第五十六話 最強の救助隊
「何ぃ!!?失敗しやがっただと!!?」
リーフが残された島のヘドロを掃除している最中、とある建物内から怒声が聞こえてきた。怒声を出したのはサメハダーのジェット。そして彼の目の前には四人のゼニガメ、ゼニガメズがいる。この状況から察するにゼニガメズは作戦の失敗報告だろう。
「てめぇら、また失敗しやがったのか!!今日という今日は・・・・」
「ジェット様〜!!
ごめんちゃい♪」
赤ゼニガメは反省ゼロの様子でこんなことを言い放った。バクフーンと違いジェットのことを完全に舐めていたのだ。舐められてると知ったジェットは・・・・
「貴様ら〜っ!!!今日という今日は絶対に許さねぇ〜っ!!!」
当然のごとく激昂 (げっこう)する。するとジェットはどこからかスイッチのようなものを取り出しそれを押した(どうやって押したかはご想像にお任せします)。
「な・・何だ!?」
ゼニガメズは突如体に異変を感じた。自分達の体が突然思い通りに動かなくなったのだ。そればかりか、なぜか自分の体が勝手に動き、尻を出し始めた。
「よっしゃ来い!!」
ジェットがそう叫ぶと逆立ちしたコマのような格闘ポケモン、カポエラーが出てきた。
「トリプルキックじゃ〜っ!!」
ジェットが命令するとカポエラーは高速回転を始め尻を出しているゼニガメズに急接近する。そして
「ぎゃいん!!」
「痛っ!!」
「ぐわっ!!」
「#%'%W(%$('%$(!!!!」
某番組の罰のようにトリプルキックがそれぞれ三回ゼニガメズの尻に直撃し、四人ともその痛みに悶絶する。
「ジ・・・ジェット様・・・・・」
「なんだ!?」
「実は・・・・・・・・・・・・・」
まだ怒りが静まらないのかジェットの声は苛立っている。そんな彼にリーダーの赤ゼニガメが耳打ちする。最初は怒り顔だった彼だが、徐々にその表情が変化する。
「な・・・何だと!?それは本当か!!」
「はい、今ではどこでもその話題で持ちきりですよ」
「つうか、ジェット様そんなこと知らないんですかwww」
黄色ゼニガメはあからさまにジェットをバカにする。
「貴様らさっさと帰りやがれ〜っ!!!」
『うわあああああああああああぁぁぁぁっ!!』
怒り狂ったジェットは今度は自分でゼニガメズにやつあたりした。やはり一度でもトイレ掃除になったせいか完全に舐められてるのだろう。
「くそっ!!全く腹が立つな!!このこと報告したら気晴らしにゲーセンでも行く!!」
そう言い残してジェットはその場を去った。なぜにゲーセン?
さてゼニガメズが言っていたことは何だろうか。
唐突だが時間はこれより三日前にさかのぼる
「ここかグラス。キザギの森って場所は?」
「あぁ・・・・」
白衣を着たラグラージがグラスと呼ばれたキモリに尋ねる。グラスはその問いかけにそっけなく答えた。
「確かここに時の歯車があったはずだな行くぞ。ラック」
グラスはラックと呼ばれたラグラージに呼びかけ、森の中に入っていった。
「妙だな・・・・・」
グラスが警戒した面持ちで辺りを見回していた。通常ならダンジョンには潜んでいる敵が襲いかかるはずだが、なぜかその敵が一体もいないのだ。
「楽でいいじゃねぇか♪面倒なことしなくていいからよ♪」
「(緊張感のない奴だ・・・・・)」
楽観視するラックを呆れた様子で呟くグラス。
「それともあれか、作者が面倒くさがってもっともらしい理由つけて戦闘描写サボろうとしてんじゃねぇのか?」
「おい・・それ以上言うな・・。つうかお前までメタ発言するな・・・・」
この会話のやりとりはなかったことにしよう。
「初めてみるがこれがそうなのか・・・・・」
ここはキザキの森の最深部。腕と頭に葉がついた蜥蜴のようなポケモンが青色の歯車のようなものの前に立っていた。そのポケモンが手を伸ばそうとした時に、
「------------ちっ!!」
そのポケモンはとっさに左に避けた。その直後先ほどまでポケモンがいた場所で小規模な爆発が起こっていた。
「誰だ」
そのポケモン、ジュプトルは攻撃してきたと思われるキモリとラグラージに冷静に言った。
