第十話 臆病だけど自信はたっぷり
「しっかしこの城やたら広くない?」
リーフが城を見渡しながらそう呟く。事実ボーマンダが住むにはかなり広い。
「それよりも・・・・・
ファイアとズルズキン( おまえら)いつまで怖がってんねん(怒)!!
「だって〜(汗)こわいものはこわいんだもん・・・」
ウォーターがファイア達に怒鳴りつける。いまだにこの二人は震えていた。
「ホンマ一回ド突いたらなあかんのちゃうか(怒)」
「そんなんおかしいおかしい」
逆切れするウォーターにファイアが抗議する。
まあそんな感じでしばらく進んでいると、今までより一回りほど大きな扉がある部屋にたどりつく。その中には大量の銅像のようなものがある。
「この像ってなんでしょうね?」
「これはキリキザンのやな」
「ゴマゾウかドンファンじゃないの?」
「その象ちゃうやろ!!」
リーフのボケにウォーターが突っ込む。するとキリキザンの像の一体が突如動き出す。
「うわあああぁぁぁっ!!」
またファイアとズルズキンが震えあがる。
「ここより先はマスターの聖域、部外者は帰るがよい」
「そういうわけにはいかへんな」
キリキザンの言葉にウォーターが言い返す。
「しかたない・・・・・出てこい!!」
「どうせまたハッタリでしょ」
ところが・・・・
「ホンマか〜!!」
こんどはすべてのキリキザンの像が動き出した。
「我々をあんなまぬけな棺桶と一緒にしてもらったら困る。」
「だれが間抜けじゃ〜!!」
デスカーンがいきなり乱入してきた。
「辻斬り」
「ぐはあっ!!」
デスカーンは倒れた。
「何しに出てきたの?」
「さあ・・・・・?」
「よそ見している場合か?」
リーフとファイアの背後にすでにキリキザンがまわっていた。間一髪で攻撃をかわす。
「やるしかないようだな・・・、行くぞ!!」
スパークが全員に気合を入れる。その表情は普段の彼からは想像もつかないほど真剣だった。
「行くぞウォーター!!放電!!」
「おう!!吹雪!!」
スパークは放電、ウォーターは吹雪を繰り出す。これらの技は敵全体に攻撃できる技なのである。
「ぐっ・・・」
確実に二つの技はキリキザン達にあたっていた。しかしそれでも、あまり倒れなかった。
「なかなかやるな・・・・。あの二体を集中攻撃するぞ」
キリキザン達はスパーク達に狙いを定める。
「(怖くない・・・・怖くないぞ!!)とび膝蹴り!!」
ズルズキンは震えに耐えながらスパーク達に攻撃を仕掛けている一体のキリキザンにとび膝蹴りを食らわす。相性の問題かキリキザンは一発で倒れた。すると・・・・
(なんだ?この感じは・・・・・?)
ズルズキンは力が湧いてくるのを感じた。それはキリキザンを倒したときから来ていた。
「(もしかして・・・・
もう一発)とび膝蹴り!!」
ズルズキンはもう一度とび膝蹴りを食らわす。食らったキリキザンは先ほどのキリキザンより大ダメージを食らう。さらに・・・
(やっぱり感じる・・・、しかもさっきよりより大きな力が湧いてくる・・・・)
ズルズキンの力のもとは、彼の特性自信過剰だった。この特性は敵を倒すたびに攻撃力が上がるというものだ。
「さすがに鋼タイプはやっかいね・・・」
一方リーフはキリキザンに苦戦していた。草タイプとノーマルタイプの技しか持たない彼女にとっては鋼タイプは闘いにくいことこの上ない。
「助太刀しますよリーフさん!!とび膝蹴り!!」
ズルズキンがリーフに襲いかかっているキリキザンにとび膝蹴りを食らわした。当然のごとくキリキザンは一発で倒れる。その後もズルズキンはキリキザンをバッタバッタと倒していく。
「ふ〜大丈夫ですか?」
「え、ええ・・・
それよりどうしてこれだけ強いのにあのヒトカゲにやられていたの?」
「それはですね・・・・
今はそれどころではないみたいですね」
ズルズキンは他のキリキザンを見ながらそう言った。
「リーフさんは少し待っていてください。ここは僕がかたずけますから」
そう言ってズルズキンはファイア達の加勢に入った。
しばらくして大量のキリキザン達は全滅した。しかもそのほとんどがズルズキンによって倒されていた。
「おまえそんなに強かったのか?」
先ほどリーフが聞いたことをウォーターが繰り返す。事実あれほど情けなかったズルズキンがこうも変わるとは思わなかったのだ。
「僕の特性自信過剰なんです。敵を倒すごとに攻撃力があがるんです。
まあはっきり言って今まで戦闘なんて無縁の生活を送ってきたんで忘れていただけなんですけどね」
ズルズキンは苦笑いを浮かべながら説明する。その説明に全員が納得の表情をする。
「とりあえずボーマンダは目の前ですからね、いったん休みましょうか?」
「そうやな」
ズルズキンの提案にメンバー達は休息をとった。この場の指揮を彼がとっていることに誰もきにとめなかった。
「もう大丈夫ですか?」
「うん(ああ)」
ズルズキンの言葉に全員が答える。実は彼だけが無傷でいたのだ。
「それじゃあ行きますか」
一行はズルズキンを先頭に進んでいった。