第三十二話 狡猾の悪魔再び……!
残念(?)ながらリーフとシャンデラは鉄板焼きならぬメタング焼きを食べそこなってしまった。そんな中再び砂漠をさまよっているが、急に砂嵐が発生してしまった。
「ちっ、なんだってんだこの砂嵐はよ!!」
ウォーターが苛立ったようすで呟く。天候砂嵐は岩・地面・鋼以外のタイプにダメージが入ってしまう。今のメンバー全員砂嵐に耐性はない。
「任せてください!!日本晴れ!!」
シャンデラがそう叫びながら、小さい火の玉のような物体を放出した。すると砂嵐が収まりかわりに強烈な日差しが照りつける。
「(確かに砂嵐は嫌だけど・・・・だからって日本晴れはねぇだろ・・・・)」
ウォーターは再び愚痴る。だが砂嵐を止めてもらって文句は言えない。日差しが強くなって元気になったのはシャンデラだけで、他のメンバーはやはり辛そうである。
「さぁ、これでよし!!燃えるには絶好の天気ですね!!張り切っていきましょう!!!」
「「(はぁ・・・・・・・・・)」」
シャンデラが大声で叫ぶ。その言葉に彼の勢いとは反比例し彼以外全員意気消沈する。しかし・・・・
「ま、またか・・・・・・」
そう、また砂嵐が発生してしまったのだ。
「・・・・・・・・・・・?」
「ど、どうしたんですか?」
シャンデラが急に辺りを見回す。その不可解な言動にズルズキンは疑問を持った。
「・・・・・・・おかしくないですか?いくら砂漠だからってこんなに砂嵐が強いなんて・・・・」
確かにシャンデラのいうとおり、砂嵐があきらかに不自然だった。どう考ええても自然の砂嵐とは思えない。
「・・・・・・・・・!!」
「どうやら向こうに原因があるみたいね」
「いってみましょう!!」
シャンデラが猛スピードで砂嵐の原因と思われる場所に向かっていった。
「ちょ、シャンデラさん速すぎ・・・・・」
他のメンバーも彼を追いかける。
「がはっ・・・・・・・」
「ふん、大口をたたいた割には弱すぎるな・・・・・」
強烈な砂嵐の中、あるポケモンが腹ばいになっている別のポケモンを蹴りつける。蹴られているポケモンは悔しそうに自分を蹴っているポケモンを睨みつける。
「なんだその目は・・・・指示もきかない駒ごときにそんな目で睨まれても目障りなだけだ」
そのポケモンは苛立った様子で倒れているポケモンを思い切り蹴りつけた。蹴られた衝撃でそのポケモンはその場にあった岩に直撃する。
「お前は我が組織に何も貢献できない癖に、裏切ったんだ。お前などもう必要ない・・・・」
「だ、黙れ・・・・初めからお前達のような屑どもに貢献するつもりなど微塵も・・・・・
ぐはっ!!!」
そのポケモンが喋りきる前にバクフーンがバンギラスを踏みつける。
「虫酸が走るな。弱い癖にいちいち突っかかってくる輩は腐るほど見かけるが、どいつもこいつも私の神経を逆なでしてくれる。この前のヘラクロスも同じようなものだ・・・」
そのポケモン、バクフーンは更に苛立ちを見せ、倒れている緑色の怪獣のようなバンギラスを連続で踏みつける。バンギラスが弱るにつれて砂嵐も弱くなっている。
「さて、あまりお前のような使えない駒ごときに費やす時間はない」
そう言ってバクフーンは二つ水晶色の玉を取り出した。それは不思議玉の集まれ玉、それも特別なもので野生の敵ポケモンを集める性質がある。バクフーンは野生ポケモンにバンギラスの息の根を止めさせるつもりなのだ。もうひとつは穴抜け玉で、ここから脱出する気なのだろう。
「・・・・・・・・ちっ
愚図がっ!!役立たずの分際で邪魔をするな!!!」
