第六十九話 暗黒未来
とある建物の頂上。だが今では廃墟ではないのかと思われるほど荒廃している。そこにヨノワールとメガヤンマが目の前の何かの前に立っていた。彼らの前に立っていたものは暗闇に包まれており、確認することができない。
「お待たせしました。少し苦労はしましたがようやくとらえることができました」
「グル……グルルルルルルルルルルルル……」
ヨノワールがそう言うと目の前にいる何かは目を光らせながらうめき声を出した。何を言ってるかは分からないが、恐らく恐ろしい指示を出しているのだろうか。
「十分心得ております。奴らは準備が整い次第消します」
ヨノワールがそう言うと彼はその場を後にしようとするが……
「おい、あの関係のない奴らも勝手に連れてきたがあいつらも始末するのか?」
メガヤンマだ。彼がそう言うとヨノワールは足を止めメガヤンマの方に向きを変える。ヨノワールに足なんかないだろこのバカ作者という突っ込みは差し控えて頂きたい。
「何を今更のことを聞いている。当たり前だろう」
「フン、知らないぞ。もし万が一余計なあいつらを連れてきたばかりに逃げられたらお前の責任になるのだからな」
メガヤンマはにやりと笑いながらヨノワールにそう言い放った。彼の言葉を聞いた瞬間、ほんのわずかだがヨノワールの表情がこわばる。
ガッ!!
いきなりヨノワールはメガヤンマの体を鷲掴みにした。
「ぐぅっ………」
「ごちゃごちゃとうるさい奴だ。私とお前とではどちらが偉いかわきまえているのか?」
「ちっ」
メガヤンマはヨノワールの拘束を無理やりほどいた。
「何をする!!このメ○ボゴーストが!!」
「何だと?」
メガヤンマとヨノワールが互いに睨みあう。
「グオオオオオオオオオオオオオオオォォッ!!!」
突如目の前の生き物は雄たけびをあげ、2人を吹き飛ばした。吹き飛ばされた二人はその勢いで壁に叩きつけられる。
「も、申し訳ありません………」
「すぐに準備をいたします……」
メガヤンマとヨノワールはそう言い残してその場をさった。
一方こちらはスパークを除いて未来世界に拉致されたリーファイ。今現在四人がいる場所は周りが灰色の壁で覆われており、更にはそれ以外の出口を彷彿させる空間も鉄格子で覆われていた。
そんな中真っ先に意識が戻ったリーフは他の三人を起こした。
「……うぅっ」
「大丈夫ファイア?」
リーフは起き上がったファイアの安否を確認した。同じように起き上ったルッグにもそう尋ねる。
「ここは……どこなんだろう……」
ファイアが不安な面持ちで自分達が置かれている状況を確認する。見た限りでは自分達は牢に閉じ込められてるのだろう。
「たぶん牢獄じゃないですか?恐らく僕たちはあのヨノワール達に拉致され閉じ込められたんでしょうね」
「うぅ………」
ルッグの分析にファイアはまた俯く。
「あの牢も開けれないか確かめたんだけど……」
「開けられなかったのかだらしねぇ。オレが開けてやる!!」
ウォーターは苛立った様子で鉄格子の前に立ち、そのままパンチで壊そうとした。
「待って!!ウォーター!!」
「うおらあああああああああああああぁぁっ!!」
リーフが止めるも時すでに遅し。ウォーターは牢獄に冷凍パンチを放った。
「ぅあががががががっ!!!」
突如鉄格子から電気が流れた。鉄格子に触れたウォーターはそのまま電流をまともに食らいノックアウトする。
「に、兄さん大丈夫!?」
ファイアがのびているウォーターに駆け寄る。
「ったく、どうなってやがんだ!!」
「さっきわたしも調べたんだけど、ここ電気が流れてたから……」
「そう言うことは早く言えってんの!!」
ウォーターがその場で逆切れする。いや〜、満場一致でお前が悪いぞ。と、その時、
「おぉ、起きてたのか。丁度いい」
『!!?』
突如扉が勢いよく開いた。そこから小柄な体格に紫色の体をした宝石のような目をしたポケモン、ヤミラミが四体入ってきた。
「あ、あいつは!!」
「確か、病みラミって言うポケモンだったわよね?」
ズドッ!!
