第五十話 残された島
「お呼びですかバクフーン様」
例の薄暗い建物内部、四人のゼニガメが彼のリーダーのバクフーンの前にいる。彼の近くにはサメハダーのジェットがいる。
「今度の仕事は今から渡す地図で七つの秘宝を手に入れることだ。サメハダー」
「はいよ」
ジェットは四人のゼニガメ、ゼニガメズに古びた地図を手渡した。
「ここは・・・・!」
「この島なんて我々じゃ無理ですよ!!」
「じゃあかあしぃ!!」
「「「ひゃ〜っ!!」」」
ジェットの叫び声にゼニガメズは思わず飛び上がる。
「ごちゃごちゃ言ってねぇでさっさと池〜っ!!」
「活字ボケはやめてください!!」
「お黙れ!!さっさと用意せ〜い!!」
ゼニガメズは準備に向かった。それにしても無茶苦茶なサメである。
ドクローズの(別の意味の)馬鹿騒ぎからの翌日、リーファイメンバーはいつも通り探検の準備をしていた。そこへ・・・・・・・
「失礼するぞ」
キモリとラグラージが入ってきた。ラグラージは白衣を着ていることから以前オノノクスを圧倒した二人だろう。
「あっ!!もしかして貴方方は・・・・・っ!!」
ルッグが口を開くや否やキモリはすぐさまルッグの口をふさいだ。
「(私たちの正体を知っていたとしても、できるなら黙っててほしい!!)」
「(ど・・どうしてです・・・?)」
「(今は話せないが、とにかく頼む!)」
「(は・・・・はい・・)」
キモリは小声でルッグにそう耳打ちした。ルッグは彼の威圧感におされそのまま承諾する。
「ルッグ。あの人が誰か知ってるのか?」
「い・・・・いえ・・・(汗)」
スパークの質問にルッグは冷や汗交じりに答える。尤も彼の嘘はバレバレかもしれないが。
「ところでどうしてここに?」
「あぁ、とりあえずこれをみてほしい」
リーフの言葉を待ってましたと言わんばかりにラグラージが地図をとりだした。
「ここは・・・・・」
「”残された島”と呼ばれるここからかなりかけ離れた孤島なんだ。そしてここに七つの秘宝の一つがかくされてるらしい」
「「ええっ!!?」」
ラグラージの言葉にリーフとファイアがハモる用に叫ぶ。
「オレ達もここにあるのが知ったのはいいが如何せん遠すぎてポケモンの力ではどうしてもたどりつけないんだ。そこでお前さんたちに船を持っているポケモンを知っているか聞きに来たんだが・・・・・誰か心当たりはないか?」
ラグラージは少々困り果てた様子で話した。彼の言葉に五人は互いの顔を見合わせる。一人だけだが心当たりがあったのだ。
「ローブシンなら!!!」
代表するかのごとくウォーターが叫んだ。しかし彼には問題が一つ。
「でも、あの人が動いてくれますかねぇ・・・・・」
ファイアの言うとおり彼は極度の面倒くさがり屋。当然このようなことに動いてくれるとは思えない。
「とにかく、いるんだな」
キモリの言葉に五人は首を縦に振った。
「よし、お前達に残された島の七つの秘宝の回収に行ってもらいたいのだが?」
「嫌です!!」
リーフの返答にキモリは一瞬表情が硬直する。
「行ってくれるか?」
「行きたくありません!!」
リーフのあまりの意外な言葉にキモリの顔色がますます蒼くなる。しかし彼以外のメンバーは特にどうとも思ってないようだ。
「行ってくれr・・・・」
「アドリブできなきゃダメでしょ〜」
「融通全くききませんねぇ〜」
リーフ&ファイアのダメだしにキモリはただ冷や汗を垂らすのみだった。
「こいつはホンマに台本通りじゃないとアカンんねんな!!ガハハハハハハハハハ!!」
ラグラージはそんなキモリを見て一人豪快な笑みを浮かべていた。
「まぁ、こんなアドリブきかない馬鹿な蜥蜴はほっといて。お前さんたち。頼んだぞ」
「は〜い」
ラグラージには台本通りに答えた。キモリは当たり前だが一人納得できない表情を浮かべていた。
さて場所は変わってこちらは支障・・・もとい師匠ローブシンの家、リーフは扉をノックする。
「はい、どなた?」
現れたのは弟子の打撃・・・・じゃなくてダゲキだった。
「久しぶりですね。いきなりなんですが・・・・・・・・・」
リーフは自分達が残された島に向かう為にまた船を貸してもらえるように頼みこみに来たことを話した。
「わかったッスよ!!それじゃあ自分が師匠をおどしt・・・説得してみるッスよ!!」
一瞬本音が出かかったようだが気にしない。ダゲキは部屋に戻っていった。その直後・・・
「ぐおわあぁっ!!・・・・・・ぎょふぉあっ!!・・・・・があぁっ・・・・」
一人の男の叫び声が何度か聞こえてきた。その叫び声も次第に弱まっていっている。
「(もう何がおこったのか予想できるな・・・・・)」
五人してそう思っていた。むしろ思わざるを得なかった。そうこうしているうちにダゲキとローブシンが姿を現した。しかしローブシンは全身が打撲や切り傷に見舞われている。理由は・・・・・・・お察しを・・・・・
「師匠も快くokしてくれましたからね♪それでは行きますか!!」
ドSダゲキは取り繕うような笑みでリーフ達に話しかけた。
:残された島:
