最終話 チーム葉炎
時の停止の騒動、リーフの消滅からおよそ一カ月の歳月がたった。ルッグ率いる新生リーファイは新たに探検活動を再開。世界を救ったとうこれ以上ない名誉を受けランクも大幅に上げていったのだ。そんなことでこの事件のほとぼりも大分冷めてきたころ……。
「おぉ、よく来てくれたな」
「なんなんだよあんたは?」
ノコタロウの研究所に呼ばれて来たリーファイ一行。相変わらず”おめぇの面なんぞ見たくもねぇわ”と不満そうな顔つきで声の主、ノコタロウを睨む。
「まぁあの一カ月位前のことでさ、”世界が救われたのにお祝いしねぇのはおかしいだろ!!”ってとある方から突っ込まれたからパーっとお祝いでもしようじゃないかということでね、君達をよんだのさ」
「とか何とか言って本当は人手足りないから来てもらっただけだろ?」
「(ギクゥッ!!)そ、そんなことは〜……な、ないのだ〜;」
『--怪しい……』
あたふたとうろたえるノコタロウにリーファイの四人はジト目で彼を睨んだ。そんな気まずい雰囲気を打破するかのようにインターフォンの音が鳴る。
「うい〜っす。頼まれた通り酒持ってきたぞ〜」
「よおよお来たかい」
扉を開けて入ってきたのはサメハダーやオノノクスやドラピオン等のポケモン達が。そうジェット達の率いるリーファイの敵組織なのだ。だが今回は敵味方関係ねぇ!!とのことでの飲み会である。
「まぁ入って準備してくれ」
「おうよ!!いくぞ能無し共!!」
『お〜!!』
能無しとキッパリ言われてるにも関わらずジェットの部下達は意気揚々と部屋に入っていった。こんな呼ばれ方は彼にとっては日常なのだろう。
「と言うわけでファイア君よ。まず君はちょっくら買い出しにいってくれい」
と、ノコタロウにカバンを手渡されて買い出しを求められた。ファイアは渋々承諾し研究所を後にする。他の面子も仕方なしに彼の指示にしたがい宴の準備にとりかかった。
--ファイア side--
「ったく何考えてんだかあのバカは……」
バカ、それはあのノコタロウのことに他ならないよ。そうぼくはため息交じりにあいつの悪口をいいながら買い出しに向かっていた。そこで通りがかったぼくはふとあの時の湖を通りがかった。
「わぁ〜。綺麗だな〜」
時間はちょうど夕方になっていたのかな?夕焼けと湖が織りなす景色はやっぱり綺麗の二文字につきるね。僕はしばらくその景色を見るために足を止めていた。
「そう言えばここに来るのも随分久しぶりだな〜。前に来た時って……」
--そうだ、僕がここに来た時。それは紛れもない全ての始まりと終わり、リーフと別れた時……そしてリーフと--
出会ったときだ……。
「あれから始まったんだよね。僕達の探検隊リーファイが……」
色々あったよね。でかいボーマンダと戦ったし、探してたバクフーン兄さんとあんな形出会ってしまった……。兄さんと出会ってからリーフは僕のことを守ってくれると言ってくれた……。不死身のキノガッサなんて奴もいたなぁ〜。そうそう、あの時のリーフが最後ヘドロの掃除をさせられて……。
「…………」
思い出すことは全部リーフのことばっかりだ。あの時は楽しかったけどいざ思い出してみると……
何!?何でこんなに悲しいの!?僕、もう泣かないってお父さんやリーフと約束したのにっ!!
「うぐっ……ひっぐ…!!」
ダメだ……やっぱり僕弱いよ……。ごめん……!!ぼく、約束を守れなかった!!
--リーフ side--
「ここは……」
ふと眼を覚ますとそこは何もない真っ白な空間だった。そうか……わたし、消えちゃったんだよね……。そう考えると言いようのない虚無感と苛立ちが込み上げてきた。ファイア……。わたし、あの時何もできなかったね……。
「今頃みんな何してるのかな……ファイア、今でも泣いて迷惑かけてなけりゃいいけど……」
--…フよ……--
??誰だろう……ここわたし以外にいないはずなのに……。
--リーフ、リーフよ!!--
えぇっ!!?だ、だれこの声……あっそうか、ディアルガだったっけ……。でも何で声だけなんだろう……。
--リーフよ。ファイアがお前を失った時の悲しみが時限の塔にいる私にまで伝わってきた。お前達はこの世界に必要なそんざいだ。お前が望むのなら元の世界に戻すこともできる--
「必要なのにぞんざいってどういう事なの!?」
聞き間違いも甚だしくわたしは”そんざい”と”ぞんざい”を間違えディアルガに怒鳴りこんでしまった。でもそんなわたしにもディアルガは冷静に突っ込みを入れた。あぁ〜恥ずかしい……。って話がそれちゃったね。
元の世界に戻れる!?それじゃジュプトルも!!
