第四十九話 オレは懲りるという文字を知らない
これはスパーク達がジェットと遭遇してから数日たった日の話
「さて、買い物も終わったし家に帰るとするか!」
「うん!!」
二人のポケモンが仲良く道を歩いていた。会話から想定すると恐らくこの二人は兄弟なのだろう。
「それにしても、お前は本当にそれがお気に入りだな」
「うん!だってこの宝石、すっごく綺麗だからすっかりきにいっちゃった♪」
小さいほうのポケモンは懐から赤色の宝石を取り出して満足そうにそれを眺める。そんな二人の背後に一人の影が・・・・
「おっとごめんよ!!」
「うわっ!!」
後ろにいたポケモンがその宝石を持っていたポケモンを突き飛ばした。
「大丈夫か!?おい」
「へへへっ・・・悪いがこいつは頂いたぜ!!じゃあな!!」
そのポケモンは宝石を持ち逃げする。残されたポケモンは突き飛ばされたポケモンを介抱していて反応できなかった。
「あーっ!!炎のジュエルが!!」
「たぶんあいつが盗んでいったな。追うぞ!!」
「うん!」
残された二人は盗んでいったポケモンを追いかける。
「へへへっ、上手くいきやしたぜ」
憎たらしいほどの笑みを浮かべながら報告するのはスカタンク。彼のリーダーのヒトカゲに成功の報告をしているようだ。
「よくやったな。これを使って・・・・」
「どこかに売り飛ばすんですかい?」
ヒトカゲの言葉を遮ってドガースが言った。
「馬鹿かテメ―は、ヒトカゲ兄貴がそんなことするわけねーだろうが」
「そうだぜドガース。この炎のジュエルを使ってアニキはな・・・
バトルサブウェイに挑戦するに決まってんじゃねぇか!」
「「だあああああぁぁっ!!!」
今度はズバットのボケにヒトカゲ、スカタンクがずっこける。
「このスカタン!!んな訳ねーだろ!!このクソハゲ!!」
ヒトカゲはなぜかスカタンクをド突く
「お〜痛っ!!何であたしが〜っ!」
「やつあたりや!!」
「んなアホな!!」
「はいはい、くだらないことは置いといて、さっさと作戦に移りましょうや」
喧嘩(尤もスカタンクが一方的にやられているが)の仲裁に入るズバット。だが・・・
「「元をたどればテメ―のせいだろうが!!」
「アウチ!!」
ズバットはそんな二人に殴られてしまう。ドガースはため息交じりにそんな彼らを眺めていた。
「とにかく今回の作戦は何なんですかい?」
「おう、話がそれたな。耳貸せ」
「は〜い!」
「だああああああああぁっ!!」
そう言ってスカタンク達は一斉に耳の模型を差し出した。ヒトカゲはまたしてもド派手にずっこける。
「活字だけじゃ分かりにくいボケするな!!内緒話だよ馬鹿!!いいか・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ヒトカゲは三人に耳打ちをする。スカタンク達は納得した表情を浮かべた。
「「「成程!!」」」
「よし!!作戦決行だ!!」
「「「ヘイ!!」」」
そう言ってドクローズの四人はその場を去っていった。
一方、リーファイはナットレイ・キモリ・ラグラージと一度別れ、一度自分たちの家に戻ることにした。
「はぁ〜。かれこれ一カ月位出番なかったわね・・・」
「って、開口一番の台詞がこれですか・・・」
少しばかり休養をとることにしたリーファイは特にすることもなくただぼんやりと座っていた。ちなみにスパーク一行も戻ってきている。
「それにしても親父。なんで勝手に出ていった」
ウォーターは少し怒り気味に言い放った。体調が万全でもないにも関わらず勝手に出ていったことに心配していたのだ。
「まぁ・・・あれだ!!散歩だ散歩!!」
「散歩で酔っぱらう奴がいるか!!」
スパークはあえて事実を隠した。あまり息子達に心配をかけたくなたったのだ。
コンコン
「?????」
「誰だろう?」
扉をたたく音が聞こえたのでファイアが扉を開ける。
「はい、どなた?」
扉を開けた先にいたのはオレンジ色を基調としたヒヨコの姿をしたポケモン、アチャモとその進化系のワカシャモだった。実はこの二人、冒頭でスカタンクに炎のジュエルを奪われたポケモン達なのだ。
「どうされたのですか?」
「探検隊のチームリーファイの方ですか?」
「はい。で、用件は?」
ファイアがそう言うとアチャモが身を乗り出すように叫ぶ。
「炎のジュエルを取り返してきてほしいんです!!」
