第六十五話 SHOW TIME!
キュウコンに呼ばれたルッグは自身の弱点の改善のために、特訓を受けていた。そして今回はまた違った特訓をこなしていた。そして今彼はある一室に呼ばれている。
「あの〜、今回は何の特訓なんですか?」
ルッグが恐る恐る尋ねる。この部屋は様々な道具などが並んでおり、まるで実験室のようになっていた。どう考えても彼の中ではいい予感はしない。
「探検活動は戦闘だけじゃこなせない。道具の効果や地形、天候、周りの状況をきっちり把握していないと上手くこなせないことだってありますの。要するに頭(ココ)の特訓ですわね」
確かに探検は戦闘だけではなく、むしろ道具など自身の力以外の物事を用いることが多い。それらを詳しく知り、的確に運用することが大事なのだ。
「だったら自信ありますよ!!この固い頭を使った諸刃の頭突きで---------------
-----痛っ!!」
ルッグの言葉が終わらないうちにキュウコンはどこから取り出したかわからないハリセンが飛んだ。結構きいたのかルッグは頭を押さえてうずくまる。
「全く・・・・・・、バカなこと言ってないで早いとこ始めますわよ。時間がないんですからね」
「は〜い」
こうしてルッグの第二の特訓が幕を開けた。
場所は変わってこちらは屋敷前、ここに三人のポケモンがいた。サメハダー、クロバット、オノノクスだった。そうジェット、バット、ノンドのバカ三人組だ。
『って、誰がバカじゃああああああああああああああああああああぁぁぁっ!!!』
この突っ込みはスルーして、なぜこの三人がここにいるのだろうか。
「ところでジェットさん。ここの屋敷に七つの秘宝の一つが本当にあるんですかい?」
「あぁ、この屋敷には先祖代々めずらしい楽器が飾られてると聞いてな。だが一時期巨大なボーマンダに奪われたがそれも探検家に依頼してボーマンダは討伐、秘宝は取り返したらしい」
バットの問いかけににジェットは自信満々に答える。
「よし!!じゃあさっさと盗りにいこうぜ〜」
「は〜い」
バットとノンドは屋敷の門を開けようとした。
「アクアジェット!!」
『うわあああああああああぁぁぁっ!!』
ジェットはアクアジェットで2人をブッ飛ばした。
「MA☆NU☆KE☆GA
敵のおうちに真正面から入るドアホがどこにいるんだ!!このスットコドッコイ!!」
「じゃあどっから入ればいいんだよ〜」
ノンドが困った顔でそう言った。だが、ジェットとバットはその言葉を待ってましたといわんばかりの喜々とした表情である。
「それなら任せとけ。バット」
「は〜い♪それポチっとな♪」
バットは持ってたカバンからスイッチをとりだした。すると地面からモグラのような風体のポケモン、モグリューが出てきた。だがこのモグリュー、普通と違ってかなり大きく、更に体が鋼鉄のようだった。
「へへへへへ♪こんなこともあろうかと僕ちゃんがつくっておいたのさ♪名づけて!!
”モグモグ掘るぞ〜君一号〜♪”」
ヘンなネーミングは置いといてバットがモグリューの風体をしたものを紹介した。実はこれ、バットが作ったメカである。
「これで地下から侵入すれば、警備にも引っかからないだろう。お前達!!乗れ!!」
ジェットがノンド達に指示する。
『は〜い♪』
「うぎゃああああああああああああぁぁぁっ!!」
ノンド達はなぜかジェットの背中に乗ろうした。ジェットはそのまま潰されてしまう。
「我輩に乗ってどうするんだ!!このトンチキ共が!!メカに乗れといっただろ!!」
「てか、ジェット。あんた、いつから一人称”我輩”になったんだ?」
「一人称が”オレ”だとお前とかぶって読者の方が分かりにくくなるだろ!!それよりも早く乗れ!!いいか!!メカにだぞ!!」
ジェットに言われて三人はメカ、もとい”モグモグ掘るぞ〜君一号”に乗り込んだ。
「うわ〜、なんか暗いなここ」
「じゃかましい。我が組織も節電をせねばならんからな。例えば冷蔵庫の出し入れもテキパキやらんとな。
っと、余計なこと言ってないでとにかく行くぞ!!」
「あ〜い、出発進行〜♪」
バットがスイッチを押すと、メカは勢いよく地面を掘り進んだ。
「それで、バットよ。あとどれくらい進めば目的地にたどり着くのだ?」
「へい、あと百八十七メートル進めば屋敷の真下につきますぜ
って、なんだ!?」
