第三十三話 今度はあいつが……!
「ったく、いつになったら街に着くんだよ・・・・・」
ウォーターがまたしても愚痴る。こいつはいつからこんな愚痴るようになったのか・・・・・
「あっ!!あそこなんじゃないですか!?」
シャンデラが指(?)差した先には広大な街が広がっており、建物もかなりの数が立っていた。
「はぁ〜、やっとか・・・・・・」
スパークが腰を回しながらそう呟く。他のメンバーよりだるそうに見えるのはやはり年か・・・・・・・
「いやぁ〜、結構にぎわってますね〜」
ズルズキンが辺りを見回しながらそう言った。確かに砂漠の中にある街とは思えないほど広い。それに街自体も結構な住人の数で賑っている。
「え〜と、ここでしょうか・・・・」
シャンデラが確認するように言った。今現在は街を治めるにふさわしい大きな屋敷の前にいる。
「ズルズキンさん?」
「はい?」
「申し訳ないのですが、先頭よろしいですか?」
「僕は温泉の方が好きですね」
「だから風呂のせんとうじゃねぇよ!!第三話と同じボケするんじゃねぇよ!!」
ズルズキンにウォーターが突っ込む。
「冗談ですよ。前いけばいいんでしょ前いけば♪」
そう言ってズルズキンは扉の前に立つ。
「失礼しま〜す」
ズルズキンがノックして入っていく。数秒後・・・
「ふぐおわっぁっ!!!」
ズルズキンの体が吹き飛んだ。吹き飛ばされたズルズキンは壁にめり込んでいる。すると中から緑色の大きな蛇のようなポケモン、ジャローダが出てきた。
「はぁ・・・・ジャローダさん・・・まだその癖治ってないんですか・・・・」
シャンデラが笑いをこらえながらそう言った。彼の言う”癖”というのは・・・・・
「シャンデラ君・・・だってわたし恐がりだから・・・」
「だからってノックして入ってきたヒトにいきなりドラゴンテールぶっぱなすヒトがいますか?まぁ今回は僕じゃないからいいですけど・・・」
シャンデラは壁に埋まっているズルズキンをこっそり笑いながら言う。
「笑いごとじゃないですよ・・・・」
ズルズキンが壁にめり込んだ状態でそう呟く。
「ところでシャンデラ君、エンブオーはどうしたの?」
「実は・・・・・・」
シャンデラはエンブオーがぎっくり腰になってしまったことを話した。
「そうだったのね・・・それでその子達が代わりに来てくれたのね?」
「そう言うことです」
話しがまとまったようだ。
「とりあえず中に入って。詳しいことはそこで話すから」
一行はジャローダを先頭に建物の中に入っていく。
「それで・・・・どうしたんですか?」
シャンデラが真剣な表情で尋ねる。
「それがね・・・・わたしの御先祖様が守っていた宝が出てきそうなの・・・・?」
「出てきそう?どういうことですか?」
ジャローダのその微妙な言葉に引っかかる。
「実はその宝は強烈な力を秘めていて、七つの秘宝と呼ばれる強大な宝なの。それを悪用されないように封印したそうなんだけど、その封印が近頃解かれそうになっているのよ。それで七つの秘宝が悪用されないようにエンブオーやシャンデラ君に頼んだのよ」
「「な・・・七つの秘宝!!!?」」
ジャローダの言葉にチームリーファイの全員が大声を上げる。
「ど、どうしてあなた達がそんなに驚くの!?」
「だって、今持ってますから・・・・・・」
びくっとするジャローダをしり目にそう言ってリーフは今までに集めた七つの秘宝をカバンから取り出す。草のラッパ・大地のシンバル・氷のフルートだ。
「まさか七つの秘宝がそんなに持ってるなんて・・・・・・」
ジャローダは信じられない表情を見せる。
「でもそれだけ七つの秘宝を持っているこの子達なら大丈夫かもね・・・・・
じゃあ本題に入るわね。シャンデラ君とチームリーファイの皆、この最果て砂漠には七つの秘宝をの一つ、水のハーモニカがかくされているわ。それを探してきてもらえる?本当ならわたしもいきたいけどこの街を離れるわけにはいかないから・・・・」
「任せてください!!」
