第八十三話 蘇る黒幕……?
--レグルスの足止めの後に、リーフは単身で最深部へと向かっていった。そんな彼女が目にしたのは手を組んでいた筈のジェットがムウマージと仲間割れしており、ボコボコにされている状態だった?
「”はっぱカッター”!!!」
不意打ちとばかりに遠距離から大量の葉の刃をムウマージに飛ばして攻撃するリーフ。しかし攻撃をよけたムウマージは何故かジェットを痛めつけていたのか傍らにはボロボロの状態のジェットの姿が。
今までの動向からは想像もできない状況を目の当たりにしたリーフは先までの敵意を込めた眼差しから一転、驚きを含めた表情へと変わる。
「大丈夫ジェット!?」
何度もお人よしと称されるだけあって弱り切った体のジェットを本気で心配し介抱にかかるリーフ。散々敵対を示唆するような言動をとったにも関わらず気に掛けるこのメガニウムにさすがに苦笑いを浮かべる。
「----言っとくけどお前のためじゃねぇ……。ただ……あの野郎から我輩を利用しようなんて魂胆が見えたから……それだけだ……」
「わかってるよ。ジェットはわたしのようにお人よしじゃないからね」
わかってるなんて口をきかれて面白くないように顔をしかめる。そのままムウマージに悟られないように懐から道具を取り出す。
「おいおい、そいつを庇うのか?そいつは僕とともにお前らに立ちふさがってたんだぞ?」
「庇うつもり……ってわけじゃないけど、その前に君をふん縛ることが先決と思ってね」
「そうかい”シャドーボール”!!」
漆黒の球体をそのままリーフに向けて飛ばす。勿論リーフとてただ黙って食らう訳もなく手に取った鋼の葉で切り裂いて応戦する。
シャドーボールを相殺したリーフの背後にはすでにムウマージが潜んでいて再びのシャドーボールで攻撃を加える。
(まずいな……あいつは中々素早いのにリーフの野郎は無茶苦茶鈍い……。捕まえられねぇと好きにされちまうな……。)
ジェットが懸念し、またムウマージも自身とのスピードの差から慢心が生じたときであった。気が付けばムウマージの体は蔓に捕縛されていた。
ムウマージの体はそのまま勢いよく地面にたたきつけられた。リーフも自分の素早さが劣っているからこそ、自らの頑丈さを盾に攻撃を受けつつも反撃を加える戦法をとっていた。
しかし相手を侮っていたムウマージはその戦法をよく知らずに突っ込んだためにあっけなく反撃を食らってしまう。
「ククク……残念だが、もうテメェらは終わりだ」
体を起こすムウマージ。その視線には既にリーフやジェットはなかった。マグマの中に囲うように岩場が設置されていた。
いわばの中央にはまるで力をため込んでるかのごとく常時何かしらの光を集めていた。
それに呼応するかのごとくいわばの中央は妙な光方をしている。ムウマージはこの時を待っていたとばかりにニヤリと笑った。
「さぁて……悪夢の時間だ……。出でよ‼悪夢の化身‼」
ムウマージがそう叫ぶと光を帯びていた岩場の中央部が一斉に盛り上がる。目のくらむような眩さが解けた時には
そのには漆黒の体を有したポケモンであろう者が鎮座している。
ムウマージはそのポケモンに対してニヤニヤと笑みを浮かべながら近寄っていく。リーフは目の前のポケモンに驚きや警戒をしていた為に不用意に動かずにコトを見ている。
「ご無沙汰しております、ダークライ様。忠実な僕のムウマージでございます」
先ほどまでの荒い口調から一変、リーファイと出会った当初のような丁寧な口調へと戻っていた。ダークライと呼ばれたポケモンは辺りを見回し何が起こったと言わんばかりにムウマージを見つめる。
「ダークライ様がお眠りの間にも私めが悪夢の力を増大させ世界を暗黒に包ませる計画を実行中です」
「……ほかの配下連中はどうしている?」
「私の下につき、計画に加担させております」
「そうか……ではあそこの者はお前と敵対している……ということだな?」
はじめてダークライはリーフの方を見据えた。あんこくポケモンの名が体を表すかのような冷徹な目つきは見据えられただけでも敵だと思うようであった。
「うわああああああああぁ!!?」
目にもとまらぬ速度でダークライの”あくのはどう”が放たれる。弱った体を起こしながらジェットはその光景を驚きながら見ていた。
ダークライに攻撃されたのがリーフでなくムウマージだったために。
攻撃を食らったムウマージ--身構えていたリーフもまさかこのダークライが配下であったムウマージを攻撃するなんて想像もしていなかった。
「がはっ……な、なにを……」
不意を突かれる形で弱点攻撃を食らい動揺するムウマージ、その脳裏には敵にダメージを肩代わりさせるようなあの能力を使うことができなくなるほどに狼狽している。
「ムウマージ貴様……私が何故眠りについたか忘れたようだな!!」
再び”あくのはどう”でムウマージを攻撃--というよりはいたぶるように攻める。
「ダークライ様……?」
「だいたい世界を歪ませて暗黒に飲み込み支配してその先に何があるんだ!?んなことしたってその先に何があるっていうんだ!!?いたずらに他者を苦しめても意味がないことに気が付いたからわしは眠りについたんだろうが!!
