第八十話 刺客?いいけ、こそ泥です
バンギラスのハガネさん率いるチームサダメをなんとか打ち負かしたわたし達リーファイ。勝てたはよかったけどハガネさんはファイアのお兄さんのバクフーンに大して凄く復讐の心を抱いていたみたい……。
でもなんとか説得して復讐を止めさせることができた。復讐なんかしても結局はむなしさが残るだけに決まってるから……。
アンドロメダと違って頼もしそうなチームサダメの2人もついてきてくれることになったし、わたし達は意気揚々と三回戦のバトルフィールドのあるところに向かっていった。
かと思ったら……
「泥棒だああああああああああああああああああああああぁぁぁぁっ!!」
うるさあああああああああああああぁぁいっ!!いきなりなんなのこの大声は!?
「たぶんカクレオンやな。あいつらの店はしょっちゅう泥棒に入られるさかいな」
さも当たり前といった様子でエアームドのムドウさんがぼそりと呟いた。しょっ、しょっちゅう泥棒に入られてる!?大丈夫なのそのお店って……。
「とりあえず行ってみましょうよ」
とりあえずわたし達は声のした方向に走っていった。
「おうあんさん!どないしたんや?」
「聞いてくださいよおおおおおおおおおおおおっ!!ワタシがこの島でいつも通り店を開いてたんですが得たいの知れないポケモンに泥棒に入られたんですよおおおおおおおおっ!!あぁぁっ!!これで通算300回も泥棒に入られちまったよおおおおおおおおおおっ!!」
さ、300回!?どんだけ泥棒にはいられてるの!?でも店主のカクレオンが頭をガンガンと打ちつけながら叫んでる様子から嘘には見えないようだし……。
「もうダメだあああああああああああああぁぁっ!!破滅だあああああああああああぁぁっ!!」
「お、落ち着け!!」
うわぁっ……言っちゃなんですがもう変態にしか見えません。
「お願いします!!その泥棒を見つけたらワタシのところへ知らせてください!!そいつをギタギタにしないと気が済まないんです!!もちろんお礼はたっぷりとしますから!!」
「えぇっ?いや勝手に決められても………」
『引き受けた!!』
ちょっ!!何勝手にアンドロメダ(あのふたり)勝手に引き受けてるの!?まぁ、確かにあれほど慌ててるところを黙って見てるのも気が引けるけど。しかもさらっとカクレオンが恐ろしいこと言わなかった?
「ありがとうございます!!!ちなみにこれがワタシの連絡先ですので犯人を見つけ次第ワタシのところへ連絡してくださいね♪」
カクレオンが先ほどとは打って変わって自分の電話番号が書かれた紙を手渡してきた。あくまで自分でボコボコにするつもりですね……。
「ところでその泥棒は何を盗んだ?そしてどんな奴か覚えてるか?」
ハガネさんが冷静に尋ねてきた。そう言えば特徴が分からなければ犯人探しもへったくれもないわね。
「姿はなんか虫タイプみたいな奴でしたよ。それで復活の種が根こそぎ九個も奪われたんです」
「そうか。なら行くぞ」
「おい待てや!!」
一人でそそくさと先へ行くハガネさんを追うムドウさん。ほんっとあのヒトはクールというか無愛想というか……。
「わたし達も行きましょうか……」
「そうだね」
「お願いしますよ〜!!!」
わたし達はしばらく犯人探しも兼ねてバトルフィールドを探しまわっていた。でもこの島は本来住んでいるポケモンが少ないみたいだから犯人はもしかして参加者のポケモンなのかな?
「あっ!!次のバトルフィールドが見えてきましたよ!!」
リュウセイが視線の先を指(?)さして示した。確かにあそこにポケモンが待ってるようだしそうかもね。
--っ!何この感覚!!なんで殺気が!?--
「伏せて!!」
「なにっ!?」
それはただの直感だった。でも、感覚には逆らえずにとにかくそう皆に指示した。わたし達全員はいわれるままに身をかがめた。
シュンッ!!
サクッ!
