第三十七話 小悪党と小悪党
「ここは・・・・・・」
「んなことも知らねぇのかよ・・・・・イデェエッ!!」
スカタンクの言葉にヒトカゲのパンチが飛んだ。今現在ドクローズは見知らぬ土地にいた。
「恐らくここが街じゃないんですかね」
「正月シーズンには必須だもんな!焼いて醤油をつけるなり、雑煮にするなり、きな粉をつけるなり・・・」
「それは”餅”でしょうが!!街ですよ街!!」
ヒトカゲのボケにドガースが突っ込む。
「でも今日は暗いんで宿で休んで・・聞き込みは明日にしてはどうです・・・?」
「ああ、流石に今から聞く気にはなれん・・・」
こうして今日は休息をとることにした。
「いらっしゃいませ」
「四人分泊められるか?」
「あいにくですが、本日は一人分の部屋しか開いておりません」
「「な・・・何〜っ!!!」」
受付のスリープの言葉に四人が叫ぶ。
「ど、どうするんですか!?」
「と、とにかく野宿は勘弁だ。冒険に備えて体力は蓄えておきたいからな
一部屋だけでもかまわんから泊めてくれ。食事は構わんから」
「かしこまりました」
スリープはヒトカゲ達を部屋に案内する。
「は〜あ、疲れた・・・・・
ってうおぃ!!なんでお前らまでベッドに入ってくる!?」
「だってオレ達も疲れとりたいですから♪」
ベッドにダイブするヒトカゲだがその直後にスカタンク達まで乱入。
「全く・・・・・とりあえず寝よう」
「おやすみ〜♪」
こうして宿屋で一夜を明かすことにした。これで疲れもとれるだろうと思われたが・・・・・
「あ痛っ!!」
「ぐぼっ!!」
「ぎゃへっ!!」
大きなベッドに四人で寝ることになったのはいいのだがヒトカゲの寝ぞうが恐ろしく悪くて、スカタンク達に蹴りが入った。その衝撃でスカタンク達はベッドからたたき落とされる。
「痛たたたたたた・・・」
「寝ぞう悪すぎでしょ・・」
「でも、だからって起こしたら・・・・」
そう、迂闊に手下の彼らが起こしたらどんな目にあわされるかわからない。仕方なく彼らは床で一夜を明かすことになった。
翌朝
「ふわぁ〜あ、よく寝た・・・・どうしたお前ら?なんで床なんかで寝てたんだ?」
まさか自分が部下達を蹴ったとは思ってもないだろう。スカタンク達は寝不足不機嫌な顔を必死で隠していた。
「い・・いや、ただやっぱりアニキが広々と寝たほうがいいと思ったんで我々はここで寝ただけですよ・・・(あんたのせいだよ!あんたの!!)」
スカタンクは建前と本音を上手く使っていた。
「ったく・・最初からそうすりゃあいいじゃんかよ・・・
まぁ、いいや。とにかく聞き込みを開始しないとな!!」
ヒトカゲが張り切った様子でそう言った。他のメンバーは到底そんな気持ちにはなれない。スカタンク達は疲れをとるどころか疲れが溜まってしまった。
「なぁ、今って朝だよな・・・?」
「まぁ、普通なら朝ですよね・・・」
「でも・・・何でこんなに暗いのかな?」
そう、この街は本来朝の筈の時間帯でもまるで夜ともとれるほど暗かったのだ。
「とにかく、そんなことより秘宝だ秘宝!!それについての情報収集だ!!行くぞ!!」
「は・・はい!!」
今目の前にある妙な事態は放置しておいて、当初の予定通り酒場び向かうことにした。
「邪魔するぞ。あんた、七つの秘宝について何か知らねぇか?」
ヒトカゲが酒場の店主と思われるポケモン、ゴーストにそう尋ねた。
「ああ、あれね・・・・・あんたらもそれが目当てでこんなとこにわざわざ来たようだけど止めといた方が身のためだよ。今までにそれを狙ってきた探検隊がたくさんいたけど誰一人として帰ってこなかった・・・。まぁその先は言う必要もないでしょ」
