第六十九話 巨大爆弾
--「ここのどこかに巨大爆弾を埋めた。さっさと脱出しねぇと木っ端微塵になっちまうぜぇ?」
目の前に転がっているリザードンの仲間である下劣なピカチュウ--ライトは確かにそう口にしていた。
真偽を確かめんばかりにサスケのほうへと振り向くと彼はゆっくりと頷き、そのまま俯く。
--巨大爆弾は真実……それなら早く脱出しないと……。
--いや、あの洞窟にはまだ……。
確かこのリザードンと戦闘になる前に出会ったサザンドラにビリジオン、そして洞窟にいたミュウツーのことを思い出した。
あのミュウツーと出会ったときに聞いたこと--それはこの洞窟は彼のようにメガシンカの実験体として使われて、そして捨てられたポケモンたちの隠れ家になっていた。
爆弾が起動が爆発するとそのポケモンたちは--
リーフの脳内には脱出の二文字はなくなっていた。爆弾を止めるか最悪の場合は影響の出ない場所で爆発させる。この事態を収束させる術はこの二つしか思いつかなかった。
「あいつらの言ってた爆弾ってどこ?」
「嗚呼、案内する。ついてこい!!」
幸いサスケは場所を教えられていたからか爆弾のある場所を案内することができた。痛む体にムチ打ちながらもこの場をあとにした。
「おのれ……下等生物が……」
カウンターを食らい気絶いていたアドンは二人がこの場を去ったのちに意識を取り戻した。それを待ち構えていたようにライトが戻ってくる。
「ケッ、大口を叩いてた割にやられちまったのか、情けねぇな」
「くっ……!」
開口一番にそう吐き捨ててきたライトに流石に言い返すことはできなかった。確かに散々リーフのことを貶しておきながら、たった一撃でのされては言いようがなかった。ライトは雑にオレンのみを投げ渡す。
「奴らは爆弾を止めにかかったようだが、すでに爆弾は起動してる。とっとと出る準備をしやがれ」
「……わかった」
あっけなくやられた挙句回復もさせてもらった都合、さすがにアドンも素直に言うことを聞き、ライトを自身の背中に乗せた。
「ケッ、あばよ……」
アドンに乗りながら邪悪な笑みを浮かべつつこの場から飛び去ったライト。その目つきには勝利が確信されていた。
「あれが爆弾だ」
サスケに連れられた先にあった爆弾--それはまるでロケットのような姿をしていた。球状の姿をした爆弾をイメージしていたリーフにはそれは意外ないで立ちであった。
「……なんでロケット?」
「オイラもよくわかんねぇけど、昔人間世界で”ロケット団”なる連中が悪事を働いたとかいう話からロケットにしたとか……」
「なんじゃそりゃ」
あてにならない返答が飛んできたために思わず間の抜けた返しのリーフ。しかしこの形状では一つ困ったことが--
「サスケ」
「ん?なんだ?」
「ほかの人たちをできる限り早くこっから避難させて」
「お、おう……でおめぇはなにすんだ?」
「…………」
すぐに返答せずに目をつむるリーフ。その姿は腹をくくったのか開いた目にはある決意が宿ってるようだった。
「この爆弾を……取り除く」