第六十二話 バカサメとボケコウモリの迷コンビ
「ものども!!かかれぇ!!」
ジェットの掛け声とともに手下のポケモン達が一斉に襲いかかってきた。
「フランはフレイムを安全な場所に連れて治療を頼む!!メガヤンマさんはこいつらの相手をお願いします!!」
「はい!!」
「おっけ〜っ!!」
ファルコの指示通りにフランは倒れているフレイムのもとに、メガヤンマは襲いかかってきたポケモン達に突っ込んでいった。
「オレとヨノワールさんはあのサメと蝙蝠を!!」
「わかりました」
そう言って二人はジェットとバットを睨みつけた。敵を目の当たりにしている為かファルコの一人称が”私”から”オレ”になり、いつもより口調が荒くなっていた。
「久しぶりだなヨノワール。お前を探すのに五十六話もかかっちまったぜ」
「フン。私を探すのにそれだけ時間がかかるとはお粗末だな!!」
ヨノワールも普段の丁寧な口調から一変、荒い口調になっている。
「言ってくれるじゃねぇか!!後悔すんなよ!!」
そう啖呵を切りジェットはアクアジェットで突っ込んできた。ヨノワールは横に飛んでかわしたが、かなりのスピードで突っ込んできた為完全にはかわしきれずにかすってしまう。
「ちっ・・・・・・・」
「悪の波導!!」
ジェットは先ほどエムリットを一撃で倒した技、悪の波導をヨノワールに向けて放った。ゴーストタイプのヨノワールには悪タイプの技、悪の波導は効果抜群である。
「ハイドロポンプ!!」
ファルコは水タイプの大技、ハイドロポンプを放ち、悪の波導を相殺した。
「へへっ。オレなんかまだ五十パーセント分の力しかだしてないのに、威力は同じかよ。大したことねぇな」
「何!?」
ジェットの嫌みにまんまとのってしまうファルコ。
「はっ!!オレは言っとくが四十パーセントしか力だしてないからな」
「なんだと!!?おっと言い間違えたぜ、オレは三十だった!!」
「あぁ!オレも間違えた。実は二十パーセントしか出してない!!」
ファルコとジェットが子供じみた口げんかを始めてしまった。
「どっちにしろお前達なんかオレだけで十分だ。バット!!お前はあのトンボを倒してこい!!」
「へ〜い。でもジェットさん。僕ちゃんここんとこ三日間飲まず食わずっすよ。あとでうどんでもおごってくださいね」
「てんぷらでもきつねでもわかめでもなんでもいいから食わせてやる!!さっさと行け!!」
「は〜い♪」
バットは手下と戦っているメガヤンマに向かっていった。
「--------そう言えば確かこいつらは時の歯車を狙っていた・・・・・。だったら!!」
ファルコは頭の中で今回の作戦を練っていた。そして彼は不敵に笑みを浮かべ、ヨノワールに耳打ちをする。
「ねぇ、ヨノワールさん?少しの間だけあのサメをひきつけてもらえます?」
「はい、できますがまたどうして?」
「実は------------------
と言うわけです」
「わかりました」
ヨノワールはジェットに向かっていった。
「おっと!!オイラの相手は団体さんかな?」
メガヤンマはジェットが呼んだ大量のポケモンと対峙していた。
「エアカッター!!」
「うわっ!!」
突如メガヤンマに向かって空気の刃が飛んできた。メガヤンマはギリギリでよけることができた。するとクロバットのバットが姿を現した。先ほどのエアカッターはこいつが放ったのだろう。
「あれ?蝙蝠さん、保安官さんの相手をしていなかった?」
「ジェットさんがこっちに向かえと言ってきたんでな。それより手下のみなさん!!あのトンボをやっつけろ〜!!」
バットがそう叫ぶと手下のポケモン達は一斉にメガヤンマに襲ってきた。
----------かと思われた。しかし手下のポケモンは辺りを見回すだけで攻撃に移す様子がない。そう彼らは致命的なミスをやらかしてしまったのだ。
「バットさま〜!!敵が見えましぇ〜ん(涙)!!」
「しまった〜っ!!!」
初歩的なミスをやらかしたバットはショックのあまりム○クの叫びに近いポーズをとった。そうあくまでも透明状態のメガヤンマが見えるのは見通しメガネをつけたジェットとバットのみ。手下のポケモンはそのような道具を持っていないため、透明状態のポケモンの姿を確認することができなかったのだ。
「ラッキー!!虫のさざめき!!」
メガヤンマは自身の持つ強力な大あごから騒音に近いようなでかい音を出した。手下のポケモンはうるささのあまり一撃でノックアウトした。
「うえっ・・・・・。なんてやかましい音だ・・・・」
その場から少し離れていたバットも先ほどの虫のさざめきで少なからず吐き気に近い不快感を感じていた。相当うるさかったのだろう。
「だったら今度はこっちの番だ!!アクロバット(あっ!!クロバット)!!」
バットは(くだらないことを言ったのはさておき)アクロバットでメガヤンマに突っ込んできた。
「遅いよ!!」
メガヤンマはバットの攻撃を簡単にかわす。
「今度はオイラの番だよ!!エアスラッシュ!!」
「何っ!!?」
メガヤンマは一瞬でバットの隙をついて背後にまわってエアスラッシュを放った。それは先ほどまでのメガヤンマのそれではなかった。バットはあっけにとられて動けなかった。
「うわっ!!」
バットはエアスラッシュをまともに食らってしまった。更にエアスラッシュの追加こうかでひるんでしまう。
「(何で僕ちゃんがメガヤンマの動きについていけないんだよ!!)」
バットは重要なことに気づいていなかった。メガヤンマの特性は”加速”。時間がたつごとに徐々に素早さが上がっていくものだ。今のメガヤンマはポケモンの中でもかなり速いクロバットをもゆうに超える素早さを持ち合わせているのだ。だがそんなことは露とも知らないバットはただ焦るばかりだった。
「エアスラッシュ!!」
続いてメガヤンマはエアスラッシュを連打した。バットはひるんで動けなかった!!
