第七十一話 オチる
地下のポケモンを守るためにあなぬけのたま、そしてラックの持っていたテレポートの結晶と呼ばれる代物を用いて空中で爆破させることで爆弾を処理することを決めたリーフ。
そんな中ことの首謀者であったライトとアドンを見つけたリーフはこれまでの仕返しとばかりに自ら特攻を仕掛けて爆発に巻き込んでいった。
「あの野郎……まさか自爆してきやがるとはな、バカな奴だ」
どうにか爆発を凌いだライトとアドン。しかし爆発を受けた状態では飛行することなどままならず、今では高所から落下している状態である。
上手いこと空中で態勢を立て直してアドンにまたがり飛行へと移行しようとする。ふと爆発から生じた煙に目をやった。
草タイプのやつがあの爆発をまともに浴びたんだ。まともに動けるはずなんかない。自分たちはうまくやり過ごしたからか、ライト達にはあの厭味ったらしい表情がよみがえった。
「------ぁぁ--」
「ん?なんだ?」
煙の中からか声のような何かが聞こえた。無論ライトもアドンもそんな声を出すはずもなく揃って首をかしげる。その声は徐々に大きくなっていった。
「うわあああああああああああああああああ!!?」
「なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃ!!?」
煙の中からあの特攻したメガニウムが自分たちへ向けて落下してきた。爆発に耐えていたこともそうだが、いきなり現れて自分たちをまきこむように落下してきたことにまたも二人そろって叫び声をあげるライトたち。
落下してきたリーフに巻き込まれて飛行ができずにどうしようもなく落下していくライトとアドン。三人まとめと落下していったがその間に全員が声にならない声をあげながら落下していった。
「全く……あのちゃらんぽらんリーダーといい、短絡的カエルといい……」
頭を抱えながらルッグはウォーターやスパークとともにチームメイトとの合流を目指していた。段々苛立ちを募らせるブレインにスパークもウォーターも彼にかける言葉が思いつかずに黙ってついていってる。
「--?」
妙な気配を感じた三人。それは上から来ていた。いち早く声の主を察したスパークは二人に声をかけた。
が、ルッグは先ほどからぶつぶつと呟いてるからか気が付いていない。
「うわあああああああああああああああああ!!!!」
ルッグの頭上からピカチュウとリザードン、そして”ちゃらんぽらんリーダー”--メガニウムのリーフが降ってきた。まさかこのピカチュウとリザードンが悪者でそいつらを止めるために特攻したなど夢にも思わないすパークたちは唖然とした表情で見ていた。
轟音とともに落下した三人。落下地点はルッグの頭上であった。落下の衝撃で土煙が勢いよく生じる。
「どうだ!逃げようったってそうはいかないわよ!」
目を回して伸びているライトとアドンの首根っこを掴んでリーフが得意げに口にした。爆発に巻き込まれたうえに高所からの落下の衝撃を受けても動いていられる様にさすがにライト達も参ったのか抵抗を示さなかった。
「あっ、スパークさんにウォーター!ちょうどよかった、こいつらの引き渡し手伝ってない?」
「あ、あぁ……それは構わないんだが……」
見るとスパークもウォーターも顔が引きつっている。なんでそんなに表情がこわばっているのか疑問に思ったリーフはスパークが自身の足元を指さしたことに気が付いた
。自分の足元にはのびている敵のピカチュウとリザードン、そして……
「……あっ……」
チームメイトであり、最近自分が最も恐れている存在の一人であるズルズキン。彼が図らずも自分の下敷きになっていることに気が付いたリーフは途端に眉をひそめた。
リーフは息を殺してルッグから飛びのいて、スパーク達に目配せをする。
言葉こをはなかったが長い付き合いだからかリーフの意思を察した二人は黙って頷いて巻き添えを食らったルッグを介抱した。
リーフは悪者の引き渡しがあると自身に言い聞かせてライト達を引きずりながらこの場を去っていった。
--
「それにしても、まさかこいつらが生きてるなんて思いもよらなかったぜ」
ライトとアドン、そして自首をしたサスケを引き渡されあきれ気味にラックはそう吐いた。彼らの話によればライト達はブラザーズと過去に戦闘があって消息をたっていたとのことらしい。
「まぁいいやご苦労さん。こいつらは俺が始末しとっからあんたはゆっくり休んでな」
あの爆弾の爆発に巻き込まれて、挙句高所からの落下をしてしまったのだからさすがにリーフも疲れ果ててる様子。尤もラックやリンからすればその程度で済んでる彼女の頑丈さのほうにあきれ返っていた様子であるが。
ラックに連れていかれたライト達を見送った後ファイアは若干の怒りを込めたまなざしでリーフをにらむ。
「全く……相変わらず無茶するね君は」
「まぁね、無茶しないといけない状況だったし」
言ってもきかないことはとっくにわかっていたがやはり言いたい気持ちはこらえられなかった。チームメイトどうしのやり取りを少し眺めた後にリンが労わるようにリーフのもとによる。
「まぁまぁこれで一件落着なんだから少しは休んでたら?」
「そうですね……そうしま……あっ……」
リラックスしたようなリーフの表情が突如一変、何かに怯えたような表情を浮かべた。まさかまた良からぬことが起こるのかと危惧したファイアとリンの顔つきにも緊張が走る。
突然近くにあった木に突然登りだすリーフ。あまりに奇妙な行動をとるその様に二人そろって顔を見合わせる。木に乗ったリーフが”静かに”とのしぐさをとってから怯えるように葉にその巨体を頑張って隠していた。
しばらくして鬼のような表情をしたルッグが現れた。その様子を見たファイアはことの顛末を大体であるが察し、リンはその恐ろしい表情に思わずその長い体を仰け反らせた。長い冒険の経験がある彼女ですらもここまでの恐ろしい”いかく”はそうそうお目にかかれない。
「あのバカリーダーはどこへいったんですかぁ!?」
「リ、リ、リーフならさっきお尋ね者を引きずりながら引き渡しにいったよ……!」
一体なんでルッグはここまで激昂しているのか、リーフは一体なにをしでかしたのか。もしルッグが木の上に隠れているリーフを見つけたらどうなるのか。
そんなことを考えながらも今はルッグの怒りを鎮めるのでいっぱいいっぱいであった。