第三十六話 vsシャンデラと愉快な部下達
※ 今回は六世代のポケモンが若干ながら登場します。ご注意ください(注意のしようがない)
~~Side マッハ 吹雪の島 奥地 ~~
--オニゴーリの別荘(?)の島がボーマンダに占拠されたが、リーフ達のおかげ(?)か何故か和解。ボーマンダが捕らえていた俺の仲間達も返してもらって一件落着したかに思えたが……。
「"ねこだまし"!」
「--ッ!!」
そのボーマンダを裏で操り、俺の仲間も誘拐していた黒幕(ってほどでもないが)は今俺とリーフが戦っているこのシャンデラとカポエラー。俺は奴らに利用され、リーフを連れていっていたことになっていたのだ。
後ろではリンさんが依頼主のオニゴーリ(と何故かボーマンダ)を護衛するように彼らの前に立っている。俺の仲間達は応急処置は施されたらしいが。
「"エナジーボール"!!」
リーフの発せられたエナジーボールがカポエラーの方に直撃。結構なパワーからかカポエラーは爆発音と共に叩きつけられる。当然親玉のシャンデラも手下が飛ばされてか黙っていられない。
「"火炎放射"!!」
「リーフッ!!」
シャンデラから放たれた炎が熱気を上げてリーフにまとわりついた。草タイプのアイツに炎技なんてうけちまったら……!俺はアイツの身を案じて名を叫ぶが……。
「えぇ!?」
「嘘でしょおう!?」
「何でぇ!?」
弱点攻撃--それもシャンデラの攻撃をまともに受けたにも関わらずリーフの体は無傷だった。戦闘中の俺達三人は全く同じタイミングで驚嘆の声をあげる。あとで思い出したがアイツには"いやしのオーブ"という炎技を無力化するアイテムを身に付けていたからだとか……。そりゃ初見じゃ驚くのもしかたないわなぁ……。
「なかなか面白いアイテムを持っているじゃない……タック! "アレ"を使いなさい!!」
「は、はい……!!」
シャンデラに呼ばれてカポエラーは慌てて通信器を取り出す。そしてアイツは慣れていない手つきでボタンを押す。あまりにごたついていたもんだから俺もリーフもあきれ果ててその成り行きを看ていた。途中でシャンデラに遅いと怒鳴られてたし……。
「……もしもし、僕です。……はい、サイズ"S"。はい、吹雪の島奥まで速達でお願いしますね」(ピッ
『出前かよ!!』
あろうことかあの野郎……戦闘中に出前なんかとりやがった……。さっきのボーマンダの時といいここまでふざけられたら流石の俺も我慢ならねぇ……。
「"げきりん"……ッ!!」
今俺が怒りに身を任せて"げきりん"をぶっぱなそうとしたそのときだった。目の前に攻撃を遮るような形で一体のポケモンが表れた。ぱっと見たところイソギンチャクみたいな風体に手足を付け加えたような最近見つかったポケモン……。
「そうよ!これが私達の期待のニューフェイス! "ガメノデス"よ!
ちなみにお金がないから今回は一人だけのご登場よ……」
「ニューフェイスって……我々もこの物語じゃニューフェイス的な存在なんですが……」
「そんなことは言わなくていいのよ!さぁ、あなた達!恐れおののきなさい!!」
途中までのくだりはなかったことにされ、シャンデラは勢い良くタンカを切った。俺はふと隣にいたリーフを見る。あいつはどんな顔をしているのだろうかと思ったが……。
「……ププッ」
「えっ!?」
「……っハハハハハハ!!期待のニューフェイスが来るって言うからどんな怖いのを想像してみたら……」
ご覧のとおり大笑い。目の前で笑いものにされてガメノデスも激昂。"何がおかしい!!"と頭から湯気でも出しそうな勢いで怒鳴り散らすがリーフはお構いなし。こみ上げてくる笑いをこらえながら俺の肩をパンパンと叩きながら続ける。
「見てみてガブちゃん。"ロックマ○"のボスキャラにあんなんおるよ!!」
言われるがままにあのガメノデスの全身を眺めた。あぁ確かにあの風体は確かに見えんこともないがなぁ……。
と、散々の嘲笑--じゃなくて爆笑されてガメノデスも我慢の限界。いかにも硬そうな爪をこちらに向けて襲いかかってくる。
「"エナジーボール"!!」
「むぐっ!!」
俺が手を出す間もなくリーフの"エナジーボール"が発せられた見るからに岩タイプを持っていそうなあのガメノデスは"エナジーボール"を食らって一発でKOされた。と思ったらムクっと立ち上がった。
しかし俺達に襲いかかることはなくシャンデラ達の方に向かっていく。
「あー、バトル一戦終わったんで今日は帰りますねー。お疲れっす。んじゃ」
えぇ!?もう帰っちゃうんかい!!それだけを言い残してガメノデスは穴抜けの珠を使ってダンジョンから去っていった。残された敵のシャンデラは汗を垂らしてとカポエラーの痛い目線からそらす。
「トウロウ様……なーにが"期待のニューフェイス"ですか……。これじゃ"帰宅のニューフェイス"じゃないですか……」
「上手い!座布団一万!」
「それを言うなら一枚でしょうが!何なんですか!我々はこんな下らない茶番をするためにこんな寒い島まで来たのですか!!」
「な、何よ!アンタ、部下の癖に上司のアタシに逆らうつもり!!」
どういう訳か今度は内輪もめが勃発。俺達は放ったらかしにされる。リーフは面倒くさくなったのか俺と共に後ろを振り返ってリンさん達の様子を伺う。奴らにバレないように小声で。
(リンさんよ……。仲間の具合はどうよ?)
(大丈夫だけど……あっちはもう片ずいたの?)
(いや、片ずいてはないがなんか勝手に身内でもめ合っているから帰ろうかなってリーフが……)
(帰ろうかなって……)
まるで遊び疲れたような飽きた顔のリーフは最早あくびをする始末。さっきまでの真剣な表情はどこへやら、いつも以上に気が抜けた表情だ。
(んじゃボーマンダさんよ。基地に送ってくれねぇか?)
(あいよー。んじゃしっかり捕まってろよー)
と、無事に俺の仲間達を助け出すことに成功。吹雪の島をあとにした。
-- Side ファイア 空の頂 --
「大丈夫?兄さん?」
「ぜぇ……お、鬼かよあのトカゲ野郎……ッ!!」
誰が見ても疲弊しきっているカメールのウォーター兄さん。それもそのはずぼくたちはグラスさんに修行を見てもらうように頼んだ。そこまではよかったのだがさっきまでは"モンスターハウス"をぼくたちだけの力で突破してこいと命じられた。
ぼくには全体攻撃の"ふんえん"があるだけまだそこまで労することはなかったが、兄さんはそうはいかない。全体攻撃がないから敵の攻撃を食らいまくってボロボロだ。
「ホラ、オレンの実だよ?」
「あぁ、すまねぇ……」
今はグラスさんは休憩と言い残して席を立っている。多分彼が戻ってくると再びあのキツイ修行が始まるんだろうなぁ……。
~~ Side グラス ~~
--ファイアとウォーターを三合目の休憩地に残して私は少し道を外す。そして背後の草影に向かって--
「おい……そこにいるのは分かっている……でてこい……!」
私が凄むと草影から私の身長の軽く3倍以上もある背丈のポケモンが姿を表す。そのポケモンは体格こそは違えど色合いといいあのポケモン、ファイアに非常に良く似ていた。
「グラスさん。こんなところでアナタにお会いできるとは思いもよりませんでしたよ」
「やはりキサマだったか……
「バクフーン!!」