いきなりメカが停止し、もともと暗かった照明もおちてしまい、メカの内部が真っ暗になった。
「あちゃ〜。電池切れのようですね〜(汗)」
「なんだと〜っ!?だからあれほどメカとDSを持ってくる時は前日に充電しておけといっただろうがこのクロバッカ!!」
「だって、うちの組織節電意識じゃないっすか〜」
「黙らっしゃい!!こうなったら止むを得ん!!我輩達が自力で掘るしかないだろう!!」
そう言ってジェットはスコップを三つとりだした。
「えっ・・・・・・・・・・・(滝汗)」
「マジっすか・・・・・・・・(滝汗)」
「マジだ」
言いきったよこのヒト・・・・・・・。
「ひ〜っ!!もうダメ・・・・・・・ガクッ・・・」
「右に同じ・・・・・・・・・・・・ガクッ・・・」
ノンドとバットは開始五分で既にグロッキー状態になってしまった。
「だらしのない奴らだ。もういい!!あとは我輩に任せろ!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!」
ジェットは雄たけびを上げながら猛スピードで掘り進んでいった。
「凄えぇ・・・・・・・」
「サメハダーの体なのにどうやって掘ってるんだろう・・・・」
そこは言ってはいけない領域だ。しかし、数秒後・・・・・・。
「・・・・・ぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああっ!!!」
徐々に大きくなる声、それも悲鳴に近い声がどんどん大きくなっていった。二人はその先を凝視すると自分達の知っているサメハダーが凄い形相で何かから逃げている。
「シンニュウシャハッケン、シンニュウシャハッケン」
彼の後ろには大量のディグダ・ダグトリオがおり、無機質な声を出しながらジェットを追いかけてきた。ジェットは彼らのテリトリーに入り込んでしまったのだ。
『どわああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁっ!!!』
三バカ達はモグラ軍団から逃げおおせた。
「はぁ・・・はぁ・・・。全く酷い目にあったぞ!!」
「どこかのボケ蝙蝠がドジったせいでな!!」
ジェットとノンドがバットを睨みながら呟く。
「ちょっとお二人さん!!全部僕ちゃんのせい!?」
『当たり前だ!!』
ジェットとノンドが見事にハモった。
「うぬぬぬぬぬぬ・・。こうなったら止むを得ん!!正面から殴りこみだ!!行くぞ!!」
ジェットは先ほどまで全否定していた方法で侵入を目論み、門を開けた。
ビー!!ビー!!
見つかった・・・・・・・・。
「あ〜あ・・・・・」
「・・・・・・・・」
バットとノンドは白い目でジェットを見る。
「お前達のせいでもあるんだぞ!!とにかくこうなったら仕方ない!!強行突破だ!!」
『お〜・・・・・・・・・』
明らかに声に覇気がない・・・・・・・・・
「大変ですお嬢様!!」
ルッグとキュウコンがいる部屋にワルビアルが入ってきた。
「どうしましたの?」
「侵入者です!!現在は門の前にいます!!」
「わかった!!
では、行ってきます!!」
「気をつけて」
ルッグは頷き、矢のように飛び出していった。
場所を戻してこちらは屋敷に侵入したジェット達。現在彼らは屋敷の一室に身をひそめていた。
「ねぇ、ジェットさん。七つの秘宝ってどこにあるのかな?僕ちゃん早く帰ってお菓子食べたいんだけど」
「お前は食う事しか頭にないのかこのアンポンタン!!成功したらケーキでもクッキーでも焼いてやるから、今は仕事に集中しろ!!いいか!!この部屋かどうかはわからんが絶対に七つの秘宝が隠されてるはずだ!!いいか!ちゃかちゃか探せ〜」
ジェットがバット達に秘宝を探すよう指示をだした。指示された二人は棚の上の箱をとりだそうと試みるが・・・・・・・・・
ツルッ
「あっ!!」
バットが手(?)を滑らせてしまい、箱を落としてしまった。落ちていく箱の先には・・・・・・・
ゴーーーーーーーーーン!!!
ジェットがいた。彼は運悪くノンド達の真下にいたために落ちてきた箱に頭を打ってしまったのだ。しかも角で打ったらしい・・・・・・・
「痛ええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇっ!!!
