ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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最終章 ハッピーエンド
第八十八話 友と頭
 Side ジェット


 裏切者のバクフーンとともに現れたのは確か……リーフと知り合いだったマグカルゴ--即ちこのしみったれた研究所の主。
 なるほど、確かにコイツなででコソコソやっててもおかしくわない。まぁリーフのやつは驚きを隠せていないようだが。

「ど、どうして……?」

「すまないね。すべてはこの計画のために君たちに近寄らせてもらったよ。わざわざ偽名を使って猿芝居にまでつきあってね」


 調べた話だがこのマグカルゴ--リーフに負けず劣らずの間抜けな奴だと聞く。だが今のやつにはそんな雰囲気は感じられない。まぁそんなことは吾輩のしったことではない。むしろこの場で問い詰めたいことは--








「オイコラ、なんでテメーまでこんなところにいやがるんだ」













「あーら、ジェットじゃないの、久しぶりねぃ!」






 そう、仮にも組織のボスだった輩が裏に潜んでいやがったことだ。この珍妙な口調は忘れたくても忘れられねぇ。一応はウチの親分であったネンドールだ。


「決まってるじゃない!!このマグカルゴ君の研究を使ってアンタの使えない手下も優秀なコマにしてあげたのよ!!」

「--なんだと?」

 奴等から聞いた限りでは、今吾輩の周りにいる連中は一種の催眠状態にさせられてるらしい。その状態では奴等の思い通りに他のポケモンの性格やポテンシャルを操ることができるんだとか。ったく、悪夢騒動の次は催眠ってところか。

 だからか手下共も気持ち悪いくらい有能になったしリーファイの連中もバクフーンを何の疑いなくチームとして受け入れているってところか。

 
「だからジェットだけじゃなくリーフちゃんもさ!この使えなかったパートナーのためにも”アタシ等の計画に協力してちょーだいよ!!」

「は?なんでそこでファイアがでてくるのよ」

「あーらまさかジェット教えてあげなかったの?このバクフーンはリーフちゃんの弱っちいパートナーが未来からやってきたってコト?」

「えっ……」


 リーフからすればとんでもないカミングアウトだろう。クソが、余計なことをペラペラしゃべりやがって……。
 
「と に か く!!ジェット!!その娘を落ち着かせたら説得してあげて頂戴!!じゃ、アタシ達は計画の続きでもしましょうかね、セ ン セ イ ?」

「ふふっ、色よい返事を期待しているよ……」

 奴等は研究所の奥へと逃げて行った。ひっ捕らえてやりてぇところだが今の戸惑っているリーフを連れるのは得策じゃない。やむを得ず奴を連れて研究所をあとにする。














 リーファイの基地から無断で飛び出してきた吾輩達は奴等が知らないような隠れ家に足を運ぶ。

 そこはある海岸より遥か先にある、吾輩と同じ種族--サメハダーの形をした岩ことサメハダ岩と街のポケモンからは呼ばれている。

 とレジャータウンと呼ばれる街を抜けた先に隠れ家があるんだ。猜疑心からかリーフが吾輩を見る目があまりいいものではないが。


「よし、誰もいないな」

 比較的大柄なサメハダーとメガニウムが入れるくらいには十分なスペース。吾輩は寝床である藁のベッドを二つとりだす。軽く部屋の掃除を奴にもさせたりもしているウチにすっかり日がおちたようだ。


 夜の冷えをしのぐために焚火をこしらえ、そのまま暖をとる。そろそろ頃合いだな。どこから話したものか……。


「あの目玉焼き(ネンドール)が言ったのは本当だ。吾輩はあのバクフーンがお前のパートナーであることははじめから知っていた」

 この返答を聞くや否やリーフの顔つきが険しくなる。まぁ理由なんて大方予想がつくんだが。

「それじゃあ、なんで言ってくれなかったの!?」

「アホか、そんなことオメー等に教えたら情をかけられてあいつの始末に支障がでるだろうが」

 リーファイの連中にはあのバクフーンは忌むべき敵だと思ってたほうが都合がよかった。下手に迷われたらこっちも困るからな。

「あくまでお前と吾輩は利害の一致で協力しあってんだ。んなことまで逐一教えてやるほどお人よしじゃねーんだよ」

「むぅ……」

 このフレーズを口にするのもはじめてじゃない。リーフも渋々であるが受け入れていたようだ。


「まぁ、今は新たな共通の敵がいるからな……。改めて情報を整理するぞ」


 話を戻すか。コトの首謀者は


・リーフと知人関係にあったマグカルゴ

・吾輩の(一応)ボスであるネンドール

・奴等に催眠をかけられて暴走していたバクフーン(未来のファイア)

 コイツ等であることが確認できた。正直吾輩もなぜあの目玉焼(ネンドール)きとバクフーンが裏でつながってたのかまではまだわからねぇが……。今は目の前にいるアホのリーフに理解させるのが先決だ。


「だいたいは理解できたけど……それでも分かったことが少なすぎるよね……」

 あの洗脳じみた催眠術のカラクリだとか、バクフーンと目玉焼(ネンドール)きが何で結託しやがったのか……。特にやっかいなのはあの催眠のカラクリだ。あれがわからない以上、他のリーファイ連中やウチの手下どもも奴等の術中にはまったままだ。頭数はいるにこしたことはないし、どうにか解放の糸口をつかむしかねぇが……。




「そういえばさ、なんでわたしやジェットはその催眠にかからなかったんだろうね?」

「ケッ、大方アホにはきかねぇってんじゃねぇのか」


 コイツは妙に頑丈なところがある。変なところにも耐性があるんだろう。









「ジェット……、それだと自分もアホって認めてない?」

 言ってくれる。自身の棚に上げた発言に眉をひそめながらもなぜリーフと吾輩があの催眠にはまらなかったのだろうか。
 少し頭をひねるももう日は落ちてるし戦闘もして疲れ果てている。仕方なく今夜は眠りにつくことにした。

ノコタロウ ( 2022/01/22(土) 21:14 )