圧感に押されていることに気付いた。
「オレはブラザーズリーダーのキモリのグラスだ。そこのサザンドラよ」
「は……はいぃ!!」
キモリと名乗ったグラスがそう言うとサザンドラは焦った様子で返事をした。彼の返事がテンぱっており声が裏返っていた(尤も文章では分からないのはご容赦願いたい)
「少しあのピカチュウに話がある。お前は席をはずしてくれ」
「わっかりやしたああああああああああああぁぁっ!!」
サザンドラはそう叫びながら部屋からもうダッシュで去っていった。やはり酒が入ってるせいか、自制があまりきいていない。
「そ、それで、何のようですか?」
見た目はキモリでも目の前にいるのは最強の救助隊。それゆえにスパークも謙虚な態度をとっていた。グラスはよっこらしょと言いながら床に腰を下ろす。
「お前のメンバー達が未来世界に拉致されたのは知っているよな?」
「はい。しかし、なぜそれをご存じで?」
スパークは自分しか知りえない事実をしっていることに少々驚きを隠せなかった。
「我々の情報網を舐めるな。それぐらいのこと知ることなんぞ造作もない」
グラスは吐き捨てるようにそう言い放った。腕組みをしているグラスの態度がでかいと感じているのはスパークだけではないだろう。
「それで、ここからが本題だが、あいつ等が連れ去られた先が分かるのか?」
「いえ……、妙なブラックホールのようなものに拉致されたことしか……」
「簡単に言うと、あいつ等が連れ去られた先は”未来世界”だ」
グラスは未来世界という言葉を強調しながらそう告げた。
「なっ……一体どういうことですか!?未来世界って……」
「言ったとおりの意味だ。未来は未来だ。それ以外に言う事などない」
まるで他人事のように冷淡な口調で話す。その冷たい態度に流石にスパークも苛立ちを覚える。
「そんなに吐き捨てるように言わなくてもいいんじゃないですか!!」
とうとう我慢の限界に達したのかとうとうスパークはグラスの胸倉を掴みかかる。
「焦るな。あいつ等は時期に助かる」
「えっ?」
”助かる”その言葉を聞きスパークは驚きのあまり掴んでいた手をパッと放す。そんなことは気にせずにグラスは続ける。
「既にオレの部下が奴らを追って未来世界に向かった。既に合流してることだろう」
「でも、その部下とやらがやられたら……」
「大丈夫だ。問題ない」
『……』
さらりととある名言を放ったグラス。しかしスパーク達は思わず硬直する。
数秒後
「オレの部下はそこまでやわじゃない。あいつらなら下手な伝説のポケモンなら、軽くひとひねりできる」
「で、伝説のポケモンが……」
伝説のポケモンを簡単に倒せる。その意味を込めたグラスの言葉にスパークは唖然となる。だが、グラスの真剣な表情からそれが嘘ではないことは読みとれる。
「なっ……、こんなことがあるなんて!!」
ヨノワールは目の前の光景に愕然となっていた。無理もない、自分の部下達であるヤミラミ。そして彼が絶対の自信のもとになっている主(ディアルガ)までもがたかがヘラクロスとスピアーだけに簡単に下されたからだ。
「伝説のポケモンだといっても、闇に操られていてはただの哀れな人形にすぎないね」
ハチマキを巻いたヘラクロス、クロスは少し憂いを込めた声で呟いた。彼の頭には”こだわり鉢巻き”と呼ばれるアイテムが装着されてた。
「さっすが先輩!!ディアルガを一発でのすなんてマジぱねぇっす!!」
彼の後輩のスピアーはクロスを褒める。そんな二人をよそに……
「(どういうことなの……)」
「(僕たちの出番が……)」
「(えっ……?)」
「(…………)」
リーファイメンバーもただただ目の前の光景に茫然としていた。擬音で表すとすればポカーンという音が流れているであろう。
「ぐぬ〜っ!!!ワシの特訓の成果が〜っつ!」
「クロー様、落ち着いて……」
「(めっちゃキレとるで……)」
出番が削がれて地団太をふむクローとそれをなだめる部下二人であった。
「そうだ!!こうしちゃおれん!!」
はっと何かに気付いた様子でジュプトルは走り出す。彼が向かった先は……
「セレビィ!!大丈夫か!?」
「うぅっ……。ジュプトルさん……」
気づついて倒れていたセレビィのもとに走っていった。
「大丈夫か?セレビィ、きついかもしれないが時の回廊を開くことはできるか?」
「や、やってみるわ……」
「すまないが、頼むぞ。もたもたしてると奴らが起き上ってくるかもしれん」
ジュプトルに言われてセレビィは痛む体を起こす。
「ねぇ、ジュプトル。時の回廊って何?」
「あぁ、お前達には説明してなかったな。平たく言えば時の回廊はあそこにいるセレビィのみが開けることができる特殊なものだ。時の回廊を伝えば……」
「伝えば……?」
ジュプトルの言葉を復唱するリーフ。その顔は希望を灯している表情だった。
「元の世界に帰れる」
「本当に!?」
「あぁ、同じ時の力を持つディアルガに阻まれることがあるがな。だが、あいつが倒れた今がチャンスだ。」
ジュプトルの言葉を聞いて、リーフは感じていた希望が確信に変わった。
「じゃあ、早くした方が……」
「焦るな。オレ達があたふたしてもしかたないだろう」
珍しく興奮するリーフをジュプトルが押さえる。
「くそっ!!あんな奴がいるなんて聞いてないぞ!!だが、こんなところで奴らの行動を許すわけにはいかん!」
一方、味方が全滅して形成が逆転されたヨノワールは焦りを感じずにはいられなかった。だがそれでも彼は使命感からか戦意を失わずにシャドーパンチの構えをとる。
シュシュッ!!
