ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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第六章 迫る悪意
第七十八話 取り引き
~~ side jet ~~

--いつものことながら無能な部下連中に振り回されながらアジトに戻る我輩。とはいうものの戻ったところで何も起きないはずもなくあの役立たずのしりぬぐいに追われていた。






「ったく……これじゃいつまでたってもあの糞裏切りネズミの始末すらできやしねぇ……!」


 自室に戻りながらも愚痴がやまない。そりゃそうだろう!?手下連中は何をやらせても失敗ばかりのスカタン連中。リーファイの連中を利用しようにもお人よしな奴らは余計なことばかりして奴の情報もつかめやしねぇ……!クソが!!








「おやおや、どうやらお困りのようですね……」

「あぁ!?」


 聞きなれない声だ。口調は丁寧だがどうにも気に食わねぇ質だ。声のしたほうに振り向くが姿は見えない。だが確かに聞こえた、幻聴のはずはない。

「初めまして、お初におめにかかります。わたくしはムウマージ、以後お見知りおきを」

 クソが付くほど丁寧なそいつの言い回しとは逆に我輩はそいつに対する第一印象は”気に食わない奴”だった。まともな神経をしている奴なら初対面から背後に回って声などかけやしない。

 だがここで動揺を悟られるのも癪だ。何事もなかったかのように我輩は口を開く。

「貴様、どうやってここまで来た?見張りはつけていたはずだぞ」

 内心見張りの前に一応とつけそうになったが流石にこらえた。見ず知らずの奴にまで手下が無能だと思われるのも恥だ。尤も難なくここまでたどり着くあたりこの警備はザルだったんだろうと予想はできる。

「ご存じかもしれませんがわたくしはゴーストタイプ。これくらいの壁をすり抜けていくなど造作もないことです」

 言われてみればそうかもしれねぇか。それにしたって悪者である我輩にこんな形でアプローチをとろうなんてこのムウマージも大方ろくでもない輩であろう。
 それでも要件を聞かない限りは話が進まない。

「……探しているんでしょう?あなたがたを裏切ったあの





















 バクフーンを」
















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--……。僕は確か……


そうだ……リーフさんの悪戯を咎めてたら突然強い眠気に苛まれて……





この声は……?












「--い……える…?……えたら……くれ……」











「はっ!!」

 
 長い眠りからようやくルッグが目覚めた。彼の目覚めにはブラザーズの三人がいたのみでリーファイの面々は誰一人としていない。
 悪夢に苛まれて回らない頭を無理やり捻って今までの状況を思い出していた。

「うまくいったようだな。お前さん、今まで悪夢にやられてたんだぜ?」

「悪夢……ですか?」

「うん、今多くのポケモンがさっきまでのあんたのように覚めない眠りについてるの。それであたし達やリーファイのみんなも調査してたんだけど……」

 リンの歯切れの悪い態度からリーファイの面々によいことは起こっていないことは察するルッグ。

「ちょいと色々あって今はいねぇんだ。んで早速だがお前さんにも頼みがある。一緒に来てほしい。立てるか?」

「は……はぁ……」

 幸いにも体にさほど影響はない。ルッグはゆっくりと体を起こし二本足で立つ。体が動く以上治療してもらった手前もありラックの言うことを承諾し、後についていく。














 ルッグが連れていかれたのは先にグラスたちがジェットとあわや交戦しかかった荒らされた研究所だった。その凄惨な荒らされ方にルッグも思わず閉口する。

「この研究所の主、お前は誰かかしらないか?」

 グラスからの出会ってそこまでもないにも関わらずの”お前”よびに辟易するもこの研究所はルッグにとっては見知った場所であった。

「--間違いありません……ここは……」
























「なるほど、お前さん達の知ったポケモンの住居ってことか……。普段から何かしらの発明とかしてたのかい?」

「えぇ、役に立つものから下らないものまで色々考えてましたね……尤も最近は足を運んでなかったですが……」

 有益なことが話せずに少しバツが悪そうに口ごもるルッグ。確かにリーファイとしてもこの研究所に足を運んだことは長い間なかった。
 いまだに釈然としていない様子でまたもグラスが口を開ける。

「それとだ……ジェットというサメハダー--アイツはここの主と接点はあるか?」

「ジェット……ですか……、はっきりと関わりがあるかはよく覚えてません。ですがアイツの性質から僕たちと関係した者は洗いざらい調べている筈なので全く知らないことは薄いでしょう」

「…………」





 なぜあの研究所に簡単にさめない悪夢を解くヒントがあったのか、なぜその研究所にジェットがいたのか、そして何故あの時攻撃する素振りがなかったのか……。

 ラックの脳内でこれまでに起こった事を整理されていった。そんなとき--









通信機の鳴る音が響く。思考を一度中断させて応対にまわる。
相手はリーファイからだった。これから基地に戻るとの連絡らしくこれから帰還してくるようである。

■筆者メッセージ
きりよく終えようとしたら文字数がやたら少なくなったのはご容赦ください。
ノコタロウ ( 2020/07/19(日) 09:35 )