バンギラスが鬼の形相で睨みながらバクフーンの足を掴んでいた。バクフーンは舌打ちのあと、叫びながら両手から薄茶色の球体を出す。格闘タイプの大技、気合玉だ。気合玉はバンギラスに直撃する。効果は抜群なためバンギラスはその一撃により完全に動けなくなってしまう。
今まで冷静だったバクフーンは感情を爆発させた。彼にとっては自分に対する復讐者など邪魔なことこの上ないのだ。
「邪魔者が・・・・お前のような屑などさっさと消してやる」
バクフーンはそう吐き捨てて二つの不思議玉を使用した。その場に凄まじい閃光が発せられる。バンギラスは言い返したかったが、体がいうことをきかない。
しばらくして、バクフーンの姿が消え、そして砂漠の野生ポケモンがバンギラスを取り囲む。そのポケモン達は全員バンギラスを攻撃しようといきり立っている。バンギラスは立ちあがることすらままならぬその場でうずくまっていた。そしてまわりのポケモン達がバンギラスに襲いかかった。
「シャドーボール!!」
「!!??」
どこからか漆黒の球体が野生ポケモンに直撃した。彼にはその正体がすぐにわかった。シャンデラだった。シャンデラはバンギラスを守るように敵ポケモンの前に立つ。
「大丈夫ですか!?」
シャドーボールを放ったシャンデラと一緒にいたチコリータが自分の安否をうかがう。彼は警戒はするもすぐに敵ではないと判断する。もっとも、抵抗できない状態でもあるのだが。
「こいつらは全員僕が相手します!!リーフさん達はその方を!!」
「わかりました!」
そう言ってチコリータのリーフはバンギラスを抱えようとする。一見それは無謀にしか見えない。バンギラスは体重が二百キロ以上はある。ところが・・・・
「!!!?」
バンギラスは自分の体に起こっている状態に目を疑った。それもそのはず、自分の体があのチコリータによって持ち上げられていたからである。俗にいうバ○ぢからであろうか。
「う、ウソだろ・・・・・・・・」
これには他のメンバーも驚くばかりだ。とにかくバンギラスを安全なところに避難させる。シャンデラはそのことを確認し、自分を取り囲む敵ポケモンを一通り見回す。そしてすうっと大きく吸い込むと・・
「オーバーヒート!!!」
シャンデラがそう叫ぶと凄まじい爆煙が辺りを覆った。爆煙が晴れると敵ポケモン全員が真っ黒焦げになって倒れていた。しかし、シャンデラの様子もおかしかった。
「そっちはなんとかなりました・・・・・・・・あれ?シャ、シャンデラさん・・・?」
ファイアが見たのはいつものシャンデラではなかった。彼の自慢の炎も完全に消えており、まるで燃え尽きたと言わんばかりの状態である。
「・・・・・・・・・あ〜、燃え尽きた・・・・」
言ってしまった・・・・・・。今までのヤル気に満ちた表情は微塵も感じられず、かなりだるそうにしている。
「・・・・・・・シャンデラさん?」
「何・・・・?」
まるで"喋るのもだるいから話しかけないでくれる?"と言わんばかりの表情を見せる。
「(どうしよう・・・・・・・置いていった方がいいかな・・・・・?)」
ファイアがそんなことを考えている間にも彼ら以外のメンバーはバンギラスの介抱をしていた。
「す、すまない・・・・・・」
「それで、何があったんだ?」
ウォーターが尋ねると今までのいきさつを全て話した。自分がバクフーンに殺されかけたことを。
「でも何であんたは何でそいつに殺されかけたんだ?」
スパークだ。彼はバクフーンのことをよく知らない。
「ああ、それも話す」
バンギラスが口を開けた。
「そ、そんな・・・・・じゃあバンギラスさんもクロスさんと同じで・・・・」
「そうだ!!わたしの一族があのバクフーン(腐れ外道 )に皆殺しにされたんだ!!
