ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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第五章 人気者
第五十八話 事故紹介
~~ リーファイ 基地 ~~

 リーフとジェットの人格が入れ替わるというアクシデントで紆余曲折しながらもレグルスという新たな仲間を得たチームリーファイ。早速リーフはチームメイトにレグルスを紹介する--








「というわけで新メンバーのゲッコウガのレグルス君でーす。パチパチパチー」

 二本の蔓両手の変わりに安っぽい擬音と共に叩くリーフだが、彼女以外は唐突に突きつけられた新メンバーの存在を容易く許容することはできなかった。特に全く受け入れる様子のないウォーターがツカツカとレグルスに近寄る。その不機嫌な彼の様子からとても穏やかにコトが済むとはリーフ以外思ってもいなかった。

「おいリーフ。こんなどこの馬の骨かもわからねぇやつをチームに入れて大丈夫なのか?」

 本来超がつくほど短気なレグルスが初対面の相手にこんなこと言われて平常心でいられる筈もない。膝蹴りを加えた後にウォーターの胸倉を掴みにかかる。一瞬にしてこの場が喧騒の声が発せられる。

「おいコラ亀公!会ったこともねぇテメェなんかに馬の骨呼ばわりされる筋合いねぇんだよコラァッ!!」

「--ッ、ほら言わんこっちゃねぇ!!出会い頭に手を出すような暴力蛙なんざチームにはいらねぇ!!」

「うるせぇ!俺が出したのは手じゃなくて膝だ!!」

 無理のある弁明と共に案の定喧嘩が勃発した。こういう時に止める役目はいつも自分だと知っていたルッグが仲裁に入った。何かトラブルがあったときは大体彼が止めに入ってひと段落するものと本人を含めたチームの皆は知っている。渋々であるが二人の間に割ってはいる。

「まぁまぁ二人とも落ち着いて--」




--ボコッ!!

「お前は引っ込んでろ!!モヒカン!!」

 殴られて吹き飛ばされるルッグ。初対面の相手から見た目のことを貶されるのは慣れていた。しかしそれが暴行と共に飛んできたのだから、これは彼であったとしても怒りがこみ上げない筈がない。普段めったに見せないズルズキンの特性”威嚇”を遺憾なく発揮した鬼面を見せ付け、レグルスをにらめつける。

「だーれがモヒカンですってえええええええええええええええええええええぇええええ!!!」

 ウォーターのみならずルッグまでも怒らせてしまった。ルッグも加えた喧嘩は激しさを増すばかり。自分が介入したところでどうしようもないとうろたえるファイアはどうにかしようと辺りをキョロキョロと見回す。


 そんな彼の目に映った見覚えのある一つの影。





「”リーフストーム”!!」

 唐突に喧嘩をおっぱじめた三人に向かって襲い掛かる大量の葉の嵐。その勢いに負けたレグルス達はまとめて壁に叩きつけられた。真っ先に”何をするんだ”といわんばかりに詰め寄るのはやはりレグルスだ。
 しかし”リーフストーム”を放った張本人--ジャローダのリンは気圧されることなどなく気丈に言い返した。これなら喧嘩はおさまりそうだとファイアは人知れず胸を撫で下ろす。

「つーか誰だよおめーは!?おめーは関係ないだろうが黙ってい--」

「”リーフストーム”!」

 情けない悲鳴すらもかき消すような先ほどよりも強く、鋭い葉の嵐がレグルスを襲った。二度にわたる弱点攻撃をその身に食らいレグルス倒れ伏す。もう既に起き上がる気力なんてないだろう。

「ったく……ちっとは静かにしなさいっての……!!」

「よかったぁ……リンさんが来てくれて……。でもどうしてここに?」

 ほっとする反面、首をかしげるファイア。あの後マッハのチームメイトのゲンガーとハッサムの怪我が完全に治り、彼らはこの基地から去ったことを確認したリンとラックも同じようにリーファイと別れたはずであった。当然そのことが気になったリーフはリンに何かあったのかと問いかける。

「実はね……グラスがどこに行ったのかわからないのよ……」

『--!!?』

唐突に知らされたグラスの行方不明の知らせ。騒がしかった雰囲気が一変、重苦しい雰囲気に包まれた。いち早く、それまで傍観を決め込んでいたスパークが口を開いた。

「どこへ行ったって……、聞いていなかったのですか?」

「ううん、前もって聞いていたんだけど連絡も取れないし聞いていた場所にもいなかったから……」

 ”全くあの馬鹿は……”と悪態を吐く口ぶりとは対照的にリンの表情は憂いを浮かべていた。チームメイトの行方が知れないとなればリンでなくても気にかけるに決まっている。
 こんなときはいつものごとく真っ先にリーフが”自分たちも手伝う”と協力の意を見せた。素直に”ありがと”とお礼の言葉で返すリンはふと何かを思いついたかのように--



「そうそうリーフちゃん。ちょっとレグルス(コイツ)ちょっとかりてもいいかな?」

「--?別に大丈夫ですけ--」

 リーフを押しのけてレグルスが拒否の意を表すもリンからの”蛇睨み”を受けてしまい硬直。成すすべがないまま連れて行かれてしまった。







 それから数分後、一見何の代わり映えのしないゲッコウガがジャローダに引きずられながら一行の前に再登場。何かあったのかと首をかしげる。すると得意げな表情と共にリンがウォーターに向かってレグルスを挑発するように唆す。
 言われるがままにウォーターはレグルスを罵倒し始めた。

--ピキッ


「んだとこの野ろ



--い出で出で出で出で出で出で出でででででえええええええええええええええええええええぇえ#&@\*$$$%&!???」

 最早後半の悲鳴は言語とすらおぼつかない有様であった。突然レグルスが痛みの余りか、首をおさえながらのた打ち回り始める。突拍子のない有様からリーファイ一同は思わずこの光景を二度見。そしてリンはまたも得意げな表情。


「ちょいと煩かったからね。コイツのベロの細工をしたったのよ」


 マフラーのごとく首元に巻かれているのはゲッコウガ特有の長い舌だ。リンはそこに細工を加え、レグルスが感情を高ぶらせた瞬間にその舌が彼に鋭い痛みを与えるようにてを加えたのだった。
 ほんのものの数分にてこれほど恐ろしい細工を加えるこのジャローダにリーフとスパーク以外の面々は戦慄。

「--よっし!それじゃめでたく新しい仲間も加わったことだし今日の冒険へれっつごー!!」

どう考えてもめでたくはないだろという心の中の総突っ込みを受けながらリーフは基地を出ようとする。リンとチームメイトはそんな彼女へとついていく。









 町へと繰り出したリーファイ一向が目にしたのはいつにない人だかりならぬポケだかり。何かあったのかと様子をうかがうもポケモンの多さにそれができるのが背丈の高いリーフとリンだけだった。

 刹那、今まで陽気な表情だったリンのそれが驚愕を含んだそれへと化していった。

ノコタロウ ( 2015/07/12(日) 20:04 )