--そうだ。だが帰れるのはお前一人だけだ。他の者は戻すことはできない。--
ジュプトルのことを思っていたらディアルガからそう警告された。そんなっ!!それじゃジュプトルも一緒に戻ることはできないってこと!?わたしの脳内に二つの意見が出てきた。ジュプトルを置いて自分だけ帰る?それともファイアを一人にする?そんなの選べるわけない!!
『何を迷ってる。お前だけでも戻ってこい』
ジュプトル!?この声はジュプトルなの!?で、でも……。
『いいんだ。俺は既に覚悟はできている。だがあいつは……ファイアはお前を必要としているんだ。いいから行け!!』
うわわぁっ!!ジュプトルはそう言ってわたしを後押し(?)した。
--どうする?リーフよ--
わたしは……戻る!!ファイアのところに!!そうわたしは何もない空間にそう叫んだ。そうするとわたしの体がいきなり輝きだした!!?あの時と同じように光が輝いて体が消滅していった……。
『じゃあなリーフ。俺はお前にあえて幸せだったぞ……』
そして視界が真っ白に包まれかけた時、ニッコリと見慣れないジュプトルの笑顔がわたしを送り出してくれた……。
--ファイア side--
--ひっぐっ!!ダメだっ!!もう我慢できないっ!!ぼくはとうとう言いつけを破って泣き出してしまった。そんな時のぼくの耳に--
「何、めそめそ泣いてるのよ。わたしがいないとすぐこれなんだから」
えっ…?ふと聞きなれたなつかしい声が聞こえてきた。後ろを見ているとそこには……。
「そ、その声は!?」
黄緑色の体に頭には大きな葉っぱに大きな赤い瞳、そこにいたのは間違いない。僕の大切なあのチコリータが……
「お待たせ♪」
「リ、リーフ!!?本当にリーフなの!?消えたんじゃないの!?どうしてここに!?あとサインくれない!?」
頭がパニックになったぼくは訳のわからないことを口走っていた。リーフは笑いながらそんなぼくを左手でやさしくなでていた。
「ほ……本物なの?」
「そんな冗談言うと思ってるの?」
「ははっ……そうだよね……」
彼女はそう言ってぼくを優しく抱きしめてくれた。何でだろう?あれだけ泣いたのにまた涙があふれてきそうだよ……。でもなんか……
「ファイアくん!!どこ寄り道していたんです……ッ!!」
リーフに抱かれ反射的にぼくも彼女に抱きついていた。そんな時にルッグさんの声が聞こえてきた。なんか途中から何か怪獣を見ているような驚愕の声を出してるけど……。
「りりりりりり……リーフさん!!?本物なんですか!?」
ぼくとほとんど同じ質問を投げかけてきた。リーフは”当たり前でしょ”と笑いながら返した。ルッグさんは驚きのあまりその場で固まり、ガタガタと震えていた。
「り、リーフさん!!いますぐにでもノコタロウの研究所に戻りましょう!!詳しい話はそこでしてください!!」
「えぇっ!!?」
今まで見たことのない彼の形相にぼくもリーフも無理やりに引っ張られていった。って痛い痛い!!ルッグさん!!そんな強く引っ張らないでってば!!
--研究所--
キキーッ!!
ルッグさんの足から甲高いブレーキ音が発せられた。彼に引っ張られていたぼく達はちょっと酔ったのか気分が悪いよ……。リーフもちょっと気分が悪そうだね……。
「なんだルッグ。騒々しいな。ファイアはいたのか」
玄関からスパークこと父さんがちょっと機嫌悪そうに話しかけてきた。もしかしてぼくの帰りが遅いから迎えにこさせたのかな?でもそんな父さんの顔もルッグさんのように次第に信じられない顔つきに変わっていった。
「り、リーフなのか……」
「お久しぶり、スパークさん」
リーフの姿をじろじろと確認する父さん。よっぽど信じられないのだろうね。尤も僕もだけどね……。とかやり取りしているとどたどたと足音がした。きっと兄さん達がきているんだろうな。
「リ、リーフか!?」
「まさかお前が!?」
「ま〜じで〜?」
それぞれが色々な声をかけていた。中にはふざけているのかと思う声があったけど正体はだいたいわかるよね。皆一生懸命リーフを出迎えていた。そんな和やかな雰囲気が漂っている時に--
「よっ♪おかえり」
ノコタロウが今までに見たことのない笑顔で出迎えてくれた。たぶんお使いなんてとっくに忘れているんだろうね。そんなに嬉しかったのかなぁ……。
「まっ、積もる話もあるだろうけどとりあえずはゆっくり飯でも食いながら話しようや♪」
「そ、そうだね。いこっか!」
「うん!」
みんな話たいことは山ほどあるみたいけどそんな彼らを制したノコタロウに手招きされ、ぼく達は研究所に入っていった。そんな和やかな雰囲気がただよっていたけど……。
「おい!!」
なんかあまり聞きたくない叫び声が玄関先に響いた。呼ばれた本人はガラガラと扉をあけると、そこにはなぜか傷だらけのワニノコ、フシギダネ、ナエトルが怒りながら立っていた。
「あっ!!すっかり忘れてた……」
そうだ!!そう言えばこの三人幻の大地でジェットと一緒になぜかいたんだよね!?もしかしてあの時彼らだけ置いてけぼりを食らったの?
