第三十一話 暑くて熱い
チームリーファイはギルドメンバーやヤドキング、エンブオーと別れ自分達の住居に戻り休息を取っていた。連日休みなく探検活動を続けていれば無理もない。
翌日、そんな疲れなど微塵も感じさせない様子でメンバー全員が起床し集まっていた。ただ一人を除いて・・・・・・
「ううっ・・・・・・」
「大丈夫か親父・・・・」
スパークだった。実は起きてからひざなどの酷い関節痛に襲われていたのだ。
「ああっ・・・年ってとりたくねぇなぁ〜っ!!」
「「・・・・・・・・・・・」」
スパークのリアルな発言に彼以外全員苦笑いする。
「仕方ないからスパークさんが全快するまでは休暇にしない?」
「そうですね・・・」
リーフの提案に全員が納得した。スパークの関節痛がひいたのはこの時から一週間はかかったらしい(人間の関節痛とはまた違うので)
一週間後、スパークの関節痛も引き、探検活動を続けることにした。と、いっても七つの秘宝の情報がないのでしばらくは普通の依頼になっている。
「どれいきます?」
ファイアが少し悩み気味の様子でそう言った。事実自分のレベルと依頼の難易度との調整がわからないのだ。確かにチームリーファイはこの探検活動で急速に力をつけてきている。しかし、そういったものは自分達にはわかりにくいものだ。
「じゃあこれでいいんじゃないか?」
スパークは一つのお尋ね者のポスターをひったくった。そのポスターにはこう書かれていた。
お尋ね者 ケンタロス・メタング
ランク それぞれ星2つ
場所 最果て砂漠
備考 凶悪なコンビなので逮捕には十分お気をつけてください。
「なかなか強そうですね」
「なぁに、大丈夫だって!!」
不安そうなズルズキンとは対照的にウォーターは自信たっぷりな表情である。
「よし!!出発!!」
リーフの掛け声とともに全員出発する。
最果て砂漠
「あ、暑い・・・・・・」
砂漠というだけあって、やはり尋常じゃない暑さが猛威をふるっていた。やはり暑さに弱いリーフは辛そうである。
「ん?あのヒトって・・・・・?」
ズルズキンが指差した先には二人分のポケモンの影があった。そのうちの一人には全員面識があった。
「(どうします・・・・・?ここであのヒトにはできればあいたくないんですけど・・・・・)」
「(確かにね・・・・・じゃあここはこっそりと見つからないように・・・・)」
リーフ達はその二人に見つからないようにこっそりと通りすぎることにした。
「・・・・?
お〜い!!」
しかしそのポケモンは無常(?)にも気付いてしまった。そのポケモンはリーフ達のもとにダッシュで駆け寄る。
「え、エンブオーさん・・・・・・・(大汗)」
「いや〜久しぶりだな!!!」
「(ひさしぶりって・・・まだ一週間しかたってねぇじゃネーカ・・・・・)」
そう、以前遠征で行動していたエンブオーだった。確かにこのくそ暑いさなかにこんなくそ暑い奴にからまれたらやっかいなことこの上ない。密かにウォーターが愚痴っていた。
「そういえばその方は・・・・?」
リーフはエンブオーが連れているポケモンを指(?)さす。
「ああ、こいつはわしの一番弟子だ!!おい、自己紹介しろ!!」
「は、はい!!はじめまして!!僕はエンブオー(ししょう )の一番弟子のシャンデラです!!よろしくお願いします!!」
そう言ったシャンデリアのようなポケモン、シャンデラは大声であいさつした。ちなみにこのシャンデラは通常のシャンデラとは違い炎が赤い(通常は紫っぽい色だが)。
「こ、こちらこそ……(苦笑)」
リーフ達はシャンデラのその師匠(?)エンブオーにも勝るとも劣らない元気のよさに若干苦笑いを浮かべている。しかも熱血なエンブオーはともかく熱血なシャンデラにかなりギャップを感じていた。
「こいつはわしの一番弟子でな、わしに似て本当に熱い奴なんだ」
「いや〜、師匠にそう言ってもらえるとうれしいです!!」
「よし!!今回の探検も気合いれていくぞ!!」
「はい!!」
熱血師弟がかってに盛り上がろうとするが・・・・・・
ゴキッ!!