相変わらずのリーフのボケに病みラミ……もといヤミラミを含む全員がずっこける。
「誰が病みラミじゃ!!オレ達は心身ともに至って健康体だ!!」
「お前も乗らなくていいから、とにかく早くしろ。食事の時間だ」
『へっ?』
ヤミラミからでたまさかの言葉にきょとんとするリーファイメンバー。
「言っとくが余計なことを考えるなよ。脱走なんか考えた日にや……ポチっとな♪」
ヤミラミはどこからかスイッチをとりだす。すると……
「ぅあがっがっががががががががががっ!!!」
突如ウォーターが苦痛の表情を浮かべ、地面に崩れ落ちた。
「今の亀のように高圧電流を流してやるから覚悟しとけよ」
「何でオレが実験台にならなきゃならねぇんだ!!」
「こういうことはお前以外適任者はいないって作者も言ってたぞ」
「メタ発言すんじゃねぇ!!」
ブチ切れるウォーター。実はリーフ達が意識を失っている間に既にパッチのようなものが装着されており、ヤミラミ達がスイッチを押すと先ほどのウォーターのように高圧電流を流される仕組みになっているのだ。
「とにかく食事の準備はできてる。お前らも早く来い」
だがそんなウォーターを無視してヤミラミ達は一行を問答無用で連れて行った。
「やっとご飯が食べれる〜♪」
食いしん坊なリーフは食事と聞いて嬉しそうにする。だが本当に食事かどうか分からないが。
「ついたぞ」
ヤミラミ達が連れていった先は他の囚人と思われるポケモン達が食事をとっている様子だった。どうやら本当に食堂に連れていったようだ。
「あそこにリンゴや木の実があるから担当の奴の指示に従ってとれ」
そう言ってヤミラミ達はその場を後にした。
「それにしても、頭悪そうな奴がいっぱいいるな」
「兄さんにぴったりだねwww」
「……」
辺りを見回すウォーターに対しファイアはバカにした様子、というかバカにした台詞を言い放った。
「とにかく、もぐもぐ……一刻も早く、もぐもぐ……ここから脱出しないと、もぐもぐ……
とりあえず牢屋に戻る前に、もぐもぐ……何か役に立ちそうなものを……」
「リーフ、喋るときくらいはもの食べるのやめようよ……」
食事をとりながら指示(?)を出すリーフをファイアが諌めた。
「ここのご飯、意外とおいしくて、臭い飯でもないみたいだし♪」
そんなことは関係ないといわんばかりの台詞を言い放つ。彼女以外の三人ははぁ〜とため息をついた。
食事も終わり、再び最初にいた獄中に戻されたリーファイ。ヤミラミ達がその場を去ったことを確認する。
「とにかく、早いとこ脱出しないとね。皆は何か手に入れた?わたしはナイフとフォークを持ってきたけど」
そう言ってリーフは懐に隠し持っていたナイフ等をとりだす。
「僕は大根の葉っぱ」
「ボクはお米のとぎ汁です」
「オレはあいつが持ってたトランプを……あり?」
ウォーターの言葉が止まった。まぁ、無理もないだろう。なぜなら目の前のチコリータが激昂した様子で自分達を睨んでいたから。
「いやぁ〜、あれだろ!!修学旅行には皆でババ抜きでも……」
「ソーラービーム!!!」
「何でオレだけえええええええええええええぇぇぇっ!!!!?」
その後牢獄で一人の亀の悲鳴がこだました。
「ダメだな〜兄さん。そこは大富豪(大貧民)って言っておかないと〜」
「そう言う問題じゃないでしょうが」
しばらくして、
「とにかく、脱走するにしてもヤミラミ達が持っているスイッチを奪わないと脱出が困難になるわね。だからしばらくは十分に作戦を練ってから行動するわよ。できるだけ目をつけられる行動は避けてね
特に喧嘩っぱやい亀さんはね……」
ウォーターが意識を取り戻した後、リーフは脱走の作戦、と言ってもあくまでも釘をさすといったほうが近いかもしれない。特に……←お前もかい
「な、なんだよ!!」
「兄さん自覚してるよねwww」
「その前にリーフさん。それフラグですよww」
