ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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第五章 人気者
第六十八話 vsアドン
--ここのどこかに巨大爆弾を埋めた。さっさと脱出しねぇと木っ端微塵になっちまうぜ?
ニタニタと下劣な笑みを浮かべながらライトがそう発した。

「間抜けなお前らに見つけられるかな……?アドン」

これ以上相手にしてたれるかとばかりに踵を返すライトは去り際に仲間内のリザードン--アドンと--

「こいつらが邪魔しねぇようにボコっておけや」

「--貴様はどうするつもりだ?」

「上に戻ってあの口うるせぇ蛙と軟弱火ネズミの後始末だ。まぁ必要ねぇと思うがな」

このやり取りを耳にしたリーフは即座にレグルスとファイアが狙われれていることを悟った。サスケと共に奈落へと落ちていったリーフは彼らに何があったかは知らないが、この悪辣なピカチュウとリザードンに狙われていることは確か。そんなことを聞かされてリーフが黙っていられるはずもなかった。


「そうはさせない!!」


即座に"エナジーストーム"を生成してライト目掛けて飛び掛る--




















「貴様、あの貧弱で下等な連中を束ねてる割にはいい技を持っているな」

ところをアドンが背後から"ドラゴンクロー"で襲い、"エナジーストーム"を不発にさせた。不意打ちを受け地面に伏したリーフが起き上がった先には彼女がよく知ったリザードンの姿はなく口元や尻尾に青白い炎を纏った漆黒のリザードンに似たポケモンの姿があった。





「気をつけろリーフ!!アドンの兄貴もオイラと同じメガシンカの使い手だ!!」

よろよろと起き上がりながらそう叫ぶサスケだがアドンに睨まれて身を竦ませる。"メガシンカ"その一言を耳にしただけでもリーフの脳内に緊張感を走らせるには十分なきっかけであった。三人の中で一番実力が下回っているサスケですらメガシンカ後の攻撃性能は格段に上昇している。まして自分に相性の悪いリザードンがメガシンカの使い手とあらば--









リーフの頭からこのリザードンを倒す術以外のことは消えた。シンカ前のリザードンよりもずっと鋭利な爪とシンカ前より小さくなった翼を所持してる様から大地を蹴る物理攻撃を得意とする形態。リーフの頭のなかには瞬時にそれだけの判断がなされた。


「"ニトロチャージ"」

全身に炎を纏ったアドンが猛スピードでリーフに突っ込んできた。癒しのオーブの効力で身に纏った炎こそはリーフにはきかなかったもののすれ違い様に持ち前の鋭い爪で切り裂かれる。
アドンのニトロチャージは連続で発せられた。斬撃が出されるたびにアドンのスピードが上がっていきその速度についていけずにリーフは黙って斬られ続けている。







(ダメだ……!!あのスピードじゃあいつご自慢の"カウンター"だってよけられちまう……!!どうするつもりなんだよ……!?)


徐々に傷が増えていくリーフの体を見るに耐えかねたサスケが加勢しようと立ち上がる--












それをまるで制するかのようにリーフがサスケの方へと向きなおし、ニッと笑みを浮かべた。その自信さえありげな様子に思わずサスケも足を止める。
アドンからすればそのやり取りが滑稽に見えたのか攻撃を一旦止め、縮んだ翼を用いて滞空する。


「哀れなものだな。この私に一撃も加えることができないとは……」

「…………」

「かたや、戦闘としては不適この上な草タイプで軟弱な種族であるメガニウムの貴様。かたや、二種類のメガシンカを許された至高の種族--リザードンであるこの私」

「…………」

「この様こそ、ポケモンは生まれながらにして不平等だってことを示してくれるな」

「…………」

「私に手向かいすることがいかに愚かであったのか」

「…………ごちゃごちゃ煩いわね」

「--何?」


滞空しつつしゃべり続けるアドンの口がリーフの一言で止まった。目の色が変わったアドンにかまわずに今度はリーフが続ける。

「そのお喋りな口が至高の種族の特権って訳?自分が強いって示したかったらさっさとかかってきたら?」

傷だらけにも関わらず挑発的なリーフの口調。その口ぶりに神経を逆撫でされたアドンは口元の炎を一層激しくさせながらリーフの元へと突っ込んできた。










「ならば貴様がその種に産まれたことを悔いながら死ね!!"ドラゴンクロー"!!」

"ニトロチャージ"の効果も相まって猛スピードで突っ込んでくるアドン。反射的に目を瞑ったサスケであった--



















--しかし視界を自主的に奪った彼の耳には体が切り裂かれるような生々しい音ではなく硬いなにかが割られるような音に近い破壊音が入った。猛スピードで突っ込んできたアドンの動きを見切ったのか、はたまた本能のままに動いたのか。そこまでは本人にすら明確に判別はできなかった。しかしリーフはアドンの"かたいツメ"を己の力でのみ破壊していた。
それを示すかのごとくアドンの両手のツメは無残なほどに割れていたあとだけが残っていた。

自らの折れたツメを眺めていた一瞬の隙をついたリーフが全身でアドンに飛び掛る。蔓でなく不器用ながら四股をアドンの絡ませて拘束する。


「ぐっ!!離せっ……!!下等種族が!!」

「上等種族だとか……下等種族だとか……そんなことよく知らないけど……!!わたしの大切な仲間をこれ以上手を出すな!!」


アドンにしがみついたままリーフはじたばたともがくアドンからピクリとも離れずに自身の長い首を--














「"カウンター"!!」

勢いよく振り回し頭突きをするかのごとく勢いよくアドンの顔面にぶつけた。今まで斬りつけたダメージを一度で倍にされて食らったアドンは白目をむき吹っ飛ばされていった。

ノコタロウ ( 2016/07/30(土) 14:19 )