第十九話 襲来による混乱
「くそっ!油断してた!」
ギルドの外に飛び出し、真っ先にシャナが彼にしては強い口調で放った。外では軽く十数体にものぼる凶暴なポケモン達が屋台の建物やらと破壊しているところだった。その雰囲気はジェット達が来襲したときの比ではないほどに恐れていることは街の逃げ惑うポケモン達が示していた。
「(ったくあの馬鹿共が……っ!)」
一般ポケモンに混じって逃げ惑う部下たちにジェットは人知れず頭を抱えていた。当然だが目の前の惨劇に誰一人としてジェットの方を見てる者はいないが……。
「----?」
ふとリーフは上唇を噛み締めていたシャナの方に目線を動かす。彼女の目には彼が何らかの策を練っていることは容易く見て取れた。しかしなぜか彼女は不服な顔つきとともに彼を見ている。
「シャナさんッ!」
「--!?」
唐突に叫んだリーフにシャナは一瞬ビクリと体を震わせ、彼女の方に目線を動かす。そこには真剣な眼差しで自分を見ていたリーフの姿があったのだ。
「外部だからって関係ないわ!わたし達も行くわ!」
力強くそう叫んだ。リーフは自分たちが外部の者だからと遠慮しているように見受けたシャナに怒りを感じていたのだ。
否、リーフだけではない。リーファイのメンバーも彼女と同じく、覚悟の決まった顔でシャナの指示を待っていたのだ。(ただジェットだけは行く気など微塵もなく、鼻くそをほじっていたが)
「--よし!今からこの事態をここにいる全員で沈静化させる!よく聞いてくれ!」
ぐるりと周囲を見渡す。
「リーフとルアンは街の真ん中!スパークさんとスバルは東側!俺とファイアは北へ向かう!」
名を呼ばれた五人は頷くが、ジェットは”フン!”と吐き捨てる。
「だ〜れが街の鎮静化なんて行くか!このジェット様がこんなくだらんことを……!」
「ジェットはルテアとギルド周辺を頼む!」
「ちょっとまてえええええええええええええええええぇ!!」
意見を完全に無視され叫ぶも、悲しいことに誰にも相手にされなかった。
「あの〜、僕はどうすれば……」
控えめに声をかけたのはルッグであった。周りは全員タッグを組んでいるが自分だけは一人だけであった。シャナもどこに入ってもらおうか悩んだ時であった。
--このとき既にルッグとシャナの脳裏にある誰かの存在は抹消されていた……。
「--ボクならどうだ!?」
まるでそらから声が降ってきた……のではなく本当に空から声が降り注ぎ全員が空を見上げた。
白い手足、黄緑の体、赤い花びらのスカーフをまとったポケモン、スカイフォルムのシェイミが姿を表す。
「誰です?」
「人手、足りないんだろ?」
「助かる!ミーナさんはルッグさんと一緒に行動してくれ!」
「は……はいっ!」
ルッグの問いかけも華麗にスルーされた。ぽかーんとはしていたが、我にかえったところで頷く。
「よし!みんな!これだけは言っておく。全員深追いはしないことだ。全員無事に帰ってこい!これが絶対条件だ!」
「はい!」
「よし!散!!」
「ボクはミーナ。種族はシェイミだ。ギルドのみんなとは知り合いでね。よろしく!」
叫び声や破壊音や悲鳴。どう考えても周りの状況とは不釣合いなよく言えば元気な、悪く言えば空気の読めない声調でこう言った。
「僕はルッグです!しかしこれは一体どういうことなんですか!?」
「ここで暴れている連中は”イーブル”の面々といってね、何をしでかすかわからなかったけど、、まさかこんなことになろうとはね……」
「では、どうやってこの状況を鎮めるんです!?」
「簡単さ。イーブルには何人かの”幹部”がいる。そいつらを片っ端から止めれば下っ端は逃げてくさ!」
シンプルだが効果は保証されるであろう方法であった。ルッグはその提案に関心しながらもその飛行速度に疲弊していた。
「ちょっと待ってく……っ!いっ!?」
「うっ……!!」
ルッグ。ミーナ共に足を止め、鼻に前足や右腕をやる。
「なに……この異臭はっ……!」
すぐにでもこの場から立ち去りたいほどの異臭が二人の鼻をダイレクトに襲った。ミーナに至っては臭いに耐え切れずに空中からドサリと音を立てて地面に落下する。
「ミーナさん!?」
「ボクは臭いのが苦手なんだああああぁぁ!」
「--グヘヘヘヘ」
この上は内であろう不快感が漂う笑い声が響いた。その声に気がついた二人は眉間に一層シワを寄せる。そこにはまた不快なにやけ顔が存在していた。
「誰です!?」
臭いに耐えながらもルッグは鋭く叫んで、手にとった棒を構えた。
「グヘヘ……。みーつけたぁ」
「うっ!?」
尋常ではない異臭と共に現れたこのポケモン--ダストダスが出てきたことによってルッグとミーナはまた一歩後ずさった。臭いが一層強くなったからであろう。
「グヘヘ……そろそろ建物壊すのも飽きてきたねぇ……今度は生きたポケモンをぼくちんの毒でべちゃべちゃにしてやりたいねぇ……」
ダストダスの声質にルッグは一層不快感を表す。ミーナに至っては臭いのあまり鼻を塞ぐことに必死で話を聞くどころではない。
「もしかして……あなたはッ!!」
「多分……”イーブル”だ……うわああああああああああぁ臭いいいいいぃぃいい!」
口を開けたミーナは臭いをすってしまったために鼻をついてしまった。地面をごろごろと転がって悶絶している。
「グヘヘ……そうだね、ぼくちんはイーブルのポードンって言うんだけど……
--ぼくちんそんなことどうでもいいんだよ。はやく誰か生きたポケモンをぐちゃぐちゃに溶かしてやりたいんだよぁ。そうだねぇ……その緑色の子は特によく溶けそうだなぁ……グヘヘ」
「--!!?」
ポードンに視線を向けられたミーナ。その背筋には悪寒が走った。不快感はその表情からルッグには容易く見て取れた。
「ちょっとぼくちんの毒の餌食になってくれよぉ!!ぼくちんは毒に苦しむ時の悲鳴が大好きなんだよぉ!!」
ポードンの狂気じみた声にルッグとミーナは同時に構えた。さらに二人に額には冷や汗が吹き出した。
--この相手はとてつもなく危険だ!
二人の体に危険信号が走る。
※おまけ シリアス崩壊著しいので閲覧の際はご注意を。見なくても何ら進行に問題はないのでスルーしっちゃってもおkです。
「って、ちょっと待てやアアアアアアアアアアアアあああぁぁ」
ん?どったのウォーター君よ?
「どったのも糞もあるかああああああああああああぁぁ!!あのネ○○ィブチ○ン、誰か重要なキャラ忘れてやがるじゃねえかああああああああああぁ!!」
重要なキャラ?はて?そんなキャラいたっけな……?
「いるだろうが!名前が”ウ”で始まるメインキャラが!!」
ヒャッハアアアア!!って叫んだあのウルガモスの
こと?
ドテッ
「そいつはどう考えても脇役だろうがあああああああああああああぁぁ!!」
でも他にウで始まる奴は脇キャラしかいないけどなぁ……。
「だあああああああああああああぁかあああああああああぁらああああ!!
ウォーター様がいるだろーが!!ウォーター様が!!」
あー。そうだね……。
「こうなったら、俺のことを忘れ去ったお返しに、俺の存在感をバッチリとアピールしてやるぜ!!とうっ!!」
あらら……。走って言っちゃったよ……。