第八十四話 夢のような世界
--ムウマージの悪夢騒動が終わってからは特別大きな事件もなく平穏な日々を過ごしているわたし達チームリーファイ。
あの事件が収束してからは悪いことも何一つおきずむしろ不思議なほどにいいことが起こっていた。ただ今まで嫌がらせばかりしていたドクローズの面々も気持ち悪い程に改心していた。なんか企みを企ててると思ったけど他のポケモン達の評判からも連中がいい奴だという話に妙に違和感を覚えた。
あいつ等ってそんな周りに猫かぶれるような連中だったかな……?
連中はリザードン、スカタンク、ズバット、ドガースのチームだったけどどうやら進化しているみたいでそれぞれクロバット、マタドガスへと進化していた。でもマタドガスの方がわたし達の知っている姿とは少し違っていた。従来のマタドガスの頭部に煙突のようなものが付いている。
あの姿はガラル地方と呼ばれる土地での進化らしい。理由は不明だが入国が制限されていた土地であったが、近ごろ制限が撤廃されてチームメンバーで入国していたらしい。
ガラル地方かぁ……なんか面白そう!聞けばその地方は長らくわたしやファイアの種が足を踏み入れることはできなかったからあえてそのことを話さなかったらしいけど最近になってその制限がなくなったから行ってみたらどうかと勧められた。
その場では信用できなかったから他のポケモン達に話を聞いてみたけど同じ話らしい……。あの連中にいいうわさしか聞かなかったり本当のことを話してたりと妙な感覚は憶えたけどその地方は確かに気になるよね。
わたしはファイアと共にそのガラルの地へと向かってみた。他のメンバーは訳あっていけなかったみたいだけど。
ガラル地方はバトルが盛んな地方だった。各地で競技場が設置されておりポケモンバトルが娯楽のように扱われていた。
競技場にはたくさんのポケモン達が観戦しており今まで感じたことのないような熱気に包まれていた。確かにここでのポケモンバトルは真剣に行われていたけど
今までわたし達がしていたような身の危険を覚えるような嫌な緊迫感は感じられなかった。バトルしているポケモン達も含めてどことなく楽しそうに見えていた。
これが平和な世界ってことなのかなぁ。隣で観戦していたファイアは「兄ちゃんにもみせたかったなぁ」と呟いていた。ん?なんか変な気がしたけどきのせいかな……?
と、バトルを観戦し終わり基地へと戻った。結構な長旅だったからかすぐにでもねむりについた。
ん……夢の中……なのかな……。でも夢にしてはなんか妙にリアリティがあるような……。あれ?あの姿ってどっかで見たことあるような……?
「……ーフ……リーフよ……。あまり長くは話せないから要件だけ話す。あの研究所に来てくれ。頼んだぞ……」
……。なーんか変な夢だなぁ。ただなんか一言言われただけなのにやたらに鮮明に覚えてるし……、ってやばい!!寝坊しちゃった!!あんまりグズグズしてるとまーたルッグさんに怒られちゃうじゃん!!急げー!!
どたどたと廊下を駆け巡る。うるさいと一蹴されそうだけどそれよりもルッグさんにどやされる方がよっぽど嫌なので急いでいるわけで、皆がいるであろう場所へと慌てて合流した。
いつものリーファイメンバーに加えて何故かジェットまで皆とともにいた、でも正直敵対している時期より共闘していた時期の方がながかったのでそこまでこの面々に違和感は感じなかった。
--ただ一つ。最も一緒にいてはいけない奴がいることを除いては。
「バ……バクフーン……ッ!」
奴--幾度となくファイアをつけ狙いわたし達リーファイにも襲ってきたファイアの実兄。あの冷酷非情な悪魔が何故かわからないが大切なリーファイメンバーの中に我が物顔ではいっている。
わたしは思わず憎悪からか”エナジーストーム”を放とうとしていた。全力で奴へと向かっていきエネルギーをためこんだ球体をぶつけにかかる。
しかしわたしの攻撃は止められてしまった。でもそれはバクフーンに止められたわけじゃない。仲間であるファイア達リーファイメンバーによって止められていた。バクフーンは唖然として様子、そしてジェットはいつものような白けた目つきで見たいたけど。
「全く!!寝坊をしたと思ったら仲間に攻撃するなんてアンタ一体何考えてんですか!!寝ぼけるのもたいがいにしなさい!!」
いつもの説教のときよりも恐ろしい形相でルッグさんに怒鳴られる。確かに寝坊はしたけど決して寝ぼけてる訳じゃない……!!なんとか振りほどこうとしても流石に四人がかりじゃそうそう動けない。激怒するルッグさんだけでなく困惑するウォーターや心配そうにこちらをのぞき込むファイアやスパークさんの顔を見ると思わずさっきまで沸いていた怒りよりも何が何だかわからず混乱の気が強くなっていく。一体どうなってるの!?
わたしがチームのみんなに押さえつけられているといきなりジェットが寄ってきたわたしの口の中にタネを流し込んだ。タネを飲み込んでしまうと体がピクリとも動かなくなってしまった。これはしばられのタネ……。
「まぁまぁ落ち着けって。どーせこのアホのことだから寝ぼけてトチ狂ったことでもしでかしたんだろう?ここは我輩が面倒みてやるからお前らは心配するな。
ホラさっさと来いこの寝坊助」
宥めるような口調とともに小馬鹿にした表情でジェットがみんなを引きはがしわたしを寝室へと引きずり込んだ。どうしてなんだろ……なんで誰もアイツが目の前にいてもなんとも思わないの……?やっぱりわたし寝ぼけてたのかな……?
訳が分からず頭がこんがらがったままベッドへと逆戻りにされてしまう。
カギを閉めたジェットは今までのバカにしたような半笑いから一変し、深刻な面持ちになっていた。
「----お前は気付いたようだな……」