第五十三話 シロのカラクリ
バカ・・・・カバルドンとその助っ人のヌケニンを退けた(ヌケニンは勝手に倒れただけだが)たリーファイ・ストロング一行。現在は城の内部を散策しているのだが・・・・。
「こんなとこにもヘドロを流しやがって・・・・」
ウォーターが苛立った様子でぼやく。このキノガッサの城にも島と同じ成分のヘドロが所々にあふれていた。
「吐き気がするな・・・・・」
「そう?あたしは結構いいと思うんだけどなぁ・・・」
シャイン以外は”それは毒タイプだからだろうが”と思っていた。くどいようだがこのヘドロは黒いヘドロと毒毒玉の成分が半分ずつ含まれているので毒タイプが含まれているシャインには劣悪というより、むしろいい環境なのだ。
「ん?扉があかないぞ!?」
マッハは歩いている途中に見つけた扉を開けようとするが、鍵がかかっているからか一行に開く気配がない。
「こういった類のところでは別の部屋で鍵が隠されてると思いますね」
「まぁ、妥当なところでしょうね」
リーフの考えにルッグも納得する。他のメンバーも同じ考えだ。
「しかし、今まで通ってきた通路で他の扉があったところは・・・・・」
「ひとつ・・・しかないよな・・・」
ライクの言葉を遮るようにスパークが代弁する。一行は今まで来た道を戻ることにした。
リーフ達は鍵があると思われる部屋にたどりついた。尤も”思われる”だけにすぎないのでここにあるかは断定できないが。
「これって・・・・・」
扉越しに物音や騒いでいる声が聞こえてきた。それもそれなりの人数と思われる数の。
「妙に騒がしいですね・・・・・」
「えぇ・・・・・・」
ファイアとリーフが警戒した面持ちで呟く。
「では私が開けるぞ」
ライクが慎重に扉を開けて、その隙間から部屋の内部を除いた。その光景を見てライクは一瞬硬直し、そのまま扉をしめた。
「ど・・どうしたんだ?」
「・・・・見てみろ・・・・」
ライクに促され次にマッハが中を見た。すると彼もライクと同じように硬直したあとに扉を閉めた。そんなやり取りが繰り返された。
「なぁ〜、○○持ってないか?」
「悪ぃ〜、まだそこまで行ってないんだよな〜」
「まじか〜」
サワムラーやエビワラーといった格闘タイプのポケモンが散らかり放題の部屋でなぜかゲームのポケモンをしていたのだった。
(余談だがバージョンはブラック・ホワイトである)
「(なんだこの屋敷は・・・・・・・・)」
部屋をのぞき見ていたリーファイ・ストロングはこう思わざるを得なかった。ただ一人を除いては・・・・
「(す・・・3DSが!!)」
「(そっちかよ!!)」
リーフの場違いな言葉にファイアが突っ込む。
「でも、あいつらはポケモンに夢中になってるようだから、もしかしたら気付かれずに鍵をとれるかも知れないな」
「(無理っぽいけど・・・・)まぁそうするしかないな」
スパークの提案にウォーターも(一応)納得。結局そのまま部屋に入ることにした。
「よし!対戦するぞ!!」
「ルールは?」
「Lv.50で三体三な!!」
エビワラーとサワムラーがいきなりポケモンバトルを始めた。よく見ると他のポケモン達も(ゲームでの)バトルを始めていた。
「(ぷぷっ、こいつら全然気付いてないですね・・・)」
ルッグが嘲笑うように呟いた。思い切り真横を横切っているにもかかわらず、ここのポケモン達はまるで無反応である。
「(あっ・・・あった!)」
リーフが先ほどの扉のものと思われる鍵を発見した。それを拾いにいく。
「(しまっ・・・!)」
踏み場のない足場に足をとられたのかリーフは転倒してしまい、そばに寝転がっていたポケモンにぶつかってしまう。
「痛っ!」
「(あっ・・・・・・(汗)」
ぶつかったポケモン、カイリキーは寝そべった状態で頭を押さえながらリーフの方に振り返る。
「(しまった〜)」
「もしかして、キノガッサ様を倒しに来たのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
カイリキーの問いに仕方なく無言で頷く。するとカイリキーは・・・・・
「ホレ・・・・」
「?」
カイリキーは落ちていた鍵を拾ってリーフに手渡した。意外な行動にカイリキー以外かきょとんとする。
「持って行け。これであのキノガッサ様を倒してくれ」
「どういうこと?」
城内のポケモンとは思えない対応に思わず問いかける。
「この城の主のキノガッサ様は島の住人を買収して、自分の手先にした。だからお前達に倒してもらいたいのだ」
「で、どうやって買収していたんですか?」
ファイアが買収というワードに反応する。
「いや、あいつらが今やってるポケモンBWと3DSだけど」
「(凄えええええええええええぇぇぇぇぇっ!!!)」
ウォーターは驚きのあまり思わず大声をあげそうになった。
「(キノガッサ強い・・・・・)」
「(買収されようかな・・・すぐ裏切って・・・・)」
スパークとルッグはこんなことを考えていた。
「わかりました。キノガッサは必ず倒します。それでは」
リーフは鍵を受け取りながらこう誓った。去ろうとするとカイリキーが呼びとめる。
「相手は不死身だ。まともにぶつかっても勝ち目はないだろう。戦闘というものはは相手を知らずに勝つことは不可能だ」
カイリキーは真剣な表情で語りかける。だが・・・・
「いや、・・・そのナリで言っても説得力がないんだが・・・」
マッハの言うとおりカイリキーは寝そべっている状態である。そんな状態の奴に語られても説得力も何もない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さっ、ポケモンするか♪」
そんなことを無視してカイリキーも3DSを取り出してポケモンを始める。
「・・・・・・・帰るぞ・・・」
ライクを先頭に部屋を去っていった。
「とにかく鍵を手に入れたわね♪」
「・・・・・・・・・・・・・・」
シャインが嬉しそうに言うがライクは複雑な表情を見せる。尤もほとんどのメンバーがライクと同意であるが。
場所は変わってこちらは残された島の集落。保安官のファルコ達は住民の救援活動を続けていた。
「よお!!保安官さん達よ!!」
島の主のダイケンキがファルコ達に声をかけた。
「どうしました?」
「お疲れのところすまねぇが、これをあの探検隊達に届けてやってくれねぇか?」
ダイケンキはそう言って懐から液体の入っているビンをとりだした。
「なんですこれは?」
「あぁ、あのキノガッサを倒せるかもしれねぇ液体だ。これをあいつらに渡してくれねぇか?」
「じゃあ私が行きます」
「いやいや、オレが行くぜ!」
ファルコとゴウカザルが志願する。
「では我々が行きましょう」
「どうぞどうぞ!!
って言えよ!!」
ゼニゼニズが志願するとファルコがお約束の一言を言い放った。しかしゴウカザルは言えなかったため突っ込まれる。
「まぁ、どっちにしろ我々が行こうと思ってたんですけどね」
「お願いしますね」
ゼニゼニズはダイケンキからビンを受け取って城に向かった。