痛ええぇよおおおおおおおおぉぉぉっ!!!」
あまりの激痛にジェットは大声を出して叫ぶ。
「え〜い!!このドジが!!何をやってるんだ!このバケモノ!!
だいたいお前達はいつもいつも・・・・」
「お前達は・・・・・・何なんですか?」
ジェットの怒鳴り声を遮る声が聞こえた(勿論彼はわざとバケモノと言った)、それはジェット達三人とは違った声だった。三人はその声のした方向へ振り向く。
「あんたら、うちの屋敷に何しに来たんですか?」
そこには自分達の敵であるズルズキン、ルッグが棒を持って立ちふさがっていた。
「現れたかこのチンピラもどきが!!だがお前の相手をしている暇はないのだ
冷凍ビーム!!」
「うわっ!!」
ジェットは天井に冷凍ビームを放ち、天井を凍らせた。凍った天井からは氷柱がジェット達とルッグの間に入るように落ちてきた。
「さて!!逃〜げ〜ろ」
ジェット達はその隙に逃げていった。
「逃がしませんよ!!それっ!!」
ルッグは逃げていくジェット達を追いかけた。しかし足の遅い種族であるズルズキンでは追いつくのは難しい。
「まぁ、あいつらの考えることなら大体分かってますけどね・・・・」
にやりと不敵な笑みを浮かべるルッグ。
そしてこちらは屋敷の庭
「はぁ・・・はぁ・・・。なんとか巻いたようですね」
「あぁ、とりあえずは一旦引こう。後で仕切り直し・・・・・・
うわあっ!!」
ジェットが逃げている先には一本の棒が彼らを遮るように浮いていた。否、握られていたと置き換えるべきだろう。
「は〜い♪ここで僕から逃げられると思いましたか?」
その棒を握っている張本人、ルッグが余裕綽々の表情で聞いてきた。
「おい!!お前!!なぜ我々の先回りができた!!」
「なぜもなにも、ここは僕の実家みたいなもんですからね。最短ルートをとおってきただけですよ♪」
「うぬぬぬぬぬぬ・・・仕方ない!!ノンド!!バット!!こいつをギタギタの細切れの野菜ジュースにしてやれ!!」
「ほいきた!!ドラゴンクロー!!」
ノンドが真正面からルッグに自身の鋭利な爪を振り下ろす技、ドラゴンクローを繰り出した。
「ほいっ!!」
「なにぃ!?」
ルッグは手に取った棒でドラゴンクローをたやすく防いだ。
「そ〜れ!!」
「うわっ!!」
ドラゴンクローを止めた状態でルッグはノンドの腹を蹴り飛ばした。ノンドは蹴られた勢いで木に叩きつけられる。
「あ痛たたたたたたたたたたたたたたたたっ!!」
ノンドが木にぶつかった衝撃で木から大量の木の実が落ちてきて、ノンドはすぐに木の実に埋もれてしまった。
「毒毒の牙!!」
背後からバットがルッグの変化技”毒毒”と同じ効果を秘めたわざ”毒毒”の牙でルッグに噛みつこうと迫ってきた。
------そうだ!!あの木の実で!!
ルッグは何かをひらめき、ノンドが埋まっている木の実の山に向かってはしりだした。当然のごとくバットもそんな彼を追いかける。
「そこの蝙蝠!!うちの屋敷の特製の木の実は
いかがですかっ!!」
ルッグは棒で二つの木の実を打ち、バットの方へ勢いよく飛ばした。バットはいまだに毒毒の牙を当てようと大口を開けている。
「あがっ!!」
木の実はすっぽりとバットの口にジャストフィット。飲み込もうにも飲むこめず、吐きだそうにも吐きだせなかった。そしてもうひとつの木の実はバットの頭を直撃した。
「うちの屋敷の”カゴの実”の味はどうでしたか?」
ルッグは棒をくるくる回しながらそう言った。彼が打ったのは”カゴの実”と呼ばれる木の実の一種。この木の実は本来眠り状態を解除するものだが、とてつもなく固い為生で食べるのは並のポケモンでは到底不可能といわれてる。少し前のルッグならこのような戦法をとることはなかっただろう。
しかし、頭に直撃すればかなり痛そうである・・・・・・・。
「あ〜、ジェットさ〜ん。オレ達にはかないそうもないですね〜あのチンピラ・・・」
「ほうひはいっふへ〜(そうみたいっすね〜)」
ノンド達が情けない声でジェットに話す。(尤もバットは会話としても成り立たないような声だが)
「まったくどこまでもドジな奴らめ!!もう休んでいいから下がっていろ!!ここは我輩がやる!!」
バット達を押しのけてジェットがルッグの前に立ちはだかる。
「アクアジェット!!!」
ジェットが水を纏いながら、高速でルッグに突っ込んでいった。
------は、速い!!
