第二十三話 待ち望んだ……筈……
「チームリーファイさんにエンブオーさん、
どうもわざわざ来てくれてありがと〜♪僕はプクリン、ここのギルドの親方だよ〜♪
よろしくね〜♪」
プクリンは嬉しそうに自己紹介をする。エンブオーとズルズキン以外はプクリンの態度に違和感を感じていた。
「久しぶりだなプクリン」
エンブオーが先ほどとは全く違う様子であいさつする。
「じゃあ、いきなりだけど、今回の遠征だけど、この地図を見て♪」
そう言ってプクリンは地図を取り出した。リーフ達はその地図を覗き込むように見ている。
「ここに霧がかかっているところがあるでしょ♪ここに凄い宝があるって情報が入ったんだ♪
う〜ん楽しみ♪楽しみ♪」
説明がかなりアバウトである。もはや探検で頭がいっぱいなのだろうか。
「じゃあそう言うわけで、ベースキャンプはこの森でいいよね。じゃあまたね〜♪」
そう言ってプクリンはぺしゃんこになっていうるペラップを抱えて去っていった。
ほかのポケモンもそれぞれ数人ずつに分かれて行った。
「こんなんでいいんですか?」
「まぁ、プクリンはいつもこんな調子だからな(苦笑)」
エンブオーは苦笑いを浮かべる。
「じゃあ、わしらも行くとするか」
「そうですね」
リーフ達もギルドをあとにした。ちなみに機動性のことを考慮しリーフ・ファイア・エンブオーとウォーター・スパーク・ズルズキンの二手に分かれることにした。このグループわけにスパークは人知れずほっとしていたらしい。
「ねぇ、リーフ、この洞窟で本当あってるんですか?」
リーフチームは洞窟に向かっていた。そんな時ファイアがリーフに唐突に尋ねてきた。
「大丈夫♪迷った時はこうやって棒が倒れた方向に」
「そんなことで引っ張ってきたんか〜(怒)!!!!」
「だって、迷ったところでむだじゃない・・・」
あまりにいい加減なリーフに激怒するファイア。
「全く・・・ねぇエンブオーさん・・・・?」
「もう先に行ったけど」
リーフの言うとおりすでにエンブオーの姿はなかった。ファイアは思わずずっこける。
そんな様子をひっそり見ていた四つの影があった。
「ふふふふふふふ・・・・今回こそ俺達の勝ちだな・・」
ヒトカゲ達だった。性懲りもなくリーフに仕返しを企んでいた。
「(だからどこからその自信は出てくるんだ?)」
彼の手下のスカタンクはひっそりとそう思っていた。事実全く勝ったことがないにも関わらず。
「よ〜し、いまの・・・」
「おい」
いきなり後ろから声がした。その瞬間ヒトカゲには背筋が凍る感じがした。
「な、なんだ・・・・」
ヒトカゲは震えながらも振り向く。そこにいたのはあのバクフーン・サメハダーだった。
「お前達はあのヒノアラシに用があるのか?」
バクフーンはそう言った。彼からは尋常じゃないオーラが漂っていることがヒトカゲ達にはわかった。
「そ、それがどうした!!」
ヒトカゲは言い返すも体は恐怖で震えていた。
「我々もあいつに用があるのだ。邪魔をするならばこの場で消えてもらうことになる」
そう言ってバクフーンは銀の針を取り出す。ヒトカゲ達には体で感じていた。
--自分達では絶対にかなわない--
いつもなら、やり返す彼だが、今回は違った。勝てないとわかっていたのだ。
「わ、わかったよ・・・
おい!行くぞ!!」
「へ、へい!!」
ヒトカゲ達はその場を去った。
「なんだ、あいつ等、ただの腰ぬけじゃねぇか、つまんねぇな」
サメハダーが去って行くヒトカゲ達を見てそう吐き捨てた。
「放っておけ。行くぞ」
バクフーンはリーフとファイアのもとに向かった。サメハダーもついていく。
「お〜い!お前達!!遅いぞ!!」
エンブオーがヒートスタンプで地面をたたきながらそう言った。
「だから、早すぎるんですって・・・」
「早くこん・・・・・」
ファイアの言葉を遮るエンブオーだが、その言葉もすぐに止まり、彼の表情も険しくなる。そして・・・
「隠れてないで出てきたらどうなんだ!!!」
いきなりエンブオーが怒鳴った。するとどこからか二人のポケモンが現れた。その瞬間ファイアの様子が変わる。
「お・・・・お兄さん・・・?」
「久しぶりだな・・・・ファイア」
ファイアとバクフーン、互いに信じがたい言葉を発した。
「ど、どうしてここに・・・・」
「答える必要はないな・・・たとえ弟でも・・・・
これから消える者にな」
バクフーンは驚愕の言葉を発する。その言葉にファイアは凍りついた。
「(き、消える・・・・?
お、お兄さんが・・・僕を・・・・?
