第七十話 脱出大作戦
リーフ達がヨノワールに拉致されてから(現代時間で)数時間後、相変わらずボロッちいジェット達の組織の建物内で一人のポケモンが疾走していた。
「ジェットさん!!たいへんたいへんたいへんたいへんたいへんたいへんたいだ!!」
そのポケモンはあご斧ポケモンのオノノクスのノンド。彼は上司(尤も立場は対等な筈だが)のサメハダーであるジェットの名を叫び、猛スピードで走っている。
「我輩のどこが変態だ!この馬鹿斧!!」
ジェットは連呼された”たいへん”を”へんたい”と聞き間違え、ノンドをハリセンでどつく。事実彼は最後のほうは変態と言っていた。
「いたい……。それよりジェットさん。えらいことがおこりました」
「なんだ!!うちのへぼ作者みたいにバトルサブウェイでマタドガスに三タテされたのか!?」
とんちきな言葉を漏らすジェットだが、そんなことは全く気にせずノンドは続ける。
「リーファイメンバーがヨノワールとメガヤンマに拉致されたそうです」
「何だと!?」
ノンドの言葉にジェットは素っ頓狂な声をあげる。
「本当だろうな!!嘘ついたらお尻ペンペンだぞ!!」
「はい、今日の新聞の号外に書いてました。ほら、この通り」
そう言ってノンドは一枚の新聞をとりだし、ジェットに見せる。
「ぶぁっかも〜ん!!!新聞の情報を丸ごと鵜呑みにする悪の組織がどこにおるんだ!!このスカポンタン!!!」
ジェットの怒声に思わずノンドは耳を押さえる。
「こんな紙切れごときで我々に必要な情報があるかわからんだろうが!!
いいか!!これからお前とバットで詳しく調査をしてこい!」
「わっかりましたのクラッカー♪」
ノンドがジェットの指示を聞くと敬礼のポーズをとった。尤も彼はノリでやったのだが……
「いいか!!今度ドジったらお前達を冷凍ビームでカチコチに凍らせてアイスキャンディーにしてやるからな!」
「ところでジェットさん」
「なんだ?これから我輩はビルドドレイン型のズルズキンを育成しようとしてるのに!」
余計なことを喋りながらジェットは振り向く。
「場所ってどこでしたっけ?」
「すいしょうのどうくつだ!!いいか!すいしょうのどうくつだ!!」
大事なことなので二度いいました。
「う〜ん、それにしてもジェットさんが言っていた洞窟に来たけどここはいれないよ」
「どうすりゃいいんだろうね。あっ、携帯だ」
洞窟前に佇んでいるノンドとその最早相方のクロバットのバット。彼らはどういうわけか洞窟の目の前にいながら入る様子がない。そこで彼の携帯が鳴る。
「もしもし、ジェットさ〜ん」
「おい、お前達。目的地にはたどり着いたのか?」
ジェットが携帯越しに話しかけてくる。
「はい、でも入口の穴が小さすぎておれたちには入れそうもないんです」
「そうなんですよ。こんな小さな洞窟僕ちゃん達にはどうやって調べろというんです?」
ジェットにとってはこの2人の言っていることがすぐには理解できなかった。だが、しばらく彼らの突っ込み役をこなしたのだろうか飲み込めてきたようで……
「小さい洞窟……
もしかして”さ(・)いしょう”の洞窟にいるんじゃねぇだろうな?」
「えぇっ!?だってそう言ったでしょ?」
ジェットの言葉に何を言っているのだといわんばかりの口調でノンドが言う。
「我輩はすいしょうの洞窟に行けと言ったんだよ!!」
「あらら〜」
「この役立たずめ!!すいしょうだ!!すいしょう!!決して”あいしょう”とか”かいしょう”とか言うんじゃねぇぞ!!このスカポンカ(・)ン!!
分かったらさっさと行けぃ!!」
「へ〜い」
今度こそこの2人は水晶の洞窟に向かったのだった……と思われる。
「全くどこまでもドジな奴らめ、それよりあのネンドール(めだま)は一体この忙しい時に何やってんだ全く!!」
ジェットはいらいらしながら彼らのボスの目玉ことネンドールのいる部屋に向かった。
「おい!!目玉!!いねぇのか!!