何かが風を切る音、その刹那に刺さる音がした。その音の先を見てみるとさっきまで背の高いリュウセイ達があった頭の位置に矢がささっていた。
「ほほぉ、アレをよくよけれたな。流石我が組織のブラックリストに載るだけのことはあるな!!」
っ!?どこかで聞いたような声!!声のした方へ振り向いてみるとそこはバトルフィールドからだということがわかった。どうやら今回の対戦相手がこの矢を放ったようね。
「組織だぁ!?なんやねんお前らは!!」
「組織……まさかてめぇは!!」
ムドウさんが苛立った様子で相手に声を荒らげる。隣でハガネさんが怒りで体を小刻みに震わせている。
「ははははっ!!そこのチコリータとヒノアラシなら私のことは覚えているだろう!!」
「あっ!」
目の前にいるこのポケモン……。かっこつけた口調の割りに全然強くなくて、まるでギャグみたいに勝手に倒れていったあのポケモン……。わたしとファイアは一斉にその正体の名前を口にした。
『最果て砂漠の自称王様(フライゴン)!』
「そうだ!!よく覚えていたな!!」
やっぱり……、でもなんでこのポケモンが組織に?とても似合わないんだけど?
「そこの見ず知らずのキサマ等に語る必要もないが私の正体は教えてやる。私は悪の組織湯けむりの係長補佐で元砂漠の(自称)王のフライゴン様だ!!」
うわぁ……、色々と突っ込みどころ満載なんですけど……。まず湯けむりって名前がアレだし砂漠の王ってどう考えても自称だし、自分に様つけてるし……。
「へっ、ようするにお前が次の相手のようだな。見てろよ!!このリーフの姉貴がお前なんかフルボッコにしてやっからな!!」
リュウセイがそう言いながらわたしのことを指差した。なんかいいように扱われてるのは気のせいでしょうか……。
「ははっ!!ここにいるのが私だけとは思うなよ!!いでよハンテ―ル!!」
「グガガガガガアッ!!!」
フライゴンがそう言うと突如茂みからウミヘビのような風体のポケモン、ハンテールが姿を現した。しかもあのハンテール、なんだか目が普通じゃない……、なんか操られてるような……。そんな気がする……。
「行くぞ!!ハンテールよ!!あやつらに噛みついてくるのだ!!」
「グガガガガッガガッ!!」
ハンテールが声にならない雄たけびをあげてる。これは本気でかからないとまずいかも……。
「うぅっ……、ドラゴンタイプに水タイプか……。ちょっと辛いかも……」
ファイアの体が少し怖いのか震えていた。無理もないわね、相手がことごとく苦手なタイプじゃ……。でもドラゴンタイプだから炎技は持ってるからムドウさんも厳しいと思うし……ハガネさんも……。アンタラダメは論外だからどうしよう……。
「オレに任せろ」
『えぇっ!?』
そう志願したのはハガネさんだった。でも相性的には両方とも悪いのにどうして!?
「相性などいらぬ心配だ。俺はあんな間抜けな奴らに負ける気など毛頭ない」
さっきまでの怒りの様子はどこへやらといった落ち着いた雰囲気でハガネさんは語る。でもなんでだろう……この言葉を聞いて少し安心した……。
「なっ!!無礼者!!この私を侮辱したキサマの罪は重いぞ!!ハンテールよ!!奴らを噛み砕いておやりなさい!!」
「御託はいいからお前もさっさとかかってこい。間抜け」
「ムカーッ!!もう許さんキレた!!」
ハガネさんの挑発でフライゴンが顔を真っ赤にして突っ込んできた。ほんっと……かわってないわね……アレ。まぁこちらとしては相手のペースが乱れてるから戦いやすいんだけどね。
「それじゃあバトルはじめ」
「よっしゃ〜っ!!リーフ!!ハガネ!!んなアホ共なんざいてもうたれ!!」
バトル開始の合図がすると場外でムドウさんが応援(?)してきた。なんか球場にいる野球ファンのおっさんみたいな気がするのは気のせいでしょうか?
