第七十一話 来て欲しくない奴らと来て欲しい奴ら
ウォーターが気絶する事態はおこったが、まぁそれはさておき、ジュプトルと共に行動することになったリーフ達は追ってのヤミラミを巻くために、暗闇の洞窟と呼ばれる洞窟に避難していたのだ。
「それにしても……、大丈夫かそのゼニガメ?」
ジュプトルはのびているゼニガメ、ウォーターを心配していた。ちなみに気絶しているウォーターはリーフの背中にのせられてる。
「う〜ん、少しやりすぎましたかね」
「大丈夫ですよ。兄さんは生命力だけは無駄にありますからね♪それよりもジュプトル。ここはどこなんです?」
のびているウォーターを気にかけるルッグに対して、ファイアはだけを強調してそう言い放った。日ごろの恨みと言わんばかりにバッサリと切り捨て、ジュプトルに問いかける。
「あぁ、ここは未来世界だ」
「未来世界?」
「簡単に説明すると、この世界は時間が止まっている。だからここは常に暗い状態なんだ」
ジュプトルは淡々と説明するが、その内容はにわかには信じられないものであった。リーフ達の顔が徐徐にこわばっていくことがその様子がうかがえる。
「おっと、これ以上グダグダ喋ってる場合じゃないぞ」
ジュプトルが目の前を指差すとそこには黄色と黒の縞模様が特徴的なポケモンエレキブルとはにわのような目がたくさんあるポケモン、ネンドールだった。念のため言っておくがこのネンドールはジェットの組織のあいつとは別個体である。
「やれやれ、どうやらお客さんのお出ましね」
リーフは敵が出てきた二も関わらず余裕の表情を見せ、鋼鉄の葉(メタルブレード)を両方の蔓に持ち、くるくると回している。
「グガガガガガガガガガガガガッ!!!」
エレキブルが右手に冷気を込た氷タイプの技、冷凍パンチでリーフに奇声を発しながら殴りかってきた。
「それっ!」
リーフは葉をエレキブルに向けて投げ飛ばした。真っ向から向かってきたからか、エレキブルは簡単に葉に直撃してしまう。
「グガガッ!」
「電光石火!!」
葉を食らって怯んでいるエレキブルにジュプトルが追撃の電光石化でエレキブルに体当たりをしかけた。
「グガガアアアアアアアアアアアアアアァァァッ!!!」
電光石化をまともに受けたエレキブルはバランスを崩してよろけてしまい、そのまま崖から転落した。
「よし!!」
「ジュプトル後ろ!!」
リーフがジュプトルの背後から攻撃をしかけようとしていた、ネンドールに気付きジュプトルに注意した。
「何っ!!」
だが、気づくのが少し遅れたか、ネンドールが発していた破壊光線に思わず足が動かなくなってしまう。そこに、
「うわあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁっ!!!!」
上空から叫び声が聞こえてきた、全員がその方向に視線を向けると何かが上から降ってきていることに気付いた。そして
ドガアアアアアアアアアアァァァァッ!!!
凄まじい勢いでネンドールの上に何かが落下した。落下の衝撃で辺り一面に砂埃が立ち込める。
「ゲホゲホッ!!一体なんなんだ!!」
煙が晴れ、せき込みながらファイアは落ちてきた正体を確認しようと目を開く。
「うぬぬぬぬぬ!!一体ここはどこなのだ!!」
「ったく、あのクソボケ作者のくそったれめ!!おれ達に何の恨みがあってあんな真似しやがるんだ!!」
「全く偉い目におうたで!!」
声が三人分聞こえたということは、三人が落ちてきたということだろう。煙が晴れるとそこには彼ら(ジュプトル以外)が知るポケモン達の姿があった。
「ク、クローさん!?」
「お、お前達は!!」
リーフとクローと呼ばれたポケモン、ワニノコが互いに指(?)差してお互いの姿を確認した。クローの周りには彼の手下であるフシギダネのシード、ナエトルのシノの姿もあった。
「何でお前達がここにいるのだ!!」
「そりゃこっちの台詞ですよ。なんで未来世界にあなたたちが?」
『み、未来世界だと!?』
リーフがさらっと言った一言に三人は思わず絶叫してしまう。
「ど、どういうことだ!!何でワシ達が未来にいるのだ!!」
クローは完全に動揺してリーフの胸倉に掴みかかる。
「そ、そんなこと言われても……」
「と、とにかく落ち着いてください。今まであんた達にはなにがあったのですか」
そんなクローをなだめるようにルッグが仲裁に入った。
「あぁ、すまない……。実はな……」
クローはその場に座り込みこれまでにあったいきさつを話し始めた。
「短く言うとワシらはな作者の企みで、別世界に飛ばされて、それでまた戻される時に作者(あいつ)の大砲でブッ飛ばされた。そしたらこんなとこに飛ばされた訳だ」
「短っ!!」
クローの説明の短さに、思わずファイアは素っ頓狂な声をあげた。
「なんかざっくりしてるなぁ」
「しかも作者が出てくるって……」
無論、この面子でノコタロウとあっているのはクロー達だけだ。
「そう言うお前達は何でここにいるのだ?」
クローは同じような質問をした。
「それはですね……」
同じようにルッグは、自分達がヨノワール達に拉致され、投獄された後、脱出に成功して今に至るということを説明した。
「と、言うわけです」
「うぬぬぬぬぬ……。まさか本当に未来世界に飛ばされるとは微塵も思ってなかったぞ」
「あのくそったれカタツムリ作者め!!今度あいつの秘密全部暴露してやろうか!!」
「それにしてもどえらいとこに飛ばされてしもたな」
三人共未来世界に飛ばされて、気持ちが不安定になっていた。←お前のせいだろ!!