「エアスラッシュ!!」
またエアスラッシュ。バットはひるんで動けなかった!!
「エアスラ(ry」
バットはひるんで(ry・・・・・・・・・
こうしてバットはメガヤンマに六連続エアスラッシュを食らい、更に不幸(?)なことにその追加効果が六連続で発動しひるみっぱなしで全く抵抗できずにやられてしまった。
「へへへへ、これぞ”ずっとオイラのターン!!”なんちって♪」
メガヤンマがどや顔をして言い放った。
「そう言えばあのおさるさんはどうなったかな?」
メガヤンマは倒れているフレイムのもとに向かっていった。
「フレイムさん・・・・・」
こちらは地底の湖から少し離れた場所、フランは倒れているフレイムを介抱していたが、いまだに彼の意識は戻らない。
「こうなったら・・・・・・」
フランは何かを覚悟した様子でフレイムに自分の体を優しく巻きつけた。そしてゆっくりと目を閉じ、体全体から白いオーラのようなものを放った。
「うっ・・・・ううっ・・・」
するとフレイムが少し反応しだした。先ほどの白いオーラのようなものは技の一つ”リフレッシュ”というものだ。この技は本来は状態異常を回復するものだが、それ以外の外傷などにはそれほど意味をなさない。だが彼女は自分の体をフレイムに巻きつけることによってリフレッシュの効果を受けやすくしたのだ。
「・・・・・ううっ・・・」
するとリフレッシュがきいたのかフレイムは意識を取り戻した。
「フレイムさん!!大丈夫ですか!」
「フ・・・・フランちゃん・・・・」
フレイムはゆっくりと体を起こした。
「よかった・・・・・。フレイムさんにもしものことがあったら・・・・わたし・・・・・」
「ごめんなフランちゃん・・・・・。心配かけて・・・・」
意識が戻って安心したためかフランは涙を流していた。これを見たフレイムも今回ばかりは申し訳なさそうに俯く。
「あっ!!おさるさん意識戻ったの!!?」
「って、うわああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁっ!!!」
いきなりメガヤンマが自身の顔面をフレイムにドアップで近づけた。いきなりメガヤンマのドアップ顔を見せられたフレイムは凄まじい勢いで後ずさる。
「何!!そんな態度しなくってもいいんじゃないの!!」
「って、いきなりそんなドアップで突っ込んでこられたら誰だってビビるだろうが!!」
ふてくされるメガヤンマに対しフレイムも言い返す。その様子を見ていたフランに思わず笑みがこぼれる。
「そうだ!!ファルコは!?」
フレイムがはっとした様子で尋ねる。
「あれ?そう言えばあのサメと戦ってたはずなのにいないね!?」
「くそっ!!あの野郎どこに行っちまったんだ!こうしちゃいられねぇ!!」
フレイムはその場を飛び出そうとする。
「待ってください!!」
「な、なんだよ!!」
フランがそんな彼を止める。
「恐らくファルコさんは何か作戦があって姿を消した筈です。もう少し様子を見てからでも遅くはないのでは?」
「(あっ・・・・・・・)そ、そうだな・・・・・/////」
フレイムはうっかりしていたといわんばかりの表情を浮かべる。
「(あれぇ〜、おさるさん。そんな簡単に説得されちゃっていいの〜?あの娘、後輩なんでしょ?)」
メガヤンマが意地悪そうな表情でフレイムに話しかける。
「(あ・・・あれはなぁ!!芝居だ!!芝居!!フランちゃんがどれだけ成長したか確かめてたんだよ!!///」
「ふ〜ん」
フレイムはあくまでも芝居と主張するが、メガヤンマが揚げ足をとろうとしてるかの表情を見せる。
「雷パンチ」
「おっと!!」
ヨノワールはジェットの苦手技、雷パンチで攻撃するが簡単にかわされてしまう。
「そんな鈍い動きじゃオレには勝てねぇぜ〜」
ジェットはヨノワールの周りをうろつきながらヨノワールを挑発する。
「ふっ、口喧嘩することがお前の特技か?さっさとかかってこい」
「なにぃ?」
だが逆にヨノワールが挑発をしかけた。ヨノワールと違って頭が残念なジェットは挑発にのってしまう。
