ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









小説トップ
第二章 救助隊と探検隊
第二十七話 戻ってきた日常……?
--リーファイが英雄祭から帰還したよく朝。探検家達が集う掲示板に早々と二人のポケモンの姿が。しかしこの二人は朝っぱらから喧騒の声を上げている。

「だからこの依頼はわたしが先にとったからわたしのものよ!」
「なんだとぉ!?それが先輩に対する口のききかたか!こういうのは後輩が先輩に"どうぞどうぞ"って譲るものだろーが!」
「そんなもん知らないわよ!遅れたあんたが悪いに決まってるでしょ!」

気が強い少女の声と三下の雰囲気を醸し出している男の声。早朝の静かな雰囲気をぶち壊しにするほどの声量で二人が騒ぎたてる。

「うるせぇ!俺より後輩の癖に生意気だぞ!」
「きゃッ……!」

横暴にも男--ハッサムは"バレットパンチ"で少女--チコリータを殴りつけた。しかしチコリータは殴られようがひるまずにハッサムをにらめつける。

「なんだぁ……その顔はぁ……まだ文句あるって顔してんなぁ!」

再び"バレットパンチ"を放つ為に右腕を振り上げる。--


--ガシッ


「--!!!?」

腕を振り下ろすことができない。何者かに腕を掴まれた感覚を感じてハッサムは背後を振り向く。

「リーフさん!?」
「あ……姉貴……(ちっす)」

チコリータとハッサムは、ハッサムの腕をつかんだ正体--メガニウムを見て驚嘆(ハッサムは恐れを含んだ)声を上げる。

「リュウセイ……やっぱりあなたって全然変わってないわね。こんなんじゃリツキちゃんにすぐ抜かれちゃううわよ?」
「な……!でもリーフの姉貴!俺はこの譲る心を知らないダメな後輩に指導をですねぇ……」
「うるさい」

ハッサム--リュウセイの言い訳には聞く耳をもたず、メガニウム--リーフは制裁のめざめるパワー(炎)をぶち込む。無情に焼かれるハッサムを半ば哀れみの目付きで見るチコリータ--リツキにリーフは優しく話かける。

「--いててて、ところでリーフの姉貴よー。こんな朝っぱらからどーしたんで?」
「ん?ダンジョンに朝食採取がてらちょっと依頼こなして、こずかい稼ぎでもしよーかなーって思って」
「あっ!これがホントの(依頼なんぞ)朝飯前って奴っすね!」

ドや顔でリュウセイが言い放つ--

「んで、二人共。どんな依頼の取り合いをしていたの?」

--が、華麗にリーフはスルー。彼女はリュウセイ達が取り合っていた依頼を読み上げる。




--★--

依頼主:キリキザン
報酬:6.000ポケ
難易度:C
場所:ボーマンダの城
詳細:仲間のコータスが空腹のあまり、あばれまわってます。落ち着かせて食料を渡してください。

