ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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第二章 救助隊と探検隊
第四十話 帰還
--窮地に陥ったファイアを助けにきたリーフはグラスの協力もあって宿敵のバクフーンの討伐に成功した……。











「かはッ……」

僅かに息をもらしながら岩ごと吹き飛ばされたバクフーンが倒れ込んだ。戦闘のさなかには身代わりを使っていた様子はないと判断したグラスは縄を持ってバクフーンを拘束しにいった。
コトのカタがついたかと思われたがリーフの脳裏には傷ついたパートナーのことが思い浮かべ、彼のもとにむかう。

「ファイア!!」

バクフーンの戦闘の時よりも必死な声でリーフが倒れてるファイアに語りかける。辺り一帯にはヘドロが埋め込まれている。毒の対策仕切っているリーフ達はともかく無策のファイアは明らかに毒にやられてるのは見え見えだ。









「今助ける!!

--"アロマセラピー……"!!」

メガニウム特有の首元の大きな花びらから心地よい香りが辺りに広がった。顔色の悪かったファイアだがその香りをかいだ瞬間から若干であるが顔色をよくする。
それに呼応したようにファイアの目が弱々しく開く。やはり幻じゃない。リーフが助けにきたくれてた。


「よかった〜……、どうなるかと思ったよ……」」


相当心配したのだろうファイアが目を開けた先には目に涙を浮かべ--それでいて笑顔を浮かべたリーフの姿が目に入る。
彼女の眼差しには無茶した自分への叱責等の類のものは一切なかった。しかしリーフの優しい性格故の気遣いがファイアの心に深く突き刺さる。

スパークとルッグは状況を察したのはその場から離れてウォーターを探しにいく。グラスのほうは動かなくなっているバクフーンの拘束に移っている。


「リーフ……どうしてここに……?」
「うん……実はね……」









~~ リーファイ きち ~~

「ただいま〜」

吹雪の島の薬草を採取することも終えてリーフたちは基地に帰還した。しかし彼女が戻ってきた時には辺りはなにやら物々しい空気が漂っている。
何事かと思いリーフはラックに声をかける。

「いったい、どうしたんですか?」
「嗚呼……実はな……」

--ラックの口から ファイアと(ついでにウォーター)がグラスに連れ去られて"そらのいただき"と呼ばれる地に向かったこと聞かされる。
そこでグラスの報告からあのバクフーンと接触したことを聞かされた。


バクフーン--その名を聞いた瞬間からリーフの表情が一気に険しくなった。いてもたってもいられなくなったリーフは自分をここまで連れて行ったボーマンダを引き止める。

「ボーマンダさん!!」
「ななななな……なんだぁ!?」
「事情はあとで話すからわたしを"そらのいただき"まで連れて行って!!」
「はぁ!?なんだよヤブからスティックに--」
「お願いだから!!」


ものすごい剣幕で迫られる。これにはボーマンダもたじたじになり半ば強引に強力を要請された。そして承諾を受けた瞬間からどこから話を聞いていたのか、ルッグとスパークがボーマンダの背中に乗っている。

(--い、いつの間に……)
「何をしているリーフ。さっさと準備しろ」
「う……うん!!」


~~ ~~





「そうだったんだ……」

自分の行動は全て筒抜けであったことを思い知らされる。ふと顔を見上げるとリーフが険しい表情で自分を--体格差からか比喩ではなく本当に見下げていた。

「ファイア。どうしてこんな無茶をしたの」
「……ぼくだって皆のやくにたちなかったんだもん……」
「……全く……。一人で危ないことはするなっていつも言ってるでしょ?」
「……リーフこそすぐに無茶するじゃん……」

怒られてか不貞腐れるファイア。そんな彼の態度にリーフは黙りこくり--









「それもそっか」
「なんだよそれ……」

怒られたり言い争いになるのかと思ったらあっさり認めて拍子抜け。悪態をついてはいるものののファイアの表情からも笑みが浮かんでいた。
いつものような和やかな雰囲気に戻りつつある時であった。






「--何者だ貴様は……!!」

バクフーンを拘束していたグラスから切羽つまった声が発せられる。とても味方が表れたとは思えない不穏な空気からリーフとファイアは再度緊迫した表情を見せる。
グラスのほうに近寄るとバクフーンの背後には真っ黒のローブをまとった者が浮遊していた。怪しげなそのローブをまとった者がグラス達に--





