第二十八話 グラー……丼!?
「ううっ・・・暑い・・・・」
ドクローズを蹴散らし高台のダンジョン、熱水の洞窟に入って行ったのだが、その暑さにリーフは辛そうな表情を浮かべていた。それも無理もなく草タイプの彼女は暑さには弱いのだ。
もっとも、暑さには耐性のあるファイアやウォーターもそれなりに暑そうな様子であることには変わりない。しかしそんな中・・・・・
「うおおおおおおおおおっ!!!
ヒートスタンプ!!!」
エンブオーだった。彼だけはこの暑さの中ピンピンしており、むしろ今までより一層元気になっているのだ。事実ここの敵の九割以上は彼が倒している。
「よし!!!次行くぞ!!次!!!」
エンブオーは大声を張り上げて凄まじい勢いで一人で先に進んでいった。エンブオー以外は彼の勢いについていくのが精いっぱいの様子である。
「え、エンブオーさん・・・・?よくそんな勢いで持ちますねぇ・・・・」
「何言ってるんだ!!!暑いほど燃えるじゃないか!!!」
と、叫んでまた走り去っていった。他のメンバーはただため息を吐くしかなかった。
しばらく進んでいくと中間地点と思われるところに差し掛かった。そこはいままでとは違い暑くはないのでエンブオー以外全員がほっとした表情を浮かべた。
「なんだ、皆もう疲れたのか・・・・」
エンブオーが怒りよりむしろ残念そうな表情を見せた。彼としては早く頂上に登りたい一心だが、流石に置いていく訳にもいかず、彼にとっては口惜しくも休憩をとることになった。
「・・・・・・ォォォ・・・」
「ん?誰か何か言わなかった?」
ヤドキングがそう言うが、その問いに全員が首を横に振る。
「じゃあ誰が・・・・・」
「・・・オオオオオオォォッ」
「やっぱり何か聞こえたよね」
「「えええええっ!!!?」」
ファイアとズルズキンが互いに身を寄せ合って震える。
「まぁだからと言って帰る訳にはいかないでしょ」
リーフが当たり前の様子でそう言った。表情はいつも通りだったが、なぜかファイア達には勇気づけられた気がした。
「そ、そうでしたね・・・・」
「ここまで来て臆する訳にはいきませんもんね」
ファイもズルズキンも覚悟を決めたようだ。
「よし!!そうときまれば一気に行くぞ!!!
ニトロチャージ!!!!」
エンブオーは再びニトロチャージで勝手に進んでいった。その場にまたため息がしたことは彼は知る由もなかった。
しばらくして・・・・
「遅いぞ!!!」
エンブオーが苛立った様子でそう叫んだ。実はリーフ達が到着する十分前に頂上に着いていたのだ。
「(あんたが勝手に進むからだろうが・・・・・)」
ヤドキングがこっそりとそう呟いた。
「グオオオオオオオオオォォォッ!!!!」
「−−−っ!!!」
突如凄まじい叫び声が聞こえた。その正体は明らかに近くにいることだけが確認できた。
一方プクリンのギルドのメンバーも洞窟の入り口にさしかかっていた。
「本当に見たのかい!?」
「ああ、間違いねぇ。確かに親方がこの洞窟に入って行くのを見たんだ!」
「そうか、なら我々も急ぐぞ!!」
その場にいた全員が中に入って行こうとしたが・・・・
「・・・・・・・ぅ・・」
「あれ、何か聞こえたような・・・」
「気のせいだ、急ぐぞ」
「う、うん・・」
ディグダが何かを聞き取ったようだがダグトリオに促され、気にせず進んでいった。
「(ううっ・・・・・またやられてしまった・・・・)」
スカタンク達だった。ズルズキンにフルぼっこにされた挙句、その場に放置されてしまったのだ。
「(もう、あいつらには二度と関わりたくない・・・・・)」
「(右に同じ・・・・・)」
「「がくっ・・・・」」
そのまま、また気を失ってしまった。
「なぁペラップ、グラードンって何なんだ?」
「グラードンは早い話が伝説のポケモンだ。詳しいことを言うと長くなるが、恐らく先ほどの叫び声がそれかもしれんな」
「じゃあ、そんな奴と闘うってのか・・・・」
「馬鹿を言うな!!グラードンと闘うだなんて無茶にもほどがある!!そんなことできるのはよほどの命知らずしかいない!!!それほど伝説のポケモンは強いんだよ!!!」
そんなことは露ともしらないリーフ達はやはりグラードンと対峙していた。
「貴様ら!!ここを荒らしにきたのか!!!」
「いや、僕らはただ・・・・・・」
「ここを荒らすものは何人も許さん!!!覚悟しろ!!!」
ヤドキングが説得を試みるも無駄に終わった。
「(はぁ・・・、伝説のポケモンって話を聞かないただのアホか・・・・・)」
ヤドキングは決して口にだしてはいけない事を思っていた。そんな中リーフは何か気に入らない表情でグラードンを凝視していた。
「ん?どうしました?」
「う〜ん、グラー丼よりシビル丼の方がおいしいかなぁ・・・・(一度食べたかったなぁ・・・・)」
グラードンもいれて一斉にずっこける。
とある場所
「ぞくっ・・・・・・(汗)」
「どうした?」
「い、いや・・・なんでもありません・・・・・
(なんだ?凄く嫌な予感がしたんだが・・・・・・・)」
「そうか、なんか顔色が悪かったからな」
シビル丼と警察官と思われるポケモンがいた。シビル丼の顔は少し青ざめている。まさか自分を捕まえた探検隊に食われるなんて微塵も思ってなかったからだ。
「あのなぁ・・・・・・(汗」
「そんなことよりやるしかないようだな・・・・・行くぞ!!!