--★--




「すごく報酬もいいんでそれをこなそうと思ったんですが……」
「うん、それじゃあわたし達三人で行っちゃいますか!」
『はい!…………え?』

リーフの号令に二人は一度は勢い良く返事をするも、数秒後に驚きと不服を含んだ表情で彼女を見る。

「なんでわざわざ合同でこなさなきゃならんすか!?」
「そうですよ!大体見ず知らずの!それもこんな柄の悪い奴となんか!」

すぐにリュウセイが"なんだと!?"とリツキに言い返すもリーフに制される。

「ここで二人が出会ったのも何かの縁。こうやって誰かと協力し合うのも悪くないんじゃない?」

そう説く彼女の脳裏にはあの英雄祭での出会いがよぎる。後輩達にも何気ない出会いを大事にしてもらいたい気持ちが芽生えた。

「チッ……。姉貴が言うならしゃーねーな」
「リーフさんが言うなら仕方ないですね……」

不服ながら二人共同意。依頼を保留から実行への手続きを終えてリーフ達は依頼主のキリキザンの元へ会いにいく。







「おぉ!あ……あんた達が探検家かい……」

待ちわびた探検家達がやってきて喜々とした顔を見せたキリキザン。しかしその正体を目視した彼の顔つきは次第に思わしくなくなっていく。

「なぁ……ホントにあんたが受けるのか?一応食料絡む仕事なんだが……」
「ちょ……!どーゆー意味ですか!?」

何が不満なのかとリーフは問う。鈍感な彼女とは裏腹にキリキザンの真意を知ったリュウセイが腹を抱えて笑い始める。

「ぷぷぷっ……!んなの決まってるじゃないっすか!リーフの姉貴に食料を渡させる仕事なんて、狼に羊飼いを任せるより危険なこt……グフッ!」

調子にのって笑いこけるリュウセイにリーフのげんこつが飛んだ。ムッときているリーフを慌ててリツキがフォローに入る。

「でも、あんた。はっきり言って大食いなんだろ?」
「失礼なこと言わないでください!」

腕組みをして首をかしげるキリキザンにリツキが怒りをあらわにする。その様子を見たリーフは嬉しそうに笑みを浮かべた。

「リーフさんはただ食い意地が汚いだけです!」
「……ナチュラルにもっとキツイこと言わないで欲しいんですけど……」

リツキからはキリキザン以上にキツイワードが、しかも彼女は大真面目にリーフをフォローしようとしているのが余計にリーフにはこたえた。

「とにかく不安だから俺も同行させてもらうぞ。ボーマンダの城くらいだったらあんた達の足を引っ張ることはないだろうしな」



 ------



--ボーマンダの城--

「ふーん、意外とあんたってそういうとこはわきまえてるんだな」
「いくら姉貴でもそこまでしませんでしたかい」

--キリキザンとリュウセイがボソリと漏らした直後、リュウセイの頭にたんこぶができた。キリキザンの分もあってか二倍となっている。

「な、なんで俺だけ……?」
「そりゃさすがに依頼主に手上げれるわけないじゃん」
「お前は黙ってろよ!」

リュウセイとリツキがぎゃあぎゃあ言い合っているさなか--


「おでましか……」


城内で見境なく暴れまわっているコータス。その叫び声を聞いて新人二人は一瞬で喧騒をやめて萎縮し始める。

「おいおい……こいつらこんな様で大丈夫かぁ?」
「大丈夫ですって!やるときはしっかりやるんだから!ねっ!」
『--無理ッ!』
「…………」

キリキザンの不安は増幅。それと反比例するようにリーフの後輩に対する信用は減少。相性もあってか炎が苦手な二人(尤もキリキザンもリーフも相性の上では苦手だが)は今だに動揺を露にしている。

「大丈夫だっての。あいつは炎技をもっちゃいねぇぜ」
「ホントか!」

大の苦手の炎技を非所持と聞いた途端にリュウセイの顔に輝きが戻る。水を得たなんとやらのごとく、威勢良く彼はコータスの前に立つ。彼はハッサム特有の両手のハサミをガチャガチャと音を立てながらコータスを威嚇する。

「おう!亀公!このリュウセイ様が相手してやる!ありがたいと思いながら地に伏せな!」
「……そいつ……一応俺の仲間なんだが……」

仲間を亀公と呼ばれてかキリキザンは額にシワを寄せる。そんな彼にリーフが変わりに"ごめんなさい"と謝罪。

「"電光石火"!」

特性"テクニシャン"を用いた"電光石火"で文字通り先制で技を打ち込む。しかしコータスはあまりこたえてないのかふわぁ〜っと あくび をする。

「な、な、なめてんのか〜。もういっちょ〜」

コータスのあくびに釣られてか、眠気を催したリュウセイも半目になり、さらに口ぶりに勢いがなくなっている。そんな状態で"電光石火"を放つもコータスの"まもる"でのバリアーによって阻まれる。チッと舌打ちを--

「…………zzz」

するかと思われたリュウセイだが糸の切れた傀儡のように倒れ込んだ。体力が切れたという理由ではなさそうだが……。

「ねぇキザンさん?」
「勝手にヒトの名前を略すな。なんだ?」
「あのコータスに何か嫌な予感するんですけど……」

コータスの"あくび"と"まもる"を確認。リーフはどうにも嫌な予感しかしていない。

「あぁ、確かにあいつは俺達が苦手な炎技は持っていない。だがな--」

歯切れの悪いキリキザンの態度。彼の態度が示すものとは--





「ひぃッ!」
「や、やっぱり……」

リツキとリーフの驚きの声。それは倒れ込んでいるリュウセイにコータスが"じわれ"をかましている姿を見ていたから発せられた。

「--相手を確実に眠らせて一撃技で仕留める……。それがあいつのやりかたなんだ……」

リュウセイは体力がつきたのではなく"あくび"に釣られて眠り状態に陥っていた。それを本能で知っているコータスはキリキザンの言う通りに"じわれ"で一撃で仕留めようとしていた。

「リーフさん!いそいで助けないとあいつが!」
「でも、うかつに近づくとこっちが地割れの餌食に……」

技が技なだけに助けに入るとこもできない。リーフ達はリュウセイが起きるまで地割れが外れる続けることを待つ他の選択肢がない。--しかし



『----!!!!』



無情にも"地割れ"は容赦なくリュウセイを飲み込んだ。そんな絶妙なタイミングでリュウセイは眠りから覚める。

「うわあああああああああああああああぁぁあ!起きたらら地割れのなかだあああああああああぁぁ!ちくしょおおおおおおおおおおおおぉ!覚えてやがれえええええええええええぇぇ!」

地面に吸い込まれながらリュウセイは小悪党のような捨て台詞を残した。落ちていくリュウセイを確認してコータスはリーフ達を睨み、口を開けた。リュウセイが地割れの餌食になったにも関わらず誰一人として気にとめる余裕などない。

「(これは"あくび"の構え!)リツキちゃん!」
「はい!"マジックコート"!」

コータスの"あくび"は"マジックコート"で跳ね返された。自分のあくびを受けたコータスは技ではなく本当に眠そうなあくびをし、足取りをふらつかせる。

「よし!今ならいける!」

眠りのためかコータスがあばれまわることはない。その間にキリキザンは準備していた食料をコータスに食べさせる準備をとった。

「--ふぅ……。これで大丈夫だろう。助かったぜ、こいつは礼だ」

と、キリキザンはリーフ達にお礼の6.000ポケを手渡す。これにて一件落着と思われたさなかに--

「リーフさん!」
「--!?」




--うわぁ……ルッグさんの声だ……。





彼が声を張り上げる時は大体自分が怒られる時。そう思っていたリーフはびくつき、自然と身構える。

「なななななな……何も今日のわたしはつまみぐいなんて……やってないんですわー」
「そんなことはどーでもいいんです!はやく戻ってきてください!」
「えっ?」

つまみぐいをもどーでもいいと一蹴。リーフには別の嫌な予感がよぎった。

■筆者メッセージ
Q:ハッサムの扱いwww    A:好きな奴ほどいじりたい症候群故
ノコタロウ ( 2013/07/18(木) 14:48 )