「ほ・・・炎のジュエル?」
炎のジュエルという単語に首をかしげるファイア。
「実は昨日道を歩いていたらへんな輩に炎のジュエルを盗まれてしまって・・・・。そして今日起きてみたら郵便受けにこんなこのが入っていたんです」
そう言ってワカシャモはファイアに一通の紙切れを出した。そこにはこう書かれていた
:クックック、お前らの炎のジュエルは我々が預かった。返してほしければエレキ平原に来い。まぁ弱っちいお前らには到底無理だと思うがな。せいぜいそこいらの頼もしい探検隊に頼むこったなクックック・・・
ドクローズより:
「(馬鹿だこいつら〜っ!!)」
ファイアは心中でこう叫んだ。なぜか脅迫状に自分たちのチーム名が書かれていたのだ。
「それからアチャモ一人では危ないから僕一人でエレキ平原に向かったんですが、あそこは強力な電気ポケモンが多くて何度挑んでも歯が立たなくて・・・・・」
ワカシャモは徐々に涙声になりながらも話した。(超絶的な馬鹿だが)このような悪行三昧なドクローズをファイアはそろそろ懲らしめておこうかと思っていたのだ。
「わかりました!!炎のジュエルは僕達が取り返してきます!!」
「ほ・・本当ですか!?」
「嘘言うわけないじゃないですか。だからしばらく待っていてくださいね」
ファイアは満面の笑みでワカシャモに慰めるように話す。
「では。少し準備してきますね」
そう言ってファイアは自分の家に戻っていった。
「ありがとうございます!!」
ワカシャモはファイアに頭を下げながらお礼の言葉を述べた。
「えぇっ!?脅迫状!?」
ファイアはリーフ達に今までのいきさつを話した。その話を聞いて全員が険しい表情を浮かべる。
「誰がそんな酷いことを!!」
「ドクローズって思いっきり書いてあったろ!!ちゃんと見ろ!!このBA☆KA!!」
リーフのボケにかなり声を荒らげながら突っ込むファイア。いつもよりつっこみが荒々しい。
「とにかくあいつらは今度という今度はきっちり制裁しないとな」
「そうだな。流石にこれは酷いな」
「(ふふふふふ・・・・空気扱いの憂さ晴らしを晴らして殺りますか♪)」
ウォーター・スパーク・ルッグが順番に言った(尤もルッグは思っただけだが)。
場所は変わってエレキ平原
「ここがエレキ平原か・・・・」
「エレキというだけあって雷が強いですね・・・・」
「んなこと言ってないで入るぞ」
ウォーターを先頭に一行はエレキ平原に入っていった。
リーフ達がエレキ平原に入って行った頃ドクローズは・・・・・・・
「へへへ、我ながら上手いアイディアを思いついたってもんよ♪」
「まさか馬鹿なアニキがこれほどの手を思いつくとは思いませんでしたよ」
「そう褒めるでない♪」
ヒトカゲは満面の笑みで答えていた。そんな彼の足元で
カチッ
「??????????????」
突如として嫌な予感しかしない音が鳴った。その音がするとヒトカゲの足元から大量のガスが噴出される。
「うわっ!!目が〜っ!!目が〜っ!!!」
「あのネタをやってる場合ですか!!」
つまらないことをやっている間に蔓延していたガスがおさまった。しかし・・・・・・・・・
「ちょ・・・・・・・・・・・(滝汗)」
そこにいたのは大量の電気タイプのポケモンだった。そろいもそろって敵意むき出しであった実はヒトカゲが踏んだのは呼び寄せスイッチというダンジョンに仕掛けられている罠の一種だった。呼び寄せスイッチとは踏んでしまうと、ダンジョンのポケモンを大量にまわりに呼んでしまうという大変極悪な罠である。
「どどどどどどどどどどど・・・ど〜しましょ〜・・・・」
「決まっているだろう!!こういうときは・・・・」
「「時は・・・・・?」」
ヒトカゲの言葉を待つかの如く彼以外の全員が、答えを待っている。
「逃げる!!!」
そう叫んでヒトカゲは猛ダッシュでその場を後にした。
「あっ!!待ってください!!」
跡を追うようにスカタンク達も逃げる。そのあとをポケモン達が大群で追っていた。
「雷いいいいいいいいいぃぃっ!!!」
追いかけているポケモンの一体が上空から強力な雷を四人に向けて落としてきた。
「よっと!」
「ふぎゃあああああああああぁぁっ!!!」
ヒトカゲはスカタンク(自分の部下)を身代わりに雷をかわした。当然身代わりとなったスカタンクは雷で黒焦げになる。
