ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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第三章 新天地
第四十五話 呆れとため息
~~ リーファイ きち ~~

 性格が豹変したルッグを連れてきちにもどってきたリーフ達。嬉しげに戻るリーフ達とは対照的にマッハのほうはどうにも嫌な予感しかしていなかった。

 彼のそんな予感は見事に的中。こっそりとスパークに密告するとスパークは表情を曇らせてコトの発端の原因であるリーフとファイアを呼びつけた。そんな状況を見守ろうとするのはマッハの人の良さだからであろうか、彼はその経緯を見届けることにしていた。










「そうか……それでルッグがああなったのは意図的にお前たちが仕組んだこと……であってるな?」

「う、うん……」

 ファイアのほうは不穏な空気を感じ取ってか、彼の返事はとても九籠もっていた。しかし一方のリーフのほうは全く悪気すら感じていないのかニコニコしていた。その返答からスパークはしばし考え込むように黙りこくり、それに思わず怖くなったファイアも黙っていた。

 そんな状況でもまだ空気が読めていないリーフが口を開けようとした瞬間であった。















 『--!!?』

 勢いよく机を叩く音が部屋中に響いた。スパークの怒りを現したその音を耳にして始めてリーフの顔にも緊張の色が伺えるようになった。

「アイツが口うるさくなったから性格を代えた?ふざけてるのかお前たちは!!」

「で、でもスパークさんだってルッグさんの性格がうるさいって言ってたんじゃ--」

 怒られてかリーフも慌てて言い訳がましくそう答えた。そしてファイアは怒っている父の姿が怖くなって下を向いている。

「確かにそう思ったことはある。でもな、だからと言って私はアイツの性格を変えようと思ったことは一度もない。お前たちがやったのはアイツの存在を否定するようなもんだぞ?」

 もっともなことを口にされてリーフも閉口する。こういう話のことは年齢の差だろうかスパークのほうが話の主導権を握っていた。

「全く……こんなくだらんことを企てるとは……親の顔が見てみたいものだ」

「いや、それアンタだから!」

 唐突に素っ頓狂なことを、それも天然で言い出すスパークに始めてマッハが口を開けて突っ込んだ。しかしスパークは素知らぬ顔で続ける。

「だからこのことはお前たちだけでカタをつけろ。わかったか?」

『はい……』

「それと……ウォーターはどこへ行った?」

 一通り話が終わったからかファイアはホッとした様子でウォーターが用事と口にしてどこかへ去っていったことを説明する。それを耳にしたスパークが呆れ果てた様子でため息をついた。そこに--







「ちわーっす。郵便でーす!!」

 軒先から聞こえたとある声。リーフとファイアにとっては聞き覚えのあるその声を耳にして軒先に駆けつける。
 声の正体はいかにも郵便屋らしき格好をしたハッサム--リュウセイであった。見慣れない彼の格好にリーフたちは何事かと尋ねる。

「コレっすか?郵便屋でバイトを募集したんで始めたんすよ」

「--リュウセイってさ、前も別のバイト始めてなかったっけ……?」

「そうなんっすよ……。探検家としての仕事が全く舞い込んでこなくて……。
って油売ってる場合じゃねぇや!!"リーファイ"へのお届け物っす!!」

 自分の事情を話していて落ち込みかけていたが、仕事であることを思い出してリュウセイは元気よくお届け物--依頼の手紙をリーフに手渡した。苦労しながらも頑張っている彼にリーフは"ご苦労様"と優しく声をかける。

「んじゃ失礼しまっす!!」

 そう言い残してリュウセイは矢のように飛び出して去っていった。そしてリーフは手渡された手紙を開けてその内容に目を通した。




-- チームリーファイよ!君たちの噂は聞いている!是非我々と5vs5で勝負をしてくれ!ボーマンダの城にて舞っているぞ!!これが届いた頃には我々も現地に到着してるからすぐに来てくれ!! --




「こ、これってもしかして挑戦状ってヤツじゃない!?」

「そうみたいだね(なにが"舞っている"だよ……。蝶の舞でもしながら戦うの?)」

 挑戦状が来てワクワクしているリーフとは対照的にファイアの方は若干冷めていた。手紙の書き方や書き間違いからから書き手が面倒くさい相手だなと真っ先に思ったからである。そんな彼のことは気にも留めていないリーフは急いでスパークとルッグにこのことを知らせた。