「うっ・・・・・・・・」
「大丈夫ルッグさん?」
「うっぷ・・・・・・」
船は目的地に到着したものの、再び乗り物酔いしたルッグ。リーフの問いかけにも答えることもできないようだ。ちなみにローブシンは面倒なので動かず、ダゲキは彼が帰らないように見張ることにした
「なっ!!?」
スパークは島を一通り見回した時、その光景に絶句した。辺りが紫色に変色しており、植物も無残なまでに枯れ果てていたのだ。
「一体これは何なんだ・・・・・・っ!!!」
スパークは辺りを見回していると急なめまいに襲われた。
「親父!!」
「大丈夫ですか!?」
ウォーターとファイアが倒れかけた彼のもとに駆け寄る。
「もしかしてこれは・・・・」
「時空の叫び?」
ファイアが導き出したのはあまりに素っ頓狂な答えだった。
「違うだろ!!毒を浴びたんだろうが・・・・・・・あれ?」
ウォーターが声を荒らげるかと思いきや彼も急なだるさを感じた。さらに・・・・・
「な・・・何?」
「か・・体が・・・・」
「さっきよりもだるい・・・・」
立て続けにリーフ・ファイア・ルッグも同じように毒に侵されていった。そのためメンバー全員が毒状態になってしまう。
「ちょっと待って。アロマセラピー」
リーフは頭の葉から心地よい香りを発した。すると体中の毒気が抜てきた。
「よし、これなら大丈夫・・・・・・・えっ?」
なぜかまたしても全員が毒状態になってしまったのだ。それも治した直後であるにも関わらず。
「まずくねぇか、こりゃ」
「これは毒の大本をどうにかしないとね」
「それは無理よ」
リーフの言葉にどこからか声が聞こえた。彼女は声のした方向に振り向くとそこには紫色の体をした背中にトゲがあるポケモン、ゲンガー・赤色を基調とした鎌の手を持つポケモン、ハッサム・腕にはヒレがついたスピード感を感じるサメのようなポケモン、ガブリアスが立っていた。ガブリアスだけがなぜかピンク色のスカーフを首に巻いている。
「あなた達は?」
「話は後よ。まずはこれをつけた後にこの木の実を食べて」
リーダーらしきゲンガーがリーフ達にピンク色のスカーフと桃色の木の実を手渡した。それぞれモモンスカーフとモモンの実と呼ばれる毒を防いだり回復できる道具だ。
「は・・・はい・・・・」
リーフ達は言われた通りにモモンスカーフを身につけ、その後にモモンの実を食べた。すると体の毒気が抜け、更に毒に侵されることはなかった。
「ど・・・毒が・・・」
「抜けたな・・・」
「ふぅ、これで一安心ね」
ゲンガーはその風体に似合わないにこやかな表情をしていた。
「助かったぞ。それであんた達は?」
この亀はあったばかりの相手にもため口なのか・・・・・・
「あたし達はゴールドランクの探検隊ストロング。んで、あたしがリーダーでゲンガーのシャインよ♪よろしくね♪」
「(シャインって面じゃねぇだろ・・・・・)」
シャインと名乗るゲンガーを見てウォーターは心の中で突っ込んだ。
「それでこっちがハッサムのライク」
「・・・・ふん」
シャインの紹介にライクと呼ばれたハッサムは鼻であしらう。
「こんな感じだけど根はやさしいのよ♪さっきもライクが”あいつらを助けるぞ!”って真っ先に助けようとしたんだから♪」
「・・・・・・・・余計なことを喋るな・・・・・」
シャインは途中でライクの声真似をしながら喋った。ライクはシャインを睨めつけながら言い放った。
「それでこっちがガブリアスのガブちゃん♪」
「おい!!おれをその名前で呼ぶなっていつも言っているだろうが!!」
ガブちゃんと呼ばれたガブリアスはシャインの紹介に文句をつける。
「違うぞ!おれにはマッハって名前があるんだからな!!」
ガブリアスは今度はマッハと名乗る(というか先ほどのは自分で名乗った訳ではないが)
「それでお前達は何者だ?なぜここに?」
ライクは腕組みをし、壁にもたれかかりながら問いかけてきた。リーファイメンバーはそれぞれ自己紹介の後、自分達が残された島に来た目的を話した。
「な、七つの秘宝!?」
「ま・・まさか・・・!」
「この島にあるのか!!?」
シャイン・ライク・マッハの順で驚いた声を上げる。
「それでストロングの方達はどうしてここに?」
返す形で今度はファイアがきいた。
「それはね・・・・・・----っ!?」
シャインは理由を話そうとしたが、途中で区切ってしまった。どこからか物音が聞こえたのだ。
「何だこの物音は・・・・」
「ガブちゃん!もしかすると・・・・・」
「ああ、急ごう!!」
シャインとマッハは物音がした方向に走っていった。
「あれ?ライクは・・・・?」
「こっちだ」
既にライクはかなり先に行っていた。
「速!!」
「お前達が遅いだけだ。ぐずぐずしてると置いていくぞ」
そう言ってライクは真っ先に行ってしまった。
「やれやれ・・・・・相変わらずね」
「言ってる場合じゃないだろう!!オレ達も行くぞ!!」
シャイン・マッハもライクの後を追った。
「わたし達も急ぎましょ!」
「「はい!!(ああ!!)」
リーフ達もストロングの後を追っていった。