第五十八話 とってもたのしー川下り
酔っ払いネズミ(スパーク)の酔いを覚ました後、リーファイメンバーは時の歯車の捜索に向かうべく、巨大岩石群に向かっていた。ちなみにストロングメンバーは違う場所の捜索にあたっていた。
「え〜と、確かこのあたりに南の森という場所があったはずなんですが・・・・・・」
ルッグが地図を凝視しながら歩いていた。このメンバーの中では顔に似合わず博識な彼が地図を読むことにしている。
「南の森?」
「はい、巨大岩石群に向かうにはその森を経由していく必要があるんです」
ウォーターの疑問にルッグは答えた。ウォーターは彼の答えを聞いて小声で”へぇ〜”と言っていた。
「あっ!!あそこです!!」
ルッグは地図をしまい、目の前を指差した。そこには文字通りの巨大な岩の群がそびえたっていた。
「よし!じゃあ張り切って行きましょ!!」
そう叫びリーフはダッシュで巨大岩石群に向かっていった。
「あっ!!待ってください!!」
制止するルッグの声には耳を傾けずに走っていったリーフは数秒後にはその姿を消した。
「は・・速い!!」
「凄いスピードだな・・・」
リーフ以外のメンバーはただあっけにとられる。そんな中ルッグは二歩ほどツカツカと歩き、
「そこ崖です」
と、崖の下を向いて言い放った。そこでリーフは崖から這い上がってきた。そう。彼女は崖から一度落ちたことで姿が見えなくなっていたのだ(かろうじて落ちる寸前に蔓の鞭で崖に捕まったため回避できた)
「は・・早くいって・・・・・」
「よくそんな命掛けのボケできますね〜」
ルッグは若干呆れ気味に言い放った。
「でも、どうします?ここは崖だし戻るにしても川で他のルートなんかないですよ?」
ファイアの言うとおり実はここ、崖と巨大な川によって道がことごとく阻まれていた。
「じゃあウォーターが全員のせればいいだろ」
「ちょっ!?」
スパークが信じられない一言を言い放った。
「おい!親父!!オレ一人で四人ものせれる訳ねぇだろ!!」
「知らん。根性で頑張れ」
これが親の言うことか・・・・・
「よ〜♪久し振りだな」
不意に声が聞こえてきた。五人は声のした方向に振り向くと一人のガマゲロゲが立っていた。
「まさかまたあんたらに会えるなんて思ってもなかったよ♪」
「・・・だれだ?」
「見かけない顔ですね」
なれなれしい目の前のガマゲロゲにスパークとルッグは首をかしげる。
「なぁ、あいつ誰か知ってるか?」
「全然」
リーフは即答した。ファイアもウォーターもうんうんとうなずいている。
「おい!!オレのこと忘れたのか!?第五話に出てきただろうが!!」
「えっ?でもこんな感じじゃなかったでしょ?」
確かに第五話にガマゲロゲは出てきたが、こんななれなれしい奴ではない。
「ホレ!!あの時ヘンなゼニガメの集団がオレ達に襲いかかっただろ!?あの時のオレだよ!!」
「あぁ!!あの時の!!」
ガマゲロゲの力説にリーフははっとした表情を浮かべる。
「それにしても、性格変わりすぎでしょ」
「な〜に、そりゃ五十五話も間があけば性格も変わるってもんよ♪」
相変わらずなれなれしい態度で話しかける。
「それよりあんたら、巨大岩石群に向かいたいのか?」
「はい。でも、八方ふさがりで・・・・・」
リーフは少し俯きながら答えた。
「よっしゃ!!あんたらには借りがあるからな!ちょっとついてきてくれ!」
そう言ってガマゲロゲは近くの小屋に入っていった。リーフ達も彼についていく。
「ここだ」
彼が案内した小屋は特に何の変哲もない通常の小屋だった。あることを除いては・・・・・
「ん?なんか色々ありますね」
ルッグが辺りを見回しながら言った。確かにルッグの言うとおり普通の小屋にはないものが大量にあった。
「ああ、これはいかだだ。これであの川を下っていけばいいんだ」
「でも何でこんなもんが大量にあるんだ?」
