第三十九話 秘めたる力
”砂漠の王”と名乗るダンボール箱に住んでいた間抜けなフライゴンを(即効で)倒し水のハーモニカを取り返すことができたリーフ達。現在はジャローダのもとにいる。
「本当にあそこにあったなんて・・・・・・」
「「ええっ!?」」
「いや、こっちの話・・・・・とにかく取り返してくれてありがと。で、あなた達が取り返しに行ってもらってる間に実は七つの秘宝について調べてみたんだけど・・・」
「何かわかったんですか?」
ジャローダは本棚にある一冊の本を取り出しリーフ達に見せた。
「って・・・・ただの絵本じゃないですか・・・・・・(汗)」
「あっ・・・・・・・(汗)」
それは幼稚園児が読みそうな薄い絵本だった(内容は化石について)。ジャローダは急いでその本を別の本に入れ替えた。
「コホン、では改めて・・・・・・単刀直入に説明したいからこのページの五行目の十二行目をよく見て。
全員が言われた通りに本を除き見ていた。
「え〜と・・・・・、七つの秘宝が全てそろいし時、その持ち主のいかなる願いもかなえることができる・・・・・・・・
ってええええーーーーーっ!!!!」
全員が驚愕する。そりゃあ願いがかなうなんてことを知ったら驚くのも当然だ。
「それとその続きのとこも見てもらえる?」
「はいはい・・・三百年前、これらをすべてそろえた悪しき者、世界を破壊しようと目論むも同じく正義の心を持った者がそれを阻止し、秘宝をバラバラにまき散らし封印する!?」
そこに書かれていたのはかつてこの秘宝により世界が崩壊しかけたという事実だったのだ。今まで自分達が集めていたものにそれほどの力が秘められていることを知りリーファイメンバーも少し震えていた。
「わかった?それでもっと厄介なことにあなた達以外にも秘宝を狙っている輩がいるのよ」
「クロー達ですか?あの人達がそんな厄介なんですか?」
リーフがクローの名前を出す。確かに間抜けなクローに集められても脅威とは到底感じられない。
「いや、違うわ。これを見て」
そう言ってジャローダは四枚のポスターを見せるそこには以下の四体のポケモンの写真と名前と特徴が書かれていた。
No.157 バクフーン タイプ 炎 特徴・非常に冷酷で残忍。躊躇なく殺戮を行う為最も警戒が必要
No.319 サメハダー タイプ 悪・水 特徴・結構間抜けで馬鹿。殺しはないので警戒のレベルは低め
No.169 クロバット タイプ 毒・飛 特徴・下記のオノノクスの腰群着存在。これも警戒レベルは低め
No.612 オノノクス タイプ 竜 特徴・バクフーン程ではないがかなり危険。
「ああ〜っ!!!」
リーフとファイアが大声をあげる。
「ど、どうしたの!?」
「このバクフーンとサメハダーは知ってます!!」
「えっ!?リーフちゃんとファイア君はバクフーンとサメハダーを知ってるの!?」
リーフのカミングアウトにジャローダも驚きの声をあげる。
「詳しいことを聞いてもいい?」
「はい、実は・・・・・・」
リーフはバクフーン達に会った時のいきさつを話した。
・ファイアがバクフーンの実弟であること
・バクフーンがその弟のファイアを殺そうとしたこと
・バクフーンがヘラクロスのクロスやバンギラスの身内を殺し復讐の対象になっていることを
・サメハダーがトイレ掃除なことを(笑)
「いや、最後関係ないだろ!!」
「そうだったの・・・・ごめんなさいファイア君、知らなかったとはいえ、余計なことを聞いてしまって・・・・」
ジャローダは申し訳ない様子でファイアに頭を下げる。
「いいんです・・・・」
そう言うファイアの声は明らかにトーンが落ちていた。その空気を断ち切るようにシャンデラが言った。
「で、その四人がどう厄介なんです?」
