ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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第五章 人気者
第七十話 覚悟
 --爆弾を取り除く。

 そう断言したリーフの脳裏にはどのような戦法が練られているのか……。







「よしっ」

 妙案が思いついた面持ちで探検バッジの通信機能を起動させた。奥深くのダンジョンではあるが問題なく通信できるあたり、性能の高さがうかがえる。

 


 一通り通信での連絡を終えた後、リーフは爆弾を見て回った。
しかしこちらのやり取りは今一つ芳しくないのか終始苦い表情。のちに苦笑いを浮かべたリーフはバッグから一つの不思議玉をとりだして、爆弾にまたがった状態で掲げた。







--地上--

「こりゃ随分と派手にやられちまったな--」

ライト達にボロボロにされたレグルスを見てラックはそう口にした。ファイアは自分を逃がしたレグルスを助けるためにラックたちに救援要請をしていたが--






「--まさかお前さんたちが生きていたとはねぇ……」

 相も変わらない飄々とした口調--それでいてどこか緊張感を醸し出す雰囲気で振り返ることなく発した。彼らの背後には邪悪な笑みを浮かべたピカチュウ--ライトと所々が傷ついているリザードン--アドンの姿があった。
 レグルスを痛めつけた張本人の登場に一瞬ファイアは硬直してしまう。

「あ……あんたら……ッ!」

 ”へびにらみ”を放てそうなほどにライト達をにらむリン。その様子からファイアはブラザーズとこの邪なピカチュウとリザードンは良からぬ因縁があることを察した。

「ケッ、あのバカキモリの連れ共じゃねぇか。アルタイルのくそったれといい今日は懐かしい顔に会うねぇ」

 どうしたらここまで厭味ったらしく邪悪になれるのか。以前からの因縁があるリンだけでなくファイアもその悪辣っぷりに眉をひそめる。
 しかしライトもアドンも彼らの臨戦態勢にも意に介していない様子で吐き捨てる。

「おいおいおい、お前ら俺とやりあうつもりか?バカだねぇ、そこで怪我人が転がってるのにそれでも救助隊や探検家かよ」

 笑いながら指さした先には、自分たちが傷つけたゲッコウガの姿があった。どの口が言っているのかとも思ったが今の彼らが優先すべきであることは討伐ではなく助けること。
 それを知ってライトはにやけながら自身が乗っているアドンを足蹴にしつつ飛び去るように促した。









「うわあああああぁ!?」

 アドンが飛び去ってまもなく、今度はロケット型の爆弾とともにリーフの姿が現れた。あなぬけのたまで爆弾もろとも帰ってくるという荒事にさすがにファイアも声をあげてしまう。
 あまりに急なことが起こりすぎて半ば混乱気味のファイアをよそにリーフはリンとラックに耳打ちを始めていた。まるでこうなることを知っていた二人はまるで驚く素振りも見せずにリーフに相槌をうつ。






 ラックはリーフに対して結晶のような代物を手渡す。そして結晶を受け取ったリーフの姿はロケットとともに一瞬で消えていった。
 先ほど突然現れたと思ったらすぐに消えていった。慌ただしいパートナーの動向が気になりファイアはリンに尋ねる。

「あの……一体リーフは何を……?」

「ん、あぁあの娘ね……」













 リンからリーフの動向を聞いたファイア。意外にもさほど驚いた様子は見せなかったファイアであったが、それでも表情は芳しくなかった。

「あら、意外と驚いてないようね」

「まぁ、リーフのことだから一人で無茶するんだろうとは思ってたからそんな気は薄々してましたけどね……」

 頭の中ではわかっていた。あの状況じゃ仲間に相談する暇もないことや自分のパートナーは危険なことは自分で抱え込んでしまう性質であることも。
 ただやはりまたもパートナーに頼られなかったことに関してファイアの中でどうにもやるせない気持ちが芽生えてきたのは確かだった。














--上空--


「うわあああぁ!?」

 さっきまで地上にいたと思えば今自分は宙に投げ出されていた。時間がない、早急にこの爆弾を上空で爆発させないと。
 一瞬声をあげていたリーフだがすぐに落ち着きを取り戻し、爆弾の爆破にとりかかった。


「ん?あれって……」









「けっ、今頃地下の連中は爆弾で ドッカーン ってところか?」

「あの爆発に巻き込まれてただですむはずがない」

 リーフの視界に入ったリザードンとそれに乗っているピカチュウがあの時と変わらない嫌味な笑みでそう吐き捨てた。リーフには話の内容までは聞こえなかったが、あの連中がレグルスやサスケを痛めつけた張本人だということは確認できた。

 あの悪辣な連中をこれ以上野放しにはできない。リーフの脳裏にあることが思いついた。


「あいつら……!”つるのムチ”!!」

 ロケット爆弾に乗っかったまま首から出したつるのムチをあのリザードン達に向けて伸ばしていった。ムチはリザードンの首へと巻き付かれ、そのまま勢いよく掃除機のコードのような要領で自身の体や爆弾を彼らに向けて引き寄せた。














「な……何いいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃい!!?」

 なぜ地下に設置した巨大爆弾がどういうわけか自分たちの目の前に
、それも空を飛ぶ力のないはずのメガニウムが持ち込んできているという信じがたい状況にライトもアドンも今までに発したことのないような間の抜けた絶叫をあげる。
 同時にこれまでの悪辣な表情を浮かべていた彼らとは思えないような間の抜けた表情を浮かべていたが、この場に居合わせた全員がそんなことを気にする余裕がなかった。
何せこの光景は誰が見てもリーフがライト達に特攻してるようにしか見えない。


「食らえええええええええええええええええええええぇぇぇ!!」


 勢いよくライト達に急接近し、そのまま持ち込んだ起爆させようと爆弾の中心部を雑に殴りつけた。 
 









  その衝撃を受けてロケット爆弾は地上に影響を与えない範囲で爆発した。



ノコタロウ ( 2020/03/28(土) 11:16 )