もともと素早さが鈍いルッグはアクアジェットに反応できなかった。
「アイアンテール!!!」
物陰から一人の影が勢いよく飛び出し、アクアジェットを相殺した。アクアジェットを相殺されたジェットはその正体に驚く。
「ルッグ。大丈夫でしたか?」
「キュ・・・・・キュウコン様!!」
「あ、あいつがか!!」
そう、この屋敷の主のキュウコンだった。七つの秘宝を探していたジェットにとっては願ってもないチャンスだった。
「おい!お嬢様!!痛い目にあいたくなければ我輩にさっさと七つの秘宝を渡すことだな」
「七つの秘宝?そんなのここにはありませんわよ」
「はぁ!?」
キュウコンの言葉にジェットは素っ頓狂な声をあげた。
「嘘つくと針千本だぞこの野郎!!本当のことを言わんか!!」
「本当ですわ。もう他の方にゆずってここにはありまs・・・・・・
-------っ!!」
キュウコンが喋っている最中に悪の波導が飛んだ。ジェットは話を聞く気はさらさらないようである(尤も悪役が話をまっとうに聞くのもおかしいが・・・・・・。
「ならば我輩にサシで負けたら大人しく秘宝を渡してもらうぞ!!その代わり我輩が負けたら大人しく引いてやる」
「わかりましたわ」
ジェットの言葉にキュウコンは戦闘体制にはいった。その瞬間・・・・・・・・・・
「--------って熱っちっぃ!!なんだこりゃ!!」
「な・・・なんか急に熱くなってきましたね・・・」
ジェットとルッグが急に強烈な熱を感じた。その原因はすぐにとれた。
「くそっ!!”ひざしがつよく”なってやがる!!」
「でも、技を出したようには見えないけど・・・・」
そう、実はキュウコンはある特性を発動させたのだ。本来のキュウコンの特性は”もらい火”だが、彼女は極めてレアな特性”ひでり”を持ち合わせていたのだ。
「でも、そんなの関係ねぇ!ハイドロポンプ!!」
ジェットはキュウコンに向けて口から激流を放った。だがキュウコンは目をつぶって避ける様子は微塵もなく、微動だにしない。
バシャアアアッ!!
強力な激流がキュウコンに直撃した。
「はははははは!!我輩の力が分かったか!!」
「成程・・・・。こんなもんですわね」
効果抜群の一致技をまともに食らったキュウコンだが、自分の体についた水を払いながら呟いた。見る限りではほとんどダメージを受けてないようである。
「なんだとおぉ!?」
「(そっか!!さっきは“瞑想”を積んでいたのか!!)」
ルッグは心中でそう分析する。瞑想は特殊攻撃、特殊防御を一度に挙げる技。更に日照りの効果での水技の威力が減少、これらの効果が重なったため、いくら高威力なハイドロポンプでも大した威力にはならない。
「今度はこちらの番ですわよ」
「あぁ・・・やべぇ・・・・」
キュウコンは体を光らせて光を吸収した。ジェットはその様子を見て異常な危機感を感じていた。
「ソーラービーム!!!」
キュウコンは極太の光線をジェットに向けて発射した。本来はチャージが必要なこの技もひでり状態で即効で打つことができるようになるのだ。
「どわああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁっ!!!」
ソーラービームはジェットを飲み込み、煙を発生させた。煙が止むとそこには黒焦げになったジェットの姿が。
「あ〜あ、ジェットさんこんがり焼けておいしそうになっちゃって・・・・・」
いつのまにか木の実が口から外れたバットがジェットを凝視する。
「ばかやろ、ここでジェットさん食っちまったら作者にお仕置きされちゃうだろうが。ここはとっととおうちに帰らなきゃならねぇだろ」
そう言ってノンドはジェットを担ぎ、逃げていった。
「あっ!!待って〜。ここの木の実、結構美味しいから持って帰る〜」
バットは落ちてた木の実を拾いながら逃げていった。