ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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第五章 人気者
第六十三話 メガシンカを狙う者
-- ばんにんの どうくつ --





 レグルスを傷だらけにされて激昂したリーフはふとした拍子に敵チームのルカリオ--サスケと真っ向勝負を挑むことに。しかしサスケが力を暴走させたせいか、地面を叩き割りそのままダンジョンそのものを崩壊させてしまうことになり--











『うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああぁあああああッ!!!』










 そのまま二人仲良く奈落の底へと叩き落されていた。しかしそんな状況にもかかわらずリーフ達の喧騒はとどまることを知らずお互いが相手の体を下敷きにしようと、自分の体の真下へと力ずくで叩き落そうとしている。

「お前が下になれ!!このデカブツ!!」

「嫌だ!!そっちが下になれ!!この犬っころ!!」

「犬っころ言うなー!!」



 先の技の応酬とは打って変わってすでに低いレベルの口げんかと共に二人の体は重力にしたがって落下を続けていた。そして--













ついに口げんかの終わりを告げるかのごとく、轟音と凄まじい砂煙と共に地面へと叩きつけられたリーフとサスケ。相当な距離を落下しつづけたのか砂煙が晴れるまでには十数秒ほどの時間を要した。

「イタタタタ……。ったく酷い目にあったわね……」

 痛むからだを半ば無理やりに起こすリーフはあたりを見回す。無機質な岩壁に覆われた空間に自分達が置かれていることに気がつく。さながら巨大で長いトンネルのようだった。


 あれほどの高所から落下したにも関わらずこの程度の傷で済んだことにふと自身はポケモンになったのかと自覚しなおしたリーフの傍らにはボロボロになってのびているサスケの姿が目に入った。先の自分の考え、すなわちポケモンの体は人間より数倍頑丈になっているという説を疑い始めるリーフ、周りからの荒い扱いもこの頑丈な体があってこその扱いなのかとふと思い起こしていた。

「そうだ、早くみんなに連絡しないと。まーたルッグさんにどやされるかなぁ……」

 ふと思い起こしたリーフは慌てて探検バッジを取り出した。冷静に自身の起こしたことを思い起こしてみると傍から見れば問題を起こしたかのようにしか移らないだろう説教を懸念したリーフの背後に--








「ん?どうしたの?--」


 サスケではなく見ず知らずのカメックス、チャーレム、フーディンだった。彼ら三人だけには通じている意思疎通がまかり通っている様子から彼らがダンジョンの野生ポケモンではないと安堵したリーフはこの場がどこかをたずねようとする。




「--ダーゲット発見。捕獲を開始する」

「えっ?」

 唐突にカメックスが不穏なことを口にすると共に背中のキャノン砲をリーフ達の方へと向ける。とても穏やかに話がつくとは思えない空気に危機感を覚えたリーフは慌てて踵を返す。
 途中未だにのびているサスケを目にしたリーフ。当面ははじめから無視するつもりではあったが、カメックスのキャノン砲から発せられた激流が倒れているサスケに容赦なく発せられた場面を目にしたリーフは反射的に蔓を伸ばし、自身へと引き寄せて背中に乱暴にのせて逃走。







「ったく一体何なのよコレは!!?」

 悪態を吐きつつ重い体に鞭打ちカメックス等から逃げるリーフだが、自身の足の遅さが災いして徐々に距離を詰められる。ここで今まで気を失っていたサスケがようやく意識を取り戻した。彼が気がついたときには何故か敵対していたメガニウムの背中に乗せられながら共にカメックス等と逃走している光景が目に映った。

 なんだこりゃと騒ごうとした切羽詰った様子でサスケの口を防ぐリーフは反対に彼女のほうが口を開いた。カメックス等の姿を目にしたサスケの様子からリーフは面識があるだろうと判断した。

「あいつ等のこと!何か知ってる!?」

「そりゃ話と長くなる!!」

「長くなってもいいから話して!!」

「んなことより追いつかれてるぞ!!」

 サスケの言った通り既に背後にはカメックス等が追いついていた。これ以上は到底逃げ切れないとリーフは体を反転させて戦闘体制をとったが既にリーフの目の前にチャーレムの膝が飛んできていた。

「あ、あぶねぇ!!」

 胸元に飛び膝蹴りが入った。思わず目を覆ったサスケだがリーフの体は崩れ落ちることなく四股は大地を踏みしめている。

「カウンター!!」

 全身に力を込めてチャーレムを殴りつけた。とび膝蹴りによって与えた大きなダメージが倍にして返されゆっくりと崩れ落ちる。
 カウンターのわずかな後隙をついてフーディンが”サイコキネシス”で拘束しにかかる。全身から強い圧力を受けたリーフは表情を歪めつつも拘束に抗おうと全身に力を込める。