「まずはお前からだ!!大文字!!」
「グガガガガガガッ!!」
フライゴンが大文字、ハンテールが冷凍ビームで私に向けて攻撃を仕掛けてきた。そんな真正面からの攻撃を簡単に受けるわけないじゃないの!
「おっと!!!」
「逃がさんぞ!!」
私が避けたことを確認したフライゴンが大文字の軌道を変えてきた。よし!!まんまと引っ掛かったわね♪
「ぬおっ!どういうことだ!」
フライゴンがあっけにとられた表情を見せていた。それもそのはず、彼の放った大文字が冷凍ビームに直撃し、相殺されて蒸気を発して水滴になって落ちたのだから。
「この私の攻撃の邪魔をしおってからに!!」
「よそ見をしている暇があるのか?」
フライゴンの真後ろからこもったような低い声が聞こえた。そこには右手に電気を溜めながら攻撃の準備をしているハガネさんの姿が。
「十万ボルト!!」
ハガネさんの周りに強力な電撃が走った。それを食らったハンテールは声にならない悲鳴をあげていた。
「…………」
「大したことはないな」
十万ボルト一発で倒れたハンテールを見てハガネさんはぼそりと呟いた。いくら弱点でも、不一致弱点でも一発で倒れるなんて……。
「ははははははっ!!」
「な、何がおかしい!」
えっ!?味方が倒されたのにあのフライゴン、何で笑っていられるの?
「その程度で奴を倒したつもりかね!?甘いぞ!今こそ私の本当の力を見せてくれるわ!!」
「ぐっ!!」
フライゴンがそう言うとハンテールが突如光始めた!!いきなり眩い光が発せられたからわたし達は思わず目を瞑ってしまう。
しばらくして光は止んだ。私はゆっくりと目を開けてみた。
「な、なんやとぉ!?」
フィールド外にいたムドウさんが素っ頓狂な声を出して驚いていた。だってさっきまで黒焦げになっていたハンテールが傷一つない状態でピンピンしてたんだもの!!
「ははははははははっ!!見たかね!ワタシの本当に力を!!」
「おいおい、復活させるなんてマジかよ……。どうすりゃいいんだ?」
高笑いするフライゴンに対してリュウセイは驚愕しているままだった。
「この手の相手の場合はフライゴン(アタマ)から叩くのが妥当だ。フライゴンの方から仕留めるぞ」
確かにね。思い切り”私の力だ”なんて叫んでるくらいだからフライゴンのほうから倒したらいいのかもしれないし。
「(ハガネさん…………)」
「(…………わかっておる)」
「ハンテールよ!!今度は滝登りだ!!」
「ウガガガガガッ!!!」
ハンテールが今度は水を纏いながら滝登りで突っ込んできた。よし!!作戦通りに!!
「うぅっ!」
わたしは真っ向から滝登りを受けてしまった。尤もこれも作戦だけどね。
「ソーラービーム!!!」
よっし!!決まった!!ソーラービームは晴れ状態じゃない限りチャージしないと打てないからわざと攻撃を受けてから反撃を狙ったの。流石に至近距離からの攻撃は避けられないからね。
「無駄だ!!ワタシの力を忘れたのか!!」
「お前も俺の存在を忘れたのか?」
「何!?」
これはいわゆるデジャヴって奴かしらね?ハガネさんがまたフライゴンの真後ろにたっていた。
「くそっ!!こうなったら大地のちかr…………」
「……無駄だ……」
怖っ!!フライゴンが反撃しようとしたけどハガネさんから発せられた”いあつかん”に完全に怯んでしまったみたい。正直見ている私も凄く怖いんですけど…………。
「ひいぃっ!!!」
「冷凍ビーム!!」
完全に臆したフライゴンに容赦なく弱点の冷凍ビームを浴びせる。冷凍ビームを受けたフライゴンの体は徐々に氷におおわれていく。
カチン!!
