第四十七話 ネズミオヤジと見た目チンピラ君 2
「全く・・・相変わらずこっから街は遠いったらありゃしないですね!!」
ズルズキンが走りながらそうぼやいていた。なぜこれほどまでに急いでいるかというと街から喧騒(けんそう)・・・というよりは戦闘や悲鳴に近い声が聞こえてきたので急いでかけつけたというわけだ。
「こら〜っ!!ペース落ちとるぞ!?しっかりせい!!」
「・・・・・・・」
相変わらずスパークはキリキザンに乗っかって足代わりとしてこき使っている。こき使われているキリキザンは最早限界ギリギリ。
ようやく街に到着したスパーク達。キリキザンはすでにグロッキー状態になってしまってる。
「こ・・・・これは・・・・・・・」
スパーク達が目撃したのはポケモン達が戦い、物や建物が次々と破壊されていく街の様子・・・
の音を出してるラジカセの姿が
「なんじゃこりゃ!!」
「人騒がせだな!おい!!」
スパークは怒りながらいまだ戦いの音を出し続けているラジカセを蹴りつける。
「ま・・・まぁ・・とにかくなにもなかったんですから早くジャローダさんのもとへ向かいますか」
「そ・・・そうだが・・・なんか解せぬ・・・」
スパーク達はジャローダのもとへ向かった。
場所は変わってこちらキリキザンやアイアント。
「お〜い、キリキザンく〜ん。大丈夫〜?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「返事がない。ただの鎧のようだ」
さて、蟻と鎧は無視してこちらはスパーク目線。
「スパークさん」
「なんだ?」
「今度はスパークさんがドアを開けてください」
ズルズキンがこんなことを頼んだ理由。それは平たく言うと以前は入ろうとした矢先極端に臆病なジャローダにドラゴンテールでブッ飛ばされたからだからだ。
「いやだ」
「そりゃ誰だって嫌でしょうけど!!」
「さっさと行けぃ!!」
スパークはズルズキンを蹴飛ばす。
「し・・・失礼しま〜す・・・」
完全に弱腰になってるズルズキン。しかし・・・
「あ・・・あれ?」
扉を開けても攻撃が被弾しない。おかしいと思ったズルズキンは目を凝らして中を探る。
「だから行く気はないっていってるでしょ」
「かぁ〜!ったく聞きわけがねぇ〜な〜!!こうなったら・・・」
彼が見たのはジャローダが頭から炎を出している猿のポケモン、ゴウカザルが話している様子があった。しかしジャローダは少し迷惑そうな表情である。
「どうした?」
「スパークさん。あれ見てください」
「ん?」
スパークはズルズキンに推され中の様子を見た。その様子を見たスパークはというと・・・
「あの猿を殺るぞ!!」
「えぇ!?」
何を思ったのか、スパークは一直線にゴウカザルに向かったいった。(誤字ではありません。わざとなのです)
「なにぃ!?」
「十万ボルト」
「アゲーーーーーーーーッ!!!!」
ゴウカザルに問答無用で強力な電撃を浴びせる。ゴウカザルは黒焦げになってしまう。ズルズキンもジャローダもあまりに唐突な行動に目が点になっている。
「な・・・何するんじゃ〜っ!!」
「黙れ!!この悪猿!!お前ももしやあのバクフーンやトイレ掃除のサメハダーの味方か!!」
「な・・・・!あいつのこと知ってんのか!?」
ゴウカザルはスパークの言葉に反応する。するとスパークが・・・
「許さ〜ん!!」
「待て〜っ!!ヒトの話を聞け〜い!!」
しかし無情にもゴウカザルの頭部にハンマーが炸裂。彼の頭から星が飛び交う。
「ジャローダさん。大丈夫か?」
「え・・・えぇ・・・(汗)」
流石にこれほど突拍子もない行動をされたからだろうか、ジャローダも若干動揺している。
「騒がしいですけどなにかあったんですか?」
突如一人のポッチャマが入ってきた。保安官のファルコである。一通り様子を見た彼はなぜか黒焦げで倒れているゴウカザルに向かって歩き出す
「起きろ!!」
「あちゃちゃちゃちゃ!!!」
ファルコはゴウカザルに向かって煮えたぎる熱湯を発射する。あまりの熱さにゴウカザルはとび起きる。
「殺す気か!!バカモン!!」
「それだけ騒げるなら十分元気だな。で、何でお前が黒焦げになってたんだ?」
「そうだよ!!あのピカチュウに急に攻撃されて・・・このありさまだ!!」
「どうせお前、またジャローダさんをナンパして、それを誤解されたあのピカチュウ(ヒト)
が攻撃したんだろ」
ファルコの口からは意外な言葉が飛び出す。ゴウカザルを心配する様子は微塵もない。
「全く・・・・この馬鹿サルが迷惑をかけました・・・」
「誰がサルじゃ〜っ!!」
「お前だよ。お・ま・え」
とうとうファルコとゴウカザルが口論を始める。
「ところでスパークさん達はどうしてここに?」
「おっと。キュウコンさんに頼まれてなこれを持ってきたんd・・・」
ドゴオオオオォォォッ!!