「ごるあああああああああぁぁぁっ!!!何さらしてくれとんじゃ〜っ!!」
「貴様!!その口のきき方はなんだ!!」
「あぁ、ごめんなさい・・・。ご自由に盾にしてくださっても構いませんよ・・・・」
一度は反抗するも、すぐに止められる。
さて、そんなことは露とも知らないリーフ達は・・・・・・・
「敵が・・・いませんね・・・・」
「確かに・・・一体もいないなんて妙ね・・・」
ヒトカゲに遅れること約十分、リーファイメンバーはエレキ平原の最奥部を目指していた。だが全く野生の敵ポケモンに遭遇しないのだ。勿論ここの野生ポケモンは全員ドクローズを追っていることは知る由もない。
「はぁ・・・はぁ・・・・。酷い目にあったぞい」
「ったく誰のせいだよ・・・・」
再び場所は変わってこちらはドクローズ。あれからずっと追いかけまわされて、ようやく最奥部にたどり着けた。
「さて・・・・あとは炎のジュエル(これ)を・・・・・・」
ぽいっ
ヒトカゲは炎のジュエルをその場に投げ捨てた。
「よし!これであとは隠れるだけっと♪」
ヒトカゲ達は近くにあった岩場に姿を隠した。
「けけけけけけ・・・・これで俺様の作戦は大成功♪」
十分後
「はぁ〜、なんかあっという間に着きましたね」
ルッグが余裕の表情で言った。その後も全く敵ポケモンに遭遇せず何の問題もなくたどり着けたのだ。
「あっ!!あれが炎のジュエルじゃないか!?」
ウォーターが指差した先には、赤色の宝石が転がっていた。
「じゃあ早速・・・・」
「待て!!」
ファイアが拾いにいこうとした瞬間、どこからか叫び声が聞こえた。その叫び声と同時に辺りが暗くなった。
「ここに何しに来た!!ここは我々の縄張りだ!!」
今度は眩いほどの光が辺りを覆った。その光に思わず全員が目を瞑る。
光が止むと、そこには黄色い鬣(たてがみ)が特徴的なポケモン、ライボルトと緑色のポケモン、ラクライ八体がリーファイを取り囲むようにしていた。
「しまった!!囲まれた!!」
「もう一度聞く。ここになんの用だ」
ライボルトが見下した様子で尋ねる。
「実はわたし達、悪党に盗まれたその炎のジュエルをとり返しにきたんです」
リーフは自分達がここに来た理由を説明した。尤も、彼女はライボルト達がまともに聞いてくれるとは思っていないが・・・・・・・・
「ふん、分かった。さっさと受け取って帰るがいい」
「(あれ?案外物わかりいいな・・・)」
ライボルトはその場に落ちていた炎のジュエルを拾い。リーフに手渡した。
「しかし、なぜこんなものが我々の縄張りに・・・・」
「それはですね・・・・・」
ライボルトの疑問にルッグが待ってましたと言わんばかりに、近くにあった岩場、即ちドクローズが隠れている岩場にツカツカと歩み寄った。
ドガアアアアアアァァッ!!
ルッグは強力なパンチで岩を粉々にした。そこからはヒトカゲ率いるドクローズメンバーの姿が。
「あっ・・・・・・・・・・(滝汗)」
「こいつらのせいで〜す♪」
ルッグは満面の(黒い)笑みでドクローズメンバーを指差した。(本人達にとっては)まさかの出来事に四人そろって素っ頓狂な声を上げる。ライボルトは怒りを込めたまなざしで四人を睨めつけていた。
「ち・・・ちちち・・違う!!これは・・・
スカタンク(こいつ)のせいなんだ!!」
「はぁ!?この作戦考えたのはアニキでしょうが!!」
「部下は黙って上司の尻拭いをせんか!!」
また、この二人で口論が起こった。
「黙れ!!貴様らまとめて制裁してやる!!覚悟!!」
ライボルトはそう叫ぶと猛スピードでドクローズに走っていった。ラクライ達も跡を追うように走ってくる。当然のごとくドクローズは逃げようとする。
「うわあああああああああぁぁぁぁっ!!!逃げろ〜っ!!」
「あははははははははは〜っ!!!今度はアニキが身代わりになってくださ〜い!!」
「この薄情者!!」
またしてもヒトカゲ&スカタンクで口論が始まった。本当はこの二人仲いいんじゃないのか?
「雷!!」
ライボルト・ラクライ×8は自身の体から発せられた強力な雷は逃げようとするドクローズに直撃。
「くそーーーーーっ!!今日はこれくらいにしといてやる!!」
捨て台詞を残し、雷の衝撃でドクローズはそのまま吹っ飛ばされ、星となってしまった。リーフ達はその滑稽な様子を見て笑っていた。