氷は完全に体中におおわれて、フライゴンは氷状態になってしまった。流石にこれは勝負あったわね。
と、わたし達は完全に油断していた。
「きゃあぁっ!!」
油断していたわたしの背中に強烈な冷気が襲いかかってきた。恐る恐る背中を見てみた。
「なんやと!?」
「えぇっ!?どうして!!」
わたしの背中はハンテールの氷の牙で噛みつかれていた。どうしてなの!?いくら砂嵐状態のソーラービームとは行っても水タイプのハンテールが何でまた無傷で?
「大丈夫リーフ!?」
「なんであのハンテール何度も復活するんだろ?」
「…………」
しかし驚きはそれだけではなかった。
パリーン!!
「ふっかああああああああああぁぁつ!!!」
今度はどうして!?フライゴンを覆っていた氷が一瞬にして割れたのだった。
「はははははははははは!!!無駄だと言っているだろう!!これ以上私に抗っても無駄だ!!」
「それはどうかな?」
「!!!?」
高笑いをあげるフライゴンの前に赤いカゲが現れた。それはとても意外なポケモンだった。
「虫食い!!」
「ぐわっ!!」
フライゴンの前に立った正体、リュウセイはフライゴンに思い切り噛みついた。なんで彼がこんなところにいるの!?
「なっ!!卑怯だぞ!!部外者が勝手に戦いに加わるな!!」
「卑怯なのはどっちだよ!この泥棒虫野郎!!!たっぷり”復活の種”を持ち込みやがって!!ボリボリ…………」
えぇっ!?復活の種を持ち込んだ!?もう色々驚くことがありすぎて何が何やら…………。
「けっ!何が”私の実力だ!”だよ。こんなに道具持ち込みやがって……ボリボリ。
ぺっ!まずっ…………」
リュウセイは虫食いで食い荒らした復活の種を食べながらぼそりと呟いた。それと復活の種って……まずいの……?
って、話はそこじゃないわよね。あいつらも道具を持ち込んでいたの!?
「お前ら!!正々堂々としたバトルに道具持ち込むなんて最低やな!!!お前ら人間じゃねぇ!!」
いやいや、ムドウさん……あなたがそう言っても説得力がないんですけど……。人間じゃないしそして。
「えぇい!!黙れ!!カクレオンから奪い取ったこの大量の復活の種がアレばお前達なんかに負けることなんぞないわ!!」
『…………』
カクレオン・虫タイプみたいな外見・奪い取った・大量の復活の種…………。わたし達はある結論に達した。
「…………」
わたしは黙って携帯電話をとりだしてある場所に連絡を入れた。
「もしも〜し、カクレオン店長ですか?あっ、泥棒を見つけましたので連絡しました。
はい、お願いしま〜す」(ピッ
電話を切ったすぐ直後、なにやら大量の足音が聞こえてきた。
「おいキサマ!!一体どこに連絡を入れたのだ!!」
「えっ?カクレオンの店にフライゴン(どろぼう)がいたって連絡しただけですがなにか?」
「煤i; ̄□ ̄A」
カクレオンに通報されたことを知ったフライゴンの表情が一気に青ざめていった。そんなにカクレオンがブチ切れたら怖いのかしらね?
ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
な、なんなの!?この尋常じゃない数の足音は!!足音のしたほうへ見てみるとそこにはこれまたおびただしい数のカクレオンが!!一体何体出動してるのよこのヒト達は!!?
「さぁ、リーフさん!!泥棒した不届き者はどいつですか!?」
「あのフライゴンで〜す♪」
「わっかりました〜♪ご協力ありがとうございま〜す。あとでお礼はたっぷり差し上げますね♪」
カクレオン達は指をボキボキと鳴らしながら泥棒(フライゴン)に詰め寄っていった。なんか良く見るとフライゴンだけじゃなくリュウセイ達も 体をガタガタと震わせている…………。
「さぁ、そこの虫野郎!!覚悟はいいですか〜」
「ボッコボコにしてやりますからね〜♪」
「ひぃっ…………」
こうなった以上最早何も言うまい…………。
『覚悟しろおおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!!!』
「いぎゃあああああああああああああぁぁぁぁ!!!」
あまりにもひどい映像なのでここからはお見せできません。
「はぁ〜、すっきりした〜♪」
「二度と泥棒なんかするんじゃないですよ」
「…………」
完膚無きまでにフルボッコにされたフライゴンに捨て台詞を残すカクレオン達。正直あの様は”R指定”入るレベルだと思うけど、この小説では表現されてないからいいよね?
