第四十四話 vs ???? 2
「なにぃ?」
突如ブチ切れたファイアを見てオノノクスをファイアは睨めつける。しかしオノノクスは減らず口をたたき続ける。
「はっ、仲間がやられたからって怒ってんのか?馬鹿みてぇだな。まぁてめぇみてぇな甘ちゃんはそういう馬鹿なことを一生言ってな」
「んだとぉ!!」
ファイアは怒りにまかせてオノノクスに突っ込もうとする。しかしそれはすぐにリーフに止められる。
「な、何で止めるんだよ!!」
止められたのが気に入らないのかファイアはリーフにまで怒鳴りつける。しかしリーフの顔は今までにないくらい表情が消えていた。その様子に長い付き合いのファイアも驚きを隠せなかった。怒り狂うファイアとは対照的にリーフは冷静に戦法を考えていた。オノノクスの技、戦法、癖、回りの状況、戦闘にかかわることをじっくりかつ迅速に観察していた。
「「−−−−−−−!!!?」」
突然リーフが何かをオノノクスの足元に向けて投げ飛ばした。それはオノノクスの足元でとび散り散乱する。あまりに唐突な行動にオノノクスだけでなく味方のファイアも驚く。
「な、なんだ!!?」
オノノクスは自分の足元を確認する。
「リ・・リーフ・・・・一体何投げたんですか・・・・?」
「ん?画鋲(がびょう)♪」
「がびょ〜ん!!」
いらんこと言うな。
「くそっ!!なんじゃこりゃ!!」
さっきのは置いといて、オノノクスは足元の画鋲に苦戦していた。実はリーフはオノノクスの使用技は接近戦、即ち相手に近寄らないと攻撃できない技ばかりだと断定したのだ。そのためまきびしの要領で画鋲を足元にばらまいたのだ。決定打にはならなくても牽制にはなった。
「葉っぱカッター!!」
リーフは大量の葉を上に放った。葉っぱはオノノクスの頭上から降り注ぐ。
「はっ!!こんなもんあたるk・・・・・・
痛っでえええええええぇぇぇっ!!!」
オノノクスは葉っぱカッターを交わすが画鋲を踏んでしまい、思わず足を抑えながらとび跳ねる。
「今のうちに!!ソーラービーム!!」
「くっ!ドラゴンクロー!!」
オノノクスはドラゴンクローでソーラービームを相殺した。互いの技は直撃すると爆発を起こし、辺りが煙に包まれる。
「くそがっ!!遠距離からチマチマせこい真似しやがって!!」
オノノクスはリーフの遠距離からの攻撃に苛立ってきた。しかし、彼のその余裕も長くは続かなかった。
「なっ!?」
「蔓の鞭!!」
「ぐふぁあっ!!」
煙が晴れたとほぼ同時にリーフはオノノクスの目の前に飛び込んできた。あまりに意外な行動に虚を突かれたオノノクスはひるんでしまいまともに食らう。
「よっと!!」
リーフは蔓の鞭を天井に引っ掛けそのまま画鋲だらけの地面に降りないようにぶら下がる。
「くそがぁっ!!弱ぇ癖に俺様に逆らうんじゃねぇ!!」
「そんな喋ってる場合?」
「なんだと!!?」
怒り狂うオノノクスとは対照的に余裕の笑みを浮かべるリーフ。すると彼女の背後から大量の葉っぱカッターがオノノクスに向かってくる。
「へっ!!同じ手が俺様に通用するかよ!!瓦割!!」
オノノクスは自身の拳で向かってくる葉を迎撃しようとした。しかし葉っぱカッターはなぜか目の前で急降下しだす。思わず彼はその先をみると自分の足元に大量の種が転がっていた。彼の脳裏に嫌な予感がよぎる。
「ぬわああああああぁっ!!!」
彼の予想通り葉っぱカッターは種に直撃しその場で爆発を起こした。実はこの種は種爆弾の種であり葉っぱカッターで起爆していたのだ。
「おらあああぁぁぁっ!!ドラゴンクロー!!」
爆発から矢のように飛び出したオノノクスはリーフに一直線に向かっていった。リーフは蔓をしゃくり思い切り挑発をしていた。
「ジャイロボール!!」
「なにぃ!!?」
突如響いた謎の声。その正体は納豆ことナットレイだった。高威力の技が直撃しオノノクスは壁に叩きつけられる。
「なぜだ・・・あいつは一発でのした筈・・・・・」
オノノクスは納得がいかない様子でナットレイを睨みつけていた。確かに彼は瓦割で倒した筈・・・・
「まさか・・・あのヒノアラシのガキが!!」
オノノクスはここでリーフの本当の作戦を理解できた。あくまで彼女は自分とファイアでは決定打を与えることはできないと判断。そこでオノノクスに決定打を与えることができる倒れているメンバーの中を回復させようと考えたが、ハサミギロチンを食らったウォーターより瓦割程度の攻撃を食らったナットレイの方が早く回復できる。最初からこれが狙いだったのだ。
「まぁおめえは見るからに馬鹿そうだったからな。まんまと作戦に引っ掛かってくれたもんだな」
まだ裏人格の口調でそう喋るファイア。彼がナットレイを回復させていたのだ。
「おのれぇ・・・・だったら!!」
そう言いながらオノノクスは倒れているウォーターのもとへ向かった。ウォーターに首元には彼の自慢の牙がつきつけられる。
