第二十七話 せきぞー
遠征先の濃霧の森でどやキング・・・・もといヤドキングに会いともに散策をしていたリーフ達。
探索していると、ヤドキングが衝撃的な言葉を発する。
「まぁ、皆僕を怠け者だと思っているけどある意味正解だよ。僕の特性は なまけ なんだ」
「あ〜、だから怠け者で
ってえぇ〜っ!!!!?」
あまりに突然すぎるカミングアウトにヤドキング以外の全員が素っ頓狂な声をあげる。それもそのはず、通常のヤドキングの特性はマイペースとどんかん(夢特性がさいせいりょくらしいですが・・・)であり、なまけは絶対にありえないのだ。しかし彼の言動から全員が半信半疑だった。(良くも悪くも怠け者なので・・・・)
「でもどうして特性が変わっちゃったんですか?」
「ん?まぁ事故だよ事故♪」
ファイアの質問に軽〜く答える。
「(ノリが軽いぞ・・・ほんっといい加減だなこのヒト・・・・)」
ヤドキング以外の全員がそう思った。
「ん?あれはなんだ!?」
スパークが指差した先にあったものは熱水によって生み出された大量の湯気。それによって視界がほとんど奪われていたのだ。
「みんな、慎重にね」
リーフが他のメンバーに注意を促す。湯気の中に入っていくと、本当にまわりが見えなくなってしまった。
「っ痛!!」
リーフが何かに足をつまずかせた。
「言ってる君が気を付けなよ・・・・」
よりによって一番言われたくない相手、ヤドキングに言われてしまった・・・・。リーフは悔しそうな表情を浮かべるが、彼の言うことももっともなので反論できない。
「で、何につまずいたんだ?」
エンブオーがリーフの足元を覗き込むように見る。彼が見たのは赤い宝石のようなものだった。
「なんだこれは?」
「さぁ・・・・でも、結構綺麗ね。持っていこうかな♪」
リーフは赤い石がよほど気に入ったのか嬉しそうな表情を浮かべる。やはり女の子だからだろうか。
「いくらくらいで売れそうですかね?」
ドコッ!
空気を読まないズルズキンの頭に蔓の鞭が飛んだ。
「しっかし、ほんっと見えねぇな〜、
ってなんじゃ〜こりゃ〜っ!!」
いきなりウォーターが叫んだ。他のメンバーも彼の視線の先を見て驚愕する。目の前に巨大なポケモンの銅像があったのだ。
「これって、また銅像と思わせて攻撃してくるあれじゃないのか?」
スパークが若干警戒した様子でそう言った。確かに以前似たような経験があったからだ(第十一話参照)。
「それはないと思うよ。このポケモンは伝説のポケモン、グラードンだからね」
「グラー丼?」
「(またか・・・・)」
ヤドキングの言葉にリーフがもはやお約束のボケをかます。ウォーターはこっそりため息をついていた。
「グラードンって・・・なんですか?」
「なんだ、知らないの?
グラードンは太古の昔にカイオーガと対になる存在の伝説のポケモンだよ。グラードンは大陸を広げ、カイオーガは大海原を広げたとして有名さ。またグラードンが出現すると辺りはカンカンの日照りに、カイオーガが出現すると凄まじい豪雨に見舞われるんだ」
ファイアの疑問にヤドキングが詳しく解説した。思わず彼以外の全員が感嘆の表情を浮かべた。(当然ヤドキングはお約束のどや顔を見せたが)
「ん?銅像に何か書いてあるわね」
リーフが銅像を除き見ていると、文字のようなものが書かれてた。
「・・・・・・・・・・・」
リーフは真剣に文字を見ている。
「何かわかりましたか?」
ファイアがそう言ったあと、リーフが口にしたことは・・・・・
「これ・・・・
なんて書いてあるの・・・?」
全員が盛大にずっこけた。
「わからんかったんかい!!!」
「だってわたし、ポケモンの世界の字読めないから・・・」
「(確かに元人間だったけど・・・)」
ウォーターの突っ込みにリーフは若干押され気味である。(実はファイア以外はリーフが元人間であることは知らない)
「しょうがないな・・・僕が読むよ・・・」
ヤドキングがため息をつきながら像に書かれている文字を読もうとする。
「え〜と、足形文字だね何々・・・・《グラードンの命を 灯しきとき、霧が晴れ、宝の道は開かれるなり・・・・・》
た、宝の道?」
「宝の道〜っ!!!?」
ファイアが驚きの声をあげる。その表情は嬉しい驚きといったところか。
「じゃあ、この像の命を灯したら、宝が見つかるんじゃないですか!!?」
「落ち着けって」
興奮するファイアをウォーターが止める。
「でも、命を灯すってどういうことだ?」
「・・・・・・・・・・」
エンブオーの言葉に全員が黙ってしまう。
「とりあえず、像を調べてみませんか?何かわかるかも知れないですし」
「そうだな」
ズルズキンの提案に全員が像を調べていった。一人を除いて・・・・・
「ふぁ〜あ、眠い・・・・」
ヤドキングだった。正直彼は宝などどうでもよく、さっさと帰りたかった。しかし勝手に帰ると一人でダンジョンを歩いていかなくてはならないためそれもできない。
「なんだこのくぼみは?」
「え?」
スパークが見つけたのは、像の心臓部分にあったくぼみだった。
「恐らくここに何か入れることで謎が解けるんじゃないか
・・・・ってなんだ!!?」
ウォーターがそう呟いた矢先、突然地面が揺れ、像が光だした。
「あ、ごめん。もう入れちゃった♪」
リーフだった。ウォーターが喋っている間に先ほどの宝石をくぼみに差し込んでいたのだ。
「何しとんじゃ〜っ!!!」
「怒ってないで早く離れましょう!!」
ズルズキンの言葉に全員が像から離れた。
しばらくして光が止み、揺れが収まった。
「あれ?霧が・・・・晴れましたね・・・?」
ズルズキンの言うとおり、先ほどまでかかりまくっていた霧が完全にはれていた。
「???