ゴーストはため息をつきながらそう呟く。
「悪いがオレ達は腐っても探検隊だ。宝を簡単にあきらめちゃあ、探検隊なんかやってねぇよ」
「流石アニキ!!普段はせこいことしか考えてなくて、失敗ばっかりだけど、たまにはかっこいいことも言うもんですな」
「そうほめるなよ。わははははははは!!」
ヒトカゲが高笑いを浮かべていると・・・
「うぉら!!てめぇ等手ぇ上げろ!!」
「「ん??」」
突然怒声が聞こえた。その方向へ振り向くと三体の猿のようなポケモン達がいた。そのポケモンはそれぞれ緑色・水色・赤色を基調としたポケモン、ヤナッキー・ヒヤッキー・バオッキーだった。
「えぇ〜い!!またこいつらか!!」
「なんだあいつ等?」
「あいつ等はこの街を荒らしまわる化け物の手下のポケモンで、化け物の名前を使って好き放題する悪党どもさ。昨日は水だけを飲みにきたり、この前は千ポケの酒を九百ポケで飲んだり、その前はソース禁止なのに料理にソースをかけたり・・・・」
「なんか聞くだけではすっごくしょぼい悪党達だな・・・・」
三猿達の悪行(?)を聞いてスカタンクはあきれ果てる。
「ふん!!随分小さい悪事だな。オレなんか弟の貯金箱からポケをこっそり盗ったり、ピンポンダッシュしたり、下駄箱に偽のラブレターを大量にいれたり・・・」
「じゃあオレ達は公園のブランコを独占した!!」
「こっちは五十ポケものを四十五ポケまで値切ったことがある!!」
「(どっちもくだらねぇな・・・・・)」
猿達とヒトカゲの悪事の比べ合いにさらにあきれ果てるスカタンク・ズバット・ドガース。
「とにかく悪いのはオレ達の方だ!お前達には化け物の正体を吐いてもらおう!!」
「はっ、そんな脅しにのるかよ!それに悪事はオレ達の方が上だっての!!」
ヒトカゲとヤナッキーが(どっちがより悪いかで)口論を始める。
「こうなったら、行くぞ!!」
「望むところだ!!」
三猿vsドクローズの戦いの火ぶたが切って落とされる。
「火炎放射!!」
「悪の波導!!」
「ヘドロ爆弾!!」
「エアスラッシュ!!」
先制したのはドクローズだった狙いはリーダー格のヤナッキーだ。
「ちっ!!」
ヤナッキーは四つの攻撃をぎりぎりで交わした。しかし、彼の背後には無防備なバオッキーがいたため、攻撃は彼に直撃する。
「ええええっ!!ぐぼへぁっ!!」
バオッキーはそのまま倒れてしまう。
「ありゃりゃ〜?バオッキーがやられてしまったじょ〜♪」
「気にするなヒヤッキー。あいつは雑用専門だから、戦いではすぐやられるのがいつも通りだ」
「(随分扱いが酷いな・・・)」
スカタンクは倒れているバオッキーを哀れな目で見ていた。
「じゃあ今度はおいらが相手をするじょ〜♪」
間抜けな風体と声が特徴的なヒヤッキーが立ちはだかる。
「はっ!!こんな間抜けそうな奴、即効で返り討ちだぜ!!」
「舐めてもらっちゃ〜こまるじょ〜♪吹雪♪」
「なっ!?」
ヒヤッキーの口から凄まじい吹雪が発せられた。その威力はなかなかのものでスカタンクとズバットとドガースが氷漬けになってしまう。氷技に耐性のあるヒトカゲとスカタンクが凍らずに済んだ。
「(とりあえずは・・・・)」
ヒトカゲは木の実を手にヒヤッキーに向かっていった。
「あははははは♪無駄無駄〜♪熱湯♪」
ヒヤッキーは口から凄まじい高温の水を発射する。
「そらよっ!!」
「了解!!自然の恵み!!」
ヒトカゲはスカタンクに木の実を渡し、更にスカタンクは木の実からもらえる力、自然の恵みをヒヤッキーに向けて発射した。自然の恵みの威力は熱湯を明らかに押していた。スカタンクが使用した自然の恵みは草タイプだったのだ。
「じょじょじょじょじょじょじょじょ!!!?」
