第十四話 シビル丼
ズルズキンが探検隊に加入してから数日後、いつものようにリーフ達は依頼掲示板の前にいた。
「あ〜あ、七つの秘宝の情報でもないかな〜」
「そう簡単にある訳ないやろ」
愚痴るファイアを珍しくウォーターがまともにいさめる。
「じゃあ今日はこれにしますか」
そんな二人はスルーし、リーフが一枚の依頼書をとった。それにはこう書かれていた。
内容 シビルドンの逮捕
場所 リンゴの森
難度 S
「シビル丼?」
「どんなどんぶりやねん!!」
リーフにウォーターが突っ込む。食いしん坊もここまでくれば大したものだ。
「食えるのか?今夜のおつまみにでも……」
「あんたもかい!!」
スパークも立て続けにボケる。
「じゃあ今日はシビル丼を食べに行くんでいい?」
「ええ加減にせぇ!!」
「お〜っ!!」
「おいしそうなリンゴ〜!!」
リーフとズルズキンが目を輝かせながらそう言う。リンゴの森というだけあってリンゴがたくさん実っていた。
「お前ら……シビル丼はええんかい」
「はぁ?シビル丼って何ですか?」
「お前が言うたんやろ!!」
リーフがウォーターに若干……というか完全に馬鹿にしたように言う。リーフは当然冗談でいったのだが・・・・・
そんな五人をひっそりと見ていた影があった。
「けけけ、相変わらず間抜けな連中だな」
以前クローにコテンパンにされたヒトカゲ達だった。彼らはリーフ達にも復讐をしてやろうと考えていたのだ。
(でもそんな間抜けな連中にボコボコにされたんだけどな・・・・・)
スカタンク達は心中でそう言った。事実彼らは何一つ勝っていることなどない。全てにおいてボロ負けである。
(ふっ、あいつらがシビル丼と闘って弱ってるとこを俺様達が襲えばいい!!今回の作戦は完ぺきだな!)
(・・・・・・・大丈夫か?あと、なんだ!シビル丼って!?)
自信満々なヒトカゲとは対照的にスカタンク達は不安を募らせる。余計なことがあったが気にしない。
「いた!!シビル丼!!」
しばらく進んでいると、鰻のようなポケモンシビルドンが姿を表した。
「誰が丼じゃ!!おれはSランクのお尋ね者、シビルドン様じゃ!!」
「・・・・・・・・」
シビルドンは言ってはいけないことを言ってしまった。リーフ達は一斉に戦闘体制に入る。
「くそっ!!ばれたらしょうがない!!火炎放射!!」
シビルドンは火炎放射を繰り出すが・・・・
「なっ・・・・!!」
火炎放射は無力化されていた。そう、以前キュウコンからもらったいやしのオーブだった。さらに、
「しまった!!」
シビルドンは囲まれていた。実は火炎放射にまぎれてシビルドンを囲む。今回の作戦はこれだった。
「こうなったら・・・・・・・
参った!!」
まさかの降参宣言であった。綺麗な土下座と共にした敗北宣言に五人はずっこける。
「くそっ、こうなったら煮るなり焼くなり好きにしろ!!」
シビルドンはその場で開き直る。その姿に反省の二文字は微塵も感じられない。
「(全然反省してないみたいね・・・)じゃあ、さばいたあとじっくり焼いてシビル丼に・・・・」
「・・・・・・・・」
リーフは銀の針を構えながらシビル丼に詰め寄る。その様子にシビル丼は大量の汗をかく。勿論これは脅しであるはずであるが妙にリアリティを感じる。
「すいませんでした!!ちゃんと反省しますから食べるのだけは!!」
シビル丼は全力で土下座する。その様子は傍から見れば命乞いにも見えなくもない。
「じゃあ拘束するか」
ウォーターはお尋ね者のロープを取り出しシビル丼に巻きつける。
「よし!じゃあ帰るか」
「ちょっと待って!!」
リーフがスパークの台詞を遮る。
「どうした?」
「リンゴ食べたい」
「お前だけ残って食っとけ!!」
「僕も残っていいですか?」
「勝手にしろ!!」
リーフとズルズキンが残ることになった。ファイア、ウォーター、スパークがシビル丼を連行することになった。
「さっきから言ってるけどシビル丼じゃないって!!!」
ファイア達は森から脱出した。そして残ったリーフ達はりんごを満喫する--
「はやく出てきて」
ことはなく突然リーフが草むらに向かってそう言った。その声はかなりめんどくさそうである。
「けっ、ばれてたか」
草むらからヒトカゲ、(以下省略)が現れる
「なんだ以下省略って!!」
「で、なにしにきたの?」
依然としてめんどくさそうな様子でリーフが尋ねる。
「お前らにやられた恨みを晴らしに来た!覚悟しろ!!」
そう叫びながらヒトカゲ達はリーフ達に向かっていく。
突如ズルズキンがにやりと笑う。その直後・・・・・
「「うわああああああぁっ!!」」
突如ヒトカゲとスカタンクの姿が消えた。残されたズバットとドガースおろおろする。
「くそっ!!汚い真似しやがって!!」
ヒトカゲは悔しそうにそう言う。実はズルズキンはこっそり罠の玉を使用し、落とし穴を作っていたのだ。その前に汚いって人のこと言えないと思うが・・・。
「さて、どうしますか?」
ズルズキンはかなり嫌みな笑みを浮かべながらヒトカゲ達のもとへ向かう。
「くそっ出しやがれ!!」
「嫌です」
ズルズキンは満面の(それもこの上なく悪意に満ちた)笑みでヒトカゲ達を埋めようとする。以前襲われた恨みを忘れてはいないようだ。ヒトカゲ達はその笑みに恐怖を覚え、こう思った。
あ・・・・悪魔だ・・・・・・。
ヒトカゲ達は埋められてしまった。のこったズバット達は全身から尋常じゃない汗が飛び出す。
「い、命だけはお助け〜」
「お願いします〜」
ズバット達は泣きながら全力で土下座する。
「しょうがないですね・・・・・。許しましょうか・・・・」
ズルズキンのその言葉にズバット達は一寸の光を感じた。
「技一発だけで」
光が消えた。ズバット達の顔が青ざめる。
「ストーンエッジ!!」
「リーフストーム!!」
「「ふぎゃあああああああぁっ!!」」
ズバット達は星になった。
「さて、邪魔者は消えたし、ゆっくりリンゴを堪能しますか♪」
「そうね♪」
リーフとズルズキンは最深部にたどりつき極上のリンゴ、セカイイチを大量にほおばった。
一方ファイア達もシビル丼を食べ・・・・・引き渡した。