どこからか鈍い音が聞こえた。それと同時にエンブオーの顔が苦痛で歪む。
「ど・・・・どうしたんですか・・・・?」
「す、すまん・・・・ぎっくり腰のようだ・・・・」
「「えぇ〜っ!!!」」
彼のいうとおりぎっくり腰になってしまった。エンブオーはその場から動くのが困難な状態になっている
「ど、どうするんですか!?これからあの方からの依頼があるんですよ!?」
「し、しかしな・・・・・・」
「依頼って、なんですか?」
エンブオーとシャンデラが議論しているなかにリーフが割って入る。
「う〜ん、そうだな、君達に変わりに頼んでも構わないか?」
「いや、だから何をですか」
エンブオーが頼みこむ。リーフはその詳細を聞こうとした。
「詳しいことは依頼者に聞いてくれ。とにかくここの街の一番偉い奴に会ってきてほしいんだが。そいつが今回の依頼者なんだ。」
「どうする?」
「いいんじゃないですか?もっとも、こちらも依頼がありますけけど」
「そうか。恩に着るよ」
チーム全員が納得したようだ。
「ではわしはいったん帰るとするよ。シャンデラ、案内頼むぞ」
「わかりました!!」
そう言ってエンブオーは穴抜けの玉で砂漠を脱出した。
「さて、みなさん!!全力で頑張っていきましょうね!!」
シャンデラが大声で気合をいれていた。他のメンバーは少し(中にはかなり)嫌な気持ちになっていた。(それでも表にだすことはなかった)。
「そういえばリーファイさんって今日は何の依頼でここに来たんですか?」
「まぁ、お尋ね者の逮捕といったところかな」
シャンデラの質問にウォーターが答える。
「そうですか・・・。なら僕もできることは全力でお手伝いしましょう!!!」
シャンデラがいちいち大声で叫ぶ。
「大文字!!」
シャンデラは大の文字をした業火を敵のサイドンにぶつけた。大文字を食らったサイドンはそのまま目を回してのびている。
「凄い火力ですね・・・・・」
ズルズキンが驚きの表情でシャンデラを見ていた。岩タイプのポケモンに炎タイプの技は効果が薄い。にも関わらず一撃で倒したのだ。
「確かにシャンデラという種族は特攻が非情に高いが、この威力は凄いな・・・・」
スパークも驚いた様子で見ていた。すると、どこからか声が聞こえた。
「なんだこの声?」
「行ってみましょう!!」
シャンデラを先頭に騒ぎが発生したと思われるところに駆け付ける。
「おらぁっ!!ここを通りたかったら、通行料十万ポケ払いな!!」
「そんな大金払えるわけないじゃないですか・・・・」
「んだとぉっ!!文句あっか!!?」
二人組のポケモンが別の二人組のポケモンを脅していた。
「しゃあねぇな・・・・・おいメタング!!少し痛い目にあわせてやるか・・・」
「ああ・・・・わかってらぁ、ケンタロス」
「そこまでですよ!!」
「「???」」
シャンデラが襲われかけたポケモンをかばうように立ちはだかる。遅れてリーフ達も到着する。
「んだてめぇらは?」
「お尋ね者のケンタロス・メタングだな!!オレ達は探検隊だ!!」
ウォーターがそう啖呵を切った。
「やばいぜメタング・・・探検隊だってよ・・・」
「焦るな。相手はガキどもだ。逆にカモってやろうぜ」
うろたえるケンタロスとは対照的に余裕の表情を見せるメタング。しかし相手が悪かった・・・・
「じゅるり・・・・・・・」
「「へっ・・・・・・?」」
どこからか舌舐めずりする音が聞こえた。その音にメタングの余裕の表情が消えた。
「鉄板焼き・・・・・」
「「えっ・・・・・・・(滝汗)」」