「お前だな。時の歯車を盗もうとしているポケモンは」
「ちょっと話を聞かせてもらいてぇんだが--------------」
ラックが話している最中にジュプトルは自身の腕の葉を鋭利にして相手を切りつける技、リーフブレードをラックに向けて放った。切りつけられたラックはそのまま倒れてしまう。
「なっ!?」
「次はお前だ」
ジュプトルはそのままグラスにリーフブレードで切りつけた。リーフブレードが直撃したグラスはなんとか耐えたものの、膝をついてしまう。
「ぐっ・・・・・
今日はこのぐらいにしといてやる」
「お前が言うな!」
グラスはそそくさと立ち去るそぶりを見せた。
「フン、お前達の相手をしている程オレは暇ではないんだ」
ジュプトルは再び時の歯車をとろうと歩み寄った。その時
カチッ
彼の足元で何かを押した音が発せられた。足元を見ると鋭利な岩がしめされているプレート状のものがあった。罠である。その瞬間、足元から大量のとがった岩がジュプトルに刺さる。
「ぐっ!!罠か!!」
ステルスロック。この罠のもとで技の一つだ。ジュプトルはステルスロックに耐えつつ時の歯車に近寄る。
「----------------ぐあぁっ!!」
突如拳が飛んできた。ジュプトルは反応できずにそのまま食らってしまう。その勢いでジュプトルは岩に叩きつけられた。叩きつけられた先の岩は粉々に砕け散った。
「おめぇさん、ジュプトルのわりに中々やるじゃねぇか」
攻撃したのは倒れていた筈のラグラージ、ラックだった。腹に傷を負っているが、それでも彼は平然とジュプトルの前に立っていた。
「(馬鹿な!このラグラージ、オレのリーフブレードを食らって立っていられるだと!!)」
ジュプトルはこの現状に驚きを隠せなかった。ラグラージは水・地面タイプ。草タイプの技にはめっぽう弱い筈だが目の前のラグラージはそれを食らって平然と立っていたのだ。それでもジュプトルは痛みをこらえながらも、もう一度リーフブレードの構えをとる。
「エナジーボール!!」
ジュプトルは両手から緑色の球体エナジーボールをラックに向けて放った。エナジーボールはそのまま直撃し爆発を発生させる。
「やったか!?」
流石に草タイプの技を二度も受けれまい。そう思ったジュプトルは爆発した先を凝視していた。
「成程なこれほど威力のあるエナジーボールは久方ぶりに見たな」
「なっ・・・・・・」
爆発から現れたのはやはりほぼ無傷のラックだった。
「今度はこちらから行かせてもらう」
そう言ってラックは口から大量の風雪を放った。辺りの木々はみるみるうちに凍っていく。
「ぐっ!」
ジュプトルは寒さに思わず体を震わせる。それでも寒さをこらえながら彼は反撃しようとラックに向かって走っていく。
「エナジーボール!!」
「遅い」
エナジーボールは軽くラックに交わされた。先ほどのジュプトルと比べると動きが格段に鈍くなっていた。実は先ほどラックが放った技は吹雪と凍える風の合わせ技、すなわち大技で攻撃しつつジュプトルの素早さを奪っていったのだ。
「おめぇさんも中々やるようだが、これ以上やりあっても無意味だ。なぜ時の歯車を奪んか話させてもらうぜ」
「答える必要はない!!」
ジュプトルはそう啖呵を切りながらカバンから水晶色の玉、不思議玉を取り出す。
「--------------っ!!」
不思議玉を手にとった左手が突如何者かによってはじかれた。その正体はキモリのグラスである。ジュプトルの左手に電光石火で攻撃していたのだ。
「・・・・・・・・・・・・・」
グラスは無言でジュプトルを睨みつけていた。ジュプトルは目の前にいる自身の進化前のポケモン、キモリに威圧感を感じていた。
「・・・・・・・・」
「ぐっ!!」
グラスはジュプトルに向かって急接近し、パンチを放った。ジュプトルはギリギリで反応しリーフブレードで応戦する。グラスはパンチやキック、ジュプトルは両腕のリーフブレードでの肉弾戦になった。少しの間は打ちあいが続いたが、それも長くは続かなかった。
