第六十八話 リベンジ--そして……
「電光石火!!」
そう啖呵を切りジュプトルは電光石火を用いてウォーターに接近してきた。五対一では確実に分が悪いので草タイプのジュプトルは相性のいい水タイプのウォーターから始末しようと考えたのだ。
「リーフブレード!!」
「おっと!!」
ウォーターは背中の甲羅を向けて、電光石化からのリーフブレードを防御した。甲羅を用いた防御なので完全には防げなかったが、それでも決定打にはならなかった。
「はっ、亀でよかったぜ。冷凍パンチ!!」
ウォーターは反撃として、自身の右手に冷気を纏わせて、ジュプトルに殴りかかる。
「甘いな」
「なにぃ!?」
ジュプトルはウォーターの冷凍パンチを受け止めた。正確には冷気のない腕の部分を掴んだと言い換えるべきだろう。そしてそのまま
「これなら自慢の甲羅も役にたたないだろう」
「くそっ!!」
ウォーターは腕を放すようもがくがジュプトルの力が強く、抜け出せない。
「火炎放射!!!」
「めざめるパワー!!」
ジュプトルの背後からファイアは口から業火を発する技、火炎放射、スパークはポケモンによってタイプと威力が異なる特殊な技、めざめるパワーを繰り出した。ちなみにスパークのめざめるパワーは氷タイプである。
「なんだと!?」
ジュプトルはこの作戦に驚きのあまり思わず硬直してしまう。まさか目の前の見るからにまっとうな探検隊が味方ごと攻撃するとは思ってもいなかったのだ。だがウォーターもこれは承知のこと、どちらも彼には効果が今一つでダメージは少ないのだ。
「くそっ!!」
火炎放射とめざめるパワーはジュプトルのいた場所で爆発を起こした。爆発でその場が煙に包まれる。
「気をつけろよ。奴はどこから出てくるか分からんぞ」
「うん!」
スパークは隣にいたファイアに注意を促した。煙が発生したため相手の動きが把握できない。動きが分からない以上、どういった行動をとるべきかは細心の注意が必要なのだ。
「むっ!」
煙が晴れてその先にあったものは………
「ふん、間抜けな連中だな」
「……………………」
ジュプトルがウォーターを盾にするように攻撃を防いでいた。これによってジュプトルにはほとんどダメージがなく。逆にウォーターに攻撃が入ってしまったのだ。
「こいつはお前達に返してやる!」
「ぅあがががががっ!!どいてくれ〜っ!!!」
ジュプトルはそう言ってウォーターを持ち上げスパークやファイアにめがけて投げ飛ばした。ウォーターは投げられた勢いでぐんぐん2人のもとに接近する。
サッ
ファイアとスパークはまるでウォーターに道を開けるかのごとく、飛んでくる彼をかわした。結果、投げられそのまま水晶に激突し、頭を強打してしまう。
「う〜ん……」
「もしも〜し、兄さ〜ん?生きてる〜?」
目を回してのびているウォーターにファイアがそう話しかける。
「う〜ん、ここは誰?私はどこ?」
「うん、大丈夫だね」
「そうだな。だが、とりあえずはファイアはウォーター(あいつ)を見ててくれ」
「父さんは?」
「リーフ達の援護にまわる!!頼むぞ!!」
珍しく彼がボケたことを確認して、スパーク達は倒れているウォーターのことはほとんど気にせずにジュプトルの方に向きなおし、スパークはジュプトルの方に向かった。
「と、その前に……」
「??」
スパークはなぜかカバンの中から何かをとりだした。それは……
「真昼間に一杯やるか♪」
「いい加減にしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!!」
あろうことかスパークはビールをグビグビと音を立てて飲み始めたのだ。
「せりゃああああああああああぁぁぁっ!!」
ジュプトルの背後、正確には斜め上の後ろからルッグが叫び声をあげながら棒を振り下ろすようにジュプトルに接近してきた。
「ふん!」
「何っ?」
だが、それもジュプトルには読まれていたのかジュプトルは自身に勢いよく振り下ろされた棒を片手でつかんだ。しかしそれもルッグには想定の範囲内であった。
