第四十二話 捜索開始
※注意!
・今回いつも以上におふざけが過ぎた話です
・何を血迷ったか初めて挿絵を投下してみました。目汚し注意
これらが了承できれば本編どうぞ
~~ リーファイ きち ~~
翌日、リーファイのきちに泊めてもらうことになったブラザーズリーダー--グラス。と言っても彼とリーフとファイアは謎の敵に幻の世界に連れられてしまい、今三人は"幻の世界"のリーファイきちに住んでいることとなる。
「…………」
神妙な面持ちでこの世界から脱する術をグラスとファイアは考えていた。今彼らは敵の手中にあるといっても過言ではないこの状況。これではチームメイトも頼れる状態ではない。そんな時であった--
--ガチャリ!!
「大変ですグラスさん!!見つかりました!!見つかりましたよ!!」
ドタドタと大きな足音と共に扉がけたたましく開く。表れたのはリーフであった。血相を変えた彼女の様子で"見つかった"との言葉から、現実世界から脱するすべを考えていたグラスは期待を寄せた表情でリーフのほうへまじまじと視線を移す。
「本当に見つかったのか!?」
普段仏頂面を滅多に崩さないグラスもこの時ばかりは喜びを少しばかし浮かべている。
一方でファイアのほうは興味ないと言わんばかりに素知らぬ顔を決め込んでいる。
「見つけましたよ!!
駅前で美味しいラーメン屋を見つけましたよ!!」
「なんの話だそれは!!」
案の定碌でもないことを真剣に報告しにきたリーフにオチが見えていたファイアはため息をつくしかない。一方でリーフのボケっぷりに慣れていないグラスは彼女に突っ込みを入れる。
こんな状況でふざけている場合かと言わんばかりに怒りを顕にする。
「いやー駅前のラーメン屋なんだけどね、現世では特筆するとこないラーメン屋だったのにこんなところにまで作用するなんてねー。こりゃ幻様々ですわ〜」
真剣にラーメン屋を語るリーフとは対照的にファイアは冷めた目線でお茶を飲み始めた。
「あっ、そうそう。あとあのローブの敵にも出会いました」
「ったく……
ってサラッと、とんでもないことを言ってるんだお前はッ!!」
グラスたちにとってとても重要な事項をこのリーフという輩はさもどうでもいいかのごとく言い放った。ファイアはリーフの素っ頓狂で衝撃的なセリフを耳にしてお茶を噴き出し、むせ返った。
怒りを抑えきれないグラスは血相変えてリーフに突っかかる。
「そいつとはどこで出ったんだ!!」
「あー……駅前であったんですけどー」
「で す け ど !?」
バツの悪い彼女の言い回しにグラスは目と鼻の距離まで詰め寄った。メガニウムとキモリという種族の違いが極端な体格差を生んでおりグラスは首をほぼほぼ直角上に曲げている形になっている。
詰め寄られたリーフはグラスの表情に苦笑い。
「"美味いラーメン屋教えるから今回は見逃せ"って言われましたーッ」
『このアホッ!!』
グラスとファイアは飛び上がってリーフの脳天にパンチ。パコンパコンと二発分の乾いた打撃音がきち内にこだました。
~~ 駅前 ~~
「それでだよ……なんで僕らまでここに連れられてる訳?」
何故か一行はリーフが推していたラーメン屋のある駅前に拉致に近いかたちで連れられていた。機嫌を損ねたファイアは頬杖をついて、不貞腐れた表情を浮かべている。
一方のグラスは満更でもない様子。
「そりゃごはんのために決まってるだろ。リーフ、朝ごはんの時間はまだか?」
「やだねぇグラスおじいちゃん、ごはんはおととい食べたでしょ?」
「いや、毎日食べさせてあげて! 老人虐待ダメ! ゼッタイ!!」
「だからそれ以前に私を老人扱いすな。切るぞ」
気が付けば二人してリーフのペースに持って行かれていた。さっきまではあれだけ緊張感を持っていたグラスたちもリーフに釣られてこんなやり取りを自然体で行う始末。
しかし腹が減ってはなんとやら。一行はしかたなくラーメン屋で腹ごしらえをすることに決めた。
「ていうか当たり前のように駅前って言ってるけどこの世界にも電車とか通ってる訳?」
「さぁ?」
~~ ~~
「ヘイ!チャーシューメン3つとギョーザ9人前お待ち!」
店員のサワムラーとエビワラーが大量の料理を運んできた。これだけの量を頼むことは明らかに上記を逸しているが威勢よく運んでくる辺り流石といったところ。リーフはテーブルに置かれた瞬間からものすごい勢いでがっつく。
「それでだファイア。他に頼るアテはあるというのか?」
「はい、こういう時って大方ノコタロウがなんとかしてくれるんじゃないかと?」
「ノコタロウだと!?アイツはあれでも作者だろ!?お前たち何当たり前に干渉してきてるんだ!?」
グラスにとっては本来間違いなく遭遇することはない存在を平然と口にするファイアに、大袈裟とも言い切れない程驚きを顕にする。
ファイアは何事もなかったかのように"はい"とたったふたことで返答。
「まぁ僕らの物語ってギャグだからそういった"メタ的なコト"もできるからじゃないですかね?グラスさんのほうは結構シリアスなほうだからそうもいかないかもしれないんですが……」