「てめぇら・・・一歩でも動いたらこいつの命はねぇぜ」
オノノクスはこの上なく嫌みったらしい笑みを浮かべながら牙をウォーターの首に突き付けた。
「くっ・・・・」
「てめぇ・・・」
「汚いぞ!!」
「はっ、なんとでもほざいてろ。最後に勝つのはこの俺様なんd・・・・」
オノノクスが喋っている最中に彼の背中に衝撃が走った。その隙に一人のポケモンが倒れているウォーターを猛スピードで救出する。
「な・・・なんだてめぇらは!!」
「ん?オレ達のことか?オレ達は救助隊チーム・・・・・・・・・」
「ブラザーズだ」
「なっ・・・・」
オノノクスはそのポケモン達を見て焦りの様子を見せる。そのポケモン達は緑色のヤモリのようなポケモン、キモリと頭のヒレが特徴的なポケモンラグラージだった。ラグラージは白衣を着ている。
「あ、あなた達はもしかしてあの・・・」
「ん?話は後だ。まぁここはオレ達に任せてお前さん達は休んでな♪」
リーフの言葉を遮ってラグラージはそう言った。彼の表情は普通のラグラージよりも柔和な雰囲気が醸し出された。
「行くぞ!!」
キモリはそう叫びオノノクスに急接近する。そのスピードは尋常ではなくオノノクスはまともに反応出来ない。
「はああああああぁっ!!」
「ぐっ・・・・・」
キモリは凄まじい早さでオノノクスにパンチやキックの連打を浴びせた。その猛攻のスピードは格闘ポケモンにも引けを取らない。
「終わりだ!!」
「ぐふえふぁあ!!」
キモリはオノノクスの牙に重いパンチを入れた。その威力はハンパではなく強靭な牙もまるでマッチ棒のように簡単に折れてしまう。
「・・・・・行け!!」
「冷凍パンチ!!」
「ぐああああああああああああぁぁぁっ!!!」
キモリの背後からラグラージが現れオノノクスに冷気を帯びた拳を叩きつける。オノノクスは地面に叩きつけられ、更に地面が割れた。尋常ではない威力だ。
「ふん。あっけなかったな」
「まぁ、楽でいいじゃねぇか♪」
吐き捨てるような様子のキモリに対しラグラージは楽観視した様子だ。
「やはりこの程度か・・・・・」
「「「「「!!!??」」」」」」
どこからか冷徹な声が聞こえた。全員その声がした方向へ向くと、そこにはあのバクフーンの姿が。
「やれやれ。喧嘩で目的を見失った挙句、無様に負けるとは愚かにも程がある」
「な・・・・なんだと・・・」
バクフーンはオノノクスの首元を掴み無理やり起き上らせる。
「てめぇ・・・いつもいつも指図ばっかり・・・」
「黙れ」
そう短く言ってバクフーンはオノノクスを蹴りつけた。そう様子を見たキモリは今にも飛び出しそうなほど怒りに震えていた。
「この役立たずが。それにしてもまさか貴方方が来るとは完全に想定がいでしたよ」
バクフーンはキモリ達の方を向きなおす。キモリはバクフーンを睨む。
「ふん、ワシらは貴様達を止めるためにここに来たんだ。ワシらにとっては想定内のことだがな」
「本来ならここで始末したいところですが、流石に分が悪いですね。今回はここで引きましょう。ですが次邪魔をするとただではおきませんよ」
バクフーンはそう言い残してオノノクスと共に姿を消した。
「待て!!」
「いや、これ以上追っても無駄だ。それよりもそのゼニガメだ」
追いかけるキモリを止め、ラグラージは倒れているゼニガメのもとに駆け寄る。相変わらず彼の甲羅は今に割れそうである。
「・・・・・うぅ・・・・」
「気がついた?」
ウォーターが意識を取り戻す。
「リ・・・リーフ・・・大丈夫か・・・?」
「ええ・・・でもオノノクスには逃げられたけど・・・」
リーフは俯きながら答える。しかしウォーターの表情は明るかった。やはりリーフの無事が第一だったからだろう。
「そうか・・・無事でよかった・・・・」
「ウ・・・ウォーター!!」
「今のうちに!!リーフ!!」
「勿論!!」
「「「ええっ!!?」」」
突然訳わからない言葉を発したのはファイアだった。リーフは理解したようだが他のメンバーは唖然となる。
「しっかり押さえておいてくださいよ!!」
「当然!!」
「な・・何を!!」
リーフは蔓の鞭でウォーターの体を押さえつける。ウォーターは抵抗するも拘束が強くほどけない。そしてファイアはなぜかハンマーを所持している。
「早く甲羅を!!これでウォーターの甲羅の中を見れる!!」
「うりゃあああああああぁっ!!」
「アゲーーーーーーーーッ!!」
この行動はどうやらウォーターの甲羅の中を見ようとしていたようだ。ファイアはハンマーをウォーターの甲羅に向けて振り下ろす。その衝撃で甲羅は更にひびが増す。
「ファイア!!てめぇ!!日ごろの恨みを晴らす気か!!」
「はい!!」
即答・・・・・・・
「ハハハハハハハハ!!お前さん達のところはなかなかにぎやかなところだな!!」
唯一ラグラージだけはその光景を見て笑っていた。しかしナットレイとキモリは苦笑いを浮かべていた。