って、あんたらクロスを知ってんのか?」
バンギラスがこの上ない怒りの表情を見えた直後、唐突に尋ねる。温度差が激しすぎる・・・・・。
「クロスって、もしかしてヘラクロスのクロスさん!?まぁ一度あったことがあるんで・・・
でも、そちらこそどうしてクロスさんを?」
「ああ、わたしがクロスと知り合ったのはな、同じ境遇で孤児院に入れられていたんだよ」
「「ええっ!!?」」
またしても驚愕のカミングアウト。
「とにかく、わたしはあのあと、あいつの組織に潜りこんで隙を見てあいつの首をとろうと思った。だが、裏切るつもりでいたとはいえ、あんな奴の味方をする、まして手下として動くのはへどがでる毎日だ!!毎回毎回命を平気でもてあそぶあの悪魔を見るたびに同じ目にあわせたくて仕方がない!!そう思って今日裏切ったんだ!!」
バンギラスはそう叫びながら立ちあがる。
「踏まないで〜っ!!」
バンギラスの足元にはスパークが、立ちあがったときに踏んでしまったのだ。
「あっ・・・・・・・(汗)」
慌ててスパークを踏んでいた足をどかす。
「・・・・・・・・・・とにかく、裏切ったのはいいが、このありさまだ・・・・・」
バンギラスは顔を俯かせる。
「な、なんて酷いことを・・・・・・」
リーフは怒りで声を震わせていた。見るとスパークも同じように怒っていた。
そんな中、しばらく沈黙が続くと・・・・・
「ふわぁ〜あ・・・・・眠い・・・・」
シャンデラだった。彼は依然としてだるそうな面持ちに加え大あくびをする。実はこのシャンデラ、自分の能力値が上がるとテンションが上がり、逆に能力値が下がるとテンションが下がるようなのだ。(全く面倒くさい・・・・)
そのためオーバーヒートで能力値が大きく下がったのでこの状態になってしまっている。
「あ〜あ、腹減った・・・・・」
そう言って種を口に運ぶ。すると・・・・
「・・・・・・・・・・うおおおおおぉぉぉっ!!!
なんて酷い奴なんですかそのバクフーンは!!そんな奴僕が絶対に許せません!!!」
彼が食べたのは攻撃・特攻を大幅に上げる猛激の種だった。そのため、尋常じゃないくらいのテンションになっている。怒りで炎がいつも以上に燃え上がっており目が炎で燃えている。そんな彼をみて全員が苦笑いを浮かべた。すると再びあのポケモンの姿が。
「どうしました?」
「はい、実は・・・・・・・・・・って、なんでまたここにいるんですか!?」
シャンデラはそのポケモン、ポッチャマのファルコに気が着いたようだ。
「なんでもくそも、わたしはここの保安官ですから・・・・・で、何があったんですか?」
シャンデラはファルコにそのいきさつを全て話した。
「成程・・・・あのバクフーンが・・・・・」
「知ってるんですか?」
「当たり前です!!あのバクフーンは保安官(我々)の世界じゃあ知らないことはないほどの凶悪犯罪者です!!情けを持っていないと思われるほどの殺戮を繰り返す、今世紀最悪のお尋ね者・・・・
いや、悪魔ですよ!!!」
ファルコはバクフーンのお尋ね者ポスターを取り出しながらそう叫ぶ。そこにはこう書かれていた
お尋ね者:バクフーン
ランク:☆15
賞金:百万ポケ
備考:超凶悪な今世紀最悪の殺戮者です。捕まえに行って虐殺されても命の保証はできません・・・・・・・
ファルコのポスターを持つ手が震えている。彼もバクフーンに対する行いが許せないようだ。しかしその言葉にファイアは愕然となる。
「やっぱり、お兄さんは・・・・・・・」
「ファイア・・・・・」
そんなファイアを心配そうに見つめるウォーター。やはりそこは兄として気にせずにはいられないのだろうか。
「とりあえず、バンギラスさん。事情聴取のため御同行願いますか?」
「ああ・・・・・・」
「まぁ、大丈夫ですよ。あのバクフーンについて話してもらうだけですから」
「わかった・・・・」
ファルコはバンギラスを連れていった。
場所は変わってこちらはバクフーンの組織のアジトのトイレ。その中に四人のポケモンが潜んでいた。
「(いいか?せ〜の・・・・・)」
その四人はロケットのようにトイレから飛び出した。するとトイレの掃除をしていたポケモンは・・・
「こら〜!!てめぇらちゃんとトイレのあとは流しやがれ〜っ!!!」
「「そんなのサメハダー(掃除係)の仕事じゃないんですか〜」」
「うるせぇっ!!待ちやがれ〜っ!!!!」
馬鹿にした声を出しながらトイレから出てきたゼニガメズを掃除係・・・もといサメハダー怒り狂いながらが追いかけている。その様子を見ていたバクフーンはため息をつく。