「実はこの四人を筆頭とする組織が秘宝を狙っているようなの。そして、その組織がその力で何かを企んでいるようなんだけど・・・・・・・」
「まだ詳しいことはわからないんですか?」
「ええ。とにかく言いたいことはそいつらが今後あなた達を狙ってくる可能性があるから・・・・・」
「ちょっといいですか?」
ジャローダの言葉を遮ってウォーターが尋ねる。
「どうしたの?」
「急いであげないとスパーク(おやじ)がそろそろ限界に・・・・」
「さっきから、立っとったら間接がずきずきするって言ってます(汗)」
ウォーターとズルズキンがふらふらのスパークを指差しながら言った。
「・・・・・・・・・・・(汗)
あなた達の腕を見込んで頼みがあります。この水のハーモニカを貰ってくれないかしら?たぶんわたしが持ってるよりも安全だと思うから・・・・」
「わかりました!!」
「ありがと。じゃあこれは今回の依頼のお礼ね」
そう言ってジャローダはリーフに宝石のようなものを手渡した。
「それは癒しのオーブ。草タイプのポケモンが持つと・・・・」
「これ・・・・・持ってます。キュウコンさんから頂いたので」
「キュウコン!?あなた達はキュウコンのことを知ってるの!?」
ジャローダが凄まじい勢いで食いついてきた。ズルズキンが控えめに答える
「はい、僕あの方に昔つかえてたので・・・・」
「でも、この前行った時には見かけなかったけど・・・・・」
ジャローダの話はヒートアップしていく。彼女の話が止まったのはスパークが完全にノックアウトしてからだと言う。
場所は変わって怪しげな建物。そこは相変わらず昼だというのに不気味に薄暗い。
「おう、戻ったか。で、あの裏切り者は始末できたのか?」
戻ってきたポケモン、バクフーンにキングレックスのような大あごが特徴的なポケモン、オノノクスが尋ねる。
「いや、あれは始末する必要はない。あいつが組織に及ぼす影響などたかが知れている」
「けっ!!いつもいつも必要必要ってかっこつけやがって!!」
オノノクスは気に入らんとばかりにそう吐き捨てた。この二人が話しているのは以前バクフーンが始末しようとしていたバンギラスのことだろう。
「邪魔な奴なんて全部ぶっ殺ちめぇばいいんだよ!!どうせあいつも屑だったし殺してもなんも恐かぁねぇよ」
「私はお前みたいな野蛮なポケモンとは違う。お前と違い必要以上に殺しなどしない」
「んだとごるあぁっ!!」
オノノクスはバクフーンの胸倉を掴みかかる。しかしそれもすぐに止まることになる。
「総統がおよびだ。お前などにかまってる暇などない」
「けっ!!」
オノノクスは掴んでいたバクフーンの胸倉を解いた。バクフーンはそのまま総統のところに向かう。
しばらくしてバクフーンがオノノクスのもとに戻ってきた。
「総統からの命令だ。今から渡す地図に記されている場所に向かえ」
「はぁっ!!?なんでてめぇに指図されなきゃなんねぇんだよ!!」
「言ったはずだ、これは総統の命令だ」
怒るオノノクスとは対照的に淡々と説明するバクフーン。やはりその態度が気に入らないのかオノノクスは不服なようである。
「わかったらさっさと向かえ」
「くそがぁっ!!」
オノノクスはよほど彼のことが嫌いなのか壁をガスガス蹴りながらその場を去っていった。
「ふん」
バクフーンはそんな彼を鼻であしらいながら自分の部屋に向かっていった。
「おう!お疲れ!!」
「お前・・・・・」
彼が部屋に入って目撃したのはいまだ掃除を続けている、否・続けさせられているサメハダーの(哀れな)姿だった。
「はぁ・・・・・・・お前はいつまで掃除係なのだ・・」
「仕方ねぇだろうが!!まさかおねしょした布団を総統の頭にかぶせちまうとは思わなかったんだからよ!!」
サメハダーは(ある意味)涙目になりながら掃除していた。そんな彼をバクフーンは見て今度はため息が出るばかりであった。