「野郎おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!ハイドロポンプ!!」
激昂したジェットが渾身のハイドロポンプを発射する。
「シャドーパンチ!!」
ヨノワールは自身の手の影をロケットパンチのように打ちだす技、シャドーパンチでハイドロポンプを相殺した。
「おい!!サメ!!お前のお探しの品はこれか!!」
「ん?」
突如ジェットの後ろから声が聞こえた。そこには時の歯車を手に取っているポッチャマの姿が。
「なっ!時の歯車じゃねぇか!!」
「確かこれが欲しいんだったよな〜?」
ファルコはわざとジェットの目の前に時の歯車をちらつかせていた。
「おい!!ペンギン!!それをそっちに渡しなさ〜い!!」
「嫌なこった〜♪ホレパス!!」
ファルコは時の歯車をメガヤンマに向けて放り投げた。
「(成程ね〜)は〜い♪」
メガヤンマは(なぜか)ファルコの作戦を完ぺきに理解し、時の歯車をキャッチする。
「バケモノ!!早くそれを返さんか!!」←わざとバカモノをバケモノと言った
「返すって、それもともとあんたのじゃないじゃん!!それっ!」
今度はフレイムにパスする。
「鬼さんこちら!手のなるほうへ〜♪」
「このサルがあああああああああぁぁぁぁっ!!」
最早ジェットはただ遊ばれてるだけになった。そんな彼を遊んでいるファルコとフレイムとメガヤンマをヨノワールとフランは苦笑いを浮かべて見ていた。
「アクアジェット!!」
「うわっ!」
ジェットはアクアジェットでファルコを攻撃して時の歯車を奪い取った。
「ガハハハハハハハハハハハ!!今回はオレの勝ちだな!!おい!!ボケ蝙蝠!!さっさと戻るぞ!!」
「へ、へ〜い」
ジェットは倒れているバットを起こして穴抜けの玉で脱出した。
「お、おい!!あいつらに時の歯車盗られちまったぞ!!どうすんだ!!」
「まぁ、落ち着け。実はあれはな・・・・・・・」
状況をただ理解していないフレイムにファルコが耳打ちをする。
「マジ!?じゃああいつらって・・・・・・・」
事実を知ったフレイムはうすら笑いを浮かべていた。
「よ〜し!!今回はオレの勝ちだな!!」
場所は変わってこちらはジェットの組織のアジト。
「おぉ!!時の歯車を奪い取ってきたのか!!」
やってきたのはオノノクス。依然リーフ達と戦って無様に負けた個体である。
「おう!!やったぜノンド!!今回はびしっと決めたぜ!!」
ジェットはノンドと呼んだオノノクスに時の歯車を見せつける。
「マジか!!ちょっとオレにも見せてくれ!!」
「あいよ」
ノンドはジェットから半ばひったくるように時の歯車を手に取る。すると時の歯車が突如光だした。
「えっ・・・・・・・」
「さっ、バットよ。なにうどんがいい?」
「えっと・・・・僕ちゃんてんぷらがいいな〜」
ジェットとバットは大量の冷や汗を垂らしながらその場から後ずさるように離れた。
「お、おい!!何だこれは!!」
何も知らないノンドは焦った様子でジェット達に問いかけた。しかしジェット達は全く答える気はなく、そのまま後ずさる。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!
その場で時の歯車が爆発した。実はコレ、ファルコがつくっておいた爆弾型の偽物であり、わざとジェットに握らされたものなのだ。本人曰く”こう言うときの為に作っておいた”らしい。
「あちゃ〜」
「ご愁傷様・・・・・・・」
遠目で見ていたジェットとバットは憐れんだ目でノンドを見ていた。しばらくして爆発の煙が晴れるとそのには爆発で黒焦げになった一体のオノノクス、ノンドの姿が。
「おい、おめぇら。オレのことはめたのか?」
「いや、お前もオレ達と同じギャグキャラにしてやろうと思ってな〜」
ジェット達はニヤニヤしながらノンドに言い放った。黒焦げになったノンドの表情はかつての彼の残虐性はどこにもなく、お間抜けな表情しかうかがえなかった。