「--なるほど……。我々の邪魔をするだけの力量はあるようだな」
「何者だと聞いている……!!」

品定めするような真っ黒なこの敵。グラスは剣を取り出し戦闘の構えをとる。しかし真っ黒な敵な余裕を見せているのか戦闘の構えをとることはない。

「ちょうどいい。この力、お前たちで試させてもらおう!!」
「--!!リーフ!!ファイア!!気をつけろ!!」

グラスが注意する前に既に敵は既にアクションを起こしていた。すでに一帯は眩い光に覆われる。グラスは目を覆いながらリーフたちをまもるように前に立つ。









光が収まる。ゆっくりと目を開けるとそこにはあの敵や拘束したバクフーンの姿が消えていた。してやられたのかグラスは表情を曇らせる。

「やられた……」

攻撃はフェイク。本当の目的はバクフーンの保護であったこと。その真意に気がつかなかったことを悔やまずにはいられない。諦めの悪いグラスはあまり考えにくい選択肢を敵はとっているのではないかと予想する。

「もしかしたらまだ中腹で様子を伺ってるかもしれん。ウォーター達の合流がてら下山しよう」
『はい!!』









~~ 空の頂 中腹 ~~


「おぉ、お前たちか」

下山して間もなく、ウォーターと合流したスパーク&ルッグと合流。開口一番リーフがバクフーンは見なかったかと訪ねた。それにこたえたのはスパークである。

「バクフーン……か?ここじゃ見てないがな……」
「そう……」

落胆するリーフたちを見てスパークたちは怪訝そうな表情を浮かべる。まるでバクフーンというものを”個体”ではなく”種族”として認識しているようにさえ見受けられる。
いち早くこの状況の違和感を察知したのはグラスだった。何かがおかしい。まるで別世界に引きずりこまれたような錯覚に陥る。

次にこの違和感に気がついたのはリーフだった。その原因はルッグの態度である。先ほどからただでさえ悪い人相ならぬポケ相を一層悪くさせた目付きでクチャクチャと口を動かしてる。

「ねぇルッグさん。さっきから一体何噛んでるの?」

何気なく発したリーフの一言。しかしこの一言がグラスたちの感じていた違和感に確信を抱かせる。一行からはとても信じられない言葉をルッグが発した。









「チッ……いちいちうっせーんだよクソリーダーが」
『--えっ?』

リーフたち3人は絶句。まるで一般的なズルズキンのイメージを具現化したような口の悪さを、あろうことか普段は礼儀正しいルッグが露呈させた。それもリーフをクソリーダー呼ばわりするといういらぬおまけつき。

しかし信じられない自体はこれだけにとどまらない。悪態をつくルッグにウォーターが割って入る。


「おいルッグさん。リーフさんはリーダーなんだからそんな口を聞いたらダメじゃないか」
「うっせー亀公!!年下の癖に俺に指図すんな!!」
「全く……すいませんリーフさん。僕がキッチリ教育しておくので……」







「ウォーターが……僕!?」
「”ルッグさん”……!? ”リーフさん”……!?」

ルッグとは対照的に丁寧な口調で年上には敬称を付けるウォーター。まるでこの二人が入れ替わったのではないかと思いたくなる態度の豹変っぷり。
呆気にとられるリーフたちにルッグがふてぶてしい口調で続ける。

「いいからとっとと帰ろうぜ。かったりーな」

先ほどからルッグはふてぶてしい態度で口をクチャクチャと音をたてている。

「なんかさっきからルッグさん、クチャラーみたいだね……」
「うん……しかもなんかさっきから機嫌が悪そうだし……」

何かがあって機嫌を損ねたんじゃないか。リーフは違和感を感じつつもそう結論づけた。

「んじゃ帰ろっか」

バッジを掲げて帰還の準備を整える。しかしグラスだけは怪訝な顔を続けており帰還する準備はしていない。

「……グラスさん?」
「--あぁすまない……、帰るんだったな」

■筆者メッセージ
嘘みたいだろ……ヒトツキぶりの更新なんだぜ……コレ……。
ノコタロウ ( 2014/02/23(日) 01:10 )