ヒヤッキーは自分の熱湯が押されて戸惑うばかりである。
「だじょ〜っ!!!」
自然の恵みはヒヤッキーに直撃。そのまま目を回してしまう。
「ちっ!まさかヒヤッキーがこんな奴にやられてしまうとは・・・」
ヤナッキーは焦りを見せていた。事実草タイプの彼にはドクローズの面々はことごとく相性が悪い。
「ちっ、こうなったら・・・・”草笛”!!」
ヤナッキーは懐から草を取り出し、草笛を演奏する。
「ふわ〜っ・・・・zzzzzzzzz・・」
草笛の音色にヒトカゲは抵抗空しく眠ってしまう。
「食らえ!!岩なだr・・・・・・ぐはっ!!」
ヤナッキーは攻撃を中断した。否、中断させられた。スカタンクの毒づきを食らっていたのだ。
「なっ・・貴様、なぜだ・・・」
「簡単なことよ。穴を掘るで地中に潜って交わしてただけだからな。さぁて、一気に決めますよ”アニキ”♪」
「アニキ・・?」
ヤナッキーはスカタンクの言葉が引っかかった。彼のアニキと思われるヒトカゲは自分が眠らせた筈だからだ。
「おうよ!!火炎放射!!」
「毒づき!!」
「ぐはああああああぁぁぁっ!!」
ヒトカゲは起きていた。そのままヤナッキーに二人分の攻撃が炸裂しそのまま倒れてしまう。実はヒトカゲ、草笛を察知した直後にスカタンクに穴を掘るでの回避を指示し、自身はカゴの実を食べることで眠り状態を回避していたのだ。
「ふぅ〜、とりあえずは勝てたな」
ヒトカゲは一息つきながら呟く。ちなみに三猿達はまとめてぐるぐる巻きに縛られている。ヒトカゲはその場で凍っている部下達を炎で溶かした。
「さぁて、てめぇら!!化け物について話してもらおうか」
スカタンクが三猿に向けて叫び出す。
「沢庵やキムチが特に好きだな」
「それは漬物だろうが!!化け物だよ!!」
ヤナッキーのボケにスカタンクが突っ込む。
「てんぷらのことだろ?」
「それは揚げ物!!」
今度はヒトカゲ。
「ぐうたらしてる奴ですよね?」
「それは怠け者!!」
「目立たない奴なんですか?」
「それは日蔭者だろ!!お前らもいい加減にしろ!!」
ズバット・ドガースが連続でボケる。スカタンクはそんな彼らにも突っ込みまくる。
「全く・・・・ちゃんと答えろ。お前達がつかえている化け物はどこにいる?」
「ああ、ここから東南に12・5キロ離れた建物にあの方がおられる・・・」
「まぁ、君達では無理だと思うじょ〜♪」
「そう・・・ぐへっ!!」
スカタンクの問いに上からヤナッキー・ヒヤッキー・バオッキーがそう言った。いや、正確にはバオッキーは喋ろうとした直後に殴られたのだが・・・・。
「とにかくあんた達のおかげで助かったよ!!お礼にこんなえちんけな店でよかったらいくらでもただで飲み食いしてくれ!!」
店長のゴーストが嬉しそうにドクローズに言った。
「何!?ただでか!?」
「ああ、こいつらが捕まえてくれた礼だ!!いくらでも飲んでくれ!!」
「おお!!恩に着るぜぇ!!」
こうしてドクローズは酒場で飲み明かしていた。この時すでに彼らは当初の目的を見失おうとしていた。
「ああ〜っ!!」
「何?どしたの?」
唐突にでかい声を上げるヒトカゲにスカタンクが応じる。
「オレ、ひょっとしていいことしちゃった・・?」
「そりゃあ・・・悪者を倒したんだからいいことしたんでしょうね・・・」
「がぁ〜っ!!悪者のオレとしたことが〜っ!!こうなったら・・・・」
「はぁ?ちょ・・おい!!馬鹿!やめろ!!おい!!」
怒りのあまりヒトカゲは無理やり部下(スカタンク)達に酒を飲ませていた。
そして翌日、スカタンク達は尋常じゃない二日酔い、すなわち頭痛等にに襲われることになった・・・・・・。