「ローキック!!」
ルッグは手に取った棒をぱっと放しジュプトルの左足に右足を使って蹴りを入れた。蹴られたジュプトルの足はボコッという鈍い音を出し、蹴られた本人(ジュプトル)も「かはっ」と息を漏らすような声をあげ、手に取った棒を落としてしまう。
「とりゃあ!!」
ローキックを食らわせたルッグは今度はジュプトルの腹を蹴り飛ばした。蹴られた衝撃でジュプトルは先ほどのウォーターのように水晶に激突した。
「うぐぐっ……」
ジュプトルは立ちあがろうとするがローキックを受けた左足に鈍い痛みが走り、そのまま崩れ落ちる。本来ズルズキンという種族は蹴りの力が強く、その力はコンクリートをも粉砕する威力があるといわれている。だが今のルッグのキックの強さは本来の彼ではなかった。
「ちっ……。そう言うことか……」
ジュプトルは少し勝ち誇った表情を浮かべているルッグを見て悟った。実は彼はスパーク達三人がジュプトルと戦闘している間にビルドアップを積んでいたのだ。ビルドアップは攻撃力と防御力を同時にあげる技なのだ。そのためにローキックの威力が上がっいたのだ。
「さて、この辺でいいかな」
酒を飲み終わったスパークが少しよろよろとしながらも立ちあがりジュプトルの方に攻撃を仕掛けようとする。
「水浸し!!」
スパークの体中から大量の水(というかぶっちゃけ汗)が散乱した。その水の塊はかなりの数が飛んでいる。
「見切り」
ジュプトルは目を光らせて自身に降り注ぐ水の塊を次々に交わしていった。普通なら到底不可能なのだが、技の見切りでは一度ならほとんどの技でも交わすことができるのだ。
「メタルブレード!!」
「とび膝蹴り!!」
リーフは鉄の葉を用いた攻撃で、ルッグは自身の持つ最強の技、とび膝蹴りで攻撃を仕掛けた。しかしとび膝蹴りは先ほどの見切りで交わされると自分がダメージを負うリスキーな技でもあるのだが……
「見切り!!」
ジュプトルはもう一度見切りで回避を試みる。
「甘いぞ!!フェイント!!」
「何!!」
スパークがジュプトルの目の前に立ち数多のパンチを出した。否、正確には全て文字通りのフェイントのパンチなのだ。
「くそっ!!」
もともと見切りや守るは連続で使用すると効果が薄くなる技、更にフェイントの効果で見切りが破られてしまい、ジュプトルにフェイントの攻撃が入ってしまう。だが、これだけではなかった。
「せやあぁっ!!
「うりゃああっ!!」
「ぐおおっ!!」
鉄の葉(メタルブレード)ととび膝蹴りを直撃してしまったジュプトルは飛ばされて水晶に激突した。激突した衝撃で水晶にひびが入る。
「なっ!?」
ガラガラガラガラガラガラ!!
そのまま水晶の真下にいたジュプトルは水晶の瓦礫に埋もれてしまった。
「ふぅ〜、なんとか勝ったようだね〜」
ウォーターを見ていたファイアがやれやれといった表情でそう言った。
「-----オレは……」
「ん?兄さん何か言った?」
「いや、何も言ってないぞ?」
ほんの小さな声だがわずかに聞こえた声、ファイアは兄ウォーターに彼かどうかを確かめるが否定する。
「じゃあ一体誰が……」
「----オレは……
オレは絶対に負けん!!」
なんと水晶の瓦礫の下に埋もれていた筈のジュプトルが瓦礫の下からボロボロになりながらも出てきたのだ。更に彼の周りに緑色のオーラが纏われていた。特性の深緑だ。
「しつこい奴だな〜、こいついつも何食ってんだろな?」
ウォーターが少し皮肉めいた言葉を発した。
「リーフブレード!!」
ジュプトルは腕の葉を用いた刃で攻撃を仕掛けてきた。
「くっ、またお前か……」
鉄の刃と葉の刃が音を立ててぶつかりあい火花が散る。しかし今のジュプトルは眼前の敵(リーフ)に集中しておりそんなことは目に見えていない。
「それはこっちも同じよ!今度こそお縄にかかってもらうわよ!!」
しかしそれはリーフも同じことだった。いつもはボケながらも冷静な彼女が声を荒らげ、打倒ジュプトルに専念している。
ガキンガキン!!
