第四十一話 終わることのない驚嘆
--バクフーンを倒したリーフだが新たな敵によって逃がしてしまった。その後仲間たちと合流したがなにやら彼らの様子がおかしいのだが……。
~~ リーファイ 基地 ~~
--ドンガラガッシャーンーッ!!
「--!?」
「な、なんなの!?」
基地内から響き渡る不穏な物音にグラスとファイアは驚いたように辺りを見渡す。しかしこのことも知っているかのごとくルッグもウォーターもスパークも呆れ果てた様子でため息をついている。
リーフは真っ先に基地内に入って状況を確認しにいった。そこには本日4度目になる衝撃の映像が目に入った。
罵声を投げかけ、この物騒な物音を立てている正体はグラスの仲間のジャローダ--リン。しかしここまでなら、なくはない状況であるが問題はその相手。彼女はジャローダらしい睥睨した目付きを、ラグラージのラック--リンが愛してやまない筈の旦那に浴びせかけていたのであった。。
「いい加減にしなよこのバカ亭主!!まーたあたしに隠れて……!!」
「なぁ悪かったって……許してくれよ〜?」
「許すかぁ!!」
情けない声をあげてラックは土下座するがリンには許すという様子が毛頭見られない。蔓の鞭を出してラックを締め上げようとする。
そこにリーフが割って入ることで一旦は論争は落ち着ちつく。
「一体どうしたんですかリンさん!?こんなたいそうな喧嘩までして……!!」
「どうしても何もそんな驚くことか?二人ともしょっちゅう喧嘩してるだろ?」
喧嘩で散らかった部屋を片付けながらスパークが割って入ってきた。その様子は先ほどから驚いてばかりのリーフたちに対して怪奇の視線を投げかけてるように見受けられる。このやり取りを見て疑問が確信に変わったグラスはリーフとファイアを呼ぶ。
「リーフ、ファイア。ちょっと来い……」
~~ リーファイ 基地 リーフの部屋 ~~
「それで、グラスさんは何かわかったんですか?」
先刻からどうにも首をひねっている様子からグラスは何か察したのではないか--そう期待してリーフが尋ねる。ファイアもグラスに期待しているのかコトを見届けている。
「--空の頂であのローブをまとったやつが光を放っただろう?アレは何だとおもう?」
「何って……わたし達の目を眩ませてバクフーンと一緒に逃げる為じゃないんですか?」
回りくどいグラスの言い回しが鬱陶しく感じたのか、リーフも若干機嫌を悪くする--が、グラスはそんなことは全く気にせずに続ける。
「私も始めはそう思った。だがアレは我々をそうだな……
おおかた”幻の世界”にでも連れて行く為の幻術だったんじゃないかな」
「幻の……世界……」
推測の域だがなとグラスが付け加えた。しかしリーフもファイアも納得した様子であった。あの光が発せられてから出会うポケモン出会うポケモン全てが真逆の性格になっている。
「とりあえずぼく達の身内の性格を簡単にまとめるとウォーター兄さんが礼儀正しくて……」
「ルッグさんがただのクチャラー」
『…………』
リーフの何気なく酷い形容だがグラスもファイアもあながち間違っていないと否定できずに閉口。しばしの間のあと何事もなかったかのごとく続ける。
「ラックがヘタレになってリンが鬼嫁になってると……」
--ガチャリ
ここで話題が遮られる。部屋に入ってきたのはスパークであった。彼の目付きはリーフ達を心配しているようにも見える。
「リーフ、ファイア、それにグラスさん。今日は一体どうしたんだ?さっきから様子がおかしいが……」
「だ、大丈夫!!ちょっと疲れてたから休めば元に戻るから……!!」
必死に言い取り繕うファイアだが誰がどう見ても焦っているのは目に見えている。が、スパークはあえてこれ以上は追求しないことに決めた。
「そうか?何かあったからじゃ遅いんだからな?」
「わ、わかってるよ……」
(リーフにファイア、こっからは不審がられないように大げさに驚くんじゃないぞ)
相変わらず慌てふためくファイアと(ついでにリーフに)グラスが注意を促す。と、ここで彼は何かを思い出したのか--
「それとスパークよ。少しいいか?」
「--?なんでしょう?」
去っていこうとするスパークをグラスが引き止める。リーフとファイアは、聞きなれないスパークの敬語に驚こうとする。が、元々彼は目上には敬語を使うことを知らないだけである。
「我々はもう少しだけこの地で残りたいのだが、ここにしばらく住まわせてもらってもよいか?」
「はぁ……私は構いませんが……」
「そうか、助かるよ」
「では私はこれで……」
~~ ~~
「とにかくだ、今後は我々の知る者達が変わっていても一々驚かないことだ。いいな?」
これ以上周りから不審な目で見られるのがまずいと考えて二度にわたりリーフ達に言い聞かせるグラス。
「そうですよね。一々こんなやり取りしてたら読者さん飽きちゃいそうだし」
「リーフ。メタいのはやめて」
「………………」
この緊張感のなさである。そして食事の時間と部屋から出ていった彼女の後ろ姿を見てグラスは一抹の不安を覚え、あとを追った。
~~ ???? ~~
「アイツ等……特にリーフは全く緊張感を持っていないようだな」
「…………」
例のローブをまとった者が水晶玉越しにリーフ達のやり取りを眺めていた。ローブの者が鎮座している場所は辺りがローブの色と同じ真っ黒であり周りにはバクフーンがいることしか確認できない。
「クックックッ……バクフーンよ、こんなマヌケなヤツに二度もやられるとはお前も大したことないんだな」
「……なんだと?」
分かりやすい挑発に額にシワを寄せるバクフーン。意外と簡単に怒り出したその様子を見てローブの者は再び含み笑いを浮かべる。
「こうなった以上奴らはほぼ我々の思い通りと言っても過言ではない。そう焦ることもないだろう」
「しかし、お前の"ワザ"とやらも一部成功してない箇所があるではないか」
苛立っていてどこかしらケチをつけたいのだろう--バクフーンはフンと鼻を鳴らす。
「まぁ、そういうな。根本が完成すれば多少の綻びなど問題はない」
「フッ、どうだかな……」
今度はバクフーンからの挑発。しかしローブの者は微塵もいかる様子もなく含み笑いを続けた。バクフーンはつまらなさげに顔を逸らした。