スパークは尋ねる。確かになぜいかだがこれほど大量に作る必要があるのかを。
「以前この巨大岩石群には、そこに眠る財宝目当てで来る探検隊がたくさんいたんだ。だがあんたらも見ての通りあの急な崖と川の激流で行く手を阻まれた訳だ」
ガマゲロゲは少しなつかしむような表情で話す。リーフ達は黙って彼の話を聞いていた。
「そんでオレは考えた訳よ!!ここでいかだでも作って探検隊に高値で売れば儲かるんじゃねぇかってな♪」
ガマゲロゲは目をお金にしながら話した。そうとうがめつい蛙だ。
「でも、あそこにあったのが時の歯車ってわかってから客足はばったり途絶えちまって・・・・・
しばらくぼやぼや暮らしていたらあんたらに会ったってわけ♪」
ガマゲロゲはもはやマシンガントークで喋り続ける。あまりの変貌ぶりにリーフ達はただただ呆れるしかなかった。
「じゃあそのいかだを使えばあの川を渡れるのか?」
「あぁ!間違っても沈むこたぁねぇからな!!腕は保障するぜ!!」
ガマゲロゲは自信たっぷりに答えた。
「じゃあ、このいかだ使ってもいいんですか!?」
「おう!!
一人三百ポケでな♪」
「せこっ!!」
ガマゲロゲにスパークが突っ込む。
「そんなケチなこと言うなや〜。二百ポケにせぇ!!」
「あんたもせこいわ!!」
「三百よりはまけん!!」
「どっちもどっちやな・・・・・・」
スパークとガマゲロゲはなぜか競り合いをはじめてしまった。ウォーターは呆れた感じで彼らを見ていた。
「いや、だからな・・・・・・・・〜(中略)〜・・やからまけてくれてもいいだろ!?」
「そりゃ無理だ!びた一文まけん!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
このやりとりの一部始終をルッグはどこから取り出したか分からないビデオカメラで撮っていた。
「ってこら〜っ!!なに勝手に撮っとんじゃ〜っ!!」
「いや〜、おっさん二人が百ポケで言い争ってるのが面白くてwww」
ルッグは少し嫌みな笑い方をしながら話す。
「わかったよ!!じゃあ間をとって二百五十ポケでいいか!?」
「おk」
こうして交渉というなの口論が終わった。
「よ〜し、準備はいいか?」
場所は変わってこちらは巨大な川。ここに五台のいかだがある装置に固定され、そこにリーフ達は一人一台乗っている。
「いつでも大丈夫ですよ〜」
「よし!!じゃあしっかりつかまってろよ!スイッチオン!!」
ガマゲロゲは手に持っていたスイッチを押した。すると装置からいかだは外れ、いかだはそのまま川を下っていった。
「気持ちいい〜♪」
「いやっほ〜っ!!」
いかだは適度な速さで川を下っていく。別に娯楽というわけではないのだがリーフ達はこのいかだの川下りを楽しんでるように見えた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!」
「ひゃっはあああああああああああああぁぁぁぁっ!!」
「あ〜ああああああああああああああああぁぁぁ〜♪」
普段はめったに騒がないウォーターやルッグも、更にはスパークも年甲斐もなくはしゃいでいる。
「はぁ〜楽しかった♪」
「また乗りたいですね〜♪」
リーフとファイアは一足先に川の下流に到着。南の森と思われる森に到着した。
「おっ!!あそこじゃない!?」
いかだからおりたリーフが蔓を指のように指していった。そこには一つの看板があった。
「ご丁寧に看板までありますね」
なぜかここに”南の森入口”と書かれていた。随分新設である。
「おぉ、早いな」
そこにウォーターとスパーク、ルッグが合流。
「いや〜でもいかだの川下り面白かったですね〜♪もう一回行ってきていいですか?」
「うん。まぁ確かにオレも面白かったと思うし・・・・・・・・・・・・
アホ!!」
ノリツッコミだ。ウォーターはファイアをどつく。
「遊んでる場合じゃねぇだろ!!なんとか言ってくれ親父!!」
