第四十六話 ネズミオヤジと見た目チンピラ君 1
これはリーフ達が黒い村に向かっている最中の話。
「さて、行くか」
現在療養中のスパークだが、なぜか彼は出発の準備をしていた。それを終えて、一言言ってスパークは家を跡にした。彼が向かった先は・・・・・・
一方、ズルズキンはというと・・・・・
「やばいやばいやばい!!!早くしないとお仕置きが〜っ!!」
猪突猛進という言葉が似合うぐらい凄まじいスピードで疾走していた。お忘れかもしれないが彼は元上司のサザンドラに呼び出しを食らっていたのだ。彼が言っているお仕置きは早い話が遅刻すると流星群をぶっ放されるという理不尽極まりないものだ。
そして、屋敷に到着。
「遅くなりました〜っ!!」
「遅すぎるんじゃクソボケ〜っ!!!!!」
「へぶしゅえっ!!!」
ズルズキンが扉を開けるや否やサザンドラはズルズキンをブッ飛ばした。ブッ飛ばされたズルズキンはその勢いで壁にめり込んでいる。
「も・・・申し訳ありません・・・・」
「遅い!!0.072秒も遅刻だ!!」
「(んな無茶な・・・・・)」
なんて微妙な数値・・・・。しかしそれもサザンドラ(彼)のキュウコン(天敵)に一部始終見られてしまう。
「で、今日はどうされたのですか?」
サザンドラが暴行・・・・もといお仕置きを加えらてから数分後、ズルズキンは今回呼ばれた理由を尋ねる。すると・・・・
「失礼します」
「どうぞ」
突如扉をノックする音が聞こえた。扉からは門番のワルビアルそして見覚えのあるピカチュウの姿が。
「ス、スパークさん!?」
驚嘆の声を上げるズルズキン。それもそのはず、本来療養中の彼がなぜここに来たのかが理解できなかったのだ。
「理由は後で話す。それよりキュウコンさん」
「なんです?」
いつになく真剣な表情のスパーク。その表情につられてかキュウコンも真剣な顔を浮かべる。
「率直に聞きたい。キュウコンさん。実はな・・・・・」
スパークは七つの秘宝の自分の知る全容を話した。バクフーンを筆頭とする謎の組織が七つの秘宝を狙っていること。そしてそのことを阻止するために自分達が秘宝を回収しようとしたこと。
そして彼がここに来た最大の目的、他の秘宝のありかを聞いた。
「そうですか。残念ながらわたくしも七つの秘宝のことを全て知ってるわけではありませんわ・・・」
「そうか・・・・」
キュウコンの言葉に肩を落とすスパーク。続けてキュウコンは口を開ける。
「そういえばスパークさんはなぜここに?」
「まぁ・・・・あれだ・・・・簡単に言うと・・・・(汗)」
「本当は関節痛で療養していたんですけどね」
「おま!?」
はぐらかすスパークを代弁するようにズルズキンが言い放った。
「ほ・・本当ですの?」
「ああ、だがファイアとウォーター(息子達)が頑張っているのに父親の私がのんびりしている訳にもいかんからな。どうしてもいても立ってもいられなかったんだ」
真剣なまなざしで説明するスパーク。
「ところでズルズキン。お前こそ何でここにいるんだ?」
「そう言えば言い忘れてましたわ。実はこれを最果て砂漠の街に住んでいるわたくしの知り合いのジャローダに届けてもらおうと思って呼んだんですわ」
そう言ってキュウコンは一通の密書を懐から取り出した。
「で、でもどうしてズルズキンが駆り出される?」
「あのバクフーンの差し金がいつ襲ってくるかわかりませんわ。ですから、実力がある彼に頼もうと思ってましたの」
「ぼ・・・・僕に実力なんて・・・・」
ズルズキンはキュウコンの言葉に萎縮してしまう。
「なら、私も行くか」
「だ、大丈夫なんですか・・・・?」
スパークの言葉に反応するズルズキン。しかしあくまでもスパークは意思を曲げない。
「では、よろしくお願いしますね」
「わかった。行くぞ」
「はい」
スパーク達は再び最果て砂漠に向かうために屋敷をあとにした。
「大丈夫ですかね?スパークさんは本調子じゃないし、ズルズキン一人だけじゃ・・・・」
「大丈夫ですわ。もうズルズキンはあのころとは違いますわ」
不安そうなワルビアルとは対照的に落ち着いた様子のキュウコン。だが・・・・・・
「危ない!!危ない!!危ない!!」
凄い形相でスパーク達が戻ってきた。
「ど・・・どうしましたの?」
「密書を預かるの忘れてた♪」
ズドッ!!