 その場に居合わせたリーフ以外全員のポケモンが目を見開いた。フーディンのサイコキネシスを受けた筈のリーフがメスらしからぬ雄たけびと共に拘束から逃れられた姿があった。信じられない光景に頭を疑うフーディンに向けて容赦なく蔓が空を切りつつ襲い掛かり、そのままダウンをとった。
 残ったカメックスを早急に始末しようと”はっぱカッター”の葉の刃を取り出す--がカメックスは戦闘の意思を見せていない。倒れたフーディン達を抱えて早々と退散していった。



「ふぃーっ、なんとかなったわね」

 どうにか事なきを得たリーフは落ち着くまもなく状況を整理。自分と敵対していたルカリオがダンジョンから落下、すると見知らぬカメックス等に襲われた。探検隊バッジでの連絡を試みるも通信がつながらない。今のリーフにできることは限られていた。








「うわっ!!な、なんだよ!?」

 サスケに迫るリーフ。落下のダメージが響いたのか抵抗しようとしたサスケだがどうしようもなくリーフに隣接される。強がってはいるものの状況が状況だけに内心はたじろいでいる。

「あのカメックス達のこと。何か知らない?」






~~ ~~


「サスケの奴、どこまで落ちたのかわかるか?」

 ダンジョンから脱出してモニターと睨めっこしているのはサスケの仲間であるピカチュウ--ライト、その傍らに突っ立っているのはリザードンのアドン。不遜な態度を崩すことなく腕組みと共に椅子に腰掛けているライトに上から口を開ける。

「えらそうな口きいてるんじゃねぇ。あいつが落ちたのは恐らくは”かくされたいせき”だな」

「”かくされたいせき”確かあそこには--」

「嗚呼、奴らがいるところだな--」

 ライトは頬杖をつきつつ顔を顰める。そんな彼の表情からは彼らにとってサスケがよからぬ場所に落ちたということの示しなのだろうか。

~~ ~~










「じゃああのカメックス達はその”メガシンカ”ってやらの力を奪いにあんたを狙ったポケモン達ってこと!?」

「嗚呼そうだよ。ついでに教えてやるがさっきダンジョンでオイラが見せたアレが”メガシンカ”だよ」

「ついでって……敵対してるわたしにそんな安易に教えちゃっていいの?」

 敵同士にも関わらず、リーフに情報を譲渡するサスケだが落ち着いた彼の態度からうっかり口をすべらしたようにも見受けられない。意図的に教えたのだろうか

「おめぇにはさっき助けられたからな。今のオイラがどうやって借りを返すにゃこれくらいしかできねぇよ」

 あまりにもあっさりしているせいかリーフは嘘情報かと疑いにかかる。しかしそんな反面サスケの口にした情報は正確かつ具体的なものだった。
 ”メガシンカ”--それは限られたポケモンにのみ許された進化を超えた進化。”メガシンカ”が生じたポケモンは姿形が大いに変化し、種族によっては特性まで変化する
 多くのポケモンは”メガシンカ”をすることで戦闘力が格段に上がる


 「なるほど……じゃあさっきあんたが地面が割ったのもその”メガシンカ”とやらの力のおかげってことだよね?」

「まぁな。ざっとオイラにかかればこんなもんよ」

「ふーん、でも自分も地面割っちゃったせいでここまで落ちちゃってるよね」

「うぐぅっ……!!」

 痛いところをつかれた。いかに強大な力を持っていたとしても制御できなくては自身の身を滅ぼしかねない。今のサスケの状況はそのことを体言していた。返す言葉がないサスケは下唇をかむ。敵対していた筈のリーフとサスケだがそんな二人の間には少しばかしではあるものの穏やかな空気が包む。

 ひと段落し落ち着いたリーフ達、通信ができない状況故に仕方なしにトンネルの中を進んでいくことにした。しばし無機質な岩が連なっている光景が続きうんざりとしかかっている時--二人分のポケモンの影が映った。また先のカメックス達の仲間かと身構えるリーフ達だがその影たちの胸元には同じく輝いている探検バッジがありほっと一息。三つ叉の頭を所持し漆黒を基調としたドラゴンポケモン--サザンドラと四足で緑色を基調とした大きなポケモン--ビリジオンのようだ。




 --しかしそれもつかの間、サスケの表情が一瞬にして青ざめ腰を抜かした。

■筆者メッセージ
NGワード:メガメガニウム
ノコタロウ ( 2015/10/12(月) 00:24 )