「こうなったら、仕方ない!!この世界から脱出するまでワシはお前達についていくぞ!!」
「えぇっ!!そんな勝手に……」
「たとえいやだと言ってもワシ達は勝手についていくからな!!(キッパリ」
「トホホホホ……」
(無理やり)クロー達他2人が仲間になった!!
「ゲームかよ!!」
「しかも略すな!!」
「まぁ、そんなことはいいではないか!!そうだ!礼として、この特殊変装コスチュームを……」
そう言ってクローは懐から、怪しげな衣装を大量に出してきた。
「あぁ、いらない。バカらしいから」
「ガーン!!」
バッサリとバカらしいと切り捨てられ、クローの頭の中で”バカらしい”が何度もエコーしていた。
「いや、これは案外使えるかも知れないぞ。ヤミラミ達の目を欺くには十分使えるかもな」
「えぇっ!!?」
だが以外にもジュプトルには好評。衣装を手にとってじっくり眺めている。一理あるかもしれないが……
「おぉ!!分かる奴がいるではないか!!さぁさぁ、お前達もきてくれ!!」
「やれやれ……」
リーファイメンバーはかなりいやいやきるはめになってしまった。そこに……
「痛っ、……痛ってぇなぁ、ん?お前ら……?」
先ほどまで気絶していたウォーターが目を覚ました。そして衣装に身を包んだリーフ達を凝視した。そして
「プッ……
ギャハハハハハハハハハハハ!!なんだお前ら!!だっせぇ格好しやがって!!バカじゃねぇのか!!ギャハハハハハハハハハハハ!!」
よほどおかしかったのかウォーターはその姿を見て大爆笑。すると三人のポケモンの表情が一変する。
「……」
「(人の気も知らないで!!)」
「殺す……。いや、マジで」
リーフ達三人は最早殺気を込めたまなざしでウォーターを睨みつけていた(ルッグに至っては指を鳴らして戦闘モードに入っている)。殺気を感じたウォーターは汗だくになりながら後ずさる。
「もうよせ。こんなところで喧嘩してる場合じゃないだろう。行くぞ」
見るに見かねたのかジュプトルが四人に割って入って、喧嘩(?)を止める。人知れずウォーターはほっと胸をなでおろしていた。
「ウイイイイイイイイイイィィィィィッ!!!!」
『っ!!?』
どこからか聞き覚えのある奇声が聞こえてきた。一行が声の正体に振り向くとそこには、ヤミラミ達の姿があった。
「おい!!そこの見るからにダサいかっこうしたお前達!!ここにこの写真の奴らを見かけなかったか!!?」
そう言ってヤミラミ達の一人がポスターを見せた。そこにはまぎれもなくジュプトルやりーフ達の姿が、
「いや〜、ワシ等はそんな奴ら知らんぞ」
とっさに機転を利かせたクローは彼らの正体をばれないように出まかせを言い放った。
「そうか、じゃあ違うところを探すぞ!!」
「ウイイイイイイイイイイィィィィッ!!」
まさか目の前に自分達が探しているポケモン達がいるとは思ってもいなかっただろう。奇声を発したヤミラミ達はその場を去っていった。
「(まさかここまで上手くいくとは……
思った以上に役立つなこの衣装……)」
一応は変装に肯定したジュプトルだが、まさかここまで上手くいくとは思ってなかったジュプトルは思わずクロー達に関心していた。
「葉っぱカッター!!」
「火炎放射!!」
ヤミラミ達を巻いた(?)リーフ達一行は別のダンジョンに入って、敵ポケモンと戦っていた。先ほどもメタングとゴローンとの戦闘を終えたところだ。
「なかなかやるな」
「流石ワシのライバルだな!!」
戦闘のほとんどがリーフとファイアによってこなされていた。ジュプトルとクローはそんな二人に感心していた。
「ふぅ〜。終わった〜」
「疲れましたね」
流石に疲れがきたのか二人共その場に座り込む。
「大丈夫ですか?どうぞ。オレンの実です」
座り込むリーフ達にルッグがカバンからオレンの実を二つとりだして手渡した。
「ありがとうルッグさん」
「いいえ♪」
先ほどまでウォーターに見せていた表情が一転、いつもの温厚な表情の彼に戻っていた。