「ね!ね!今すぐに行こうよ!?」

「ちょっと待てリーフ。お前この文面をよく読んだのか?」

「へ?」

 スパークに指摘されてなんともマヌケな声を上げるリーフ。そんな彼女にまたも呆れつつスパークは説明する。

「この挑戦状は今すぐに5vs5で戦おうって書かれてあっただろ?でも今はウォーターがいないから私たちは四人しかいないじゃないのか?」

「それだったら大丈夫!!ガブちゃんがついてきてくれるから!!」

 自信満々に他のチームであるマッハの名をだしてスパークは困り顔。都合よく利用されている彼のことが気の毒に思えてきた。

「あのなぁ……アイツは便利やさんじゃないんだぞ?それに他のチームのポケモンなんだから……」

「大丈夫!!シャインさんには7泊8日借りるって連絡したから!」

「レンタルビデオか」

 どんどんずさんになっていくマッハの扱い。結局彼は有無を言わさずウォーターの代役としてボーマンダの城に連れて行かれることになった。









~~ ボーマンダの城 ~~

「あっ、あのヒト達のことかな!?」

 意気揚々と進んでいくリーフとそんな彼女についていけない様子のファイアとスパークとマッハ、そしてルッグのほうは奇しくも自分が始めて入ったダンジョンに怯えきっていた。

「よく来たな!探検家リーファイよ!!」

 威勢の良い挑戦者ポケモンの声、その声にリーフは一人で心躍らせていた。彼女達の前にたっていたのは珍妙な面をつけたポケモンの集団が立っていた。リーフとファイアとルッグにはその集団に見覚えがあった。
 そしてリーフの目が徐々に輝いてくる。

「あっ……あの時の正義のヒーローさんですか!?」

「いかにも!!よくぞ我々のことを覚えていてくれたな!私はヒジョーに嬉しいぞ!!」

「こちらこそ!!また正義のヒーローさんに会えるなんて光栄です!!」

 リーダー格の赤の面とふさふさの耳と尾を持つポケモンとリーフは、それはそれは嬉しそうに会話していた。一方、始めてこの集団と対面したマッハとスパークはというと--








『ウォーターのヤツは一体何やっているんだ?』








 すでに正体はバレていた。当然その正体を元から知っているファイアとルッグも含めて仮面のポケモン--もといウォーターに対して四人は冷たい視線を投げかける。
さて、そんなことが起こっているとは夢にも思っていないウォーターとリーフは楽しく会話したあと対戦のルール等を決め合っていた。

「ルールは5vs5のフルバトルだ!まぁわかりやすく言えば人間がやっていた"ポケモンバトル"と同じルールでいいな!?」

「はい!よろしくお願いします!」

 丁寧に頭を下げるリーフにウォーターはハッハッハと高笑い。そしてお互いのチームは先方が誰から行くかで話し合っていた。

「んでだ。リーファイチームは誰から行く?」

「そりゃルッグさんでしょ?大抵の相手につよいし」

「はい!?」

 ウォーター率いる正義のヒーローチームは "カメール コマタナ ナットレイ キルリア マニューラ" セオリーどおりに攻めればカメール以外の相手には有利に立ち回れる。先ほどまでも子供じみたリーフとは正反対の真っ当な戦略であったが……。


「むむむむむむむ、無理です!!僕にバトルなんて皆さんの足を引っ張っちゃいます!!」

 この有様であった。出会った頃を彷彿とさせるその物言いは一同を困惑させた。スパークとマッハはジト目でリーフとファイアを睨む。
 困り果てたリーフは優しくルッグを諭すように説得した。しばらくして相性がいいからと言う理由でかルッグも決心がついた。

「よしよし!ソチラも決まったようだな!」

 相手方の先方は白い仮面をつけたキルリア。悪タイプを併せ持つルッグにとってはやりやすい相手だと安堵していた。

「フフフ、それじゃよろしくお願いしますね」

 しかしながらキルリアは何故か余裕を感じさせる笑みを浮かべた。マッハは何故かその笑みに嫌な予感を覚える。そして戦闘が開始。


「い、行きます!!」

 手にとった棍棒でキルリアに攻撃しにいくルッグ。しかしキルリアはフッと口角を釣り上げながら--













キルリアが強烈な太陽のような光を発して輝き、ルッグを吹き飛ばした。

■筆者メッセージ
最後のアレはある程度察しはついているとは思いますがそこは黙ってる方向でお願いしますね←
ノコタロウ ( 2014/05/04(日) 18:51 )