突如として彼の真後ろから風を切るような音、そして……
グサッ!!
「ぐおっ!!」
何かが刺さった音がした瞬間、ヨノワールは悲鳴をあげながら崩れ落ちた。彼の腹には複数の細長い針が刺さっていた。
「おっと、下手に動くと今度は首が飛ぶぜ……」
「…………」
腹を押さえてうずくまるヨノワールを見下ろし、手の針を首つきつけるニードル。さながら人質をとっている強盗のようである。
「さて、後は時の回廊を開くだけだな……」
ヨノワールを警戒しつつ時の回廊が開くことを待つニードル。だが、それも直に終わることになった。
「よしっ!できた……」
セレビィがそう呟くと、青緑の光を帯びた巨大な扉が出現した。時の回廊である。
「これが時の回廊か〜」
「すごく・・・大きいです・・・」
「んなこと言ってる場合じゃねぇだろファイア」
何か聞き覚えのあるような台詞を呟くファイアにウォーターが突っ込む。
「すまないな。しばらくはあいつらも起き上ってこないから直にここから離れてくれ」
「ジュプトルさん。わたしがそう簡単に捕まると思ってるの?」
ジュプトルの心配そうな言葉使いとは裏腹にセレビィは余裕と言わんばかり、だが体中の傷がそれがただの強がりということを示していた。
「あぁ、そうだな。行くぞお前達。”元の世界”にな」
ジュプトルの言葉にリーファイのメンバーは頷き時の回廊を伝っていった。ジュプトルもリーフ達やクロス達が入っていったことを確認して入っていった。これで全員が脱出できた……
ある三体のポケモンを除いては……
少し時間をさかのぼろう。
「うがーーーーーーーーーーーーーっ!!何でワシらはいつもこんな扱いなのだーーーーーーーっ!!」
「クロー様落ち着いてください!!あのヨノワールをクロー様が倒せればきっとクロー様も注目されます!!」
荒ぶるクローを必死になだめるシード。彼の”注目される”という単語にクローは反応する。
「それは本当か!?」
「当たり前じゃないですか!!そうだ!!さっき拾った種なんですけど……」
そう言ってシノは一つの種、猛撃の種を手渡した。攻撃力を大幅に強化する道具の一種だ。
「これで、あんなヨノ公なんぞクロー様のお力があれば一撃ですよ!!」
「そうか!そうか!!これでワシの時代が来たわけだな!!ガハハハハハハハ!!」
先ほどの悔しそうな表情とは一変、クローは高笑いをあげる。
「よし!こうしちゃおれん!!早速種を飲んで、奴を倒すぞ!!」
クローは猛撃の種を口にした。バリバリと豪快な音を立てて食べているとことがワニノコらしいといったところか。
「よし!!覚悟しろヨノワールよ!!」
意気揚々とヨノワールに挑むクロー。
「お待ちくださいクロー様!!」
「なんだ!!これからいいところなのに!!」
しかし、いきなり部下のシノがクローを止めた。自分が止められたことにクローはシノに当たり散らす。
「リーフやあのヘラクロス達がなんか妙な扉に入っていってます!!」
「なんだと!?」
シノの台詞は言いかえれば元の世界に戻ろうとしている。こればかりはクローも戦闘体制を解かざるを得なかった。
「ふぅ……、これで全員通ったわね」
クロー達が自分に接近していることも知らずにセレビィは時の回廊の扉を閉じようとしていた。
『待ってくれえええええええええええええええええええええええぇぇぇっ!!!』
クロー達は必死の形相で時の回廊が閉じられるのを防ごうとした。しかし時すでに遅し、
ガコン!!
扉が閉まる音と共に、先ほどまで輝いていた青緑の光も完全に勢いを失っていた。そう、無情にも時の回廊は閉じられてしまったのだ。
『うわああああああああああああああああああああああぁぁぁっ!!!』
間に合わず絶叫する三人。そんなクロー達をセレビィはまるで怪しい人物を見ているような目で見ている。
「おい!!お前!!何でワシ等がいるのにあの扉を閉じたのだ!!」
クローは怒りのあまり、時の回廊をしめたセレビィに当たり散らす。
「そ、それよりもとにかくもう一度開けてくれ!!オレ達も過去の世界に戻りてぇんだ!!」
「頼むわ!!」
部下の2人も必死に懇願する。だがセレビィの口から出たこたえは無情にも彼らの願いを打ち砕く結果になった。
「それは無理よ。時の回廊は月一でしか開けられないから」
「な……」
「な……」
『なんだってええええええええええええええええええええええぇぇぇぇっ!!!!!』
クロー達の絶叫がこだまする。
「何でそんなに頻度が少ないんだ!!月一って部活の休みの日数じゃないんだぞ!!?」
「そんなことわかってるわよ!ただ頻繁にタイムスリップすると、時間バランスが崩れちゃうからそう簡単にホイホイできるものじゃないの!!」
セレビィの口からでた彼らにとってはあまりにも非常な言葉にクロー達はわなわなとふるえる。そして……
『ふざけんなあああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!』
またしても不幸な三人組の大声がこだましたのであったとさ♪