「いかだの追加料金ってあったっけ?」
「あんたもか〜っ!!」
立て続けにボケられ困惑する水亀ウォーター君。
「あの〜、ちょっとすいません!」
「なんやねん!!」
突如ルッグが話に割って入る。
「耳に水が入って取れないんですが・・・・」
「知らんがな!!」
こんな調子で大丈夫なのか・・・・
「へへへっ、アニキ〜。あいつら行ったみたいっすね」
「けけっ、俺等も後を追いますかい?」
「あぁ、あいつら、いかだを使ったようだな。俺様達もあそこでいかだを借りるぞ」
さてこちらはドクローズサイド。時の歯車を悪用しようと企む彼らはリーフ達の後を追い、時の歯車を奪おうと企てる。絶対無理だと思うけどね♪
「邪魔するぞ」
ヒトカゲはガマゲロゲの小屋に入っていった。
「ん?誰?」
小屋にいたガマゲロゲは入ってっきたヒトカゲ達を凝視する。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・
あっ!!探検隊の方達ですね!!今回はボートのレンタルですか!?」
「あぁ、二人入れる奴を頼む」
「ちょっ!?俺等のスペースはないんですかい!?」
ボスのまさかの言葉にドガース・ズバットは抗議する。
「うるせぇ!!お前ら飛べるから乗る必要ねぇだろ!!」
「(オレ達も川下りしたかったんだけどな・・・・)」
実は川下りを楽しみにしていたようだ。
「ではボートをお持ちしますので少々お待ちくださいね〜」
不自然に丁寧になったガマゲロゲはボートを取りに行くためか、奥の部屋に入っていった。
「お待たせしました〜♪」
「早いな!!」
ガマゲロゲは灰色をした大きめのボートをとりだした。
「え〜、こちらのボートですが本来は3.000ポケのことろを、今回は特別価格!!2.950ポケで!!」
「(50ポケしか変わってねぇ〜!!)」
「よし!!のった!!」
「(のったよ!!このヒト!!)」
ヒトカゲは何も気付かずに交渉に応じてしまった。むろん部下のスカタンク達は彼のとんちきぶりに呆れてる。
「では準備はいいですか〜」
「おう!!」
再び巨大な川。この付近にボートが設置されており、そこにヒトカゲとスカタンクが乗っている(人数の関係でズバット達は乗れずに飛んで後を追うことになった)。
「それじゃあ、行ってくださいませ♪」
ドガッ!!
ガマゲロゲはボートを蹴って川に入水させた。
「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!!気持ちいい〜!!」
勢いよく川を下るボート。
だが・・・・・・・
「ん?なんかボートの調子がおかしくないか?」
「そう言われればなんか変ですな」
ヒトカゲはどこか自分の乗っていたボートの異変に気付いた。ボートが少しひび割れてきた。更に時間がたつごとにボートが少しずつ沈みつつあった。
「な、なんじゃこりゃ〜っ!!!」
しかし時すでに遅し。なすすべもなくヒトカゲ、スカタンク
はボートと共に沈んでいった。
「アニキ〜っ!!!!!
プッ、ギャハハハハハハハハハハハハハハハ!!!こりゃ傑作だなこりゃ!!」
「ははははははははははははは!!」
ボスが沈んだのに助けるどころか大笑いする、蝙蝠と毒玉。そしてもう一人。
「ぎゃははははははははは!!!あんな古典的な手に引っ掛かってやんの!!
あははははははははははは!!!」
ガマゲロゲだった。彼はその後を川の周りにつけたカメラで部屋で監視していた。実は先ほど彼が提供したボートは泥でできた、まさに文字通りの泥船だったのだ。ドクローズが悪徳探検家とのことを知ってわざとこの泥船を高値で提供したのだった。沈む様子を見て腹を抱えて笑っている。
「おい見たかドガース、まるでサ○カ○合戦みたいだな」
「バカ。それを言うならカ○カ○山だろ。てかこの伏字、地味に分かりにくくないか?」