ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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第五章 人気者
第六十七話 集団リンチ
--ミュウツーと名乗るポケモンと交戦することになったリーフ達。しかし臆したのかサスケはこの場からリーフ達に気づかれぬよう戦線離脱し、物陰から様子を伺うことに。それにしばらくして気がついたリーフはシリウスやアルタイルにこの場を任せて彼の後を追っていた。











しばしその後を追ったリーフの耳に入ったのはサスケの悲鳴に似たうめき声と鈍い打撃音だった。悪い予感がしたリーフは急いでその音のする方向へと向かう。

リーフの見た光景は信じがたい光景だった。サスケが仲間であるはずのピカチュウ--ライト、リザードン--アドン及びその手下格のポケモン達から暴行を受けている姿であった。









「ケッ、どうしたサスケさんよぉ。格闘タイプが聞いてあきれるぜ」

十数体で一人あいてにかかっておきながらライトの頭に卑怯の文字はないようだ。ボロボロにされて地面に転がるサスケを見て上からほくそ笑むように見下している。
放ってはおけないとリーフはライト達の前に飛び出した。やめなさいといわんばかりに彼らをにらめつける。


「なんだ……お前か。今はお前の相手してる暇ねぇんだよ」

「ライトだっけ?これは一体どういうことなの?」

「そうだな、あえて言うなら内輪もめってところだな。お前にとっては喜ぶことではあるけど怒ることではねぇだろ?」

本気か否かはわからないがライトはなぜリーフが怒りをあらわにしているのかわからない様子だ。ライト達に詰め寄ろうとしているリーフを止めたボロボロのサスケが代わりといわんばかりにたつ。




「リーフ、テメェは関係ねぇことだ……。引っ込んでやがれ--」

壁にもたれかかれつつもよろよろと立ち上がりながらぺっと血が混じった唾をはき捨てながら、ライトを睨んだ。その姿はリーフのみならずライト達ですら見たことのないようなサスケの姿だった。
一瞬だけその姿に驚きを浮かべるも直に自分に歯向かうような仕草を浮かべたサスケに苛立ちを覚えたライトは弱りきったサスケを殴り倒す。


「オラ立てよ!いつも俺達の影で威張ってんじゃねぇぞ!」

自分で殴り倒したサスケを強引に立たせたライトはそのまま手下達へと押しやった。その姿はさながら群れの仲間に餌を分け与えるリーダーのようだ。
サスケを押し付けられた手下達は獲物を見つけたといわんばかしに手下達はサスケを攻撃、傍らで薄ら笑いを浮かべるライトと冷徹な目つきで見下すアドン。

よたよたになりながらもサスケは地面に手を付けて懇願する。


「す、すいやせん兄貴。今回は……今回は見逃してくれやせんか--」

「なに……?」


情けない様をさらしながらもサスケはライト達に頭を下げるが当然ライトは素直にそれに応じるはずもない。まして一度自分達に歯向かうような目つきを浮かべた直後だ。






「おい聞いたか!?この野郎見逃してくれだったよ!?」

一通り手下達を見やった後、ライトは乾いた笑い声を上げる。それに呼応するように手下達も同じような笑いを浮かべる。
と、その直後手下格の一体のポケモンがサスケの右手を踏みつける。踏みつけたのはバシャーモと呼ばれるポケモンだった。





「笑わせんじゃねぇよ?アンタだってこうして見逃してくれって命乞いを受けた後、一度だって見逃したことねぇじゃねぇか。そうだろ?あぁ?」

「ぐうぅッ……」

サスケの手を踏みつけたバシャーモの足の爪がグリグリとねじ込まれていく。その箇所からは鈍い赤の液体がにじみ出ている。踏みつける足に力をこめるバシャーモの手には銀の針が光沢を見せつつ光る。
銀の針の鋭い先端はサスケの手を狙う。

「へへっ、許してやるぜ?サスケさんよぉ!?」

ハッと恐怖により見開かれるサスケの目が凍りつく。









「これでな!!」














「--ん?」








勢いよく振り下ろした銀の針はどういうわけがピクリとも動かない。怪訝そうに振り返るバシャーモの視線の先には--










彼の腕をリーフが鷲づかみにしていた。バシャーモが振りほどこうとしてもリーフの力のほうが強く一向に解くことができない。腕を掴む力を徐々に強くしていくにつれてバシャーモの顔が険しくなっていく。

「何があったか詳しくは知らないけど……とりあえずわたしにも喧嘩売ってるってことでいいよね……?」

「うぅっ……はなしやが---ぎゃあああああああああああぁッ!!?」

ポキッと乾いた音がしたと同時にバシャーモの悲鳴が一帯に響いた。リーフにつかまれた右腕を左手で慎重に抱える。ライトは初めて面白そうなだといわんばかりに口元を吊り上げる。

「このまま黙って引き上げようとも思ったんだがお前中々気に入ったぜ。いいことを教えてやるよ」

「いいこと……?」

この見るからに悪辣な雰囲気を漂わせているこのピカチュウの言うことなど到底いい事とは思えないリーフは身構えた状態で耳を傾ける。その様子がライトにとっては滑稽に見えたのか依然として笑みを浮かべてる。
















「ここのどこかに巨大爆弾を埋めた。さっさと脱出しねぇと木っ端微塵になっちまうぜぇ?」

■筆者メッセージ
社会人の闇にのまれてましたが辛うじて生きてます
ノコタロウ ( 2016/07/02(土) 22:42 )