……って寒っ!!」
怒声を上げながらジェットは部屋に殴りこんだが、急に冷気を感じ、寒さで震えあがった。
「あらら〜、ジェット?あんたもこの部屋で涼んでいかな〜い?」
ネンドールは部屋でアイスを食べながらそう言った。彼(?)の部屋にはクーラーと扇風機が設置されており、ガンガンに動いていたのだ。ジェットは冷房のリモコンを確認する。
「おい!!目玉焼きやめろ!!冷房温度が18度だと!?これ以上動かすと電気止められるぞ!!」
「うるちゃい!!この電力30パーセントカットのクーラーがそう簡単に電力食うわけないでしょ!!」
カチッ
突如、クーラーも扇風機も止まってしまった。彼の言った通り全ての冷房が止まってしまったのだ。
「ほら見ろ、やっぱり電気が全てなくなってしまったではないか!!お前が電気を使うと碌な事が起こらないんだよ全く!!」
「あ〜、うるちゃい!!」
ジェットは相手が上司とは思えない口ぶりで説教する。
「大体お前はアイスばっか食ってないで野菜でも食ったらどうなんだ!!んなもんばっか食ってたら夏バテ起こすぞ!!畜生〜っ!こう暑くなったらしょうがない!!今から海でも行って日焼けしてくるか〜っ!!」
べちゃくちゃと喋りながらジェットは部屋を去っていった。
「しっかしどいつもこいつもど〜してうちの組織はこうヌケ策ばかりなんだ!!
あ痛っ!!!どこ見て歩いてんだこのスットコドッコイ!!」
ジェットは下を向きながら歩いていたためか何かにぶつかってしまった。倒れた状態で因縁をつけるが。
「なんだ、お前からぶつかってきたのではないのか?文句あるのか」
ぶつかった相手は運の悪いことにバクフーンだった。間抜けばかりのこの組織内で一番凶悪な彼にぶつかってしまったのだ。
「あぁ、ごめん……」
「フン」
先ほどの勢いはどこへやら、急に弱腰になったジェット。そんな彼をバクフーンは鼻で嘲笑うようにして立ち去る。
「もぅ、こんな人生嫌だ……」
少し長くなったがこちらはリーファイサイド、
「まずはウォーターを助け出さないとヤミラミが持ってる鍵とパッチのスイッチを奪わないとね」
「そんなもん、どうやって奪えばいいの?」
ファイアの言葉にルッグが待ってましたといわんばかりの笑みを見せる。
「それなら、もうとっくに盗んできましたよ♪」
『えっ!?』
ルッグの言葉に2人が素っ頓狂な声でハモる。その声を聞いたルッグは喜々とした表情でなんと、彼の下半身に身につけているダボダボのズボンのようなところの中からガサゴソと探し、とりだす。
「ほ〜ら、牢屋のカギとパッチのスイッチ!!」
ルッグはどや顔をしながら鍵とスイッチを見せつけた。だがリーフ達の表情は引きつっていた。
「流石ルッグさん……。でも、もう少し隠し場所は自重してほしかったかな〜」
リーフは引き気味にスイッチを蔓でとり、そのまま解除ボタンを押した。すると三人についていたパッチがそのまま消滅した。
「ふぅ〜、これで兄さんみたいに”シビレビレ〜!!”ってならなくてすむよ」
ファイアが先ほどまでパッチがついていた部分を見ながらそう呟く。
「さて、早くここから脱出してウォーターを助け出さないと」
「そうですね、急ぎましょう」
「しょうがないな〜」
リーフがカギを使い、牢屋のカギを解き、その場から脱出した。(一人余計なことを呟いたことはなしにして)
「さて、どこにウォーターさんが閉じ込められてるんですかね」
「そんなことより、ルッグさん。何か忘れ物があるんじゃないの?」
「えっ?」
リーフの言葉にルッグは首をかしげる。
「あなたの棒(ぶき)がないでしょ。早く探し出さないと」
「あぁ、そっか!!」
ルッグはポンと音を立てて手を叩く。すると彼の眼前に一つの扉があった。
「ボクのサイコ〜の感だと、たぶん武器とかはここに収められてるはず……
うわああああああああああああああああああああああぁぁぁっ!!」
ルッグがその扉を開けるや否や、いきなり大量の物が雪崩の如く彼を襲った。あまりに突拍子もないことに彼は反応できずにそのまま飲み込まれてしまう。
「まぁ、すんばらし〜カンですこと」
ファイアがあからさまな皮肉を埋もれているルッグに言い放った。尤も彼に聞こえているかどうかは分からないが。
「いや、本当にいいカンしてるじゃない」
ファイアとは正反対の台詞を言いながらリーフは瓦礫の山をあさっていた。そこから彼女はルッグの棒とハンマーをとりだしたのだ。
「はい、ルッグさんとファイアさんにお届けもので〜す♪」
「そりゃどうも……」
「ついにボクにも武器が来たの!?やった〜っ!!」
リーフは瓦礫の山から出てきたルッグに棒をファイアにはハンマーを手渡した。
「あっ!!」
リーフは更に瓦礫の山から何かを見つけたようだ。
「何を見つけたんですか?」
「これは全自○卵○機じゃない!!」
ズドッ!!