どういう事・・・・・?)」
そんな様子をリーフは茫然と見ていた。衝撃的なことで彼女もまたパニックになっていた。
「火炎放射」
バクフーンはファイアに火炎放射を放った。ファイアは動揺してよけることができない。
「危ない!!熱湯!!」
エンブオーは口から高温の水、熱湯を出した。火炎放射と熱湯は互いに相殺される。
「流石探検隊連盟のエンブオーさんですね。私の火炎放射を相殺するとはなかなかの威力ですよ」
技を打ち消されたにも関わらずバクフーンは余裕の表情を浮かべる。
「ふん、貴様のような殺戮者に褒められてもちっとも嬉しくないぞ」
「ですが、我々の邪魔をするなら容赦しませんよ。行けサメハダー」
「了解!!」
バクフーンの指示にサメハダーはエンブオーに突っ込んでいく。
「ふん、瓦割り!!!」
エンブオーは瓦割りで攻撃しする。対してサメハダーは首を引っ込める。
「ぐっ・・・・」
瓦割りを直撃させた瞬間、エンブオーの顔が苦痛で歪む。サメハダーの特性鮫肌だった。
すると、サメハダーが・・・
「ロケット頭突き!!」
「ぐはっ!!」
強力な頭突きがエンブオーに直撃する。サメハダーは効果抜群の瓦割りを食らったにも関わらずそれほどダメージを食らってないようだ。ロケット頭突きの効果で一時的に防御力が上がっていたためだった。
「こうなったら・・」
リーフがサメハダーに攻撃しようとするが・・・
「下がっていろ!!!こいつらはお前達ではどうにもならん!!!わしだけでやる!!!」
エンブオーに怒鳴られリーフは思わず萎縮してしまう。だが無理もなかった。自分との実力を先ほどの戦闘で痛感していたからだ。
「ガハハハハハハハ!!!よくわかってるじゃねぇか!!
だがあんたもここで終わる!!ハイドロポンプ!!」
サメハダーは口から激流のハイドロポンプを出した。
「そう来ると思ったわい、はああああああああぁぁあっ!!!」
エンブオーがそう叫ぶと、彼の体から電流が流れだした。その光景にサメハダーは驚愕していた。
「ワイルドボルト!!」
エンブオーは体に電気を纏ったままサメハダーに突っ込んだ。ハイドロポンプも電気によって無力化されてしまう。
「ぐはあああああっ!!!」
ワイルドボルトをまともに食らったサメハダーは吹き飛ばされ壁に直撃する。
「これで終わりだ!!ヒートスタンプ!!」
エンブオーはサメハダーの真上にとび上がっり、そして炎を纏いながら急降下していった。
「むぐふぉあっ!!!」
ヒートスタンプを食らったサメハダーは先ほどのペラップのようにぺらっぺらになってしまった。
「はぁ・・・まずは一体か・・・」
エンブオーの体はかなり疲弊していた。反動技のワイルドボルトに特性の鮫肌に三度も触れたのだから無理もない。
「流石ですね。ですが今の戦闘であなたのバトルスタイルは全て把握しましたよ
サメハダー(こいつ )との戦いでね」
バクフーンはぺしゃんこ状態のサメハダーを見ながら余裕の表情を浮かべる。
それどころか信じられないことを言っていたのだ。
「ま、まさか・・・・・」
「貴様・・・・」
リーフは驚き、そしてエンブオーは怒りで声を震わせていた。
そう、彼はサメハダーを囮に相手の戦法を分析していたのだ。
「大人しくそのヒノアラシを渡してもらいましょうか」
バクフーンはそう言ってにじり寄る。
「い、嫌!!絶対にファイアは渡さない!!」
リーフは依然として動揺して動けないファイアの前にかばうように立つ。
「よく言った!ここはわしが時間を稼ぐ。だから君はファイア君をできるだけ遠くに・・・」
「神通力」
バクフーンが神通力を出すと、いきなりリーフの体が硬直してしまう。
「そう簡単に逃がすと思ったか?」
バクフーンが冷たくそう言い放った。その様子にエンブオー達は顔をしかめる。
「ならば、わしが貴様を倒せばいいだけのことだ!!」
「できますかね、いまのあなたでは」
バクフーンの言うとおりエンブオーの体はボロボロだった。
「やってみなくてはわかるまい!熱湯!!」
「火炎放射」
エンブオーは熱湯、バクフーンは火炎放射を繰り出す。しかし、熱湯には先ほどのような勢いが無く。火炎放射に押されていた。
「瓦割り!!」
エンブオーは続いて拳をバクフーンに向けるが。これも軽く交わされる。
「やはり、体は正直なようですね。勢いがありませんよ」
確かにエンブオーの技には総じてキレも早さもなくなっていた。
「ヒートスタンプ!!」
エンブオーはとび上がってヒートスタンプを繰り出した。その衝撃で地面が割れる。
「やったか!?」
「こっちですよ」
バクフーンが後ろにまわっていた。穴を掘るでかわしていたのだった。
「ぐはっ!!!!」
そのまま穴を掘るの攻撃を食らい吹き飛ばされる。効果抜群なだけに相当なダメージを食らったようだ。
「さて、始末にかかるとするか」
バクフーンはファイアにゆっくり近づいていく。依然としてリーフは神通力の力で動けない。
「ちっ」
熱湯が飛んできたがそれも軽く交わす。
「往生際が悪いですね」
倒れているエンブオーに向かってそう吐き捨てた。
「こ、これ以上貴様に罪のない命を奪わせはしない・・・・」
「しかたないですね。こうなったら・・・」
バクフーンは銀の針を取り出した。止めを刺すつもりなのだろう。
「エンブオーさん。あなたから消えてもらいます」
バクフーンは無慈悲にも銀の針を振りかざすと・・・・・
「・・・・・・・・・・」
バクフーンは持っていた銀の針を突如別の方向に投げた。
「・・・・・・!!?」
エンブオーが見た先には、バクフーンの銀の針を受け止めている、青色のカブトムシのようなポケモン、ヘラクロスが立っていた。