そんなこともわからないのか!!」
(なんか思ったよりもまともな奴だった!!?)
ムウマージに激怒するダークライはその他の配下達を呼び寄せた。あまりに意外な展開にリーフもジェットも思わず攻撃の態勢をとるどころかことの顛末を眺めている。
ダークライは配下達にも悪夢を見させることを止めるように進言する。
「そうだよなぁ……確かに世界を暗黒に染めるって、なんかよくわからねぇもんな……」
「なんとなくムウマージのいう方向についてったけどダークライ様がやめろって言うなら……」
もともとのボスであるダークライの命令だからかあっさりと今までの行為を取りやめることを決めた他の配下連中。
「ちょっと待てやぁ!!」
「うわぁ!?」
しかしボス面していたムウマージは不服と言わんばかりに他の配下達に激昂する。
「あぁん!?テメェらここまでやっておいて止めるだぁ!?ふざけんなよ!?この状況でやめるたぁいい度胸してんじゃねぇか!!ぜってぇやめさせねぇからな!?寝言いってんじゃねぇぞ!!」
(うわアイツめっちゃ切れてる……!!)
また自分と対峙した時のような柄の悪さを浮かべながらまくし立てるように怒鳴り散らすムウマージ。しかしそれをダークライは許さなかった。
「いい加減にしろ!!そうやって威圧や罵倒でしか他人をコントロールできない無能なリーダーだからポケモン達の心を掴めないんだと言ってただろう!!部下達はただのコマではない!!恥を知れ!”あくのはどう”!!」
「ぐあああああああああああああああああああぁああ!!?」
再びの”あくのはどう”で折檻されたムウマージはそのまま気を失った目をまわしていた。悪の親玉が現れたと思ったらその親玉が部下を成敗するというまさかの光景に今まであっけにとられていたリーフ達にダークライがムウマージを引きずりながら近寄っていく。
「不肖の部下が騒がせてしまって申し訳ない。以前は私自身がこのバカと同じことをしていたんだが……、先の通り過ちだということに気が付いてな……。
私は贖罪のためにこの人目のつかない場所でそのまま眠りについて部下達にもこれまでの行動を取りやめるようにさせたのだが……」
「コイツが勝手に暴走したと……」
「てか何で眠ってたの?そのまま起きて部下を監視させとけば……」
納得がいかない様子のリーフ。隣でジェットがダークライの特性“ナイトメア”についてあきれた様子で解説していた。ダークライが近くにいるだけで眠ってるポケモンを意識せずとも苦しめる作用があるとのこと。
そのことを恐れて自分で活動することを止めていた。
「そうだ。私が表へ出てしまっては悪夢にうなされるポケモンを苦しめてしまう。ぶしつけな頼みで申し訳ないが私とともにこやつらを然るべきところに連れていき罪を償わせてもらえぬだろうか。こうなってしまったのには私の監督が行き届いていなかったこともある」
見た目に反して誠実な態度で頼み込むダークライにリーフもNoとは言えずそのまま気絶したムウマージも引き連れて火口をあとにした
その後リーファイ、ブラザーズメンバーとも合流。全員の無事を確認した。
「えっ?原作のラスボス戦がこんなにあっさり終わっていいの?」
「というかこの物語にまともなのを期待するだけ無駄だろう」
「それもそうか」