ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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最終章 ハッピーエンド
第九十二話 糸口
ネンドールに唆されリーファイ基地の爆破という凶行に及んだリザードン率いるドクローズ。リーフを除いたメンバーは重症を負いリンとラックの治療を受けているが--







「あの……みんなは大丈夫なんですか……?」

不安げに尋ねるリーフにリンは表情を曇らせる。その様子にリーフはもちろん顔を引きつらせ、ジェットすら苦々しい顔つきへと変化する。

「他の子はしばらく安静にしていれば大丈夫だけど……スパークさんはかなり危ないわ。相当無茶したみたいね……」

無理もない話だ。他のメンバーも動けない爆発を食らった状態で戦闘で無理やりに鞭を打ち、挙句攻撃まで被弾している。まだ助かる余地があるのすら不思議な状態なのだろう。

「あと、一緒にいたアンタのとこの子達もしばらくは動けそうにないわね」

続けざまにジェットのほうへと宣告する。リーファイとジェット一味が正式に仲間になった世界線であるこの世界では彼の手下もこの爆撃の餌食になってしまっていた。

手下が爆撃の餌食になったと聞きジェットの表情が曇る中、彼に声をかける者が現れる。動けないと診断された手下の一人のルチャブルだ。明らかにボロボロの状態であり静止されるも構わずに続ける。

「ジェ……ジェットさん……実はここを爆撃したやつが……ウチのメンバーを連れ去って……その中に……ラオンさんが……」

ボロボロになりながらも伝えたことの内容、それはあのリザードン一味がジェットの手下を拉致したというもの、加えてジェットが連れていたドラピオンもその中に入っているというものだった。

当然こんなことを聞かされたジェットは平然としてられるはずもない。


「……クソ共が……!このジェット様に弓引くってことあぁ……全員地獄を見たいらしいじゃねぇか……」

怒り狂って体を震わせるジェットを見たリーフはその様相に疑問を抱く。日頃バカだの役立たずだのこき下ろしている手下に対して情を持っていることを意外に思っていた。

そんなリーフを一切気に留めることなく怒りを隠そうともしないジェットは懐から
巾着袋のようなものをリンの前へと乱暴に差し出す。

ドサッと音がしたするあたり、相当な重さになっていると見受けられる代物だった。


「こ……これは……?:

「うちのバカどもを世話してくれた礼だ。変な借りにしたくねーからこれでチャラにしてもらうぞ」

「つまり……治療費ってこと?」

「なんだ、たらねぇのか?」

いつぞやのムウマージと組んだ時の悪党とういう印象がぬぐい切れないリンはジェットの律儀ともいえる対応に内心驚きながらも淡々と手紙を書き始める。

「いえ、むしろ多すぎるくらいよ。だから一つ協力させてもらおうかしら」

リンはリーフに対し先ほどまで書き連ねていた手紙を渡す。

「ここからは離れてはいるんだけど”風の大陸”にカエル屋敷ってところがあるの。そこの主人は辺りを統べているから何かわかるかもしれないわ」

「それじゃあその紙切れは何だ?」

「紹介状みたいなもの。知り合いなんだけど気難しいヒトだから何もなしで会いに行ったって門前払いにされるから持って行って」

「…………」

リンとジェットの会話についていけないとばかりにポカーンとした抜けた顔を見せるリーフ。そんな彼女にあきれ果てた顔をするジェットに心配そうにのぞき込むリンは何があったのかと問いかける。

「あの〜……風の大陸ってなんですか……?」

「てめーは地理もまともに知らねーで探検隊してたのか?このトンチキ」

元々は人間だったリーフは他の面々よりも地理が浅くその辺はよくチームメイトからフォローされていた。そのことを初めて知ったジェットは悪態をつき、リンも苦笑いを浮かべるしかなかった。

仕方ないと言わんばかりにリンが地図を広げる。

「今あたしたちがいるのはこの”草の大陸”ね。ここから海を渡っていった先にさっき言った”風の大陸”があるわ」

「うわぁ……結構離れてるんですね。ちょうど水タイプの仲間がいたからよかったけど--」


「オイコラ、何勝手に仲間にしてやがるんだテメーは、それからどさくさに紛れて吾輩に乗ろうとしてないか?」

「えっ?だってジェットは水ポケモンだしわたしは水ポケモンじゃないから乗せてもらうもんじゃない?」

「冗談はそのたわけた胃袋だけにしろバカはっぱ!!テメーの戯言を真に受けたら脳がベトベターになっちまうわ!もういい!!吾輩だけで行ってくる!!」


「それは無理よ」

「あ?なぜじゃ!?」

「あんた一応お尋ね者なんでしょ?そんな奴が単独できたら門前払いされてもおかしくないわよ。救助隊や探検家がついてたら大丈夫だとは思うけど……」

「じゃあお前が来い!!このバカデカブツ葉っぱを乗せるよりは各段にマシだ」


「あのね……あたしはあんたの家来達の治療を”依頼”として引き受けたんでしょうが」

「そ……そうだった……」

単独で向かうのもダメ。主の知り合いであるリンも同行不可能。ジェットは否応なしにリーフと同行を余儀なくされた。それは体重100kg超えているメガニウムを乗せて大陸を移動するということに。










ようやく風の大陸へたどり着いたリーフとジェット。しかし予想通りというかリーフの巨体を乗せて長距離を泳ぎ切ったジェットはすでにグロッキーであった。
にも関わらず体を引きずられてるジェットはリーフへの怒りを露骨に募らせていたのだった。

「(このはっぱ……この騒動が終わったら真っ先にぶちのめしてやる……!!)」
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ノコタロウ ( 2022/09/05(月) 01:17 )