「よ〜しお前ら〜手こずらせやがって!」
「いや、あんた何もしてないでしょ」
ファイアのおっしゃる通りムドウさん、あなたは何もしてませんよ?
「確かお前は組織の手先だったな。色々と話を聞かせてもらうぞ」
「わ、私は何も知らない…………」
「嘘をつくな」
「ひぃっ……」
ビクビクしながら話すフライゴンにすごむハガネさん。なんか見てるこっちまで怖くなってきた…………。
「本当だ!!ただ私はリーフとファイアを仕留めてつれてこいとあるお方に命令されたのだ!!!」
「そのお方は誰だ?言わなければこの場でもっとひどい目にあわすぞ」
「ひぃぃぃぃぃっ!!!」
最早半ば脅迫に近い雰囲気で詰問するハガネさん。冷凍ビームの構えとってるしもう悪役にしか見えないんですけど…………。
「やめてくれ!!ワタシは本当に何も知らないのだ!!そのお方も正体がよくわからなかったのだ!!」
「それは本当なのか!?」
「勿論ですぅ!!」
ハガネさんは怒りのあまりフライゴンの胸倉を掴みかかった。
「くそっ!!!」
ドゴッ!
「ぐはっ!?」
ハガネさんのパンチがフライゴンの腹に直撃した。うずくまるフライゴンの腹にはくっきりと殴られたあとがのこっていた。
「失せろっ!!!」
「は、はいいいいいいいぃぃぃっ!!」
怒鳴られてフライゴンとハンテールはそそくさと逃げるように立ち去って行った。
「…………すまない。少し興奮しすぎた」
落ち着きをとりもどしたのかハガネさんはいつもの冷静な顔つきに戻っていた。すると彼ははっとした表情でわたしのことを凝視した。
「リーフよ。お前の背中少しだけ凍傷を起こしてるな」
「えっ?」
そう言われて自分の背中を見てみると微妙に変色していた。さっきのハンテールの攻撃を受けたから起こったことみたい。
「これを口にしろ」
「これは?」
「ナナシの実だ。氷状態によくきく木の実だ」
そう言われてわたしは木の実を口にした。するとさっきまでの凍傷が完全ではながほとんどが回復していった。
「どうやらきいたようだな」
「あ、ありがとうございますハガネさん」
「気にするな。俺達は仲間だろうが。それと俺達のことを敬語でよぶのはやめろ。むずがゆくてたまらん」
ハガネさn……じゃなくてハガネは敬語はどうか苦手みたい。急にため口で呼ぶのもちょっと慣れないけど。
「じゃあそうさせてもら……うわね。ハガネ」
「あぁ」
「それにしてもハガネって見かけは恐いけど結構優しいのね」
「顔は関係ないだろ」
『ハハハハハハハハハハハハハ!!!』
さっきまでのハガネの様子が嘘みたいに穏やかな顔つきに戻ってきた。
「じゃあ俺達も呼び捨てでいいよな!?」
「ただしアンドロメダ。お前達はダメだ」
「んなアホな〜っ」
確かにお調子者のリュウセイにため口ってちょっと腹立つわよね。って何の話これ?
「あの〜」
いきなり申し訳ないような声がした。そこにはさっきまでフライゴンをフルボッコにしたカクレオンの姿が。
「ななななななななんでしょうか!?」
「なんでそんなに驚いてるんですか?さっきも言いましたけど、ちょうどお礼をするのを忘れてましたよ」
な〜んだそういうことか〜。てっきりとばっちりでも食らうのかとおもってた…………。ホッ…………。
「泥棒を見つけてくださったことですし、お礼にこれを差し上げます!」
そう言ってカクレオンはわたしに何かを手渡した。この赤い身と銀色の皮を持つこの食材って確か…………。
「シャケだああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁっ!!!」