「おい!!お前ら!!遅れてんぞ!!」
一歩先に既にウォーターの姿があった。先に進んでいた彼は今か今かの他のメンバーをせかしている。
「ちっ……」
軽く舌打ちをしたルッグはまたしても険しい表情を浮かべる。
「おい、そこのゼニガメ。さっきからお前の仲間のチコリータとヒノアラシがずっと戦っているのだから疲れるのも無理はないだろう」
また争いがおこることを危惧したジュプトルはウォーターを諌める。
「あぁ!?んなもん奴らがだらしねぇだけd……
ガフッ!!」
だらしねぇだけだろと言いかけたが言わなかった、否言えなかったのだ。彼の顔面に蹴りが入っていたのだ。
「黙れ。殺すぞ」
「(怖っ!!)」
堪忍袋の緒が切れた、先ほどの表情が嘘のような鬼面でウォーターの胸倉をつかみ睨めつける。今まで彼を大人しい奴だと思っていたクロー達も思わず身を震え上がらせる。
「お、おれが悪かった……」
「フン!!」
ルッグはウォーターを壁に叩きつけた。最早チンピラ同然の行動である。
「おいおい、大丈夫かお前達のチームは……」
二度も仲間をぶちのめそうとするチームメイトにジュプトルはそう言わずにはいられなかった。
「まぁ、一人はあんなポジションがいないと」
「それに、いつも偉そうにのさばってる兄さんがボコボコにされて気分がいいですし♪」
そして、この言われようである。
「(なんかワシ達の扱いが凄くまともに思えてくるな……)」
「(同感です……)」
「(あの扱いで泣きごと言うてたわい等が情けないわ……)」
普段、自分達も悲惨な目にあっているクロー達もこればかりは同情していた。
「(確かこのあたりだったな……)。ここから先は慎重に行くぞ」
急にジュプトルが険しい表情を浮かべながら制止を加える。
「(ど、どうしたんですか?)」
「(気をつけろよ。この先には強敵がいる)」
「きょ、強敵?」
ジュプトルの言う強敵に思わずファイアは身震いする。
「そうだ。ミカルゲというポケモンなんだが、縄張り意識が強い奴でな、恥ずかしい話だがオレも以前奴にやられたことがあってな……」
「恐ろしいですね……」
「ふ〜ん」
「フン!!パワーうpしたワシの実力にかかればそんな奴らイチコロだな!!」
怖がるファイアにあまり興味なさそうなリーフ、更には余裕と言わんばかりの台詞を言い放つクローであった。
「……ヒィィィィィィィィイイイイイイイイイイイッ!!」
「誰だ!!」
目の前から一人のポケモンが猛スピードで突っ込んできた。それを確認したジュプトルが戦闘体制に入る。
しかし、それも意味をなさなくなった。
「ヒエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェッ!!!」
そのポケモン、ミカルゲはジュプトル達には目もくれずに猛スピードで逃げていった。ミカルゲの様子は何かに脅えているようであった。
「ねぇ、さっきジュプトルが言ってたミカルゲって……あれ?」
ファイアが唖然とした様子でジュプトルに尋ねる。
「あぁ、だが……何かに脅えていたな……。慎重に行くぞ」
「遅いですねあいつら」
「まぁ、こんなところ簡単に突破できるものじゃないよ」
「それにしてもあのミカルゲ。大したことなかったっすね。さっすが先輩っすね!!」
ダンジョンの最奥部。ここで2人のポケモンが話をしていた。恐らく先ほどのミカルゲを打ち負かしたのもこの2人であろう。
「おいおい、あまり大声を出すな。感ずかれるだろう」
「あっ、すいません」
「全くお前は全然変わってないな……
おっと、やっと来たようだね」
片方のポケモンがもう片方のポケモンを諌めた時、ダンジョンの奥地に別のポケモンがたどりついた。リーフ達一行だ。
「ぬっ!!貴様は!!」
「遅かったね。待ちくたびれたよ」
ジュプトルはその場に居合わせたポケモン、ヘラクロスとスピアーを睨めつけながら針を構えた。