第九十話 装置の正体
「さぁ、テメェ等が知ってること洗いざらい吐いてもらおうか」
「え……あぁ……」
既に動けなくなったバシャーモ一行にジェットが凄む。サメハダーらしい強面が存分に活かされているからか取り巻きのメガヤンマとペンドラーは震えていた。
「ケッ、だーれがお前なんかに--」
「あぁ!?」
唯一気圧されていないバシャーモが睨み返すもジェットはそれを遮ってバシャーモも左足に食らいついた。強靭な顎に腕を食われたバシャーモは絶叫し、取り巻きのペンドラー、メガヤンマは戦慄するがジェットは全く意に介する様子はない。
わたし達の前では何かとコミカルな言動が多かったジェットだけどこんな具合に敵と認めた相手には一切容赦のないところはやっぱり悪党なんだなと思うばかりだ。
「さーもう一度聞くぞ?テメェ等ダルマモードにでもなってるか?それか知ってること吐くか?」
「い、いいますいいます!!」
ジェットに再度脅しをかけられて全員が口を割った。小声でジェットが「ケッ、腰抜け共が」と吐き捨てたのが聞こえたが……。
「あの目玉焼きめ。末端連中には大した情報渡してねぇな」
苦虫を嚙み潰したような表情でジェットが戻ってきた。背後のバシャーモ達はすでに再起不能にまで追い詰められているがすでにジェットの意識は別のところへ向かっていた。
「コソコソ隠れてねぇで出てきたらどうだ?ネズミ親父」
ネズミ親父とジェットが呼ぶのはわたしの知るところでは一人しかいない。木陰から見知ったピカチュウが姿を現す。
「なんだ、気がづいていたか」
「隣のバカはともかくこのジェット様の後ろついてられると思ったのか」
「ハハハ、そりゃそうか」
そりゃそうかって……わたしそこまでバカだと思われてたってこと……?
「まぁいいや、お前なんで後をつけてた?あのチンピラ野郎に命令されたのか?」
「それもなくはないが……いくらリーフが間抜けでもいきなり仲間に襲い掛かるなんて酔狂な真似はしないはずだから聞いてみようと思ったら部屋にいなくてな……。それで探してたってことだ」
なんかさっきから間抜けとか馬鹿とかもの凄くこき下ろされてるけどそこまで言うの?ってかそれってルッグさんが脱走しって猛り狂ってるってことじゃ……。
「で、どこからついていった?」
「あの男の研究室の中に入っていったところまでだな。私も付いていこうとしたがどういうわけか入れなくてな--」
じゃあバクフーンとかジェットのボスのことまでは把握しきれていないっていうことか……。スパークさんは違和感は感じてるようだけどまだわたし達のように正気にまでは戻ってないってことかな。
でもまったく信じてもらえないよりははるかにマシだ。研究所で起こった顛末をなるだけ事細かに話した。
「あとコイツと吾輩が無事だったのはあの男の研究成果をぶんどったってことがわかったな。おいネズミ親父、こいつを手に取れや」
ジェットは無理やり以前洗脳を解いた装置をスパークさんに触れさせる。するとあのバクフーンが仲間だと認識していたことに対して忌々しそうな表情を浮かべていた。
「こうしちゃいられんな、取り合えずは怒り狂ってるルッグを宥めてくる。お前たちはしばらくは外しててくれ」
「た……大変ご苦労様でございます……」
「つーかなんでお前あのチンピラときにビビってるんだ?直接やりあったらお前が勝つだろ」
「いや……バトルがどうのこうのじゃないから……」
なんというかキレたときのルッグさんって……鬼とか悪魔とかって次元じゃない恐ろしさあるんだよね……。自分で言っておいてなんだけど何でなんだろうか……。
そんな具合に正直今のルッグさんには近寄りたくない……。スパークさんが宥めてくれるのは正直助かるって思ってた。
でも正直このときはおもわなかった。そんな考えに至ってしまったことを--
心の底から後悔することとなったなんて。