皆!!上を見て!!!」
リーフに言われ全員が上を見た。そこにはまるで浮島のように漂っている高台があった。そこからはまるで滝のように大量の水が流れ落ちている。
「もしかして、あそこが宝につながっているんじゃないですか?」
「そうよ!!きっとあの高台に秘宝があるに違いないわ!!」
ファイアもリーフも今までにないほどかなり興奮している。
「よし!早速行きますか!!!」
「待ちな!!」
突如声が聞こえた。振り返るとヒトカゲ率いるドクローズメンバーが姿を現した。それを見たファイアは眉間にしわを寄せる。
「ごくろうさん。だが悪いが宝はオレ達が・・・・・・
ちょっとタイムね・・・・・」
相変わらずの悪そうな表情から一転、焦った表情を浮かべながら手下のスカタンク達を離れた場所に高速で連れ込むヒトカゲ。
「(なんすか?)」
「(予定と違うやろ!!なんであんな仰山おんねん!!
さっきまであのチコリータとヒノアラシしかおれへんかったやろ!!)」
「(そんなんオレに言われてもしょうがないでしょ!!)」
「(とにかくなんか道具、道具ないんか!?)」
「(いや、オレ爆裂の種(これ )一つしか持ってないっすよ!)」
「(そんなん持ってきたって意味ないやんけ!!)」
リーフ達はそんなヒトカゲとスカタンクがこそこそとしたやり取りを茫然と見ていた。
「何このぐっだぐだなやりとり・・・?」
「何しに出てきたんだ・・・・?」
そんなことは露とも知らないヒトカゲ達はぐだぐだなやり取りを続ける。
「(ほんでズバットはドガース(おまえら )はなんかあるんか?)」
「(いや、俺等もヒトカゲさん任せなんで・・・・)」
ドカッ!!
ヒトカゲがズバットの頭をド突いた。
「(なんでたたくんですか!?)」
「(とりあえず、スカタンク・ドガース、毒ガスの準備せぇ。ズバット、洗濯バサミ!!)」
「(へ、へい!!)」
三人はヒトカゲ指示通りに動いた。そしてスカタンク・ドガースはリーフ達の前に立ち、ヒトカゲとズバットは洗濯バサミを鼻につける。
(声がまるき声だったため)作戦ばればれなことに全く気付かずに・・・・・・・・・
「「食らえ!!毒ガススペシャルコンボ!!」」
スカタンク・ドガースがそう叫んで大量の毒ガスをまき散らした。
「へへっ」
ヒトカゲが勝ち誇った表情を浮かべた。
しかしそれが彼の本日最後の余裕の表情となるとは知らずに・・・
「な、なんだと!!!?」
素っ頓狂な声をあげるドクローズ。それもそのはず、倒すべき敵がぴんぴんした姿で立っているのだから。
「そうか!!リーフ(あいつ )の能力か!!」
確かに彼の言うとおり、チコリータという種族は頭の葉から出す香りに消臭効果がある。
「いや、脱臭剤持っていただけだけど」
「なんでそんなもんもっとんじゃ〜っ!!!」
リーフは懐から脱臭剤を取り出しながらそう言った。
「くそっ、こうなったら・・・・
これでもくらえ!!!」
ヒトカゲは不思議玉を使用した。辺りが凄まじい光に包まれる。
「「あ、あれ・・・・?」」
しばらくして光が止むと、ヒトカゲの姿が消えていた。
「「に、逃げた〜っ!!!」」
「どどどどどどど、どうしよ〜」
そう、穴抜けの玉で逃げていたのだ。残されたスカタンク達はあたふたする。
「と、とりあえずオレ達も逃げといた方が・・・」
「ちょっと待ってもらいましょうか」
その言葉にスカタンク達の背筋が凍る感じがした。
「あんな毒ガスまき散らしておいてただで帰ろうと言うんじゃないでしょうねぇ・・・・」
ズルズキンだった。彼は真っ黒な笑みでスカタンク達に近寄る。スカタンク達は恐怖でガタガタ震えている。
「ちょっとばかし痛い目にあってもらいましょうか・・・・」
「ちょ、ちょっと待った・・・今回は・・」
逃げようとするもズルズキンにがっちり掴まれて逃げることはできない。
「ストーンエッジ!!」
「「ぐはああああああぁぁっ!!」」
手始めと言わんばかりにズバット・ドガースを蹴散らす。
「た、頼む・・・命だけは勘弁・・・・」
「大丈夫ですよ。命 だけ は許してあげますから・・・・」
スカタンクの表情が完全に凍った。
「さぁ〜て、始めますか♪」
「ぐええええええええええぇぇぇっ!!!」
ズルズキンはスカタンクを自信過剰で上がった攻撃力でぼっこぼこにしていた。そしてスカタンクはもう今度こそは彼に関わりたくない。そう決めていたのだった。