ヒートスタンプ!!!」
エンブオーが叫ぶと同時に炎を纏いながらとび上がった。
「ぬおおおおおおおおりゃあああああっ!!!!」
そのままグラードンめがけて高速で落下する。
ガシッ!!
「えっ?」
グラードンは落下していたエンブオーをがっちりと受け止めていた。そして・・・・・
「ぬわああああああああぁっつ!!!」
そのまま空中に投げだされてしまった。
キラーン
エンブオーは星となった。
「「ええ〜っ!!!?」」
目が点になった。
「次は貴様らだ!!!ドラゴンクロー!!!」
グラードンは鋭い爪をそのまま振り下ろすもギリギリで交わす。
「ちっ・・・散々暑い思いしてきたのに、ここでも日が照ってきやがった!!」
ウォーターが愚痴るようにそう言った。グラードンの特性日照りで日差しが強くなったのだ。水タイプの彼にはつらい天気である。
「天気は晴れで相手は地面タイプ・・・
・・・・・・・・・・」
リーフは頭の中で作戦を練っていた。
「(・・・・よし!)」
作戦が決まり他のメンバーに作戦を伝える。しかし、ひとつだけ不安要素があった。
「めんどくさいな・・・・・」
ヤドキングだった。彼が指示通りに動くかだった。
「電光石火!!」
「ふん!きくか!!」
スパークが電光石火で突っ込むも軽くあしらわれる。
「冷凍ビーム!!」
続いてウォーターが冷凍ビームを放つ。効果は抜群だが、それほどきいていないようだ。
「ちっ、こうなったら一気にきめてくれる!!ビルドあっ・・・・・・」
「そんな技に頼らないと勝てないんですか?伝説も名前だけなんですね」
「な、なんだと!!」
グラードンがビルドアップを使おうとするがズルズキンの挑発によって止められる。
「ドラゴンクロー!!」
ズルズキンに向けて鋭い爪を振り下ろすも先ほどより力任せに打ってくるため容易に交わすことができた。
「オーバーヒート!!!」
「ソーラービーム!!!」
リーフとファイアが自身の大技をグラードンに向けて放った。どちらも日差しが強い状態を受けている為今の状態にはうってつけの技なのだ。
「グオオオオオオオオオオオオォォォッ!!!!」
二つの技はグラードンに直撃し、爆発を起こした。
「やったか!?」
「うぐぐぐぐ・・・・・・」
グラードンはまだ立っていた。
「まだ立てるのか!?」
「くそぅ・・・・このままでは許さんぞ!!」
グラードンはリーフのもとに向かっていく。
すると・・・・
「ぐあああああああああああああぁぁぁっ!!!!」
突然グラードンが転倒した。いや、転倒させられたのだ。
「ふっ、悪だくみ後の草結び(いたずら )と言ったところかな」
ヤドキングの草結びだった。しかもリーフが攻撃の隙をうかがっている間も悪だくみをひたすらつんでいたのだ。
「うぐぐぐぐぐ・・・・」
グラードンは倒れている状態だが、まだ完全に倒されてはいなかった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!」
「????」
上空から雄たけびが聞こえてきた。上を見ると。火の玉がグラードンに向かって落下してきている。
その火の玉の正体はすぐに分かった。
「え、エンブオーさん!!?」
エンブオーだった。実はグラードンに吹き飛ばされたが、その勢いが止まりヒートスタンプで落下の勢いを上げていたのだ。
「ヒートスタンプ!!!」
「ぐはあああああああぁぁぁっ!!!」
エンブオーはそのままグラードンを押しつぶした。
「ふぅ〜、飛ばされてもただでは落ちんぞ!!!
って・・・あれ?」
しかしその勢いは尋常ではなくまわりにいたリーフ達にまで被害が及んでいた。まわりを見るとエンブオー以外全員が目を回してのびていた(グラードンに至っては紙のようにぺらっぺらになっていた)
「なんだ、なんで皆してのびているんだ?」
「「あんたのせいじゃ〜!!!!」」
「ぐはっ!!」
エンブオーは味方全員に殴られた。