「あっ!!クロー達!なんでここに?」
「なんでもあるか!!あの時幻の大地でよくもワシ等を置き去りにしてくれたな!!」
完全に激昂したクロー達は今にもぼくやリーフに飛びかかろうとせんばかりに体をプルプル震わせた。ここでなんかピリピリした雰囲気が……
漂わなかった。ノコタロウはケラケラと笑いをこらえながら口を押さえている。
「はははは、クロー達。許してヒヤシンス……」
『ゆるすかあああああああああああぁっ!!』
「よくもワシ等を無視して勝手にハッピーエンドにしおってからにいいいいいいいいいいぃっ!!
絶対に絶対に許さんぞおおおおおおおおおおおおぉっ!!!」
とか叫びながらクロー達はリーフやぼく達に飛びかかってきた。はぁ……。こんな時に何で戦闘シーンになる訳!?でもこの男、ノコタロウは少しも慌てずに懐から何かを取り出す。
「覚悟しやがれ!!」
「リーフ危ないッ!!」
ノコタロウは右手に持っていたなんか物騒なもんをいまにも襲いかかってきそうなクローに投げた。それははたから見ると……ハチの巣!!?ハチの巣(?)がクローの頭にかぶさるようにはまっていった。周りが見えなくなったクローは足を止めてあたふたする。シノやシードもリーダーの足が止まったのか前のめりになりながらも足を止めた。
「ぬおっ!?何だこれは!?」
クローは頭からハチの巣だと知らずに頭にかぶさったものをとりだした。そして穴の部分を凝視すると……。
『……んぎゃああああああああぁ!!蜂だあああああああああああぁっ!!』
ハチの巣から出てきた大量の蜂ことミツハニー がクローに襲いかかってきた。クローは慌ててミツハニーから逃げだしていったよ。
「うわあああああああぁ!!クローさま〜身代わりになって〜!!」
「こんの薄情者!!」
クロー達がミツハニーから逃げているとそんな喧騒が聞こえてきた。隣ではなんかマグカルゴが腹抱えて大笑いしているんだけどあえて無視しようか。
『いってえええええええええぇなああああおい!!!』
とうとう追いつかれたクロー達はミツハニー達に刺されて……。アレ?ミツハニーって刺すっけ?とにかくミツハニーの攻撃を食らってふっ飛ばされちゃった。あ〜ぁ……こんな時にこいつらは……。
「ったく……、真面目な空気が台無しだよ……」
「でも、そのほうがしっくりくるんじゃない?この物語としてはね」
まぁ確かに……。
「とりあえず邪魔者も消えたことだし!!リーフも戻ってきたことだし今日はたくさん飲むぞ〜!!」
「ダメですって!!」
「やめろこの親父!!」
このどさくさにまぎれて父さんが研究所から酒を奪って飲もうとしていたけどルッグさんやウォーター兄さんに止められている……。依然としてあのマグカルゴは爆笑してるし……。
「っておいファイア!!おめぇまだ食いもんの買い出し行ってねぇだろうが!!」
あっ!!すっかり忘れてた……。色々あって記憶から飛んでたよ……。リーフは隣できょとんとして首をひねっていたけどジェットに今日は宴会だと聞いてから何か喜んでいる。
「じゃあファイア!一緒にいこ♪」
「えぇっ!!?」
リーフはぼくの手を握って引っ張っるように……というか引っ張っていった。だからそんなに強く手を握らないっててば!!ってジェットにノコタロウ!?何でこっちを見てニヤニヤしてるの!?
でも、いっか……。またこうやって一緒にいられるんだし……。
これからもよろしくねリーフ。
ぼくたち葉炎(リーフとファイア)の物語はまだまだこれからだから……。