「んなもん見つけるな〜っ!!」
「はいはい、さっさと置いていきましょうね〜」
「でも一家に一台なのに……」
「おい、お前ら!!んなコントやってねぇで早くたすけてくれ!!」
『!!?』
背後から声が聞こえてきた、そこには牢屋に閉じ込められているゼニガメ、ウォーターの姿があった。
「あっ!!兄さん!!」
『いたんだ……』
「(T_T)」
三人とも最早当初の目的を忘れていたようだ。ウォーター涙目。
「と、とにかく早くこっから出せ!!」
「え〜、それが助けてもらう立場の言う事かな〜。助けてくださいお願いしますじゃないの〜?」
助けを乞う兄(ウォーター)を小馬鹿にするような口調の弟(ファイア)
「ふざけんじゃねぇ!!何で弟のお前にんなこと言わなきゃなんねぇんだ!!」
「じゃあ行こうかリーフ」
今までの恨みと言わんばかりの扱いである。そんな二人を差し置いてリーフは牢屋のカギを開けようとする。
「ちょっ!!た……助けてください……お願いします……」
「え〜?よく聞こえないな〜」
小声で喋るウォーターにかなり嫌みな口調で言い放つファイア。それを聞いたウォーターは眉間にしわをよらし、体がわなわなとふるえている。
「ちょっと黙って貰えない?集中してるんだけど」
「あぁ、ごめん」
リーフに怒られようやくファイアが黙る。だが彼は相変わらずかなり嫌みな笑みでウォーターを見ていた。
「う〜ん、鍵がやっぱり違うみたいね、こうなったら……
フン!!」
なんと鉄格子を自力で折り曲げ、ポケモンが通り抜けれるようにしたのだ。これには三人とも驚きを隠せない。
「(すごいバカ力だ……。リーフさんの前で言ったらやばそうだな)」
ルッグはリーフのバカ力に愕然としていたが、
「うらあああああああああああああぁぁぁっ!!」
「うわあああああああああああああぁぁぁっ!!」
ウォーターはオリが開いた(?)からか、先ほどまで自分を散々に言ったファイアに飛びかかった。
「てめぇ!さっきはよくもやってくれやがったなこの野郎!!」
「大体兄さんが勝手な行動とるからいけないんじゃないか!!」
「うるせぇ!!大体なんで何もしてないてめぇに偉そうな口を叩かれなきゃならねぇんだ!このクソ弟!!」
「弟なのは関係ないでしょ!!」
こんなときに兄弟げんかが発生、取っ組み合いになっているところをリーフとルッグはあきれ果てた様子で眺めている。
「なんか用具入れの辺りが騒がしいぞ!!」
「一体何事だ!!」
ヤミラミ達の声がした。間違いなくこれまでのいきさつが聞こえたのだろう。
「まずい!さっきの騒ぎでヤミラミたちが!!二人とも!!喧嘩してないで逃げるわよ!!」
『あぁ!?』
「いいから早く!!」
いまだに喧嘩している2人を強引に引っ張っていった。
「確か、食堂の通気口から逃げられた筈ね」
「その前にリーフ、あいつらに武器はあってオレには武器はねぇのか?」
ルッグとファイアに武器を与えられ自分にはないのかと尋ねる。
「あぁ、武器ね。はい」
そう言ってリーフは前話に奪い取ったナイフとフォークを手渡す。粗悪品にもほどがある。
「うわっ……」
愕然となっているウォーターはさておいて、リーフは通気口の扉と思われるものを外し、通気口に入る。
「さぁ、つかまって」
蔓の鞭を使い他のメンバーも通気口内に入れる。
「なぁ、リーフ。この通気口の先ってどこなんだ?」
「先?そんなもん分かる訳ないでしょ」
「何ぃ!?」
リーダーのあまりにも適当な答えにウォーターは思わず大声を出してしまう。
「いや、だってどうやって通気口の出口を探ればいいの?」
「まぁ、確かにそうかも知れんが……」
尤もだが、これでは逃走が上手くいく保証は全くない。
「だったらオレが教えてやろうか?」
『!!?』
不意に後ろから声が聞こえた。そこにはかつて二度も戦ってきたあのジュプトルの姿が。
「てめぇはジュプトル!!何でここに!!」
「話は後だ、それよりもお前達、脱出したいならオレに強力しろ。オレはここの脱出ルートを知っているが、お前達の力を借りないとかなり脱出が困難になるんだ」