「(くそっなんて奴だ!!)」
先に疲弊してきたのはジュプトルだった。しかも相手のキモリは技を使っていない。ただの攻撃に押されていたのだ。
「終わりだ」
「------っ!しまっ・・・・・」
グラスは一瞬の隙をついてジュプトルにハイキックを放った。グラスの左足は綺麗にジュプトルの顔面をとらえた。
「ぐはぁっ!!」
ついに体力の限界に達したのかジュプトルはキックを食らいダウンする。倒れたジュプトルにグラスはのしかかる。
「さて、話してもらうお前はなぜ時の歯車を狙う・・・。質問に答えないと・・・・」
グラスはジュプトルの喉元に銀の針を突きつける。
「分かった。だがオレも聞きたいことがある。なぜお前達はオレの目的が分かった」
「それはお前の理由を聞いてから話す。さっさと喋れ」
グラスはジュプトルから降りながらそう言った。
「・・・・・・・・・・分かった」
ジュプトルはふぅとため息をつきながら話し始めた。自分のいきさつ、目的を。
「なるほどな」
「信じるかどうかはお前達次第だ。さぁ、今度はこっちの番だ。なぜお前達は・・・・」
「感じたんだよ」
ジュプトルの言葉を遮ってラックは言った。
「オレ達ラグラージの力だ。このごろこのあたりの風がどうもおかしかったからな」
「そうか・・・・」
確かにラグラージにはほんのわずかな風や音の違いを読み取ることができる能力がある。
「さて、これからオレをどうするつもりだ」
ジュプトルは覚悟していた。自分の運命はこの二人にゆだねられている。
「ラック」
「なんだ」
「ジュプトル(そいつ)の治療をしてやれ」
「何!?」
「あいよ」
グラスから出た言葉はジュプトルにとって意外なものだった。
「お前達。オレの言うことを信用するのか?」
「あぁ。お前さんと闘っているときになんとなくそんな予感はしたんだがな」
おっと少し動かないでくれよ」
ラックはカバンから様々な道具を取り出し、喋りながらジュプトルの治療を始めた。するとジュプトルの傷があっという間に消えていった。ジュプトルは終始この2人に驚かされっぱなしだった。
「うっし!!終わったぜ♪」
「(まさかあれだけの傷をこうも簡単に治すとはな・・・・)」
ジュプトルはラックの医療技術に驚いていた。
「おい」
「なんだ」
今度はグラスが話しかける。
「これを持って行け」
グラスが差し出したものは時の歯車だった。
「重ねて聞くがオレを信用していいのか?」
「当たり前だ」
「ふっ・・・・恩に着る」
ジュプトルは時の歯車を受け取った。すると・・・・・・
「ちっ!!」
「来たな」
「大丈夫だ」
突如辺りが灰色になり始めた。時の歯車をとったことによりこの一帯の時間が停止し始めたのだ。グラスは不思議玉を取り出し、それを掲げた。すると三人の体が光に包まれた。
「ここは・・・・・」
ジュプトルは辺りを見回しながら言った。
「キザキの森の入口だ」
グラスはぼそっと言い放つ。
「本当ならわたし達もお前に協力したいとこだが、少し用があるのでな。これで失礼する」
「その前にもう一つだけ聞かせてくれ」
ジュプトルは去ろうとするグラスを呼びとめた。
「なんだ」
「お前達はもしかして・・・あのブラザーズか?」
ブラザーズ。それはかつてこの世界に隕石が衝突しようとしたことがあった。だがそれはとあるキモリとミズゴロウの救助隊によって阻止されたのだ。それが先ほどジュプトルが言ったブラザーズである。
「・・・・ばれたらしょうがない。そうだ、わたし達は救助隊ブラザーズだ」
「やはり、そうか通りで強い筈だ」
「用件はそれだけか。なら帰るぞ」
グラス達はジュプトルを残してキザキの森を去っていった。
「まさかあのブラザーズがここにいるとはな・・・・・。っと、オレももたもたしてられないな」
ジュプトルもキザキの森を後にした。
「なぁ、グラス。これからどうするんだ?」
「あのジュプトルの話を聞いてすこし気になることがあるんだ」
「まぁ、お前さんが行くならオレもついていくぜ」
「悪いな・・・・」
グラス達が向かって行った先は・・・・・・・