スパークの言葉を遮るように爆発音が響いた。
「また、例のラジカセじゃないのか?」
「いえ、これは違うわ」
「どうしてそう言い切れるんだよ?」
ジャローダの言葉に若干疑問を感じるスパーク。
「だってあのラジカセ、わたしが仕掛けたから♪」
「あんたのせいかよ!!」
「何でそんなことするんですか!!」
「なんとなく」
「「うおぃ!!」」
まるでコントのようなやりとりを繰り広げる。
「とにかく急ぎましょう!!行くぞサル!!」
「だからサル言うな!!」
ファルコを先頭に一行は騒ぎのもとに駆け付ける。
一行が目撃したのは、建物のほとんどが壊されており、街のポケモンが狂ったかのように暴れていた。正気を保ってるポケモンがそのポケモン達を必死に止めている。
「どうしたんですか!!」
ファルコが正気を保ってるポケモンの一人バンギラスに尋ねる。
「私もよくわからないのだ!いきなり街のポケモンの目つきが変わって・・そしたら・・・」
「危ない!!シャドークロー!!」
バンギラスに襲いかかったポケモンを一人のヘラクロスがシャドークローで倒した。
「すまない、クロス」
「気にするな。それより状況はどうだ?」
「今のところは問題はないな」
「でも、首謀者をたたかない限りこの状況は治りませんよ。恐らく首謀者はどこかに隠れてこの軍政を操作してるかと」
ファルコの言うとおりこういう類の敵は自分は隠れて攻撃していることが多い。
「(この数が相手なら・・・・・)
よし!なら私がこの軍政の相手をするから、お前達は首謀者を頼む!」
「ス・・・スパークさん!?一人で大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ!問題ない!!早く行け!!」
そう言いスパークは自分以外の面子を全員(尤もクロスバンギラスはもともといたので残ったのだが)を先に行かせることにした。
「よし、君達、少し時間を稼いでほしいんだが・・できるか?」
「は・・はぁ・・・」
「できないこともないが、私達がそれをする見返りがお前にあるのか?」
バンギラスが気になっているのはそこだった。ピカチュウが砂漠のポケモン(地面タイプ)相手にまともな有効打があるとは思えない。
「まぁ、大丈夫だ。少し時間があればすぐに終わらせる」
「わかりました!」
「・・・・いいだろう」
クロスもバンギラスも同意し敵に向かっていった。そしてスパークは・・・・
「はあああああああああああぁぁぁっ!!」
スパークの体から凄まじい電撃が発せられた。あまりのその電気量に彼の体は直視できないほど眩い光も同時に発せられた。
「なっ!!?」
「あれがピカチュウの出せる電気量なのか!?」
闘っている真っ最中のクロスやバンギラスも驚嘆を隠せない。そうこうしているうちに充電が終わる。
「行くぞ!!ボルテックマシンガン!!」
スパークはそう叫ぶとフッと姿を消した。否、正確には消していない。
「!!?」
「何!?」
大きな光の玉が突如暴れていたポケモン達を次々貫き、倒れていった。それも肉眼ではとらえられない、まさに光速ともいえるような速さであっという間に暴れていたポケモンが全滅していたのだ。相変わらず二人は唖然としている。
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
光の玉が消えるとそこには先ほどまで消えていたスパークの姿が。見たところかなり疲弊している。
「だ・・・大丈夫ですか?」
クロスが心配そうな様子を見せながらスパークのもとに駆け寄る。対してバンギラスはいまだに驚きのあまりその場に立ちすくしている。
「「!!?」」
いきなりスパークはカバンから水筒をとりだした。そしてそれをゴキュゴキュと音をたてて飲んでいる。
「!??」
「プハーッ!!暑いときはやっぱビールだな!!」
「「おい!!」」
この親父は・・・・・