「(つうか何で砂漠なのに“水”のハーモニカなんだ?)」
シャンデラが大声で返事する。ウォーターが何か思っているが気にしない方向で。
「ところでジャローダさんとエンブオーさんってどういった関係なんですか?」
ファイアがふとそう尋ねた。
「ええ、エンブオーとはわたし達がツタージャ・ポカブの時代からの探検隊のメンバーよ。まぁわたしはこの街を治めることになったから探検できないけどね・・・」
ジャローダが少しため息をつく。やはり彼女も探検と聞くと血が騒ぐのだろうか。
「それじゃあいくか」
スパークが”よっこいしょ”と言いながら立ち上がると・・・・・・
「・・・・・・・・・・ゎぁぁぁぁあああああああああっ!!!」
「!!!???」
どこからか声が聞こえてきた。数秒後、屋根を突き破って一人のワニノコが落下してきた。
「きゃあああああっ!!」
ジャローダは悲鳴を上げながらワニノコをドラゴンテールで吹き飛ばす。勿論彼女は反射的にドラゴンテールを打ってしまったのだ。
「むごふぁっ!!!」
ワニノコは先ほどのズルズキンのように壁にめり込んでしまう。
「うぐぐぐぐぐぐ・・・・・」
ワニノコはどうにかして壁から抜け、なぜかリーフのもとに寄ってくる。
「な・・・・なんですか・・・・?」
「久しぶりだなリーフ!!」
突然見覚えのないワニノコに名前を呼ばれ、リーフはどきっとなった。
「あの〜、どちら様ですか・・?」
「何を言ってるか!!?わしだ!!わし!!」
ワニノコはそう力説するがリーフは全く覚えていないようである。
「ええ〜い!!この話の第六話をよ〜く見ろ!!わしとお前が話しただろうが!!!」
そう言われリーフ達は確認している。なかには携帯やPCをも取り出しているものもいた。--どれだけ記憶に残っていないのか……。
「あの時の!!!」
「今頃か〜っ!!!」
ワニノコのクローは怒ったようすで叫ぶ。でもこんだけあっていなくて思い出せと言う方が無茶なきがするが・・・・・・
「なんていう名前でしたっけ?」
「ぐほっ!!」
クローは盛大にずっこけた。
「わしはワニノコのクローだ!!!よ〜く覚えておけ!!」
「ところでどうしてこんなところに?」
ファイアが気にしていることを尋ねた。
「ああ、確かこの最果て砂漠に七つの秘宝が隠されていると聞いてな、それでここまで来たというわけだ・・・・・ってシードとシノ(あいつら)はどこに行ったんだ!!?」
クローがはっと気がついた様子で辺りを見回す。しかしどこにもフシギダネもナエトルもいない。
「まったくあいつらはどこにいったのだ〜っ!!!」
部下に見限られたと勘違いしクローはその場で地団太を踏む。
「とにかく、お前達には七つの秘宝は渡さん!!ここはわしが行ってやる!!」
クローがそう啖呵を切る。しかしこれにはリーフも黙っちゃあいない。
「ちょっと待ってもらえますか?何もあなたに止められる必要はどこにもないんですけど・・・」
「なんだと・・・・」
クローはその言葉に反応する。
「どうですか?タイマンで勝った方が宝を探しに行けるっていうのは?」
「なんだと!?」
クローはその提案に不服のようだ。事実クローの体はボロボロとまではいかないが、それなりに疲弊している。
「あ〜、勝てないんですか・・・先輩が後輩にも・・・」
「ガハハハハハハハハ!!!馬鹿を言うな!!お前に負けるほどわしもまだまだ落ちぶれてはいない!!受けて立とうじゃないか!!」
「じゃあ、ファイア。よろしく♪」
「えぇ〜っ!!!?」
リーフはファイアの肩をポンと叩き、親指を立てる(チコリータに親指ないだろってツッコミはなしで)
「リーフ(おまえ)が行かなくてどうすんだ〜っ!!」
「そうですよ!!リーフが主人公でしょうが!!」
クローとファイアがリーフに怒鳴りつける。
場所は変わって、街の闘技場。ここでリーフとクローが対峙している。
「探検隊なんだから道具はありでいいですよね?」
「ガハハハハハハハ!!別にかまわんぞ!!キャリアの違いを見せてくれるわ!!