しばらくは打ちあいが続いた。刃どうしのから発する火花とリーフとジュプトルから出てくる火花が出てくる中どちらも一進一退の攻防が繰り広げられる。
「くっ!」
「もらった!!」
一瞬だがリーフに隙が生じてしまう。だがジュプトルはそれを見逃さずに攻撃を叩きこむ。
「(うぅっ……)」
以前敗れたトラウマからかリーフは思わず疑似的な金縛り状態に陥ってしまった。
「させない!!」
「何っ!!」
一人のポケモンが彼女をかばうようにジュプトルの攻撃を防いだ。
そのポケモンはリーフの最大のパートナーでもあるヒノアラシだ。
「気易くパートナーに触らないでもらえるかな?ファイアーボール!!」
「ぐああっ!!」
ファイアは手から文字通りの火の玉を生み出してそこからジュプトルにぶつけた。至近距離からの攻撃だった為かジュプトルはまともに食らってしまった。某配管工も同じ技を使うが出来たらスルーして頂きたい。
「ありがとうファイア……」
「気にしないの!!ボク達パートナーでしょ?」
ファイアは笑顔でそう言った。
「気を緩めんなよ。不意打ちを食らってやられても知らねぇからな」
真っ先にやられたウォーター(あんたに)言われたくないよ……
ここにいたリーファイメンバー全員がそう思った。
「こんなところで負けるわけには……
ぐっ……」
一度は起き上がるも体力の限界が来たのかついにジュプトルは倒れた。
「ようやく終わったか……」
スパークが水晶にもたれかかりながら酒を飲みながら呟いた。まだ飲むんかい。
「とうとうジュプトルがつかまりましたか」
「誰だ?」
不意に低い声がした。スパークは声の主に(なぜか)空の酒瓶を向ける。
「失礼しました。私は探検家ヨノワール。ジュプトルを捕まえる為にここに来たんですが、貴方方が先に倒したようですね」
そう言ってヨノワールと名乗ったポケモンは頭を下げる。隣にはメガヤンマの姿が。
「とりあえずは奴を連れていくことにしましょう。メガヤンマ」
「了解〜♪」
ヨノワールに促されメガヤンマは不思議玉をとりだした。彼はそれを掲げると巨大な黒い渦がその場に出現した。
「これは……」
「まぁ、我々が作った穴抜け玉のようなものですよ。
ジュプトル!!これでキサマにも年貢の納め時が来たな!!」
ヨノワールはそう言ってジュプトルを黒い渦に放り込んだ。渦に放り込まれたジュプトルはそのまま姿を消す。
「さて、我々も帰りましょうか」
そう言ってヨノワールを先頭に渦の中にはいっていこうとする。
「そこに入っちゃだめだ!!」
『!!?』
不意にまた別の声が聞こえてきた。その声を聞いた瞬間ヨノワールとメガヤンマの目の色が変わり、穏やかな表情から一転、厳しい表情を浮かべる。
「ちっ!こうなら実力行使だ!!」
「くそっ!!!放しやがれ!!」
ヨノワールはウォーターの体を掴んだ。もがくも力が強く拘束をほどくことができない。
「ウォーターを放して!!メタルブレード!!」
リーフはウォーターを拘束しているヨノワールに切りかかる。
「フン!まずはお前からだ!!」
しかしヨノワールは向かってくるリーフを掴んでそのまま渦の中に投げ飛ばした。
「リーフ!!くそっ!!」
「次はお前達だ!!」
そう言ってヨノワールはファイア、ルッグ、ウォーターも渦の中に放り込んだ。
「急ぐぞ!!招かれざる客を連れてくる前に時空ホールを閉じるんだ」
「わかった」
この会話を残してヨノワールとメガヤンマも渦の中に入っていった。すると時空ホールと呼ばれた渦が徐徐に小さくなっていく。
「まずい!僕たちも行くぞ!!」
「はい先輩!!」
先ほど制止をかけたポケモン達も時空ホールに入っていった。二人が入っていったことを境に完全に時空ホールは閉じてしまった。
「そんな……
これは一体どういうことだ……」
そして残された水晶の洞窟では一人のピカチュウのみが残された。