ジュプトルの言葉に黙って耳を傾ける四人。
「なんだと!?何でおめぇなんかに……」
「わかったわ。協力するから脱出ルートを教えてもらえる?」
断固拒否するウォーターとは対照的にリーフはあっさり承諾する。ファイアもルッグも首を縦に振ってることから恐らく同じ意見だろう。
「わかった。ついてこい」
ジュプトルは手招きするように四人を誘導する。
「ここだ」
ジュプトルが案内した先は建物の出口だった。しかし、脱出を急ぐ四人に彼は黙って制止をかける。
「ここは崖になってるんだ。正直オレの跳躍力でもあそこまで飛び越えるのは難しいからな。だからリーフ(おまえ)に頼んだんだ」
「成程ね、それっ!!」
納得したリーフは投げ縄の要領で向かい側の木に蔓を引っ掛けた。
「じゃあ皆つかまって!!」
リーフに言われジュプトルを含んだ四人は彼女に捕ろうとした。だが流石に無理があったのかもうかた一方蔓にファイア・ルッグ・ジュプトル・ウォーターの順番に捕まった
「それっ!!」
そう言ってリーフは崖から飛び、ターザンのように飛び出した。
「あ〜あ、あーーーーーーーーーーーーーーーーぁっ!!」
リーフは最早お約束の言葉を発する。
「よし!!蔓をひっこめろ!!」
ジュプトルに言われてリーフは両方の蔓をひっこめた。蔓をひっこめた影響で一行は向かいの陸に着地した。
一人を除いて……
「ふぎゃっ!!」
ウォーターだった。位置的に一番しただった彼は蔓のひっこめが間に合わずに崖に激突してしまったのだ。更にその衝撃で握っていた蔓を手放してしまう。
「うおっ!!」
「危ない!!」
間一髪、リーフが再度蔓の鞭でウォーターを蔓で掴み、そのまま引き挙げた。
「危ねぇだろこの野郎!!もうちょっとで落ちるとこだっただろう!!」
「助けてあげたのに、危ねぇだろはないでしょ、あれだけの数を持ち上げるの大変だったんだから」
激昂するウォーターに対してリーフは冷静に答える。
「おい、お前達。グダグダ言い争っている暇はないぞ。奴らが追ってきた。早くここから離れるぞ」
「ちょっと待て!!」
「なんだ?」
リーフ達を連れて行こうととするジュプトルにウォーターがストップをかける。
「さっきは仕方なく協力したけどそのあともてめぇに協力する筋合いなんてねぇよ!!」
ウォーターは完全にジュプトルを悪党と認識している。
「う〜ん、でもわたしはこのままジュプトルと行動してもいいと思うんだけどな〜」
リーフは反対にジュプトルのことを信用している。
「確かに、一緒にいたほうが心強いし……」
「ぼくもジュプトルはそんな悪そうには見えないんですよね〜」
ファイアとルッグもどうやらジュプトルのことをある程度信用しているようだ。
「て、てめぇら!!ふざけんじゃねぇよ!!何でこの野郎を信用できるんだ!!」
だが、ウォーターは断固拒否の構えである。その様子を見て一人のポケモンが少し苛立った様子で彼を睨みつけていた。
「大体ジュプトルは時の歯車を奪っていた極悪人だぞ!!そんな奴を信用するなんて……」
ドゴォッ!!!
一本の棒がウォーターの顔面を掠り、後ろにあった岩を砕いた。
「黙りなさい、水亀」
ルッグだった。チームの中でただ一人ジュプトルを信用しようとしないウォーターに苛立っていたのも彼である。今の彼はズルズキンらしからぬ黒いオーラを纏っている。
「な、なんだよ……」
「ちょっと黙ってもらいますね♪」
黒い笑みを浮かべながら強引にウォーターを岩陰に連れていった。そして……
*ここから先はお見せできませんwww
ドガッ!!バギッ!!ボコッ!!
「うぎゃあああああああああああああぁぁっ!!!」
岩陰に物騒な物音と一人の亀の断末魔が響いた……
「さっ♪みんなの意見が一致しましたし。これからしばらく行動しましょうか。いいですよね?」
「あ、あぁ……」
笑顔のルッグに完全に気圧されたのかジュプトルはそのまま同行すること承諾した。ウォーターは気絶した状態でそのまま引きずられていったとさ。