行くぞ!!」
そう叫んで、クローはダッシュでリーフに急接近する。そのスピードは普通のワニノコよりもかなり速かった。
「葉っぱかっ・・・・」
「遅い!!切り裂く!!!」
「きゃあっ!!」
クローの動きに反応しきれずに、リーフは切り裂くをまともに受けて吹っ飛ばされてしまう。急所に当たったのか結構なダメージを受けてしまった。
「蔓の網!!」
リーフは蔓の鞭を大量に出した蔓の網でクローをとらえる。
「氷の牙!!」
「ーーーっ!!」
クローは冷気を込めた牙で蔓に噛みつく。リーフの体に強烈な冷気が襲い、苦しそうな顔をするも我慢してとらえているクローを振り回し、地面にたたきつける。技は決まったがリーフの体は少しだが凍っている。
「うぐぐぐぐ・・・・流石はわしが目をつけただけある・・・なかなかやりおるな!!」
クローはゆっくりと立ち上がる。
「(そうだった!!確か七つの秘宝には能力があるって言っていた!!)」
リーフがカバンの中にある三つの楽器を見て気付いた。
「(何か道具を使ってくるのか?)」
カバンを覗き込んでいるリーフを見てクローは警戒する。
「(まずこれを!え〜と・・・吹いたらいいのかな?)」
取り出したのは草のラッパだった。リーフはそれを吹いてみる。
すると辺りに心地よい音色が響き、同時にリーフの体の氷と傷が引いていった。
「な・・・何だ!!?」
「あ、あれって・・・・・?」
「恐らく七つの秘宝の効果ですね」
ズルズキンが解説する。博識なキュウコンに話を聞いていた彼はそれなりに七つの秘宝について知識がある。
「恐らく演奏したものの傷や状態異常を治すものだと思われますね・・・・」
「す、凄い・・・・」
全員が唖然となる。それはクローも同じだ。
「まずい・・・あれを多様されると厄介だな・・・・・
ならば一気にカタをつける!!」
クローは再びリーフに突っ込んでいった。リーフはまた別の楽器をだす。もはやクローなど彼女にとってはただの実験台にしか思っていないだろう。
次に出したのは大地のシンバルだった。使うと大地のシンバルは勝手に動き地面をたたきだす。
「ぬわあああああぁぁぁっ!!!」
突如地面が揺れた。クローはその衝撃に足元をとられる。大地のシンバルには地震と同じ効果があるようだ。違いは味方には効かないことだけだが。
「(じゃあこれは?)」
続いて氷のフルートを吹いた。するとその場に凄まじい冷風が吹いた。
「ううっ!な、なんだこれは!?」
クローはその冷風に体を震わせる。しかし冷風は強くなるばかりで・・・・
カキン!!
クローは凍ってしまった。氷のフルートには相手を凍らせる効果があるようだ。
「チャンス!!これなら・・・・」
リーフは体から光を吸収した。草タイプの大技ソーラービームだ。当然凍っているクローは交わすことはできない。
「ソーラービーム!!」
ソーラービームがクローに発射される。その直前に同時に彼の氷も解ける。
「ん?ぐわあああああああああああぁぁぁぁっ!!!!」
極太の光線がクローを貫く。
「うぐぐぐぐぐ・・・・まだわしは倒れんz・・・・・・」
「リーフストーム!!」
「ふんがあああああああぁぁぁっ!!!」
葉の嵐がクローに直撃。クローは叫び声を上げながら倒れた。