「なんとまぁ……」
尋常ではないメタな話を聞き、これ以上詮索しても対して意味はないと考えグラスも目の前で猛烈な勢いで現象している料理に手をだした。今は下手なことを考えているとあの緑色の悪魔が全て平らげてしまいかねない。
リーフとの食事はある種の戦闘だとグラスは感じていた。この時の彼女は間違いなく最強だ。
数分後、三人は全ての料理を平らげた。するとリーフは何故かグラスに向かって頭を下げる。
「ご馳走様です!!」
「……ご馳走様です」
「はい?」
リーフに少し遅れることおよそ5秒。ファイアもグラスに向かって頭を下げた。
--これからロクでもないことが自分の身に起こる。
彼も本能ではそう理解していたが何事かとリーフに尋ねる。
「やだなー、こういう時は先輩が後輩の分まで奢るのが相場じゃないですかー」
「実際リーフも後輩たちに奢ってること多いですからねぇ……」
「……へッ?」
--悪魔だ。こいつらはもう後輩じゃない、悪魔だ。鬼だ。人でなしだ。サディストだ。
チラッと見せたその笑みを含んだ視線は悪意がこもっている。
その後グラスは風が吹けば吹っ飛んでしまいそうな財布を片手に涙目になっていたとか。
~~ ノコタロウの研究所 ~~
腹ごしらえを済ませて一行は彼らの形上は作者のノコタロウが住んでいる住居を尋ねる。
が、明らかに様子おかしいことになっていた。
まるで事件でも起こったかのような黄色のテープが訪問者を全て拒むかのごとく入口にはられている。
「……入るぞ」
「えっ!?でも……」
「一般ポケモンならとこかく私たちは救助隊と探検隊だ。事件の干渉は認められない訳がないだろう。おい」
ふてぶてしいという言葉が似合う程の態度でグラスが近くにいた捜査官らしきポケモンに声をかける。半ば強引ではあったがグラス達は研究所内に入ることができ、中に入ることにした。
『…………はい?』
リーフ達を出迎えたものは到底信じられないものであった。満面の笑みを浮かべたあのマグカルゴ
--の遺影が真っ先に視界に入ってきたのだ。突拍子もないこの展開にリーフもファイアも目を見開いている。一方でグラスは素知らぬ顔で捜査を続ける。
"いやいやいや!"と猛烈な勢いでそんなグラスにリーフ達が突っかかる。
「なんだ……騒々しい……」
「いやおかしいでしょ!?なんでノコタロウの遺影がこんなとこに!?質の悪いいたずら!?」
「嗚呼、アイツは死んだらしい」
さらりと恐ろしいことを平然と口走るグラスにリーフ達は派手にずっこける。またも素知らぬ顔を決め込むグラスに再び突っかかるリーフ達。グラスは"なんだ"と鬱陶しそうに返す。
なんでノコタロウがこの世界で亡き者になっているのか。何故グラスがしっているのか突っ込みたかったがそれは抑えることに。
「なんでもこの世界でのノコタロウは悪の科学者として悪事を続けていたらしいが、警察に雇われた戦闘受けおい集団に暗殺されたらしい……。まぁその集団の頭も奴との戦闘で殉職したらしいが……」
「悪の科学者って……ノコタロウにはこの上なく縁遠い存在だね」
「現実世界じゃバカで虫も殺せない臆病者のくせに……」
「なにが悪の科学者だよ……。向こうの世界じゃアホな科学者の癖に……」
こんな状況でも彼に対する毒舌は止まない。言いたい放題のリーファイ二人はようやく調べ物に入る。これでも科学者なのだから幻世界から脱する手段があるのかもしれない。
そんな中リーフが物色した先。その中身を確認した彼女が--
「あーーーーッ!!!」
「--!!?」
「----ッ!!?」
唐突なリーフの大声にグラスは反応を見せファイアは若干びくついた様子でリーフのほうへ振り向いた。
「美味しそうなソフトクリームがッ!!」
『だろうと思ったよ!!』
リーフが物色していたのは冷蔵庫であった。予想こそしていたがやはり二人共期待はしていたからか呆れ半分、怒り半分でリーフにツッこむ。一方のリーフは全く気に留める様子もなくおやつの時間だーと喜びながらソレを口にする。
「----!!!!!!!!?」
すると先ほどまでの幸せそうなリーフの顔が"ソレ"を口にしてから一変--フリージオのような真っ青な顔色に豹変。一体何事かとファイアはリーフが口にしたモノを調べる。
「どうした?」
リーフは一目散に流し台へと走り去る。この光景に見覚えのあるのかファイアはため息をついているが、事情を知らないグラスはファイアに何事かと尋ねる。
「リーフ……間違えて "床用ワックス" を口にしたみたいです……」
「……はぁ?」
"全く…・…"とため息をつきながらかつて同じ目にあった相棒の姿を思い出してファイアは床用ワックスを元の場所にしまう。何故冷蔵庫に床用ワックスがあるのか、何故同じことをリーフはやらかしてしまったのか、全く訳も分からずと言わんばかりにグラスは首をかしげていた。
(ククク……、お前のつまみ食いなんぞ……とっくに対策済みよ!!)
その経緯を眺めていた幻世界のノコタロウ(の亡霊)が、ワックスを吐き出そうとしているリーフをみてドヤ顔でほくそ笑んでいたのはまた誰も知らないお話。