リーフだった。なぜくそ暑い砂漠の中なぜ鉄板焼きなんて食おうとするのか。ケンタロス=牛肉と考えるばかりかメタング=肉を焼く鉄板と彼女の思考回路がそう導き出した。そしてリーフは(別の意味の)戦闘体制に入る。
「ちょ・・・・ちょっと待て・・・・なにもそんなことをしなくても・・・・」
「シャンデラさ〜ん♪」
今までの余裕など微塵もないメタング達に追い打ちの言葉が発せられる。呼ばれたシャンデラはというと・・・・・
「わかってますよ〜♪鉄板焼き〜♪」
このありさまだ。こうなったらファイア達には止められないだろう。メタング達にはこのままだとどうなるか容易に想像できた。
「「・・・・・・(滝汗)
逃げろ!!!」」
「「待て〜っ!!!」」
逃げるメタング達にリーフ達が追いかける。二人とも目がマジだ・・・・・・・。残されたファイア達は襲われていたポケモン達を介抱していた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい・・・おかげさまでたすかりました・・・」
襲われていたポケモン、ランクルス・バイバニラはお礼の言葉を発した。しかしウォーターはそんな二人を凝視していた。
「ど、どうしました・・・・・?」
「君ら二人ともさっさとここから離れた方がいいぞ。食われたくなければな・・・・」
「確かに 水あめとアイスクリーム〜!! って叫びそうですよね・・・(汗)」
「「・・・・・・・・・・・」」
ウォーターのいうことにファイアもスパークもズルズキンも納得した。今のリーフとシャンデラではこの二人まで食べようとしかねない(特にバイバニラ)
「そ、それでは・・・」
ランクルスとバイバニラはその場をあとにした。
一方その頃リーフとシャンデラは食材・・・・・もといメタングとケンタロスを二手に分かれて追っていた。
「葉っぱカッターからのしかかり!!」
リーフはケンタロスに無数の葉の刃をぶつけ、更に上空から、のしかかった。ケンタロスはそのまま目を回してのびている。一方のシャンデラも・・・・・
「大文字!!」
超火力の炎技をメタングにぶつけた。鋼タイプのメタングには効果は抜群でメタングも真っ黒になって倒れている。
「なんだ、お尋ね者っていっても大したことないのね」
リーフは倒れているケンタロスに向かってそう吐き捨てた。それもそのはず、確実に実力は大きく上がっている。
「こっちも終わりましたよ〜」
シャンデラはクロ焦げのメタングを引きずりながらリーフのもとに来る。
「「さ〜て鉄板焼き鉄板焼き♪」」
リーフもシャンデラもメタングの上にケンタロスをのせる。やっぱり本気だこいつら・・・・・・・
しかし、それも上手くいかなかった。
「あ、お尋ね者のメタング・ケンタロス!!」
一人のポケモンがその場に駆け付けた。そのポケモンは保安官と思われるバッジをつけている。
「もしかして、貴方方がメタング達を捕まえてくださったのですか!?」
「は、はぁ・・・・・」
保安官らしきポケモン、ポッチャマは黒焦げのメタングとズタズタのケンタロスを見てそう尋ねる。
「そうですか。わたしは保安官のファルコと申します!!今回は逮捕にご協力ありがとうがざいました!!これは報酬です。メタング達は責任を持って我々が食します!
さぁ、来い!!」
「来るから食うのはやめて〜っ!!(涙)」
ポッチャマのファルコはリーフに六千ポケを渡し、泣き叫ぶメタング達を引きずり去っていった。
「はぁ〜あ、鉄板焼き・・・・・」
「残念ですね・・・・・」
リーフもシャンデラが残念そうにため息をつく。
一方引きずられていくメタング達、おそらく彼らほどシビル丼の気持ちが理解できるポケモンは存在しないかもしれない。