スパークの言葉に彼以外の全員がコントのようにずっこけた。
「(や・・・・やっぱり不安だ・・・・)」
ワルビアルは心中でこのようなことを思わざるを得なかった。
場所は変わって最果て砂漠。相変わらず日差しが強い
「はぁ・・・はぁ・・・・」
「だ・・・大丈夫ですか、スパークさん?」
あまりの暑さに疲労の色を見せるスパーク。更年期か。
「誰が更年期じゃ〜っ!!」
すると見覚えのある影が彼らのもとに差してきた。
「おい!!無視かよ!!」
「そ、それよりスパークさん危ない!!」
「なにぃ!?」
どこからか攻撃が飛んできた。かろうじて二人は攻撃をかわす。
「ふっ、久し振りだな!!」
「お・・お前は・・・」
スパーク達を攻撃した張本人は青色の鋼のボディが特徴的な四本足のポケモン、メタグロス、更に彼の後ろにアイアントとキリキザンの姿が。
「「ダメタグロス!!」」
「誰がダメタグロスじゃ〜っ!!」
「「ぷっwww」」
「お前らも笑うな!!」
そう、メタグロスとは思えないほどのへっぽこメタグロス、ダメタグロスと、その愉快な仲間達であった。
「で、何の用です?」
「こら!お前!!なんだそのかったるそうな様子は!!」
邪魔くさそうに呟くズルズキンに怒るダメタ・・・・もといメタグロス。
「はいはい。だから何しにきたの?」
「決まっておるだろう!!この前コテンパンにされた仕返しだ!!」
「あっそ。じゃあさっさとかかってきなさいや」
スパークはだるそうな様子で手をしゃくって挑発する。その光景にメタグロスは激昂する・・・・
「ふん。そんな見え透いた挑発には乗らんぞ。キリキザン」
「はぁっ・・・・」
かと思われたが(残念ながら)切れなかった。彼は部下のキリキザンにある指示を出す。
「(誰か進化したことに触れてやれよ・・・・)」
同じ部下のアイアントは密かにこんなことを思っていた。確かに以前はコマタナだったので進化していることにはなっているが・・・・・
「これですね。しかしこいつら相手にはあまり意味がないのでは・・・?」
「やかましい!!さっさと貸せ!!」
キリキザンがとりだしたものは・・・・・・
「「ふ・・・風船」」
一見するとただの風船だった。しかしメタグロスの表情を見る限りキリキザンが間違えたりボケたりしたとは思えない。
「ふん、この風船をつけると体が宙に浮き地面タイプの技をかわせるようになるのだ!!」
「ぷっwww存在自体浮いとるのにwww」
「やかましい(怒)!!これで俺様の弱点を減らしてやる!!」
スパークに怒りながらも啖呵を切りメタグロスは風船を身につけた。すると彼の体が本当に宙に浮いた。
「うわっ!!」
「あの(伝説を除けば)最もデブなポケモン、メタグロスが浮いた!!」
あまりに意外な光景に二人して驚嘆の声をあげる。
「こらぁ!!そこ!!俺様はデブじゃなくて重量があるのだ!!」
浮いてるメタグロスが怒り気味に言い放つ。
「食らえ!!冷凍パンc・・・・・」
メタグロスは自身の腕に強烈な冷気を込めた拳を振りかざした。だが・・・・・
スカッ
「!!?」
「あ・・・・あれ・・?」
攻撃は当たらなかった。それもスパーク達は攻撃をかわしていないにも関わらず。その理由はすぐに見て取れた。
「あれって・・・・・」
実はこの風船、浮力が強すぎて地面技を回避できるのはいいのだが、抑制ができずそのまま浮き続けてしまってるのだ。したがってメタグロスの攻撃は完全にスカしたのだった。
「おい!!なんじゃこりゃあ!!俺様浮きまくってるぞ!!」
「そりゃいつものことでしょ〜がよ」
「(頷)」
アイアントの言葉に頷くキリキザン。
「こら〜っ!!お前ら!!助けろ!!」
「「( ̄ー ̄)www」」
「がっ!てめぇら顔文字で笑いやがったな!!」
メタグロスは浮きながら助けを求めるも完全に部下達に見放される。
「お〜い!!お前達!!助けてくんろ〜っ!!」
「「や(・)です」」
「oh〜no〜!!」
最早頼るあてがなくなったダメタグロス。彼はそのまま宙に消えようとしている。
「整いました!!」
「なんですかいきなり・・・・」
突然スパークが突拍子もないことを言いだした。
「ダメタグロスとかけまして掃除しない奴とときます!!」
「そのこころは?」
「どちらも儚(はかな)い(掃かない)でしょう!!」
なぜ謎かけ?
「いや、これがうけるか滑るかは読者の方達次第だろ・・・・」
「どう反応していいかわからんぞ・・・」
やはりダメタグロスの部下達は複雑な気分であった。
「で、どうする?」
「さぁ?」
アイアントもキリキザンもボスが消滅したにも関わらず特になんともない様子である。この薄情者!!
「??」
「どうしました?」
突如としてスパークの表情が豹変し、真剣な顔つきになる。
「何か聞こえないか?」
「・・・・・・・・そう言われると、
!!街の方ですよ!!急ぎましょう!!」
「わかっ・・・!!」
ズルズキンが走り出し、スパークもあとを追おうとしたが、体が思うように動かない。
「くそっ!!こうなったら!!」
スパークはそう言いキリキザンの方に視線を向ける。
「な・・・なんだ!?」
「おい!お前!!わたしをおぶって行け!!」
「はぁ!?」
「”はぁ!?”じゃない!!年寄りを大事にするのが若いもんとして当然だろうが!!」
スパークはキリキザンの背中に無理やり乗りかかる。
「わかったら急げぃ!!」
「無茶苦茶だ〜!!」
スパークは背中からなぜか鞭を打ちつける。キリキザンはほぼ涙目で街に走っていった。アイアントも仕方なく彼らについていくことにした。