ファイアとルッグがウォーターを小馬鹿にした様子で呟く。
場所は再び食堂、
「よし、作戦を決行する……」
「ちょっと待って!!」
ファイアがある方向を指差した。そこには髭が特徴的なスプーンを二つ持ったポケモンフーディンと紫色の星型のポケモンスターミーが他の囚人をはねのけながらリーフ達の方向に向かって歩いて来ている。他の囚人達はスターミー達を畏怖するような目で見ている。
「おい、てめぇらが最近入ってきた新入りか。この方はここで一番強いフーディン様でおれがスターミーだ」
「お前ら、ここで平穏な獄中生活を送りたかったら、おれにたんまりデザートをよこすこったな」
厳つい面持ちをしながらなんとフーディンはデザートを強奪しようとしていたのだ。だが、皮肉にも現実の刑務所でもこういった食べ物をめぐったやりとりは日常茶飯事、当たり前のことなのだ。
「何でてめぇみたいな髭ごときに渡さなきゃなんねぇんだよ。
ぶぁ〜か」
ウォーターがフーディンの髭を指差しながらバカ、否ぶぁかと言い放つ。それを聞いたフーディンは顔を真っ赤にする。
「オレ様に逆らうのかこの蜥蜴野郎!!」
激昂したフーディンはウォーターを突き飛ばした。突き飛ばされたウォーターも怒りのあまりもう周りが見えなくなっていた。
「オレは亀だ!!お前ら屑共はゼニガメ一匹も見たことねぇのか!!」
「兄さんやめろ!!」
ファイアの制止も聞かずにウォーターはフーディン達に向かっていった。
「なんだと!!」
屑共と言われフーディンは拳に電気を纏わせて殴る技、雷パンチでウォーターに殴りかかる。
「よっと!!」
ウォーターは余裕で雷パンチをかわす。
「草結び!!」
「なっ!!」
スターミーがウォーターの手足に絡ませるように地面から草を出していた。
「粉々になりやがれ!!雷パンチ!!」
動けないウォーターにフーディンが追撃を加えようと接近する。
「やっぱお前らバカだな。オレ達ゼニガメ一族を甘く見るんじゃねぇ……よっ!!」
よっ!と言った時にウォーターは首と手足を一瞬で甲羅に引っ込めて草結びの拘束を脱したのだ。そのことに虚をつかれたフーディンは雷パンチを外してしまい、バランスを崩してしまう。
「うおりゃああああああああぁぁっ!!!」
「ぐわっ!!」
ウォーターはスターミーの体のコアの部分を攻撃した。この部分はスターミーの急所ともいえる場所であり、コアが割られたスターミーは一撃で倒れはしなかったものの、すでにふらふらになっていた。
「くそっ!!シャドーボール!!」
フーディンはウォーターの背後からシャドーボールで攻撃する。
「へへっ!!デザートばっか食って運動不足なんじゃねぇのか、動きが鈍いぜ」
「なんだと!?」
ウォーターはあっという間にフーディンの背後にまわっていたのだ。これには彼だけでなく他の囚人達も驚きを隠せない。
「お〜らよっと!!!」
「うわあああああああぁぁっ!!」
ウォーターはフーディンの腕を後ろ手に回し、そのまま体を持ち上げスターミーに投げ飛ばした。
「うううううう……」
あっという間に二体共ノックアウトしてしまった。
「なんだこんなもんか。弱いな」
「ウオオオオオオオオオォォォ!!」
「凄えぇぞゼニガメ〜っ!!」
いつの間にか辺りはゼニガメコールが起こっていた。それを聞いたウォーターは少し嬉しそうな表情になるが……
「お遊びはそれまでだ!!」
再びヤミラミがスイッチを押した。
「ぐがががががががあががあがああぁっ!!」
本日三度目の高圧電流を食らい、ウォーターは崩れ落ちる。
「あのゼニガメを独房に連れて行け!!」
リーダー格のヤミラミが他のヤミラミに指示を出す。指示を受けたヤミラミ達はウォーターを連れていった。
「ええぇいくそっ!!放せこの野郎!!」
ウォーターはもがくも電流のダメージが響いたのか力が入らず、そのまま連行されてしまった。