第三話 御尋ね者ズルズキン……じゃなくヒトカゲ?
翌日、正式に探検隊を結成したリーフ達は依頼を受けるために依頼掲示板の前に来ていた。
「はぁ〜、せっかく探検隊結成したのに。探検できないなんて・・・」
ファイアがため息交じりに愚痴る。
「初心者が出来るわけねぇだろうが」
隣のウォーターがファイアの突っ込みながら頭をたたく。
「うん。これぐらいがいいかな」
そんなことは気にも留めずリーフは依頼を選んでいた。結構マイペースである。
その依頼内容はこのようであった。
場所 湿った岩場
難易度 E
盗賊に襲われました!助けてください!
「じゃあ二人とも、これでいい?」
リーフが二人の方向を見ながら尋ねると、まだウォーターがファイアをたたいていた。
「(大丈夫かな・・・)」
本来ファイアの目付としてついてきたウォーターだが、明らかにリーフにとっては不安要素がふえた
だけにすぎなかった。
「ここね」
リーフ達は目的地の湿った岩場についていた。
「よしファイア、おまえがせんとうだぞ」
「じゃあタオルとせっけんを用意しないとね」
「って、せんとうっていっても風呂じゃねえ!
前を行けって言ってんだよ!」
ファイアのボケにウォーターが即座に突っ込む。
「嫌ですよ〜こわいし〜」
「さっさと行けぃ!!」
「うわぁ!!」
ウォーターがファイアにとび蹴りを食らわせた。その衝撃でファイアは中に入っていってしまう。
「やりすぎじゃないの?」
「これくらいしないとあいつは動かないからな」
ダンジョンに入ったリーフ達は順調に進んで行った。敵のレベルも低めだったため、
初心者探検隊にちょうど良いダンジョンだったのだ。
「ここは大したことないですね」
「それはいいけど・・・」
ファイアが余裕の表情で後ろを向くと・・・
「っ痛!」
頭を岩場にぶつけてしまう。
「ちゃんと前見て歩かないと・・・
ん?」
突然リーフの表情が変わる。
「どうしたリーフ?」
「何か聞こえなかった?」
「・・・・・・
確かに聞こえるな、行くぞ!」
ウォーターを先頭に声のする方に向かっていった。
「あ、あれは!?」
リーフ達が見たのは赤いトカゲのようなポケモンがチンピラのようなポケモンを痛めつけている光景
だった。
「(わたしがあいつを引き付けるからファイア達はあのポケモンを助けてあげて)」
リーフの作戦に二人とも黙って頷いた。
「さっさと出しやがれってんだ!
・・ん?」
トカゲのようなポケモンがふと上を見上げると目の前でリーフが蔓の鞭で自分に殴りかかっていた。
「ぐはぁっ!!」
そのポケモンは衝撃で吹っ飛ばされた。
「ファイア!今のうちに!」
「わかってます!」
ファイア達は痛めつけられていたポケモンを保護した。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。大丈夫です・・」
痛めつけられていたチンピラのようなポケモン、ズルズキンは傷を負いながらも立っていられた。
「(見た目とギャップありすぎるだろ・・・)」
「もしかしてあんた、依頼をだしたポケモンか?」
「は、はい。このあたりを歩いていたらいきなりあのヒトカゲに襲われて・・
それで救助依頼を出したんです」
ウォーターが心中でそう思った。恐らくファイアも同じことをおもっているに違いない。
「てんめぇ・・・よくも邪魔しやがったなぁ!!」
リーフに殴られたトカゲのようなポケモン、ヒトカゲがリーフを睨みながら怒鳴る。
「弱い者・・・?をいじめてるところをほっとける訳ないでしょ」
リーフがズルズキンの姿を見たため、一瞬言葉が詰まるもヒトカゲに言い返す。
「うるせぇ!こうなったらてめぇから痛めつけてやる!!メタルクロー!!」
ヒトカゲがリーフに爪を向けながら襲いかかる。
しかしリーフは容易くかわしヒトカゲの腕を掴む。
「大人しくここから出ていくならなにもしないけど・・・」
「うるせえ!!誰がてめぇの言いなりになんかなるか!!」
ヒトカゲに反省の様子は欠けらもない。
「しょうがないわね・・たしかヒトカゲの急所は・・・」
リーフはヒトカゲの尻尾の付け根を殴りつけた。
「ぐああぁぁっ!!」
ヒトカゲはその場に倒れこむ。
「ちょっとやりすぎたかな」
倒れているヒトカゲをみてそう呟く。
「大丈夫ですか?」
ファイア達がリーフのもとに駆け付けた。
「こ、こいつに襲われていたのか?」
ウォーターが倒れているヒトカゲを見ながらズルズキンに尋ねる。
「はい、いきなりあのヒトカゲに恐喝されて・・・僕は荷物を守るので精いっぱいだったんです・・」
「(見た目だけやったら絶対逆やな)」
またもウォーターが心中で呟く。
「とにかく彼をここから出してあげましょ」
リーフはバッジをかざした。すると全員が光に包まれ、光が止んだ頃には誰もいなくなっていた。
「助けてくださって本当にありがとうございました!!」
場所は変わってファイア達の家の前、ズルズキンは頭を下げながらお礼の言葉を口にする。
「いやぁ、当然のことをしたまでですよ。」
ファイアがあからさまに照れながらそういう。
「(さっきは結構愚痴っていたくせに・・・)」
ウォーターが密かにそう呟いていた。
「お礼にこれを・・・」
ズルズキンはそう言いながら何かを差し出した。
その中身は
「な、何これ!?」
全員が驚愕した。なぜなら中には二万ポケの大金や命の種などのレアな道具がたくさん入っていたのだ。
「凄い!これで一気に大金持ちですね!」
ファイアがかなりハイテンションになっていたが・・・
「すいません!それ・・仕事の道具でした・・・」
ズルズキンの言葉に全員が固まる。
「本当はこれだったんです」
ズルズキンが改めてだした袋のなかには二千ポケが入っているだけだった。
報酬としてはかなり高額だが、先ほどの高級な道具とのギャップもあってかなり落胆していた。(とくにファイアが・・・・)
「本当にごめんなさい、こればかりは仕事で使うので・・・」
「い、いやいいんですよ!仕方ないことですし・・・」
リーフがかなりむりやりな笑顔で接する。(ちなみにウォーターはファイアを無理やり笑顔にしている)
「それでは今回はありがとうございました!」
ズルズキンはその場を去った。彼が去ったあとは全員がため息をついたのは言うまでもなかった。